刑事略式手続法
法令番号: 法律第二十號
公布年月日: 大正2年4月9日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル刑事略式手續法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正二年四月八日
內閣總理大臣 伯爵 山本權兵衞
海軍大臣 男爵 齋藤實
司法大臣 松田正久
內務大臣 原敬
外務大臣 男爵 牧野伸顯
陸軍大臣 男爵 木越安綱
農商務大臣 山本達雄
大藏大臣 男爵 高橋是淸
文部大臣 法學博士 奧田義人
遞信大臣 元田肇
法律第二十號
刑事略式手續法
第一條 區裁判所ハ檢事ノ請求ニ因リ其ノ管轄ニ屬スル刑事ノ事件ニ付公判前略式命令ヲ以テ罰金又ハ科料ヲ科スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ同時ニ沒收ヲ科シ其ノ他附隨ノ處分ヲ爲スコトヲ得
略式命令ハ被吿人ニ其ノ正本ヲ送達シテ之ヲ爲ス但シ裁判所書記本人ニ正本ヲ交付シタルトキハ送達アリタルモノト看做ス
第二條 略式命令ノ請求ハ公訴ノ提起ト同時ニ書面ヲ以テ之ヲ爲スヘシ
第三條 裁判所ハ前條ノ請求アリタル場合ニ於テ其ノ事件略式命令ヲ爲スコトヲ得ス又ハ之ヲ爲スコトヲ相當ナラサルモノト思料スルトキハ通常ノ規定ニ從ヒ裁判ヲ爲スヘシ
第四條 裁判所ハ略式命令ヲ發スル前被吿人ニ對シ書面ヲ以テ其ノ豫吿ヲ爲スヘシ
被吿人ハ豫吿ヲ發シタル日ノ翌日ヨリ起算シ三日內ニ書面ヲ以テ異議ノ申出ヲ爲スコトヲ得
被吿人遠隔又ハ交通不便ノ地ニ在ルトキハ裁判所ハ附加期間ヲ定ムルコトヲ得
第五條 略式命令ノ豫吿ニハ被吿事件、科スヘキ刑及附隨ノ處分竝前條ノ期間內ニ異議ノ申出ヲ爲ササルトキハ略式命令ヲ爲スヘキ旨ヲ明示スヘシ
第六條 裁判所ハ異議ノ申出アリタルトキハ通常ノ規定ニ從ヒ裁判ヲ爲スヘシ
裁判所豫吿ヲ爲シタル後第三條ノ事由アリト思料スルトキ亦前項ニ同シ
第七條 略式命令ニハ罪ト爲ルヘキ事實、適用スヘキ法令ノ規定、科スヘキ刑及附隨ノ處分竝正本ノ送達アリタル日ヨリ七日內ニ正式裁判ノ申立ヲ爲スコトヲ得ヘキ旨ヲ明示スヘシ
略式命令ノ原本ニハ裁判所及年月日ヲ記載シ判事裁判所書記ト共ニ署名捺印スヘシ
第八條 裁判所略式命令ヲ爲シタルトキハ檢事ニ其ノ正本ヲ送致スヘシ
第九條 刑事訴訟法第十九條ノ規定ハ略式命令ノ送達ニ之ヲ準用ス
第十條 略式命令ヲ受ケタル者ハ正本ノ送達アリタル日ヨリ七日內ニ正式裁判ノ申立ヲ爲スコトヲ得
刑事訴訟法第十五條乃至第十七條、第二百七條第二項、第二百四十七條及第二百四十八條ノ規定ハ前項ノ申立及其ノ期間ニ之ヲ準用ス
第十一條 正式裁判ノ申立ハ略式命令ヲ爲シタル裁判所ニ書面ヲ以テ之ヲ爲スヘシ
正式裁判ノ申立アリタルトキハ裁判所ハ速ニ其ノ旨ヲ檢事ニ通知スヘシ
第十二條 正式裁判ノ申立ハ之ヲ抛棄シ又ハ第一審ノ判決アル迄之ヲ取下クルコトヲ得
第十三條 法律上ノ方式ニ違ヒ又ハ期間ヲ經過シタル正式裁判ノ申立ハ決定ヲ以テ之ヲ却下スヘシ此ノ決定ニ對シテハ抗吿ヲ爲スコトヲ得
前項ノ抗吿ニハ刑事訴訟法ノ規定ヲ準用ス
正式裁判ノ申立ヲ適法ナリトスルトキハ通常ノ規定ニ從ヒ裁判ヲ爲スヘシ裁判所ハ此ノ場合ニ於テ略式命令ニ拘束セラルルコトナシ
第十四條 正式裁判ノ申立ヲ爲シタル被吿人公判ニ出頭セサルトキハ裁判所ハ對席トシテ裁判ヲ爲スヘシ
第十五條 正式裁判ノ申立ニ因リ判決アリタルトキハ略式命令ハ其ノ效力ヲ失フ
第十六條 略式命令ハ正式裁判ノ申立期間ノ經過又ハ其ノ申立ノ抛棄若ハ取下ニ因リ確定判決ト同一ノ效力ヲ生ス正式裁判ノ申立ヲ却下スル裁判確定シタルトキ亦同シ
