(所得税法中改正法律)
法令番号: 法律第十三號
公布年月日: 大正2年4月8日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル所得稅法中改正法律ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正二年四月七日
內閣總理大臣 伯爵 山本權兵衞
大藏大臣 男爵 高橋是淸
法律第十三號
所得稅法中左ノ通改正ス
第三條 所得稅ハ左ノ稅率ニ依リ之ヲ賦課ス
第一種 法人ノ所得
甲 合名會社、合資會社 所得金額ヲ左ノ各級ニ區分シ遞次ニ各稅率ヲ適用ス
五千圓以下ノ金額 千分ノ四十
五千圓ヲ超ユル金額 千分ノ五十
一萬圓ヲ超ユル金額 千分ノ六十
一萬五千圓ヲ超ユル金額 千分ノ七十
二萬圓ヲ超ユル金額 千分ノ八十
三萬圓ヲ超ユル金額 千分ノ九十
五萬圓ヲ超ユル金額 千分ノ百
七萬圓ヲ超ユル金額 千分ノ百十
十萬圓ヲ超ユル金額 千分ノ百二十
二十萬圓ヲ超ユル金額 千分ノ百三十
乙 株式會社、株式合資會社、其ノ他ノ法人 千分ノ六十二、五
第二種 此ノ法律施行地ニ於テ支拂ヲ爲ス公債社債ノ利子 千分ノ二十
第三種 前二種ニ屬セサル所得 所得金額ヲ左ノ各級ニ區分シ遞次ニ各稅率ヲ適用ス
千圓以下ノ金額 千分ノ二十五
千圓ヲ超ユル金額 千分ノ三十五
二千圓ヲ超ユル金額 千分ノ四十五
三千圓ヲ超ユル金額 千分ノ五十五
五千圓ヲ超ユル金額 千分ノ七十
七千圓ヲ超ユル金額 千分ノ八十五
一萬圓ヲ超ユル金額 千分ノ百
一萬五千圓ヲ超ユル金額 千分ノ百二十
二萬圓ヲ超ユル金額 千分ノ百四十
三萬圓ヲ超ユル金額 千分ノ百六十
五萬圓ヲ超ユル金額 千分ノ百八十
七萬圓ヲ超ユル金額 千分ノ二百
十萬圓ヲ超ユル金額 千分ノ二百二十
株式會社、株式合資會社ニシテ株主又ハ株主及社員ノ數二十人以下ヲ以テ組織シタルモノナルトキハ其ノ所得ニ對シテ第一種甲ノ稅率ヲ適用ス
前項ノ株主又ハ社員ノ數ハ事業年度末日ノ現在ニ依ル
前二項ノ場合ニ於テ會社カ無記名式ノ株券ヲ發行シタルトキハ其ノ無記名式ノ株券ニ對スル株主ノ數ハ其ノ無記名式ト爲スコトヲ請求シタル株主ノ數ニ依ル
第一種甲ノ稅率ヲ適用スヘキ場合ニ於テハ法人ノ事業年度ノ月數ヲ以テ十二月ヲ除シタル數ヲ其ノ事業年度ノ所得金額ニ乘シタルモノニ對シ適用シテ算出シタル金額ヲ十二分シ其ノ事業年度ノ月數ヲ乘シテ其ノ稅額ヲ定ム
第三種ノ稅率ヲ適用スヘキ場合ニ於テ戶主及其ノ同居家族ノ所得ハ之ヲ合算シ其ノ總額ニ對シ適用シテ算出シタル金額ヲ戶主及其ノ同居家族ノ所得ニ案分シテ各其ノ稅額ヲ定ム戶主ト別居スル家族二人以上同居スルトキ亦同シ
第四條 第一種ノ所得ハ保險會社ニ在リテハ各事業年度ノ利益金又ハ剩餘金ニ依リ其ノ他ノ法人ニ在リテハ各事業年度總益金ヨリ同年度總損金ヲ控除シタル金額ニ依ル但シ第二條ニ該當スル法人ノ所得ハ此ノ法律施行地ニ於ケル資產又ハ營業ヨリ生スルモノニ限ル
前項ノ場合ニ於テ總益金中此ノ法律ニ依リ所得稅ヲ課セラレタル法人ヨリ受ケタル配當金又ハ此ノ法律施行地ニ於テ支拂ヲ受ケタル公債社債ノ利子アルトキハ之ヲ控除ス保險會社ノ利益金又ハ剩餘金ノ計算ニ付亦同シ
第四條ノ二 第二種ノ所得ハ其ノ支拂ヲ受クヘキ金額ニ依ル
第四條ノ三 第三種ノ所得ハ左記各號ノ定ムル所ニ依リ之ヲ算出ス
一 俸給、給料、手當、歲費、年金、恩給、退隱料、營業ニ非サル貸金預金ノ利子及第二種所得ニ屬セサル公債社債ノ利子ハ其ノ收入豫算年額
二 田又ハ畑ノ所得ハ前三年間每年ノ總收入金額ヨリ必要ノ經費ヲ控除シタルモノノ平均ニ依リ算出シタル收入豫算年額但シ前三年以來引續キ自作セス、小作セス又ハ小作ニ付セサル田又ハ畑ニ在リテハ近傍類地ノ所得ニ依リ算出シタル收入豫算年額
三 山林伐採ノ所得ハ前年ノ總收入金額ヨリ必要ノ經費ヲ控除シタル金額
四 外國又ハ此ノ法律ヲ施行セサル地ニ於ケル法人ヨリ受クル配當金ハ前年ノ收入金額
五 其ノ他ノ所得ハ總收入金額ヨリ必要ノ經費ヲ控除シタル收入豫算年額
第四條ノ四 第三種ノ所得中俸給、給料、手當、歲費ニ付テハ收入豫算年額ヨリ其ノ十分ノ一ヲ控除シタルモノヲ以テ所得トス
第四條ノ五 第三種ノ所得ニ付前二條ノ規定ニ依リ算出シタル金額五百圓以下ナルトキハ百五十圓ヲ七百圓以下ナルトキハ百圓ヲ千圓以下ナルトキハ五十圓ヲ其ノ所得ヨリ控除ス
第三條第六項ノ場合ニ於テハ其ノ合算額ニ付前項ノ規定ヲ適用ス
第四條ノ六 府縣郡市町村其ノ他ノ公共團體、神社、寺院、祠宇、佛堂及民法第三十四條ノ規定ニ依リ設立シタル法人ニハ所得稅ヲ課セス
第五條 第三種ノ所得ニシテ左ノ各號ニ該當スルモノニハ所得稅ヲ課セス
一 軍人從軍中ノ俸給、手當
二 扶助料及傷痍疾病者ノ恩給、退隱料
三 旅費、學資金及法定扶養料
四 營利ノ事業ニ屬セサル一時ノ所得
五 外國又ハ此ノ法律ヲ施行セサル地ニ於ケル資產、營業又ハ職業ニ依ル所得
六 此ノ法律ニ依リ所得稅ヲ課セラレタル法人ヨリ受クル配當金及割賦賞與金
七 乘馬ヲ有スル義務アル軍人カ政府ヨリ受クル馬糧、繫畜料及馬匹保續料
第五條ノ二 勅令ヲ以テ指定シタル重要物產ノ製造業ヲ營ム者ニハ命令ノ定ムル所ニ依リ開業ノ年及其ノ翌年ヨリ三年間其ノ業務ヨリ生スル所得ニ付所得稅ヲ免除ス
第六條中「三百圓」ヲ「四百圓」ニ、但書ヲ左ノ如ク改ム
但シ第三條第六項ノ合算額四百圓ニ滿ツルトキ又ハ第四條ノ五ノ規定ニ依ル金額ヲ控除シタル爲四百圓ニ滿タサルニ至リタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第七條 第一種ノ所得ニ付納稅義務アル者ハ命令ヲ以テ定ムル期間內ニ各事業年度ニ於ケル財產目錄、貸借對照表、損益計算書及第四條ノ規定ニ依リ計算シタル所得ノ明細書ヲ添附シ政府ニ申吿スヘシ但シ第二條ニ該當スル法人ハ此ノ法律施行地ニ於ケル資產又ハ營業ニ關スル損益ヲ計算シタル所得ノ明細書ヲ添附スヘシ
第九條 第一種ノ所得金額ハ第七條ノ申吿ニ依リ、申吿ナキトキ又ハ申吿ヲ不相當ト認ムルトキハ政府ノ調査ニ依リ政府之ヲ決定シ第三種ノ所得金額ハ所得調査委員會ノ調査ニ依リ政府之ヲ決定ス
調査委員會閉會後第三種ノ所得ヲ有スル者納稅義務アルコトヲ申出テ又ハ納稅義務者所得金額ノ增加アルコトヲ申出テタルトキハ政府其ノ所得金額ヲ決定ス
第十一條及第十三條中「北海道」ヲ「北海道、沖繩縣」ニ改ム
第十四條 選擧區域內ニ住居シ前年第三種ノ所得稅ヲ納メタル者ニシテ第八條ノ申吿ヲ爲シタルモノハ調査委員選擧人ヲ選擧シ又ハ調査委員、補闕員若ハ調査委員選擧人ニ選擧セラルルコトヲ得但シ左ニ記載シタル者ハ此ノ限ニ在ラス
一 無能力者
二 身代限ノ處分ヲ受ケ債務ノ辨濟ヲ了ヘサル者及家資分散又ハ破產ノ宣吿ヲ受ケ其ノ確定シタル時ヨリ復權ノ決定確定スルニ至ルマテノ者
三 國稅滯納處分ヲ受ケタル後一年ヲ經サル者
四 六年以上ノ懲役若ハ禁錮ノ刑ニ處セラレ又ハ舊刑法ノ重罪ノ刑ニ處セラレ復權ヲ得サル者
五 六年未滿ノ懲役又ハ禁錮ノ刑ニ處セラレタル者ニシテ其ノ刑ノ執行ヲ終リ又ハ執行ヲ受クルコトナキニ至ルマテノ者
六 第四十六條ノ規定ニ依リ處罰セラレタル後五年ヲ經サル者
前項ノ場合ニ於テ被相續人ノ爲シタル納稅又ハ申吿ハ其ノ相續人ノ納稅又ハ申吿ト看做ス
第十八條 選擧ハ記名投票ヲ以テ之ヲ行フ
投票ハ一人一票ニ限ル
選擧人ハ自ラ投票所ニ至リ被選擧人一人ノ氏名ヲ記載シテ投票スヘシ
第二十一條第二項ニ左ノ但書ヲ加フ
但シ投票ニ記載スヘキ被選擧人ノ數ハ調査委員又ハ補闕員ノ定數ノ二分ノ一トシ一人未滿ノ端數ヲ生シタルトキハ一人トシテ計算ス
第二十四條 調査委員及補闕員ノ任期ハ選擧ノ日ノ屬スル月ヨリ四年トス但シ其ノ選擧區域ニ變更ヲ生シタル場合ニ於テハ其ノ任期ハ終了スルモノトス
第二十四條ノ二 調査委員及補闕員ノ改選ハ前任者ノ任期終了ノ月ノ翌月ニ於テ之ヲ行フ
第二十四條ノ三 調査委員ニ闕員ヲ生シタルトキハ投票ノ最多數ヲ得タル補闕員ヨリ順次之ヲ補充シ投票ノ數同シキトキハ年長者ヲ取リ同年月ナルトキハ抽籤ヲ以テ之ヲ定ム
第二十四條ノ四 補闕員ヨリ調査委員ト爲リタル者ノ任期ハ前任者ノ殘任期間トス
選擧區域ノ變更ニ依リ新ニ選擧セラレタル調査委員及補闕員ノ任期ハ選擧區域變更前ニ於ケル調査委員及補闕員ノ選擧ノ日ノ屬スル月ヨリ四年ヲ以テ終了ス
第二十四條ノ五 調査委員又ハ補闕員ニ選擧セラレタル者第十四條第一項但書各號ノ一ニ該當スルニ至リタルトキ又ハ第三種ノ所得ニ付納稅義務ヲ有セサルニ至リタルトキハ其ノ職ヲ失フ
第三十三條中「日當」ヲ「手當」ニ改ム
第三十三條ノ二 第三種ノ所得ニ屬スル俸給、給料、手當、歲費、年金、恩給又ハ退隱料ノ支拂ヲ爲ス者ハ其ノ支拂ヲ受クル者ノ氏名、住所及金額ヲ記載シタル調書ヲ政府ニ提出スヘシ
前項ノ規定ニ依リ調書ヲ提出シタル者ニ對シテハ命令ノ定ムル金額ヲ交付スルコトヲ得
第三十四條 稅務署長又ハ其ノ代理官ハ調査上必要アルトキハ納稅義務者、納稅義務アリト認ムル者又ハ前條ノ規定ニ依リ調書ヲ提出スル義務アル者ニ質問スルコトヲ得
第四十條中「山林ノ所得ヲ除クノ外」ヲ削リ「所得金額四分ノ一」ヲ「收入豫算年額四分ノ一」ニ改ム
第四十一條中「決定額」ヲ「收入豫算年額」ニ改ム
第四十二條中「十一月一日ヨリ三十日限」ヲ「十一月一日ヨリ十五日限」ニ、「三十一日限」ヲ「十五日限」ニ改メ左ノ一項ヲ加フ
第二項ノ規定ニ依リ徵收スヘキ所得稅ヲ徵收セサルトキ又ハ其ノ徵收シタル稅金ヲ納付セサルトキハ國稅徵收法ニ依リ之ヲ支拂者ヨリ徵收ス
第四十六條中「罰金」ヲ「罰金又ハ科料」ニ改ム
第四十七條ノ二 此ノ法律ヲ犯シタル者ニハ刑法第三十八條第三項但書、第三十九條第二項、第四十條、第四十一條、第四十八條第二項、第六十三條及第六十六條ノ例ヲ用井ス
第五十條中「沖繩縣」ヲ削リ左ノ一項ヲ加フ
此ノ法律ハ大正七年分所得稅ヨリ之ヲ沖繩縣ニ施行ス
附 則
本法ハ大正二年五月一日ヨリ之ヲ施行ス
第三種ノ所得ニ付テハ大正二年分所得稅ヨリ本法ヲ適用ス但シ大正二年分ニ限リ第八條ノ每年四月中ハ大正二年五月三十一日迄、第三十條ノ八月三十日ハ九月三十日、第四十二條ノ九月一日ヨリ三十日限ハ十月一日ヨリ十五日限トス
本法施行ノ際現ニ所得調査委員及補闕員タル者ノ任期ハ大正二年五月末日ヲ以テ終了ス
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル所得税法中改正法律ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
大正二年四月七日
内閣総理大臣 伯爵 山本権兵衛
大蔵大臣 男爵 高橋是清
法律第十三号
所得税法中左ノ通改正ス
第三条 所得税ハ左ノ税率ニ依リ之ヲ賦課ス
第一種 法人ノ所得
甲 合名会社、合資会社 所得金額ヲ左ノ各級ニ区分シ逓次ニ各税率ヲ適用ス
五千円以下ノ金額 千分ノ四十
五千円ヲ超ユル金額 千分ノ五十
一万円ヲ超ユル金額 千分ノ六十
一万五千円ヲ超ユル金額 千分ノ七十
二万円ヲ超ユル金額 千分ノ八十
三万円ヲ超ユル金額 千分ノ九十
五万円ヲ超ユル金額 千分ノ百
七万円ヲ超ユル金額 千分ノ百十
十万円ヲ超ユル金額 千分ノ百二十
二十万円ヲ超ユル金額 千分ノ百三十
乙 株式会社、株式合資会社、其ノ他ノ法人 千分ノ六十二、五
第二種 此ノ法律施行地ニ於テ支払ヲ為ス公債社債ノ利子 千分ノ二十
第三種 前二種ニ属セサル所得 所得金額ヲ左ノ各級ニ区分シ逓次ニ各税率ヲ適用ス
千円以下ノ金額 千分ノ二十五
千円ヲ超ユル金額 千分ノ三十五
二千円ヲ超ユル金額 千分ノ四十五
三千円ヲ超ユル金額 千分ノ五十五
五千円ヲ超ユル金額 千分ノ七十
七千円ヲ超ユル金額 千分ノ八十五
一万円ヲ超ユル金額 千分ノ百
一万五千円ヲ超ユル金額 千分ノ百二十
二万円ヲ超ユル金額 千分ノ百四十
三万円ヲ超ユル金額 千分ノ百六十
五万円ヲ超ユル金額 千分ノ百八十
七万円ヲ超ユル金額 千分ノ二百
十万円ヲ超ユル金額 千分ノ二百二十
株式会社、株式合資会社ニシテ株主又ハ株主及社員ノ数二十人以下ヲ以テ組織シタルモノナルトキハ其ノ所得ニ対シテ第一種甲ノ税率ヲ適用ス
前項ノ株主又ハ社員ノ数ハ事業年度末日ノ現在ニ依ル
前二項ノ場合ニ於テ会社カ無記名式ノ株券ヲ発行シタルトキハ其ノ無記名式ノ株券ニ対スル株主ノ数ハ其ノ無記名式ト為スコトヲ請求シタル株主ノ数ニ依ル
第一種甲ノ税率ヲ適用スヘキ場合ニ於テハ法人ノ事業年度ノ月数ヲ以テ十二月ヲ除シタル数ヲ其ノ事業年度ノ所得金額ニ乗シタルモノニ対シ適用シテ算出シタル金額ヲ十二分シ其ノ事業年度ノ月数ヲ乗シテ其ノ税額ヲ定ム
第三種ノ税率ヲ適用スヘキ場合ニ於テ戸主及其ノ同居家族ノ所得ハ之ヲ合算シ其ノ総額ニ対シ適用シテ算出シタル金額ヲ戸主及其ノ同居家族ノ所得ニ案分シテ各其ノ税額ヲ定ム戸主ト別居スル家族二人以上同居スルトキ亦同シ
第四条 第一種ノ所得ハ保険会社ニ在リテハ各事業年度ノ利益金又ハ剰余金ニ依リ其ノ他ノ法人ニ在リテハ各事業年度総益金ヨリ同年度総損金ヲ控除シタル金額ニ依ル但シ第二条ニ該当スル法人ノ所得ハ此ノ法律施行地ニ於ケル資産又ハ営業ヨリ生スルモノニ限ル
前項ノ場合ニ於テ総益金中此ノ法律ニ依リ所得税ヲ課セラレタル法人ヨリ受ケタル配当金又ハ此ノ法律施行地ニ於テ支払ヲ受ケタル公債社債ノ利子アルトキハ之ヲ控除ス保険会社ノ利益金又ハ剰余金ノ計算ニ付亦同シ
第四条ノ二 第二種ノ所得ハ其ノ支払ヲ受クヘキ金額ニ依ル
第四条ノ三 第三種ノ所得ハ左記各号ノ定ムル所ニ依リ之ヲ算出ス
一 俸給、給料、手当、歳費、年金、恩給、退隠料、営業ニ非サル貸金預金ノ利子及第二種所得ニ属セサル公債社債ノ利子ハ其ノ収入予算年額
二 田又ハ畑ノ所得ハ前三年間毎年ノ総収入金額ヨリ必要ノ経費ヲ控除シタルモノノ平均ニ依リ算出シタル収入予算年額但シ前三年以来引続キ自作セス、小作セス又ハ小作ニ付セサル田又ハ畑ニ在リテハ近傍類地ノ所得ニ依リ算出シタル収入予算年額
三 山林伐採ノ所得ハ前年ノ総収入金額ヨリ必要ノ経費ヲ控除シタル金額
四 外国又ハ此ノ法律ヲ施行セサル地ニ於ケル法人ヨリ受クル配当金ハ前年ノ収入金額
五 其ノ他ノ所得ハ総収入金額ヨリ必要ノ経費ヲ控除シタル収入予算年額
第四条ノ四 第三種ノ所得中俸給、給料、手当、歳費ニ付テハ収入予算年額ヨリ其ノ十分ノ一ヲ控除シタルモノヲ以テ所得トス
第四条ノ五 第三種ノ所得ニ付前二条ノ規定ニ依リ算出シタル金額五百円以下ナルトキハ百五十円ヲ七百円以下ナルトキハ百円ヲ千円以下ナルトキハ五十円ヲ其ノ所得ヨリ控除ス
第三条第六項ノ場合ニ於テハ其ノ合算額ニ付前項ノ規定ヲ適用ス
第四条ノ六 府県郡市町村其ノ他ノ公共団体、神社、寺院、祠宇、仏堂及民法第三十四条ノ規定ニ依リ設立シタル法人ニハ所得税ヲ課セス
第五条 第三種ノ所得ニシテ左ノ各号ニ該当スルモノニハ所得税ヲ課セス
一 軍人従軍中ノ俸給、手当
二 扶助料及傷痍疾病者ノ恩給、退隠料
三 旅費、学資金及法定扶養料
四 営利ノ事業ニ属セサル一時ノ所得
五 外国又ハ此ノ法律ヲ施行セサル地ニ於ケル資産、営業又ハ職業ニ依ル所得
六 此ノ法律ニ依リ所得税ヲ課セラレタル法人ヨリ受クル配当金及割賦賞与金
七 乗馬ヲ有スル義務アル軍人カ政府ヨリ受クル馬糧、繋畜料及馬匹保続料
第五条ノ二 勅令ヲ以テ指定シタル重要物産ノ製造業ヲ営ム者ニハ命令ノ定ムル所ニ依リ開業ノ年及其ノ翌年ヨリ三年間其ノ業務ヨリ生スル所得ニ付所得税ヲ免除ス
第六条中「三百円」ヲ「四百円」ニ、但書ヲ左ノ如ク改ム
但シ第三条第六項ノ合算額四百円ニ満ツルトキ又ハ第四条ノ五ノ規定ニ依ル金額ヲ控除シタル為四百円ニ満タサルニ至リタルトキハ此ノ限ニ在ラス
第七条 第一種ノ所得ニ付納税義務アル者ハ命令ヲ以テ定ムル期間内ニ各事業年度ニ於ケル財産目録、貸借対照表、損益計算書及第四条ノ規定ニ依リ計算シタル所得ノ明細書ヲ添附シ政府ニ申告スヘシ但シ第二条ニ該当スル法人ハ此ノ法律施行地ニ於ケル資産又ハ営業ニ関スル損益ヲ計算シタル所得ノ明細書ヲ添附スヘシ
第九条 第一種ノ所得金額ハ第七条ノ申告ニ依リ、申告ナキトキ又ハ申告ヲ不相当ト認ムルトキハ政府ノ調査ニ依リ政府之ヲ決定シ第三種ノ所得金額ハ所得調査委員会ノ調査ニ依リ政府之ヲ決定ス
調査委員会閉会後第三種ノ所得ヲ有スル者納税義務アルコトヲ申出テ又ハ納税義務者所得金額ノ増加アルコトヲ申出テタルトキハ政府其ノ所得金額ヲ決定ス
第十一条及第十三条中「北海道」ヲ「北海道、沖縄県」ニ改ム
第十四条 選挙区域内ニ住居シ前年第三種ノ所得税ヲ納メタル者ニシテ第八条ノ申告ヲ為シタルモノハ調査委員選挙人ヲ選挙シ又ハ調査委員、補闕員若ハ調査委員選挙人ニ選挙セラルルコトヲ得但シ左ニ記載シタル者ハ此ノ限ニ在ラス
一 無能力者
二 身代限ノ処分ヲ受ケ債務ノ弁済ヲ了ヘサル者及家資分散又ハ破産ノ宣告ヲ受ケ其ノ確定シタル時ヨリ復権ノ決定確定スルニ至ルマテノ者
三 国税滞納処分ヲ受ケタル後一年ヲ経サル者
四 六年以上ノ懲役若ハ禁錮ノ刑ニ処セラレ又ハ旧刑法ノ重罪ノ刑ニ処セラレ復権ヲ得サル者
五 六年未満ノ懲役又ハ禁錮ノ刑ニ処セラレタル者ニシテ其ノ刑ノ執行ヲ終リ又ハ執行ヲ受クルコトナキニ至ルマテノ者
六 第四十六条ノ規定ニ依リ処罰セラレタル後五年ヲ経サル者
前項ノ場合ニ於テ被相続人ノ為シタル納税又ハ申告ハ其ノ相続人ノ納税又ハ申告ト看做ス
第十八条 選挙ハ記名投票ヲ以テ之ヲ行フ
投票ハ一人一票ニ限ル
選挙人ハ自ラ投票所ニ至リ被選挙人一人ノ氏名ヲ記載シテ投票スヘシ
第二十一条第二項ニ左ノ但書ヲ加フ
但シ投票ニ記載スヘキ被選挙人ノ数ハ調査委員又ハ補闕員ノ定数ノ二分ノ一トシ一人未満ノ端数ヲ生シタルトキハ一人トシテ計算ス
第二十四条 調査委員及補闕員ノ任期ハ選挙ノ日ノ属スル月ヨリ四年トス但シ其ノ選挙区域ニ変更ヲ生シタル場合ニ於テハ其ノ任期ハ終了スルモノトス
第二十四条ノ二 調査委員及補闕員ノ改選ハ前任者ノ任期終了ノ月ノ翌月ニ於テ之ヲ行フ
第二十四条ノ三 調査委員ニ闕員ヲ生シタルトキハ投票ノ最多数ヲ得タル補闕員ヨリ順次之ヲ補充シ投票ノ数同シキトキハ年長者ヲ取リ同年月ナルトキハ抽籤ヲ以テ之ヲ定ム
第二十四条ノ四 補闕員ヨリ調査委員ト為リタル者ノ任期ハ前任者ノ残任期間トス
選挙区域ノ変更ニ依リ新ニ選挙セラレタル調査委員及補闕員ノ任期ハ選挙区域変更前ニ於ケル調査委員及補闕員ノ選挙ノ日ノ属スル月ヨリ四年ヲ以テ終了ス
第二十四条ノ五 調査委員又ハ補闕員ニ選挙セラレタル者第十四条第一項但書各号ノ一ニ該当スルニ至リタルトキ又ハ第三種ノ所得ニ付納税義務ヲ有セサルニ至リタルトキハ其ノ職ヲ失フ
第三十三条中「日当」ヲ「手当」ニ改ム
第三十三条ノ二 第三種ノ所得ニ属スル俸給、給料、手当、歳費、年金、恩給又ハ退隠料ノ支払ヲ為ス者ハ其ノ支払ヲ受クル者ノ氏名、住所及金額ヲ記載シタル調書ヲ政府ニ提出スヘシ
前項ノ規定ニ依リ調書ヲ提出シタル者ニ対シテハ命令ノ定ムル金額ヲ交付スルコトヲ得
第三十四条 税務署長又ハ其ノ代理官ハ調査上必要アルトキハ納税義務者、納税義務アリト認ムル者又ハ前条ノ規定ニ依リ調書ヲ提出スル義務アル者ニ質問スルコトヲ得
第四十条中「山林ノ所得ヲ除クノ外」ヲ削リ「所得金額四分ノ一」ヲ「収入予算年額四分ノ一」ニ改ム
第四十一条中「決定額」ヲ「収入予算年額」ニ改ム
第四十二条中「十一月一日ヨリ三十日限」ヲ「十一月一日ヨリ十五日限」ニ、「三十一日限」ヲ「十五日限」ニ改メ左ノ一項ヲ加フ
第二項ノ規定ニ依リ徴収スヘキ所得税ヲ徴収セサルトキ又ハ其ノ徴収シタル税金ヲ納付セサルトキハ国税徴収法ニ依リ之ヲ支払者ヨリ徴収ス
第四十六条中「罰金」ヲ「罰金又ハ科料」ニ改ム
第四十七条ノ二 此ノ法律ヲ犯シタル者ニハ刑法第三十八条第三項但書、第三十九条第二項、第四十条、第四十一条、第四十八条第二項、第六十三条及第六十六条ノ例ヲ用井ス
第五十条中「沖縄県」ヲ削リ左ノ一項ヲ加フ
此ノ法律ハ大正七年分所得税ヨリ之ヲ沖縄県ニ施行ス
附 則
本法ハ大正二年五月一日ヨリ之ヲ施行ス
第三種ノ所得ニ付テハ大正二年分所得税ヨリ本法ヲ適用ス但シ大正二年分ニ限リ第八条ノ毎年四月中ハ大正二年五月三十一日迄、第三十条ノ八月三十日ハ九月三十日、第四十二条ノ九月一日ヨリ三十日限ハ十月一日ヨリ十五日限トス
本法施行ノ際現ニ所得調査委員及補闕員タル者ノ任期ハ大正二年五月末日ヲ以テ終了ス