第十七條 刑事訴訟法第二十條及第二十一條ノ規定ハ本法ニ依リ作ルヘキ書類ニ之ヲ準用ス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル刑事略式手続法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正二年四月八日
内閣総理大臣 伯爵 山本権兵衛
海軍大臣 男爵 斎藤実
司法大臣 松田正久
内務大臣 原敬
外務大臣 男爵 牧野伸顕
陸軍大臣 男爵 木越安綱
農商務大臣 山本達雄
大蔵大臣 男爵 高橋是清
文部大臣 法学博士 奥田義人
逓信大臣 元田肇
法律第二十号
刑事略式手続法
第一条 区裁判所ハ検事ノ請求ニ因リ其ノ管轄ニ属スル刑事ノ事件ニ付公判前略式命令ヲ以テ罰金又ハ科料ヲ科スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テハ同時ニ没収ヲ科シ其ノ他附随ノ処分ヲ為スコトヲ得
略式命令ハ被告人ニ其ノ正本ヲ送達シテ之ヲ為ス但シ裁判所書記本人ニ正本ヲ交付シタルトキハ送達アリタルモノト看做ス
第二条 略式命令ノ請求ハ公訴ノ提起ト同時ニ書面ヲ以テ之ヲ為スヘシ
第三条 裁判所ハ前条ノ請求アリタル場合ニ於テ其ノ事件略式命令ヲ為スコトヲ得ス又ハ之ヲ為スコトヲ相当ナラサルモノト思料スルトキハ通常ノ規定ニ従ヒ裁判ヲ為スヘシ
第四条 裁判所ハ略式命令ヲ発スル前被告人ニ対シ書面ヲ以テ其ノ予告ヲ為スヘシ
被告人ハ予告ヲ発シタル日ノ翌日ヨリ起算シ三日内ニ書面ヲ以テ異議ノ申出ヲ為スコトヲ得
被告人遠隔又ハ交通不便ノ地ニ在ルトキハ裁判所ハ附加期間ヲ定ムルコトヲ得
第五条 略式命令ノ予告ニハ被告事件、科スヘキ刑及附随ノ処分並前条ノ期間内ニ異議ノ申出ヲ為ササルトキハ略式命令ヲ為スヘキ旨ヲ明示スヘシ
第六条 裁判所ハ異議ノ申出アリタルトキハ通常ノ規定ニ従ヒ裁判ヲ為スヘシ
裁判所予告ヲ為シタル後第三条ノ事由アリト思料スルトキ亦前項ニ同シ
第七条 略式命令ニハ罪ト為ルヘキ事実、適用スヘキ法令ノ規定、科スヘキ刑及附随ノ処分並正本ノ送達アリタル日ヨリ七日内ニ正式裁判ノ申立ヲ為スコトヲ得ヘキ旨ヲ明示スヘシ
略式命令ノ原本ニハ裁判所及年月日ヲ記載シ判事裁判所書記ト共ニ署名捺印スヘシ
第八条 裁判所略式命令ヲ為シタルトキハ検事ニ其ノ正本ヲ送致スヘシ
第九条 刑事訴訟法第十九条ノ規定ハ略式命令ノ送達ニ之ヲ準用ス
第十条 略式命令ヲ受ケタル者ハ正本ノ送達アリタル日ヨリ七日内ニ正式裁判ノ申立ヲ為スコトヲ得
刑事訴訟法第十五条乃至第十七条、第二百七条第二項、第二百四十七条及第二百四十八条ノ規定ハ前項ノ申立及其ノ期間ニ之ヲ準用ス
第十一条 正式裁判ノ申立ハ略式命令ヲ為シタル裁判所ニ書面ヲ以テ之ヲ為スヘシ
正式裁判ノ申立アリタルトキハ裁判所ハ速ニ其ノ旨ヲ検事ニ通知スヘシ
第十二条 正式裁判ノ申立ハ之ヲ抛棄シ又ハ第一審ノ判決アル迄之ヲ取下クルコトヲ得
第十三条 法律上ノ方式ニ違ヒ又ハ期間ヲ経過シタル正式裁判ノ申立ハ決定ヲ以テ之ヲ却下スヘシ此ノ決定ニ対シテハ抗告ヲ為スコトヲ得
前項ノ抗告ニハ刑事訴訟法ノ規定ヲ準用ス
正式裁判ノ申立ヲ適法ナリトスルトキハ通常ノ規定ニ従ヒ裁判ヲ為スヘシ裁判所ハ此ノ場合ニ於テ略式命令ニ拘束セラルルコトナシ
第十四条 正式裁判ノ申立ヲ為シタル被告人公判ニ出頭セサルトキハ裁判所ハ対席トシテ裁判ヲ為スヘシ
第十五条 正式裁判ノ申立ニ因リ判決アリタルトキハ略式命令ハ其ノ効力ヲ失フ
第十六条 略式命令ハ正式裁判ノ申立期間ノ経過又ハ其ノ申立ノ抛棄若ハ取下ニ因リ確定判決ト同一ノ効力ヲ生ス正式裁判ノ申立ヲ却下スル裁判確定シタルトキ亦同シ
第十七条 刑事訴訟法第二十条及第二十一条ノ規定ハ本法ニ依リ作ルヘキ書類ニ之ヲ準用ス
附 則
本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム