沖縄県及島嶼町村制
法令番号: 勅令第四十六號
公布年月日: 明治40年3月16日
法令の形式: 勅令
朕沖繩縣及島嶼町村制ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治四十年三月十五日
內閣總理大臣 侯爵 西園寺公望
內務大臣 原敬
勅令第四十六號
沖繩縣及島嶼町村制
第一章
總則
第二章
町村吏員
第一款
組織及任免
第二款
職務權限及處務規程
第三款
給料及給與
第三章
町村會
第一款
組織及選擧
第二款
職務權限及處務規程
第四章
町村ノ財務
第一款
財產營造物及收入支出
第二款
歲入出豫算及決算
第五章
町村內一部ノ行政及町村組合
第六章
町村行政ノ監督
第七章
雜則
沖繩縣及島嶼町村制
第一章 總則
第一條 本令ハ町村制ノ規定ニ依リ沖繩縣及町村制ヲ施行セサル島嶼ノ町村ニ之ヲ施行ス但シ勅令ヲ以テ別ニ其ノ制ヲ定メタルモノハ此ノ限ニ在ラス
第二條 町村ハ法人トシ官ノ監督ヲ承ケ法令ノ範圍內ニ於テ其ノ公共事務及法令又ハ慣例ニ依リ町村ニ屬スル事務ヲ處理ス
第三條 町村ノ廢置分合又ハ境界變更ヲ要スルトキハ府縣知事內務大臣ノ許可ヲ得テ之ヲ定ム所屬未定地ヲ町村ノ區域ニ編入スルトキ亦同シ
本條ノ處分ニシテ郡ノ境界ニ涉ルモノアルトキハ郡ノ境界モ亦自ラ變更スルモノトス
本條ノ處分ニ付財產處分ヲ要スルトキハ關係アル町村會ノ意見ヲ徵シ府縣知事之ヲ定ム
町村ノ境界判明ナラサル場合ニ於テハ島司郡長之ヲ定ム其ノ數郡ニ涉ル場合ニ於テハ府縣知事之ヲ定ム
第四條 町村ノ名稱ヲ變更シ又ハ村ヲ町ト爲シ若ハ町ヲ村ト爲スコトヲ要スルトキハ町村ノ申請ニ依リ內務大臣ノ許可ヲ得テ府縣知事之ヲ定ム
町村役場ノ位置ヲ定メ又ハ變更スルコトヲ要スルトキハ町村ハ府縣知事ノ許可ヲ受クヘシ
第五條 町村內ニ住所ヲ有スル者ハ其ノ町村住民トス
町村住民ハ本令ニ從ヒ財產及營造物ヲ共用スル權利ヲ有シ町村ノ負擔ヲ分任スル義務ヲ負フ
第六條 町村住民ニシテ町村名譽職ノ當選任命ヲ辭シ又ハ其ノ職ヲ退キ若ハ其ノ職務ヲ實際ニ執行セサル者ニ對スル制裁ニ付府縣知事ハ內務大臣ノ許可ヲ得テ必要ノ規程ヲ設クルコトヲ得
第七條 町村ハ町村住民ノ權利義務町村ノ事務又ハ町村ノ營造物ニ關シ町村規則ヲ設クルコトヲ得
町村規則ハ一定ノ公吿式ニ依リ之ヲ吿示スヘシ
第二章 町村吏員
第一款 組織及任免
第八條 町村ニ町村長收入役及書記ヲ置キ有給吏員トス
町村長收入役ハ町村ニ各一名トシ書記ノ定員ハ府縣知事之ヲ定ム
町村長收入役ハ島司郡長ノ具申ニ依リ府縣知事之ヲ任免ス
書記ハ島司郡長之ヲ任免ス
特別ノ事情アル町村ニ於テハ府縣知事ハ町村長又ハ書記ヲシテ收入役ノ事務ヲ兼掌セシムルコトヲ得
第九條 島司郡長ハ府縣知事ノ許可ヲ得テ町村ノ處務便宜ノ爲區ヲ劃シ區長一名ヲ置クコトヲ得
島司郡長ハ府縣知事ノ許可ヲ得テ町村ニ臨時又ハ常設ノ委員ヲ置クコトヲ得
區長及委員ハ名譽職トシ其ノ町村ニ於テ被選擧權ヲ有スル者ノ中ニ就キ島司郡長之ヲ任免ス
第二款 職務權限及處務規程
第十條 町村長ハ町村ヲ統轄シ町村ヲ代表シ其ノ行政事務ヲ擔任ス
町村長ノ擔任スル事務ノ槪目左ノ如シ
一 町村會ノ議決ヲ經ヘキ事件ニ付其ノ議案ヲ發シ及其ノ議決ヲ執行スル事
二 財產及營造物ヲ管理スル事但シ特ニ之カ管理者アルトキハ其ノ事務ヲ監督スル事
三 收入支出ヲ命令シ及會計ヲ監督スル事
四 證書及公文書類ヲ保管スル事
五 法令又ハ町村會ノ議決ニ依リ使用料手數料加入金町村稅及夫役現品ヲ賦課徵收スル事
六 其ノ他法令ニ依リ町村長ノ職權ニ屬スル事項
第十一條 町村長ハ町村吏員ヲ指揮監督ス
第十二條 町村會ノ議決其ノ權限ヲ越エ又ハ法令若ハ會議規則ニ背クト認ムルトキハ町村長ハ其ノ意見ニ依リ又ハ監督官廳ノ指揮ニ依リ理由ヲ示シ其ノ執行ヲ要スルモノニ在リテハ其ノ執行ヲ停止シ之ヲ再議ニ付シ仍其ノ議決ヲ改メサルトキハ之ヲ取消スヘシ但シ場合ニ依リ再議ニ付セスシテ直ニ其ノ議決ヲ取消スコトヲ得
前項取消處分ニ不服アル町村會ハ島司郡長ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アルトキハ府縣知事ニ訴願スルコトヲ得
町村會ノ議決公益ヲ害シ又ハ其ノ議決町村ノ收支ニ關シ不適當ナリト認ムルトキハ町村長ハ其ノ意見ニ依リ又ハ監督官廳ノ指揮ニ依リ理由ヲ示シ其ノ執行ヲ要スルモノニ在リテハ其ノ執行ヲ停止シ之ヲ再議ニ付シ仍其ノ議決ヲ改メサルトキハ島司郡長ノ指揮ヲ請フヘシ
前項島司郡長ノ處分ニ不服アル町村會ハ府縣知事ニ訴願スルコトヲ得
第十三條 町村會成立セス又ハ第四十六條但書ノ場合ニ於テ仍會議ヲ開クコト能ハサルトキハ町村長ハ島司郡長ニ具狀シテ指揮ヲ請ヒ其ノ議決スヘキ事件ヲ處分スルコトヲ得第四十八條ノ規定ニ依リ出席議員ノ數減少シテ會議ヲ開クコト能ハサルトキ亦同シ
町村會ニ於テ其ノ議決スヘキ事件ヲ議決セサルトキハ前項ノ例ニ依ル
町村會ノ權限ニ屬スル事件ニ關シ臨時急施ヲ要スル場合ニ於テ町村會成立セス又ハ町村長ニ於テ之ヲ招集スルノ暇ナシト認ムルトキ又ハ第四十八條ノ規定ニ依リ出席議員ノ數減少シテ會議ヲ開クコト能ハサルトキハ町村長ハ專決處分スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ直ニ島司郡長ニ報吿スヘシ
本條ノ處分ハ次囘ノ會議ニ於テ之ヲ町村會ニ報吿スヘシ
第十四條 町村會ノ權限ニ屬スル事件ノ一部ハ其ノ議決ニ依リ町村長ヲシテ專決處分セシムルコトヲ得
第十五條 町村長其ノ他町村吏員ハ法令ノ定ムル所ニ依リ國及府縣其ノ他公共團體ノ行政事務ヲ掌ル
本條ノ事務ヲ執行スル爲要スル費用ハ町村ノ負擔トス但シ法令中別段ノ規定アルモノハ此ノ限ニ在ラス
第十六條 特別ノ事情アル町村ニ於テハ町村長ハ島司郡長ノ許可ヲ得テ其ノ事務ノ一部ヲ町村吏員ニ委任スルコトヲ得
第十七條 町村長ハ町村吏員ヲシテ其ノ事務ノ一部ヲ臨時代理セシムルコトヲ得
第十八條 書記ハ町村長ノ命ヲ承ケ事務ニ從事ス
町村長故障アルトキハ上席書記其ノ職務ヲ代理ス
第十九條 收入役ハ町村ノ出納其ノ他會計事務及第十五條ニ關スル國府縣其ノ他公共團體ノ出納其ノ他會計事務ヲ掌ル但シ法令中別段ノ規定アルモノハ此ノ限ニ在ラス
第十六條ノ規定ハ收入役ニ之ヲ準用ス
收入役故障アルトキハ町村長ハ書記ヲシテ其ノ事務ヲ代理セシムルコトヲ得
第二十條 區長ハ町村長ノ命ヲ承ケ町村長ノ事務ニシテ區內ニ關スルモノヲ補助執行ス
委員ハ町村長ノ指揮監督ヲ承ケ財產又ハ營造物ヲ管理シ其ノ他町村行政事務ノ一部ヲ調査シ又ハ一時ノ委託ニ依リ事務ヲ處辨ス
第五十三條ノ規定ハ區長及委員ニ之ヲ準用ス
第三款 給料及給與
第二十一條 町村吏員ノ給料額旅費額及其ノ支給方法ハ府縣知事之ヲ定ム
第二十二條 有給吏員ノ退隱料退職給與金死亡給與金遺族扶助料及其ノ支給方法ハ町村規則ヲ以テ之ヲ定ム
第二十三條 前二條ニ定ムルモノノ外町村ニ於テ吏員又ハ其ノ退職者ニ對シ賞與慰勞其ノ他特別ノ給與ヲ爲サムトスルトキハ島司郡長ノ許可ヲ受クルコトヲ要ス
第二十四條 町村吏員ノ給料旅費退隱料退職給與金死亡給與金遺族扶助料其ノ他諸給與ハ町村ノ負擔トス
第二十五條 本章ニ規定スルモノノ外町村吏員ノ組織及職務權限等ニ關シ別段ノ規定ヲ要スルトキハ府縣知事之ヲ定ム
第三章 町村會
第一款 組織及選擧
第二十六條 町村會議員ハ其ノ被選擧權アル者ニ就キ選擧人之ヲ選擧ス
町村會議員ノ定數ハ沖繩縣ニ於テハ一町村八名以上二十名以下トシ、其ノ他ニ於テハ一町村四名以上十二名以下トシ府縣知事之ヲ定ム
第二十七條 帝國臣民ニシテ公權ヲ有シ一戶ヲ構フル滿二十五年以上ノ男子二箇年以來町村ノ住民ト爲リ其ノ町村ノ負擔ヲ分任シ及其ノ町村內ニ於テ直接國稅ヲ納ムル者ハ町村會議員ノ選擧權ヲ有ス但シ公費ヲ以テ貧民救助ヲ受ケタル後二箇年ヲ經サル者及禁治產者準禁治產者ハ此ノ限ニ在ラス
町村ハ島司郡長ノ許可ヲ得テ前項二箇年ノ制限ヲ特免スルコトヲ得
家督相續ニ依リ財產ヲ取得シタル者ハ其ノ財產ニ付被相續人ノ爲シタル納稅ヲ以テ其ノ者ノ納稅シタルモノト看做ス
第一項ニ定ムル要件中其ノ年限ニ關スルモノハ區町村ノ廢置分合又ハ境界變更ノ爲中斷セラルルコトナシ
町村稅ヲ賦課セサル町村ニ在リテハ第一項ニ定ムル要件中町村ノ負擔分任ニ關スル規定ヲ適用セス
第二十八條 選擧權ヲ有スル者公權停止中又ハ租稅滯納處分中ハ選擧權ヲ停止ス家資分散又ハ破產ノ宣吿ヲ受ケ其ノ確定シタルトキヨリ復權ノ決定確定スル迄又禁錮以上ノ刑ノ宣吿ヲ受ケタルトキヨリ其ノ裁判確定ニ至ル迄亦同シ
陸海軍ノ現役ニ服スル者ハ選擧ニ參與スルコトヲ得ス現役以外ノ兵役ニ在ル者ニシテ戰時又ハ事變ニ際シ召集セラレタルトキ亦同シ
第二十九條 選擧權ヲ有スル者ハ被選擧權ヲ有ス
左ニ揭クル者ハ被選擧權ヲ有セス第一號乃至第五號ニ該當スル者ニシテ之ヲ罷メタル後一箇月ヲ經過セサルトキ亦同シ
一 所屬府縣郡島ノ官吏及有給吏員
二 其ノ町村ノ有給吏員
三 檢事警察官吏及收稅官吏
四 神官神職僧侶其ノ他諸宗敎師
五 小學校敎員
六 前條ニ依リ選擧權停止中ノ者及選擧ニ參與スルコトヲ得サル者
前項ニ揭ケサル官吏ニシテ當選シ之ニ應セムトスルトキハ所屬長官ノ許可ヲ受クヘシ
第三十條 町村會議員ハ名譽職トシ其ノ任期ハ四箇年トス
町村會議員中闕員ヲ生シ其ノ闕員議員定數ノ三分ノ一以上ニ至リタルトキ又ハ島司郡長若ハ町村長町村會ニ於テ必要ト認ムルトキハ補闕選擧ヲ行フヘシ
補闕議員ハ其ノ前任者ノ殘任期間在任ス
第三十一條 選擧ニ關シ必要ナル規程ハ內務大臣ノ許可ヲ得テ府縣知事之ヲ定ム
第三十二條 選擧ヲ終リタルトキハ町村長ハ直ニ選擧錄ノ謄本ヲ添ヘ之ヲ島司郡長ニ報吿スヘシ
當選者其ノ當選ヲ辭セサルトキハ町村長ハ直ニ其ノ住所氏名ヲ吿示シ併セテ之ヲ島司郡長ニ報吿スヘシ
第三十三條 選擧人選擧又ハ當選ノ效力ニ關シ異議アルトキハ選擧ニ關シテハ選擧ノ日ヨリ當選ニ關シテハ前條吿示ノ日ヨリ之ヲ町村長ニ申立ツルコトヲ得其ノ申立ノ期間ハ島司郡長ノ定ムル所ニ依ル
前項ノ異議ハ町村長之ヲ決定ス其ノ決定ニ不服アル者ハ島司郡長ニ訴願スルコトヲ得
島司郡長ニ於テ選擧又ハ當選ノ效力ニ關シ異議アルトキハ選擧ニ關シテハ前條第一項ノ報吿ヲ受ケタル日ヨリ當選ニ關シテハ前條第二項ノ報吿ヲ受ケタル日ヨリ二十日以內ニ之ヲ處分スルコトヲ得
前項島司郡長ノ處分アリタルトキハ其ノ前後ニ爲シタル異議ノ申立及町村長ノ決定ハ無效トス
本條島司郡長ノ處分又ハ裁決ニ不服アル者ハ府縣知事ニ訴願スルコトヲ得
第三十四條 選擧ノ規定ニ違反スルコトアルトキハ選擧ノ結果ニ異動ヲ生スルノ虞アル場合ニ限リ其ノ選擧ノ全部又ハ一部ヲ無效トス
當選者ニシテ被選擧權ヲ有セサルトキハ其ノ當選ヲ無效トス
第三十五條 町村會議員ニシテ被選擧權ヲ有セサル者ハ其ノ職ヲ失フ其ノ被選擧權ニ關スル異議ハ町村長之ヲ決定ス
前項町村長ノ決定ニ不服アル者ハ島司郡長ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アル者ハ府縣知事ニ訴願スルコトヲ得
町村會議員ハ其ノ被選擧權ヲ有セストスル決定又ハ裁決確定スル迄ハ會議ニ列席シ議事ニ參與スルノ權ヲ失ハス
第三十六條 第三十三條及前條ニ規定スル決定及裁決ハ直ニ之ヲ吿示スヘシ
第三十七條 特別ノ事情アル町村ニ於テハ島司郡長ハ府縣知事ノ許可ヲ得テ町村會ヲ設ケス選擧權ヲ有スル者ノ總會ヲ以テ之ニ充ツルコトヲ得
町村總會ニ關シテハ町村會ニ關スル規定ヲ準用ス
第二款 職務權限及處務規程
第三十八條 町村會ハ町村ニ關スル事件及法令ニ依リ町村會ノ權限ニ屬スル事件ヲ議決ス
第三十九條 町村會ノ議決スヘキ事件ノ槪目左ノ如シ
一 町村規則ヲ設ケ及改廢スル事
二 町村費ヲ以テ支辨スヘキ事業但シ第十五條ノ事務其ノ他法令中別段ノ規定アルモノハ此ノ限ニ在ラス
三 歲入出豫算ヲ定ムル事
四 決算報吿ヲ認定スル事
五 法令ニ定ムルモノヲ除クノ外使用料手數料加入金町村稅及夫役現品ノ賦課徵收ニ關スル事
六 不動產ノ管理處分及取得ニ關スル事
七 基本財產及積立金穀等ノ設置管理及處分ニ關スル事
八 歲入出豫算ヲ以テ定ムルモノヲ除クノ外新ニ義務ノ負擔ヲ爲シ及權利ノ抛棄ヲ爲ス事
九 財產及營造物ノ管理方法ヲ定ムル事但シ法令中ニ規定アルモノハ此ノ限ニ在ラス
十 町村ニ係ル訴願訴訟及和解ニ關スル事
第四十條 町村會ハ町村ノ事務ニ關スル書類及計算書ヲ檢閱シ町村長ノ報吿ヲ請求シテ事務ノ管理議決ノ執行及出納ヲ檢査スルコトヲ得
町村會ハ議員中ヨリ委員ヲ選擧シ町村長又ハ其ノ指名シタル吏員立會ノ上實地ニ就キ前項町村會ノ權限ニ屬スル事件ヲ行ハシムルコトヲ得
第四十一條 町村會ハ町村ノ公益ニ關スル事件ニ付意見書ヲ監督官廳ニ呈出スルコトヲ得
第四十二條 町村會ハ行政廳ノ諮問アルトキハ意見ヲ答申スヘシ
町村會ノ意見ヲ徵シテ處分ヲ爲スヘキ場合ニ於テ町村會招集ニ應セス若ハ成立セス又ハ意見ヲ呈出セス又ハ町村會ヲ招集スルコト能ハサルトキハ當該行政廳ハ其ノ意見ヲ俟タスシテ直ニ處分ヲ爲スコトヲ得
第四十三條 町村會ハ町村長ヲ以テ議長トス町村長故障アルトキハ其ノ代理者議長ノ職務ヲ代理ス
第四十四條 町村長及其ノ委任又ハ囑託ヲ受ケタル者ハ會議ニ出席シ及發言スルコトヲ得
第四十五條 町村會ハ町村長之ヲ招集ス但シ輕易ノ事件ニ付テハ會議ヲ開カス書面ヲ以テ議員ノ意見ヲ聞キ其ノ三分ノ二以上ノ同意アルトキハ之ヲ議決ト看做スコトヲ得
町村長ハ必要アル場合ニ於テハ會期ヲ定メテ町村會ヲ招集スルコトヲ得
町村會ハ町村長之ヲ開閉ス
第四十六條 町村會ハ議員定數ノ半數以上出席スルニ非サレハ會議ヲ開クコトヲ得ス但シ同一ノ事件ニ付招集再囘ニ至ルモ仍半數ニ滿タサルトキ又ハ招集ニ應スルモ出席議員定數ヲ闕キ議長ニ於テ更ニ出席ヲ催吿シ仍半數ニ滿タサルトキハ此ノ限ニ在ラス
第四十七條 町村會ノ議事ハ過半數ヲ以テ決ス可否同數ナルトキハ議長ノ決スル所ニ依ル
第四十八條 議長及議員ハ自己又ハ父母祖父母妻子孫兄弟姊妹ノ一身上ニ關スル事件ニ付テハ其ノ議事ニ參與スルコトヲ得ス但シ町村會ノ同意ヲ得タルトキハ會議ニ出席シ發言スルコトヲ得
第四十九條 議長ハ會議ノ事ヲ總理シ會議ノ順序ヲ定メ其ノ日ノ會議ヲ開閉シ議場ノ秩序ヲ保持ス
第五十條 町村會ハ會議規則及傍聽人取締規則ヲ設ケ島司郡長ノ許可ヲ受クヘシ
會議規則ニハ之ニ違反シタル議員ニ對シ町村會ノ議決ニ依リ五日以內出席ヲ停止シ又ハ二圓以下ノ過怠金ヲ科スルノ規定ヲ設クルコトヲ得
第五十一條 町村會ニ書記ヲ置キ議長ニ隸屬シテ庶務ヲ處理セシム
書記ハ町村吏員中ニ就キ町村長之ヲ任免ス
第五十二條 議長ハ書記ヲシテ會議錄ヲ製シ會議ノ顚末及出席議員ノ氏名ヲ記載セシムヘシ會議錄ニハ議長及議員一名以上之ニ署名スルコトヲ要ス
第五十三條 町村會議員ハ職務ノ爲要スル費用ノ辨償ヲ受クルコトヲ得
費用辨償額及其ノ支給方法ハ町村會ノ議決ヲ經島司郡長ノ許可ヲ得テ之ヲ定ム
費用ノ辨償ハ町村ノ負擔トス
第四章 町村ノ財務
第一款 財產營造物及收入支出
第五十四條 町村ハ不動產積立金穀等ヲ以テ基本財產ト爲シ之ヲ維持スル義務アリ
臨時ニ取得シタル財產ハ基本財產ニ加入スヘシ但シ寄附ニ係ル物件ニシテ寄附者其ノ使用ノ目的ヲ定メタルモノハ此ノ限ニ在ラス
町村ハ特定ノ目的ノ爲特別ノ基本財產ヲ設ケ又ハ金穀等ヲ積立ツルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ基本財產ニ加入スヘキモノノ全部又ハ一部ヲ特別ノ基本財產又ハ積立金穀等ニ加入スルコトヲ得
府縣知事ハ必要ト認ムルトキハ基本財產又ハ積立金穀等ノ蓄積ヲ命スルコトヲ得
第五十五條 舊來ノ慣行ニ依リ數個人又ハ町村內ノ一部ニ於テ特ニ營造物又ハ財產ヲ使用スル權利ヲ有スルトキハ其ノ舊慣ニ依リ町村會ノ議決ヲ經ルニ非サレハ其ノ舊慣ヲ變更又ハ廢止スルコトヲ得ス
前項ノ營造物又ハ財產ヲ新ニ使用セムトスル者アルトキハ町村會ノ議決ヲ經テ之ヲ許可スルコトヲ得
第五十六條 町村ハ前條第一項ノ使用者ヨリ使用料ヲ徵收シ同條第二項ノ使用ニ關シテハ使用料若ハ一時ノ加入金ヲ徵收シ又ハ使用料加入金ヲ共ニ徵收スルコトヲ得
第五十七條 町村ハ營造物又ハ公共ノ使用ニ供スル財產ノ使用ニ付使用料ヲ徵收スルコトヲ得
數個人又ハ町村內ノ一部ヲ利スル營造物又ハ財產ノ使用ニ關シテハ使用料若ハ一時ノ加入金ヲ徵收シ又ハ使用料加入金ヲ共ニ徵收スルコトヲ得
町村ハ特ニ一個人ノ爲ニスル事務ニ付手數料ヲ徵收スルコトヲ得
第五十八條 町村ハ第五十五條及前條ニ規定スル財產ノ使用ニ關シ町村規則ヲ設クルコトヲ得
第五十九條 町村ハ其ノ公益上必要アル場合ニ於テハ寄附又ハ補助ヲ爲スコトヲ得
第六十條 町村ハ其ノ必要ナル費用及法令又ハ慣例ニ依リ町村ノ負擔ニ屬スル費用ヲ支辨スル義務ヲ負フ
町村ハ其ノ財產ヨリ生スル收入使用料手數料過料過怠金其ノ他法令ニ依リ町村ニ屬スル收入ヲ以テ前項ノ支出ニ充テ仍不足アルトキハ町村稅及夫役現品ヲ賦課徵收スルコトヲ得
第六十一條 町村稅トシテ賦課スルコトヲ得ヘキ稅目及稅率ハ內務大臣及大藏大臣ノ許可ヲ得テ府縣知事之ヲ定ム
第六十二條 三箇月以上町村內ニ滯在スル者ハ其ノ滯在ノ初ニ遡リ町村稅ヲ納ムル義務ヲ負フ
第六十三條 町村內ニ住所ヲ有セス又ハ三箇月以上滯在スルコトナシト雖町村內ニ於テ土地家屋物件ヲ所有シ使用シ若ハ占有シ又ハ營業所ヲ定メテ營業ヲ爲シ又ハ町村內ニ於テ特定ノ行爲ヲ爲ス者ハ其ノ土地家屋物件營業若ハ其ノ收入ニ對シ又ハ行爲ニ對シテ賦課スル町村稅ヲ納ムル義務ヲ負フ其ノ法人タルトキ亦同シ但シ國ノ事業又ハ行爲ニ對シテハ此ノ限ニ在ラス
第六十四條 納稅者ノ町村外ニ於テ所有シ使用シ若ハ占有スル土地家屋物件若ハ其ノ收入又ハ町村外ニ於テ營業所ヲ定メタル營業若ハ其ノ收入ニ對シテハ町村稅ヲ賦課スルコトヲ得ス但シ數市區町村ニ涉リ營業所ヲ定メテ營業ヲ爲シ且其ノ營業又ハ其ノ收入ニ對スル本稅ヲ分別シテ納メサル者ニ對シ關係市區町村ニ於テ附加稅ヲ賦課スルトキハ內務大臣ノ定ムル所ニ依ル
住所滯在數市區町村ニ涉ル者ノ收入ニ對シ町村稅ヲ賦課スルトキハ其ノ收入ヲ關係市區町村ニ平分シ其ノ一部ニノミ賦課スヘシ但シ土地家屋物件又ハ營業所ヲ定メタル營業ヨリ生スル收入ハ此ノ限ニ在ラス
第六十五條 所得稅法第五條ニ揭クル所得ニ對シテハ町村稅ヲ賦課スルコトヲ得ス
神社遙拜所寺院祠宇佛堂ノ用ニ供スル建物ニシテ其ノ境內地ニ存在スルモノ及其ノ境內地敎會所說敎所ノ用ニ供スル建物及其ノ構內地ニ對シテハ町村稅ヲ賦課スルコトヲ得ス但シ賃貸者ニ賦課スル場合及住宅ヲ以テ敎會所說敎所ノ用ニ充ツルモノハ此ノ限ニ在ラス
國府縣市區町村其ノ他公共團體ニ於テ公用又ハ公共ノ用ニ供スル家屋物件及營造物ニ對シテハ町村稅ヲ賦課スルコトヲ得ス但シ賃貸者及使用收益者ニ對シテハ此ノ限ニ在ラス
國有ノ土地家屋物件ニ對シテハ國ニ町村稅ヲ賦課スルコトヲ得ス
前各項ノ外町村稅ヲ賦課スルコトヲ得サルモノハ別ニ法律勅令ノ定ムル所ニ依ル
第六十六條 數個人ヲ利スル營造物ノ設置維持其ノ他必要ナル費用ハ其ノ關係者ニ負擔セシムルコトヲ得
町村內ノ一部ヲ利スル營造物ノ設置維持其ノ他必要ナル費用ハ其ノ部內ニ於テ町村稅ヲ納ムル義務アル者ニ負擔セシムルコトヲ得
前二項ノ場合ニ於テ營造物ヨリ生スル收入又ハ一部ノ收入アルトキハ先ツ其ノ收入ヲ以テ其ノ費用ニ充ツヘシ
數個人又ハ町村內ノ一部ヲ利スル財產ニ付テモ亦本條ノ例ニ依ル
第六十七條 數個人又ハ町村內ノ一部ニ對シ特ニ利益アル事件ニ關シテハ不均一ノ賦課ヲ爲スコトヲ得
第六十八條 本令ニ定ムルモノヲ除クノ外町村稅及夫役現品竝其ノ賦課徵收ニ關シ必要ナル事項ハ內務大臣ノ許可ヲ得テ府縣知事之ヲ定ム
町村稅ノ賦課徵收ニ關スル規程ニハ二圓以下ノ過料ヲ科スル規定ヲ設クルコトヲ得
第六十九條 町村長ハ納稅者中特別ノ事情アル者ニ對シ會計年度內ニ限リ納稅延期ヲ許スコトヲ得其ノ年度ヲ越ユル場合ハ町村會ノ議決ヲ經ヘシ
町村長ハ特別ノ事情アル者ニ限リ町村會ノ議決ヲ經テ町村稅ヲ減免スルコトヲ得
第七十條 使用料及手數料ニ關スル事項ニ付テハ町村規則ヲ以テ之ヲ規定スヘシ其ノ規則中ニハ二圓以下ノ過料ヲ科スル規定ヲ設クルコトヲ得營造物又ハ財產ノ使用ニ關スル町村規則ニ付亦同シ
第七十一條 第六十八條及前條ノ規定ニ依リ過料ニ處シ及之ヲ徵收スルハ町村長之ヲ掌ル
第七十二條 町村稅ノ賦課ヲ受ケタル者其ノ賦課ニ付違法又ハ錯誤アリト認ムルトキハ徵稅令書ノ交付後三箇月以內ニ町村長ニ異議ノ申立ヲ爲スコトヲ得
財產又ハ營造物ヲ使用スル權利ニ關シ異議アル者ハ之ヲ町村長ニ申立ツルコトヲ得
本條ノ異議ハ町村長之ヲ決定ス其ノ決定ニ不服アル者ハ島司郡長ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アル者ハ府縣知事ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
使用料手數料加入金ノ徵收及夫役現品ノ賦課ニ關シテモ亦前數項ノ例ニ依ル
第七十三條 町村稅使用料手數料加入金夫役現品ニ代フル金錢過料過怠金其ノ他町村ノ收入ヲ定期內ニ納メサル者アルトキハ町村長ハ期限ヲ指定シテ之ヲ督促スヘシ此ノ場合ニ於テハ府縣知事ノ定ムル所ニ依リ手數料ヲ徵收スルコトヲ得
滯納者前項ノ督促ヲ受ケ其ノ指定ノ期限內ニ仍之ヲ完納セサルトキハ國稅滯納處分ノ例ニ依リ之ヲ處分スヘシ
本條ニ記載スル徵收金ハ府縣ノ徵收金ニ次テ先取特權ヲ有シ其ノ追徵還付及時效ニ付テハ國稅ノ例ニ依ル
本條町村長ノ處分ニ不服アル者ハ島司郡長ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アル者ハ府縣知事ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第二項ノ處分中差押物件ノ公賣ハ處分ノ確定ニ至ル迄執行ヲ停止ス
第七十四條 町村ハ其ノ負債ヲ償還スル爲又ハ町村ノ永久ノ利益ト爲ルヘキ支出ヲ要スル爲又ハ天災事變等ノ爲已ヲ得サル場合ニ限リ町村債ヲ起スコトヲ得
町村債ヲ起スニ付町村會ノ議決ヲ經ルトキハ併セテ起債ノ方法利息ノ定率及償還ノ方法ニ付議決ヲ經ヘシ
町村ハ豫算內ノ支出ヲ爲ス爲本條ノ例ニ依ラス一時ノ借入金ヲ爲スコトヲ得
前項ノ借入金ハ其ノ會計年度內ノ收入ヲ以テ償還スヘシ
第二款 歲入出豫算及決算
第七十五條 町村長ハ每會計年度歲入出豫算ヲ調製シ遲クトモ年度開始ノ一箇月前ニ町村會ノ議決ヲ經ヘシ
町村ノ會計年度ハ政府ノ會計年度ニ同シ
豫算ヲ町村會ニ提出スルトキハ町村長ハ併セテ事務報吿書及財產表ヲ提出スヘシ
第七十六條 町村長ハ町村會ノ議決ヲ經テ旣定豫算ノ追加又ハ更正ヲ爲スコトヲ得
第七十七條 町村費ヲ以テ支辨スル事件ニシテ數年ヲ期シテ施行スヘキモノ又ハ數年ヲ期シテ其ノ費用ヲ支出スヘキモノハ町村會ノ議決ヲ經テ其ノ年期間各年度ノ支出額ヲ定メ繼續費ト爲スコトヲ得
第七十八條 豫算外ノ支出又ハ豫算超過ノ支出ニ充ツル爲豫備費ヲ設クヘシ
豫備費ハ町村會ノ否決シタル費途ニ充ツルコトヲ得ス
第七十九條 町村ハ特別會計ヲ設クルコトヲ得
第八十條 收入役ハ町村長又ハ監督官廳ノ命令アルニ非サレハ支拂ヲ爲スコトヲ得ス又町村長ノ命令ヲ受クルモ支出ノ豫算ナキトキ又ハ豫備費支出及費目流用其ノ他財務ニ關スル規定ニ依ラサルトキ亦同シ
前項ノ規定ハ收入役ノ事務ヲ兼掌シタル町村長又ハ書記ニ之ヲ準用ス
第八十一條 町村ノ支拂金ニ關スル時效ニ付テハ政府ノ支拂金ノ例ニ依ル
第八十二條 町村ノ出納閉鎖ハ翌年度六月三十日ヲ限トス
決算ハ出納閉鎖後一箇月以內ニ證書類ヲ併セテ收入役ヨリ之ヲ町村長ニ提出スヘシ町村長ハ之ヲ審査シ意見ヲ付シテ次ノ通常豫算ヲ議スル會議迄ニ之ヲ町村會ノ認定ニ付スヘシ
第八條第五項ノ場合ニ於テハ前項ノ例ニ依ル但シ町村長ニ於テ兼掌シタルトキハ直ニ町村會ノ認定ニ付スヘシ
第八十三條 豫算ノ式及費目流用其ノ他財務ニ關シ必要ナル規定ハ內務大臣ノ許可ヲ得テ府縣知事之ヲ定ム
第五章 町村內一部ノ行政及町村組合
第八十四條 町村內ノ一部ニ於テ從來所有スル財產ノ管理及處分ハ町村有財產ニ關スル規定ニ依ル但シ法令中別段ノ規定アルモノハ此ノ限ニ在ラス
前項ノ爲特ニ要スル費用ハ其ノ財產ヲ所有スル町村內ノ一部ノ負擔トス
町村內ノ一部ノ會計ハ之ヲ分別スヘシ
第八十五條 町村內ノ一部ニ於テ有スル財產又ハ町村內ノ一部ヲ利スル財產營造物ニ關シ必要アル場合ニ於テハ島司郡長ハ町村會ノ意見ヲ徵シテ町村規則ヲ設定シ區會又ハ區總會ヲ設ケテ該事件ニ關シ町村會ノ議決スヘキ事項ノ全部又ハ一部ヲ議決セシムルコトヲ得
區會議員ハ町村ノ名譽職トス其ノ定員任期及選擧權被選擧權ニ關スル事項ハ前項ノ町村規則中ニ之ヲ規定スヘシ
前項ノ外區會議員ノ選擧及區會又ハ區總會ニ關シテハ町村會ニ關スル規定ヲ準用ス其ノ準用シ難キ事項及特ニ町村內一部ノ行政ニ關シ必要ナル事項ハ內務大臣ノ許可ヲ得テ府縣知事之ヲ定ム
第八十六條 町村事務ノ一部又ハ全部ヲ共同處理セシムル爲島司郡長ハ町村會ノ意見ヲ徵シ府縣知事ノ許可ヲ得テ町村組合ヲ設クルコトヲ得其ノ變更解除ニ付亦同シ
前項ノ場合ニ於テ組合內各町村ノ町村會又ハ町村吏員ノ職務ニ屬スル事項ナキトキハ其ノ町村會又ハ町村吏員ハ組合成立ト同時ニ消滅ス
第八十七條 町村組合ヲ設クルトキハ島司郡長ハ前條ノ例ニ依リ組合規程ヲ設クヘシ其ノ變更ニ付亦同シ
組合規程ニ於テハ組合ノ名稱組合ヲ組織スル町村組合ノ共同事務及組合役場ノ位置其ノ他必要ナル事項ヲ定ムルコトヲ要ス
一部事務ノ爲ニ設ケタル組合ニ於テハ前項ノ外仍組合會ノ組織及選擧組合吏員ノ組織及選任組合費用ノ支辨方法ニ付規定ヲ設クルコトヲ要ス
第八十八條 町村組合ハ法人トス
町村組合ニ關シテハ町村ニ關スル規定ヲ準用ス
第八十九條 本令ニ定ムルモノノ外町村組合ニ關スル必要ノ規定ハ內務大臣ノ許可ヲ得テ府縣知事之ヲ定ム
第六章 町村行政ノ監督
第九十條 町村行政ハ第一次ニ於テ島司郡長之ヲ監督シ第二次ニ於テ府縣知事之ヲ監督シ第三次ニ於テ內務大臣之ヲ監督ス
監督官廳ハ町村行政ノ監督上必要ナル命令ヲ發シ處分ヲ爲スコトヲ得
上級監督官廳ハ下級監督官廳ノ町村行政ニ關シテ爲シタル命令又ハ處分ヲ停止シ又ハ之ヲ取消スコトヲ得
第九十一條 本令ニ規定スル異議ノ決定ハ文書ヲ以テ之ヲ爲シ其ノ理由ヲ付シ之ヲ申立人ニ交付スヘシ
異議又ハ訴願ハ處分ヲ爲シ又ハ決定書若ハ裁決書ノ交付ヲ受ケタル日ヨリ其ノ交付ヲ受ケサル者ハ吿示ノ日ヨリ二十一日以內ニ之ヲ提起スヘシ但シ本令中別ニ期間ヲ定メタルモノハ此ノ限ニ在ラス
行政訴訟ハ裁決書ノ交付ヲ受ケタル日ヨリ二十一日以內ニ之ヲ提起スヘシ
異議ニ關スル期間ノ計算ニ付テハ訴願法ノ規定ニ依ル
異議ノ申立アルモ處分ノ執行ハ之ヲ停止セス但シ行政廳ハ其ノ職權ニ依リ又ハ關係者ノ請求ニ依リ必要ト認ムルトキハ之ヲ停止スルコトヲ得
第九十二條 監督官廳ハ必要アル場合ニ於テハ期間ヲ定メテ町村會ノ停會ヲ命スルコトヲ得
府縣知事ハ町村會ノ解散ヲ命スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ三箇月以內ニ議員ヲ選擧スヘシ
第九十三條 町村ニ於テ法令ニ依テ負擔シ又ハ當該官廳ノ職權ニ依テ命スル費用ヲ豫算ニ載セサルトキハ島司郡長ハ理由ヲ示シテ其ノ費用ヲ豫算ニ加フルコトヲ得
町村又ハ町村長其ノ他ノ吏員ニ於テ執行スヘキ事件ヲ執行セサルトキハ島司郡長又ハ其ノ委任ヲ受ケタル官吏吏員ニ於テ之ヲ執行スルコトヲ得但シ其ノ費用ハ町村ノ負擔トス
本條ノ處分ニ不服アル町村又ハ町村長其ノ他ノ吏員ハ府縣知事ニ訴願スルコトヲ得
第九十四條 左ニ揭クル事件ハ內務大臣及大藏大臣ノ許可ヲ受クルコトヲ要ス
一 町村債ヲ起シ竝起債ノ方法利息ノ定率及償還ノ方法ヲ定メ又ハ變更スル事但シ第七十四條第三項ノ借入金ハ此ノ限ニ在ラス
第九十五條 左ニ揭クル事件ハ府縣知事ノ許可ヲ受クルコトヲ要ス
一 町村規則ヲ設ケ及改廢スル事
二 基本財產ノ管理及處分ニ關スル事
三 特別基本財產及積立金穀等ノ設置管理及處分ニ關スル事
四 不動產ノ管理及處分ニ關スル事
五 使用料手數料加入金ヲ新設シ增額シ又ハ變更スル事
六 寄附又ハ補助ヲ爲ス事
七 第六十七條ニ依リ不均一ノ賦課ヲ爲ス事
第九十六條 左ニ揭クル事件ハ島司郡長ノ許可ヲ受クルコトヲ要ス
一 第五十五條ノ處分ヲ爲ス事
二 第六十六條ニ依リ數個人又ハ町村內ノ一部ニ費用ヲ負擔セシムル事
三 繼續費ヲ定メ又ハ變更スル事
四 特別會計ヲ設クル事
第九十七條 町村ノ行政ニ關シ監督官廳ノ許可ヲ要スヘキ事件ニ付テハ監督官廳ハ許可申請ノ趣旨ニ反セスト認ムル範圍內ニ於テ更正シテ許可ヲ與フルコトヲ得
第九十八條 町村吏員ノ服務紀律懲戒賠償責任身元保證及事務引繼ニ關スル規程ハ內務大臣之ヲ定ム
第九十九條 町村ノ行政ニ關シ監督官廳ノ許可ヲ要スヘキ事件中其ノ輕易ナルモノハ其ノ許可ノ職權ヲ下級監督官廳ニ委任スルコトヲ得
町村ノ行政ニ關シ島司ノ職權ニ屬スル事件ノ一部及前項ニ依リ島司ニ委任セラレタル事件ノ一部ハ之ヲ島廳出張所長ニ委任スルコトヲ得
第七章 雜則
第百條 本令ノ規定ニ依リ郡長ノ職權ニ屬スル事件ニシテ數郡ニ涉ルモノアルトキハ關係郡長ノ具申ニ依リ府縣知事ニ於テ其ノ事件ヲ管理スヘキ郡長ヲ指定スヘシ
第百一條 內務大臣ハ特別ノ事情アル町村ノ町村會議員選擧權被選擧權ニ關シ別段ノ規定ヲ設クルコトヲ得
第百二條 本令ニ定ムル直接國稅ノ種類ハ內務大臣及大藏大臣之ヲ吿示ス
附 則
本令施行ノ地域及期日ハ府縣知事ノ具申ニ依リ內務大臣之ヲ定ム
朕沖縄県及島嶼町村制ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治四十年三月十五日
内閣総理大臣 侯爵 西園寺公望
内務大臣 原敬
勅令第四十六号
沖縄県及島嶼町村制
第一章
総則
第二章
町村吏員
第一款
組織及任免
第二款
職務権限及処務規程
第三款
給料及給与
第三章
町村会
第一款
組織及選挙
第二款
職務権限及処務規程
第四章
町村ノ財務
第一款
財産営造物及収入支出
第二款
歳入出予算及決算
第五章
町村内一部ノ行政及町村組合
第六章
町村行政ノ監督
第七章
雑則
沖縄県及島嶼町村制
第一章 総則
第一条 本令ハ町村制ノ規定ニ依リ沖縄県及町村制ヲ施行セサル島嶼ノ町村ニ之ヲ施行ス但シ勅令ヲ以テ別ニ其ノ制ヲ定メタルモノハ此ノ限ニ在ラス
第二条 町村ハ法人トシ官ノ監督ヲ承ケ法令ノ範囲内ニ於テ其ノ公共事務及法令又ハ慣例ニ依リ町村ニ属スル事務ヲ処理ス
第三条 町村ノ廃置分合又ハ境界変更ヲ要スルトキハ府県知事内務大臣ノ許可ヲ得テ之ヲ定ム所属未定地ヲ町村ノ区域ニ編入スルトキ亦同シ
本条ノ処分ニシテ郡ノ境界ニ渉ルモノアルトキハ郡ノ境界モ亦自ラ変更スルモノトス
本条ノ処分ニ付財産処分ヲ要スルトキハ関係アル町村会ノ意見ヲ徴シ府県知事之ヲ定ム
町村ノ境界判明ナラサル場合ニ於テハ島司郡長之ヲ定ム其ノ数郡ニ渉ル場合ニ於テハ府県知事之ヲ定ム
第四条 町村ノ名称ヲ変更シ又ハ村ヲ町ト為シ若ハ町ヲ村ト為スコトヲ要スルトキハ町村ノ申請ニ依リ内務大臣ノ許可ヲ得テ府県知事之ヲ定ム
町村役場ノ位置ヲ定メ又ハ変更スルコトヲ要スルトキハ町村ハ府県知事ノ許可ヲ受クヘシ
第五条 町村内ニ住所ヲ有スル者ハ其ノ町村住民トス
町村住民ハ本令ニ従ヒ財産及営造物ヲ共用スル権利ヲ有シ町村ノ負担ヲ分任スル義務ヲ負フ
第六条 町村住民ニシテ町村名誉職ノ当選任命ヲ辞シ又ハ其ノ職ヲ退キ若ハ其ノ職務ヲ実際ニ執行セサル者ニ対スル制裁ニ付府県知事ハ内務大臣ノ許可ヲ得テ必要ノ規程ヲ設クルコトヲ得
第七条 町村ハ町村住民ノ権利義務町村ノ事務又ハ町村ノ営造物ニ関シ町村規則ヲ設クルコトヲ得
町村規則ハ一定ノ公告式ニ依リ之ヲ告示スヘシ
第二章 町村吏員
第一款 組織及任免
第八条 町村ニ町村長収入役及書記ヲ置キ有給吏員トス
町村長収入役ハ町村ニ各一名トシ書記ノ定員ハ府県知事之ヲ定ム
町村長収入役ハ島司郡長ノ具申ニ依リ府県知事之ヲ任免ス
書記ハ島司郡長之ヲ任免ス
特別ノ事情アル町村ニ於テハ府県知事ハ町村長又ハ書記ヲシテ収入役ノ事務ヲ兼掌セシムルコトヲ得
第九条 島司郡長ハ府県知事ノ許可ヲ得テ町村ノ処務便宜ノ為区ヲ画シ区長一名ヲ置クコトヲ得
島司郡長ハ府県知事ノ許可ヲ得テ町村ニ臨時又ハ常設ノ委員ヲ置クコトヲ得
区長及委員ハ名誉職トシ其ノ町村ニ於テ被選挙権ヲ有スル者ノ中ニ就キ島司郡長之ヲ任免ス
第二款 職務権限及処務規程
第十条 町村長ハ町村ヲ統轄シ町村ヲ代表シ其ノ行政事務ヲ担任ス
町村長ノ担任スル事務ノ概目左ノ如シ
一 町村会ノ議決ヲ経ヘキ事件ニ付其ノ議案ヲ発シ及其ノ議決ヲ執行スル事
二 財産及営造物ヲ管理スル事但シ特ニ之カ管理者アルトキハ其ノ事務ヲ監督スル事
三 収入支出ヲ命令シ及会計ヲ監督スル事
四 証書及公文書類ヲ保管スル事
五 法令又ハ町村会ノ議決ニ依リ使用料手数料加入金町村税及夫役現品ヲ賦課徴収スル事
六 其ノ他法令ニ依リ町村長ノ職権ニ属スル事項
第十一条 町村長ハ町村吏員ヲ指揮監督ス
第十二条 町村会ノ議決其ノ権限ヲ越エ又ハ法令若ハ会議規則ニ背クト認ムルトキハ町村長ハ其ノ意見ニ依リ又ハ監督官庁ノ指揮ニ依リ理由ヲ示シ其ノ執行ヲ要スルモノニ在リテハ其ノ執行ヲ停止シ之ヲ再議ニ付シ仍其ノ議決ヲ改メサルトキハ之ヲ取消スヘシ但シ場合ニ依リ再議ニ付セスシテ直ニ其ノ議決ヲ取消スコトヲ得
前項取消処分ニ不服アル町村会ハ島司郡長ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アルトキハ府県知事ニ訴願スルコトヲ得
町村会ノ議決公益ヲ害シ又ハ其ノ議決町村ノ収支ニ関シ不適当ナリト認ムルトキハ町村長ハ其ノ意見ニ依リ又ハ監督官庁ノ指揮ニ依リ理由ヲ示シ其ノ執行ヲ要スルモノニ在リテハ其ノ執行ヲ停止シ之ヲ再議ニ付シ仍其ノ議決ヲ改メサルトキハ島司郡長ノ指揮ヲ請フヘシ
前項島司郡長ノ処分ニ不服アル町村会ハ府県知事ニ訴願スルコトヲ得
第十三条 町村会成立セス又ハ第四十六条但書ノ場合ニ於テ仍会議ヲ開クコト能ハサルトキハ町村長ハ島司郡長ニ具状シテ指揮ヲ請ヒ其ノ議決スヘキ事件ヲ処分スルコトヲ得第四十八条ノ規定ニ依リ出席議員ノ数減少シテ会議ヲ開クコト能ハサルトキ亦同シ
町村会ニ於テ其ノ議決スヘキ事件ヲ議決セサルトキハ前項ノ例ニ依ル
町村会ノ権限ニ属スル事件ニ関シ臨時急施ヲ要スル場合ニ於テ町村会成立セス又ハ町村長ニ於テ之ヲ招集スルノ暇ナシト認ムルトキ又ハ第四十八条ノ規定ニ依リ出席議員ノ数減少シテ会議ヲ開クコト能ハサルトキハ町村長ハ専決処分スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ直ニ島司郡長ニ報告スヘシ
本条ノ処分ハ次回ノ会議ニ於テ之ヲ町村会ニ報告スヘシ
第十四条 町村会ノ権限ニ属スル事件ノ一部ハ其ノ議決ニ依リ町村長ヲシテ専決処分セシムルコトヲ得
第十五条 町村長其ノ他町村吏員ハ法令ノ定ムル所ニ依リ国及府県其ノ他公共団体ノ行政事務ヲ掌ル
本条ノ事務ヲ執行スル為要スル費用ハ町村ノ負担トス但シ法令中別段ノ規定アルモノハ此ノ限ニ在ラス
第十六条 特別ノ事情アル町村ニ於テハ町村長ハ島司郡長ノ許可ヲ得テ其ノ事務ノ一部ヲ町村吏員ニ委任スルコトヲ得
第十七条 町村長ハ町村吏員ヲシテ其ノ事務ノ一部ヲ臨時代理セシムルコトヲ得
第十八条 書記ハ町村長ノ命ヲ承ケ事務ニ従事ス
町村長故障アルトキハ上席書記其ノ職務ヲ代理ス
第十九条 収入役ハ町村ノ出納其ノ他会計事務及第十五条ニ関スル国府県其ノ他公共団体ノ出納其ノ他会計事務ヲ掌ル但シ法令中別段ノ規定アルモノハ此ノ限ニ在ラス
第十六条ノ規定ハ収入役ニ之ヲ準用ス
収入役故障アルトキハ町村長ハ書記ヲシテ其ノ事務ヲ代理セシムルコトヲ得
第二十条 区長ハ町村長ノ命ヲ承ケ町村長ノ事務ニシテ区内ニ関スルモノヲ補助執行ス
委員ハ町村長ノ指揮監督ヲ承ケ財産又ハ営造物ヲ管理シ其ノ他町村行政事務ノ一部ヲ調査シ又ハ一時ノ委託ニ依リ事務ヲ処弁ス
第五十三条ノ規定ハ区長及委員ニ之ヲ準用ス
第三款 給料及給与
第二十一条 町村吏員ノ給料額旅費額及其ノ支給方法ハ府県知事之ヲ定ム
第二十二条 有給吏員ノ退隠料退職給与金死亡給与金遺族扶助料及其ノ支給方法ハ町村規則ヲ以テ之ヲ定ム
第二十三条 前二条ニ定ムルモノノ外町村ニ於テ吏員又ハ其ノ退職者ニ対シ賞与慰労其ノ他特別ノ給与ヲ為サムトスルトキハ島司郡長ノ許可ヲ受クルコトヲ要ス
第二十四条 町村吏員ノ給料旅費退隠料退職給与金死亡給与金遺族扶助料其ノ他諸給与ハ町村ノ負担トス
第二十五条 本章ニ規定スルモノノ外町村吏員ノ組織及職務権限等ニ関シ別段ノ規定ヲ要スルトキハ府県知事之ヲ定ム
第三章 町村会
第一款 組織及選挙
第二十六条 町村会議員ハ其ノ被選挙権アル者ニ就キ選挙人之ヲ選挙ス
町村会議員ノ定数ハ沖縄県ニ於テハ一町村八名以上二十名以下トシ、其ノ他ニ於テハ一町村四名以上十二名以下トシ府県知事之ヲ定ム
第二十七条 帝国臣民ニシテ公権ヲ有シ一戸ヲ構フル満二十五年以上ノ男子二箇年以来町村ノ住民ト為リ其ノ町村ノ負担ヲ分任シ及其ノ町村内ニ於テ直接国税ヲ納ムル者ハ町村会議員ノ選挙権ヲ有ス但シ公費ヲ以テ貧民救助ヲ受ケタル後二箇年ヲ経サル者及禁治産者準禁治産者ハ此ノ限ニ在ラス
町村ハ島司郡長ノ許可ヲ得テ前項二箇年ノ制限ヲ特免スルコトヲ得
家督相続ニ依リ財産ヲ取得シタル者ハ其ノ財産ニ付被相続人ノ為シタル納税ヲ以テ其ノ者ノ納税シタルモノト看做ス
第一項ニ定ムル要件中其ノ年限ニ関スルモノハ区町村ノ廃置分合又ハ境界変更ノ為中断セラルルコトナシ
町村税ヲ賦課セサル町村ニ在リテハ第一項ニ定ムル要件中町村ノ負担分任ニ関スル規定ヲ適用セス
第二十八条 選挙権ヲ有スル者公権停止中又ハ租税滞納処分中ハ選挙権ヲ停止ス家資分散又ハ破産ノ宣告ヲ受ケ其ノ確定シタルトキヨリ復権ノ決定確定スル迄又禁錮以上ノ刑ノ宣告ヲ受ケタルトキヨリ其ノ裁判確定ニ至ル迄亦同シ
陸海軍ノ現役ニ服スル者ハ選挙ニ参与スルコトヲ得ス現役以外ノ兵役ニ在ル者ニシテ戦時又ハ事変ニ際シ召集セラレタルトキ亦同シ
第二十九条 選挙権ヲ有スル者ハ被選挙権ヲ有ス
左ニ掲クル者ハ被選挙権ヲ有セス第一号乃至第五号ニ該当スル者ニシテ之ヲ罷メタル後一箇月ヲ経過セサルトキ亦同シ
一 所属府県郡島ノ官吏及有給吏員
二 其ノ町村ノ有給吏員
三 検事警察官吏及収税官吏
四 神官神職僧侶其ノ他諸宗教師
五 小学校教員
六 前条ニ依リ選挙権停止中ノ者及選挙ニ参与スルコトヲ得サル者
前項ニ掲ケサル官吏ニシテ当選シ之ニ応セムトスルトキハ所属長官ノ許可ヲ受クヘシ
第三十条 町村会議員ハ名誉職トシ其ノ任期ハ四箇年トス
町村会議員中闕員ヲ生シ其ノ闕員議員定数ノ三分ノ一以上ニ至リタルトキ又ハ島司郡長若ハ町村長町村会ニ於テ必要ト認ムルトキハ補闕選挙ヲ行フヘシ
補闕議員ハ其ノ前任者ノ残任期間在任ス
第三十一条 選挙ニ関シ必要ナル規程ハ内務大臣ノ許可ヲ得テ府県知事之ヲ定ム
第三十二条 選挙ヲ終リタルトキハ町村長ハ直ニ選挙録ノ謄本ヲ添ヘ之ヲ島司郡長ニ報告スヘシ
当選者其ノ当選ヲ辞セサルトキハ町村長ハ直ニ其ノ住所氏名ヲ告示シ併セテ之ヲ島司郡長ニ報告スヘシ
第三十三条 選挙人選挙又ハ当選ノ効力ニ関シ異議アルトキハ選挙ニ関シテハ選挙ノ日ヨリ当選ニ関シテハ前条告示ノ日ヨリ之ヲ町村長ニ申立ツルコトヲ得其ノ申立ノ期間ハ島司郡長ノ定ムル所ニ依ル
前項ノ異議ハ町村長之ヲ決定ス其ノ決定ニ不服アル者ハ島司郡長ニ訴願スルコトヲ得
島司郡長ニ於テ選挙又ハ当選ノ効力ニ関シ異議アルトキハ選挙ニ関シテハ前条第一項ノ報告ヲ受ケタル日ヨリ当選ニ関シテハ前条第二項ノ報告ヲ受ケタル日ヨリ二十日以内ニ之ヲ処分スルコトヲ得
前項島司郡長ノ処分アリタルトキハ其ノ前後ニ為シタル異議ノ申立及町村長ノ決定ハ無効トス
本条島司郡長ノ処分又ハ裁決ニ不服アル者ハ府県知事ニ訴願スルコトヲ得
第三十四条 選挙ノ規定ニ違反スルコトアルトキハ選挙ノ結果ニ異動ヲ生スルノ虞アル場合ニ限リ其ノ選挙ノ全部又ハ一部ヲ無効トス
当選者ニシテ被選挙権ヲ有セサルトキハ其ノ当選ヲ無効トス
第三十五条 町村会議員ニシテ被選挙権ヲ有セサル者ハ其ノ職ヲ失フ其ノ被選挙権ニ関スル異議ハ町村長之ヲ決定ス
前項町村長ノ決定ニ不服アル者ハ島司郡長ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アル者ハ府県知事ニ訴願スルコトヲ得
町村会議員ハ其ノ被選挙権ヲ有セストスル決定又ハ裁決確定スル迄ハ会議ニ列席シ議事ニ参与スルノ権ヲ失ハス
第三十六条 第三十三条及前条ニ規定スル決定及裁決ハ直ニ之ヲ告示スヘシ
第三十七条 特別ノ事情アル町村ニ於テハ島司郡長ハ府県知事ノ許可ヲ得テ町村会ヲ設ケス選挙権ヲ有スル者ノ総会ヲ以テ之ニ充ツルコトヲ得
町村総会ニ関シテハ町村会ニ関スル規定ヲ準用ス
第二款 職務権限及処務規程
第三十八条 町村会ハ町村ニ関スル事件及法令ニ依リ町村会ノ権限ニ属スル事件ヲ議決ス
第三十九条 町村会ノ議決スヘキ事件ノ概目左ノ如シ
一 町村規則ヲ設ケ及改廃スル事
二 町村費ヲ以テ支弁スヘキ事業但シ第十五条ノ事務其ノ他法令中別段ノ規定アルモノハ此ノ限ニ在ラス
三 歳入出予算ヲ定ムル事
四 決算報告ヲ認定スル事
五 法令ニ定ムルモノヲ除クノ外使用料手数料加入金町村税及夫役現品ノ賦課徴収ニ関スル事
六 不動産ノ管理処分及取得ニ関スル事
七 基本財産及積立金穀等ノ設置管理及処分ニ関スル事
八 歳入出予算ヲ以テ定ムルモノヲ除クノ外新ニ義務ノ負担ヲ為シ及権利ノ抛棄ヲ為ス事
九 財産及営造物ノ管理方法ヲ定ムル事但シ法令中ニ規定アルモノハ此ノ限ニ在ラス
十 町村ニ係ル訴願訴訟及和解ニ関スル事
第四十条 町村会ハ町村ノ事務ニ関スル書類及計算書ヲ検閲シ町村長ノ報告ヲ請求シテ事務ノ管理議決ノ執行及出納ヲ検査スルコトヲ得
町村会ハ議員中ヨリ委員ヲ選挙シ町村長又ハ其ノ指名シタル吏員立会ノ上実地ニ就キ前項町村会ノ権限ニ属スル事件ヲ行ハシムルコトヲ得
第四十一条 町村会ハ町村ノ公益ニ関スル事件ニ付意見書ヲ監督官庁ニ呈出スルコトヲ得
第四十二条 町村会ハ行政庁ノ諮問アルトキハ意見ヲ答申スヘシ
町村会ノ意見ヲ徴シテ処分ヲ為スヘキ場合ニ於テ町村会招集ニ応セス若ハ成立セス又ハ意見ヲ呈出セス又ハ町村会ヲ招集スルコト能ハサルトキハ当該行政庁ハ其ノ意見ヲ俟タスシテ直ニ処分ヲ為スコトヲ得
第四十三条 町村会ハ町村長ヲ以テ議長トス町村長故障アルトキハ其ノ代理者議長ノ職務ヲ代理ス
第四十四条 町村長及其ノ委任又ハ嘱託ヲ受ケタル者ハ会議ニ出席シ及発言スルコトヲ得
第四十五条 町村会ハ町村長之ヲ招集ス但シ軽易ノ事件ニ付テハ会議ヲ開カス書面ヲ以テ議員ノ意見ヲ聞キ其ノ三分ノ二以上ノ同意アルトキハ之ヲ議決ト看做スコトヲ得
町村長ハ必要アル場合ニ於テハ会期ヲ定メテ町村会ヲ招集スルコトヲ得
町村会ハ町村長之ヲ開閉ス
第四十六条 町村会ハ議員定数ノ半数以上出席スルニ非サレハ会議ヲ開クコトヲ得ス但シ同一ノ事件ニ付招集再回ニ至ルモ仍半数ニ満タサルトキ又ハ招集ニ応スルモ出席議員定数ヲ闕キ議長ニ於テ更ニ出席ヲ催告シ仍半数ニ満タサルトキハ此ノ限ニ在ラス
第四十七条 町村会ノ議事ハ過半数ヲ以テ決ス可否同数ナルトキハ議長ノ決スル所ニ依ル
第四十八条 議長及議員ハ自己又ハ父母祖父母妻子孫兄弟姉妹ノ一身上ニ関スル事件ニ付テハ其ノ議事ニ参与スルコトヲ得ス但シ町村会ノ同意ヲ得タルトキハ会議ニ出席シ発言スルコトヲ得
第四十九条 議長ハ会議ノ事ヲ総理シ会議ノ順序ヲ定メ其ノ日ノ会議ヲ開閉シ議場ノ秩序ヲ保持ス
第五十条 町村会ハ会議規則及傍聴人取締規則ヲ設ケ島司郡長ノ許可ヲ受クヘシ
会議規則ニハ之ニ違反シタル議員ニ対シ町村会ノ議決ニ依リ五日以内出席ヲ停止シ又ハ二円以下ノ過怠金ヲ科スルノ規定ヲ設クルコトヲ得
第五十一条 町村会ニ書記ヲ置キ議長ニ隷属シテ庶務ヲ処理セシム
書記ハ町村吏員中ニ就キ町村長之ヲ任免ス
第五十二条 議長ハ書記ヲシテ会議録ヲ製シ会議ノ顛末及出席議員ノ氏名ヲ記載セシムヘシ会議録ニハ議長及議員一名以上之ニ署名スルコトヲ要ス
第五十三条 町村会議員ハ職務ノ為要スル費用ノ弁償ヲ受クルコトヲ得
費用弁償額及其ノ支給方法ハ町村会ノ議決ヲ経島司郡長ノ許可ヲ得テ之ヲ定ム
費用ノ弁償ハ町村ノ負担トス
第四章 町村ノ財務
第一款 財産営造物及収入支出
第五十四条 町村ハ不動産積立金穀等ヲ以テ基本財産ト為シ之ヲ維持スル義務アリ
臨時ニ取得シタル財産ハ基本財産ニ加入スヘシ但シ寄附ニ係ル物件ニシテ寄附者其ノ使用ノ目的ヲ定メタルモノハ此ノ限ニ在ラス
町村ハ特定ノ目的ノ為特別ノ基本財産ヲ設ケ又ハ金穀等ヲ積立ツルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ基本財産ニ加入スヘキモノノ全部又ハ一部ヲ特別ノ基本財産又ハ積立金穀等ニ加入スルコトヲ得
府県知事ハ必要ト認ムルトキハ基本財産又ハ積立金穀等ノ蓄積ヲ命スルコトヲ得
第五十五条 旧来ノ慣行ニ依リ数個人又ハ町村内ノ一部ニ於テ特ニ営造物又ハ財産ヲ使用スル権利ヲ有スルトキハ其ノ旧慣ニ依リ町村会ノ議決ヲ経ルニ非サレハ其ノ旧慣ヲ変更又ハ廃止スルコトヲ得ス
前項ノ営造物又ハ財産ヲ新ニ使用セムトスル者アルトキハ町村会ノ議決ヲ経テ之ヲ許可スルコトヲ得
第五十六条 町村ハ前条第一項ノ使用者ヨリ使用料ヲ徴収シ同条第二項ノ使用ニ関シテハ使用料若ハ一時ノ加入金ヲ徴収シ又ハ使用料加入金ヲ共ニ徴収スルコトヲ得
第五十七条 町村ハ営造物又ハ公共ノ使用ニ供スル財産ノ使用ニ付使用料ヲ徴収スルコトヲ得
数個人又ハ町村内ノ一部ヲ利スル営造物又ハ財産ノ使用ニ関シテハ使用料若ハ一時ノ加入金ヲ徴収シ又ハ使用料加入金ヲ共ニ徴収スルコトヲ得
町村ハ特ニ一個人ノ為ニスル事務ニ付手数料ヲ徴収スルコトヲ得
第五十八条 町村ハ第五十五条及前条ニ規定スル財産ノ使用ニ関シ町村規則ヲ設クルコトヲ得
第五十九条 町村ハ其ノ公益上必要アル場合ニ於テハ寄附又ハ補助ヲ為スコトヲ得
第六十条 町村ハ其ノ必要ナル費用及法令又ハ慣例ニ依リ町村ノ負担ニ属スル費用ヲ支弁スル義務ヲ負フ
町村ハ其ノ財産ヨリ生スル収入使用料手数料過料過怠金其ノ他法令ニ依リ町村ニ属スル収入ヲ以テ前項ノ支出ニ充テ仍不足アルトキハ町村税及夫役現品ヲ賦課徴収スルコトヲ得
第六十一条 町村税トシテ賦課スルコトヲ得ヘキ税目及税率ハ内務大臣及大蔵大臣ノ許可ヲ得テ府県知事之ヲ定ム
第六十二条 三箇月以上町村内ニ滞在スル者ハ其ノ滞在ノ初ニ遡リ町村税ヲ納ムル義務ヲ負フ
第六十三条 町村内ニ住所ヲ有セス又ハ三箇月以上滞在スルコトナシト雖町村内ニ於テ土地家屋物件ヲ所有シ使用シ若ハ占有シ又ハ営業所ヲ定メテ営業ヲ為シ又ハ町村内ニ於テ特定ノ行為ヲ為ス者ハ其ノ土地家屋物件営業若ハ其ノ収入ニ対シ又ハ行為ニ対シテ賦課スル町村税ヲ納ムル義務ヲ負フ其ノ法人タルトキ亦同シ但シ国ノ事業又ハ行為ニ対シテハ此ノ限ニ在ラス
第六十四条 納税者ノ町村外ニ於テ所有シ使用シ若ハ占有スル土地家屋物件若ハ其ノ収入又ハ町村外ニ於テ営業所ヲ定メタル営業若ハ其ノ収入ニ対シテハ町村税ヲ賦課スルコトヲ得ス但シ数市区町村ニ渉リ営業所ヲ定メテ営業ヲ為シ且其ノ営業又ハ其ノ収入ニ対スル本税ヲ分別シテ納メサル者ニ対シ関係市区町村ニ於テ附加税ヲ賦課スルトキハ内務大臣ノ定ムル所ニ依ル
住所滞在数市区町村ニ渉ル者ノ収入ニ対シ町村税ヲ賦課スルトキハ其ノ収入ヲ関係市区町村ニ平分シ其ノ一部ニノミ賦課スヘシ但シ土地家屋物件又ハ営業所ヲ定メタル営業ヨリ生スル収入ハ此ノ限ニ在ラス
第六十五条 所得税法第五条ニ掲クル所得ニ対シテハ町村税ヲ賦課スルコトヲ得ス
神社遥拝所寺院祠宇仏堂ノ用ニ供スル建物ニシテ其ノ境内地ニ存在スルモノ及其ノ境内地教会所説教所ノ用ニ供スル建物及其ノ構内地ニ対シテハ町村税ヲ賦課スルコトヲ得ス但シ賃貸者ニ賦課スル場合及住宅ヲ以テ教会所説教所ノ用ニ充ツルモノハ此ノ限ニ在ラス
国府県市区町村其ノ他公共団体ニ於テ公用又ハ公共ノ用ニ供スル家屋物件及営造物ニ対シテハ町村税ヲ賦課スルコトヲ得ス但シ賃貸者及使用収益者ニ対シテハ此ノ限ニ在ラス
国有ノ土地家屋物件ニ対シテハ国ニ町村税ヲ賦課スルコトヲ得ス
前各項ノ外町村税ヲ賦課スルコトヲ得サルモノハ別ニ法律勅令ノ定ムル所ニ依ル
第六十六条 数個人ヲ利スル営造物ノ設置維持其ノ他必要ナル費用ハ其ノ関係者ニ負担セシムルコトヲ得
町村内ノ一部ヲ利スル営造物ノ設置維持其ノ他必要ナル費用ハ其ノ部内ニ於テ町村税ヲ納ムル義務アル者ニ負担セシムルコトヲ得
前二項ノ場合ニ於テ営造物ヨリ生スル収入又ハ一部ノ収入アルトキハ先ツ其ノ収入ヲ以テ其ノ費用ニ充ツヘシ
数個人又ハ町村内ノ一部ヲ利スル財産ニ付テモ亦本条ノ例ニ依ル
第六十七条 数個人又ハ町村内ノ一部ニ対シ特ニ利益アル事件ニ関シテハ不均一ノ賦課ヲ為スコトヲ得
第六十八条 本令ニ定ムルモノヲ除クノ外町村税及夫役現品並其ノ賦課徴収ニ関シ必要ナル事項ハ内務大臣ノ許可ヲ得テ府県知事之ヲ定ム
町村税ノ賦課徴収ニ関スル規程ニハ二円以下ノ過料ヲ科スル規定ヲ設クルコトヲ得
第六十九条 町村長ハ納税者中特別ノ事情アル者ニ対シ会計年度内ニ限リ納税延期ヲ許スコトヲ得其ノ年度ヲ越ユル場合ハ町村会ノ議決ヲ経ヘシ
町村長ハ特別ノ事情アル者ニ限リ町村会ノ議決ヲ経テ町村税ヲ減免スルコトヲ得
第七十条 使用料及手数料ニ関スル事項ニ付テハ町村規則ヲ以テ之ヲ規定スヘシ其ノ規則中ニハ二円以下ノ過料ヲ科スル規定ヲ設クルコトヲ得営造物又ハ財産ノ使用ニ関スル町村規則ニ付亦同シ
第七十一条 第六十八条及前条ノ規定ニ依リ過料ニ処シ及之ヲ徴収スルハ町村長之ヲ掌ル
第七十二条 町村税ノ賦課ヲ受ケタル者其ノ賦課ニ付違法又ハ錯誤アリト認ムルトキハ徴税令書ノ交付後三箇月以内ニ町村長ニ異議ノ申立ヲ為スコトヲ得
財産又ハ営造物ヲ使用スル権利ニ関シ異議アル者ハ之ヲ町村長ニ申立ツルコトヲ得
本条ノ異議ハ町村長之ヲ決定ス其ノ決定ニ不服アル者ハ島司郡長ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アル者ハ府県知事ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
使用料手数料加入金ノ徴収及夫役現品ノ賦課ニ関シテモ亦前数項ノ例ニ依ル
第七十三条 町村税使用料手数料加入金夫役現品ニ代フル金銭過料過怠金其ノ他町村ノ収入ヲ定期内ニ納メサル者アルトキハ町村長ハ期限ヲ指定シテ之ヲ督促スヘシ此ノ場合ニ於テハ府県知事ノ定ムル所ニ依リ手数料ヲ徴収スルコトヲ得
滞納者前項ノ督促ヲ受ケ其ノ指定ノ期限内ニ仍之ヲ完納セサルトキハ国税滞納処分ノ例ニ依リ之ヲ処分スヘシ
本条ニ記載スル徴収金ハ府県ノ徴収金ニ次テ先取特権ヲ有シ其ノ追徴還付及時効ニ付テハ国税ノ例ニ依ル
本条町村長ノ処分ニ不服アル者ハ島司郡長ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アル者ハ府県知事ニ訴願シ其ノ裁決ニ不服アル者ハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得
第二項ノ処分中差押物件ノ公売ハ処分ノ確定ニ至ル迄執行ヲ停止ス
第七十四条 町村ハ其ノ負債ヲ償還スル為又ハ町村ノ永久ノ利益ト為ルヘキ支出ヲ要スル為又ハ天災事変等ノ為已ヲ得サル場合ニ限リ町村債ヲ起スコトヲ得
町村債ヲ起スニ付町村会ノ議決ヲ経ルトキハ併セテ起債ノ方法利息ノ定率及償還ノ方法ニ付議決ヲ経ヘシ
町村ハ予算内ノ支出ヲ為ス為本条ノ例ニ依ラス一時ノ借入金ヲ為スコトヲ得
前項ノ借入金ハ其ノ会計年度内ノ収入ヲ以テ償還スヘシ
第二款 歳入出予算及決算
第七十五条 町村長ハ毎会計年度歳入出予算ヲ調製シ遅クトモ年度開始ノ一箇月前ニ町村会ノ議決ヲ経ヘシ
町村ノ会計年度ハ政府ノ会計年度ニ同シ
予算ヲ町村会ニ提出スルトキハ町村長ハ併セテ事務報告書及財産表ヲ提出スヘシ
第七十六条 町村長ハ町村会ノ議決ヲ経テ既定予算ノ追加又ハ更正ヲ為スコトヲ得
第七十七条 町村費ヲ以テ支弁スル事件ニシテ数年ヲ期シテ施行スヘキモノ又ハ数年ヲ期シテ其ノ費用ヲ支出スヘキモノハ町村会ノ議決ヲ経テ其ノ年期間各年度ノ支出額ヲ定メ継続費ト為スコトヲ得
第七十八条 予算外ノ支出又ハ予算超過ノ支出ニ充ツル為予備費ヲ設クヘシ
予備費ハ町村会ノ否決シタル費途ニ充ツルコトヲ得ス
第七十九条 町村ハ特別会計ヲ設クルコトヲ得
第八十条 収入役ハ町村長又ハ監督官庁ノ命令アルニ非サレハ支払ヲ為スコトヲ得ス又町村長ノ命令ヲ受クルモ支出ノ予算ナキトキ又ハ予備費支出及費目流用其ノ他財務ニ関スル規定ニ依ラサルトキ亦同シ
前項ノ規定ハ収入役ノ事務ヲ兼掌シタル町村長又ハ書記ニ之ヲ準用ス
第八十一条 町村ノ支払金ニ関スル時効ニ付テハ政府ノ支払金ノ例ニ依ル
第八十二条 町村ノ出納閉鎖ハ翌年度六月三十日ヲ限トス
決算ハ出納閉鎖後一箇月以内ニ証書類ヲ併セテ収入役ヨリ之ヲ町村長ニ提出スヘシ町村長ハ之ヲ審査シ意見ヲ付シテ次ノ通常予算ヲ議スル会議迄ニ之ヲ町村会ノ認定ニ付スヘシ
第八条第五項ノ場合ニ於テハ前項ノ例ニ依ル但シ町村長ニ於テ兼掌シタルトキハ直ニ町村会ノ認定ニ付スヘシ
第八十三条 予算ノ式及費目流用其ノ他財務ニ関シ必要ナル規定ハ内務大臣ノ許可ヲ得テ府県知事之ヲ定ム
第五章 町村内一部ノ行政及町村組合
第八十四条 町村内ノ一部ニ於テ従来所有スル財産ノ管理及処分ハ町村有財産ニ関スル規定ニ依ル但シ法令中別段ノ規定アルモノハ此ノ限ニ在ラス
前項ノ為特ニ要スル費用ハ其ノ財産ヲ所有スル町村内ノ一部ノ負担トス
町村内ノ一部ノ会計ハ之ヲ分別スヘシ
第八十五条 町村内ノ一部ニ於テ有スル財産又ハ町村内ノ一部ヲ利スル財産営造物ニ関シ必要アル場合ニ於テハ島司郡長ハ町村会ノ意見ヲ徴シテ町村規則ヲ設定シ区会又ハ区総会ヲ設ケテ該事件ニ関シ町村会ノ議決スヘキ事項ノ全部又ハ一部ヲ議決セシムルコトヲ得
区会議員ハ町村ノ名誉職トス其ノ定員任期及選挙権被選挙権ニ関スル事項ハ前項ノ町村規則中ニ之ヲ規定スヘシ
前項ノ外区会議員ノ選挙及区会又ハ区総会ニ関シテハ町村会ニ関スル規定ヲ準用ス其ノ準用シ難キ事項及特ニ町村内一部ノ行政ニ関シ必要ナル事項ハ内務大臣ノ許可ヲ得テ府県知事之ヲ定ム
第八十六条 町村事務ノ一部又ハ全部ヲ共同処理セシムル為島司郡長ハ町村会ノ意見ヲ徴シ府県知事ノ許可ヲ得テ町村組合ヲ設クルコトヲ得其ノ変更解除ニ付亦同シ
前項ノ場合ニ於テ組合内各町村ノ町村会又ハ町村吏員ノ職務ニ属スル事項ナキトキハ其ノ町村会又ハ町村吏員ハ組合成立ト同時ニ消滅ス
第八十七条 町村組合ヲ設クルトキハ島司郡長ハ前条ノ例ニ依リ組合規程ヲ設クヘシ其ノ変更ニ付亦同シ
組合規程ニ於テハ組合ノ名称組合ヲ組織スル町村組合ノ共同事務及組合役場ノ位置其ノ他必要ナル事項ヲ定ムルコトヲ要ス
一部事務ノ為ニ設ケタル組合ニ於テハ前項ノ外仍組合会ノ組織及選挙組合吏員ノ組織及選任組合費用ノ支弁方法ニ付規定ヲ設クルコトヲ要ス
第八十八条 町村組合ハ法人トス
町村組合ニ関シテハ町村ニ関スル規定ヲ準用ス
第八十九条 本令ニ定ムルモノノ外町村組合ニ関スル必要ノ規定ハ内務大臣ノ許可ヲ得テ府県知事之ヲ定ム
第六章 町村行政ノ監督
第九十条 町村行政ハ第一次ニ於テ島司郡長之ヲ監督シ第二次ニ於テ府県知事之ヲ監督シ第三次ニ於テ内務大臣之ヲ監督ス
監督官庁ハ町村行政ノ監督上必要ナル命令ヲ発シ処分ヲ為スコトヲ得
上級監督官庁ハ下級監督官庁ノ町村行政ニ関シテ為シタル命令又ハ処分ヲ停止シ又ハ之ヲ取消スコトヲ得
第九十一条 本令ニ規定スル異議ノ決定ハ文書ヲ以テ之ヲ為シ其ノ理由ヲ付シ之ヲ申立人ニ交付スヘシ
異議又ハ訴願ハ処分ヲ為シ又ハ決定書若ハ裁決書ノ交付ヲ受ケタル日ヨリ其ノ交付ヲ受ケサル者ハ告示ノ日ヨリ二十一日以内ニ之ヲ提起スヘシ但シ本令中別ニ期間ヲ定メタルモノハ此ノ限ニ在ラス
行政訴訟ハ裁決書ノ交付ヲ受ケタル日ヨリ二十一日以内ニ之ヲ提起スヘシ
異議ニ関スル期間ノ計算ニ付テハ訴願法ノ規定ニ依ル
異議ノ申立アルモ処分ノ執行ハ之ヲ停止セス但シ行政庁ハ其ノ職権ニ依リ又ハ関係者ノ請求ニ依リ必要ト認ムルトキハ之ヲ停止スルコトヲ得
第九十二条 監督官庁ハ必要アル場合ニ於テハ期間ヲ定メテ町村会ノ停会ヲ命スルコトヲ得
府県知事ハ町村会ノ解散ヲ命スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ三箇月以内ニ議員ヲ選挙スヘシ
第九十三条 町村ニ於テ法令ニ依テ負担シ又ハ当該官庁ノ職権ニ依テ命スル費用ヲ予算ニ載セサルトキハ島司郡長ハ理由ヲ示シテ其ノ費用ヲ予算ニ加フルコトヲ得
町村又ハ町村長其ノ他ノ吏員ニ於テ執行スヘキ事件ヲ執行セサルトキハ島司郡長又ハ其ノ委任ヲ受ケタル官吏吏員ニ於テ之ヲ執行スルコトヲ得但シ其ノ費用ハ町村ノ負担トス
本条ノ処分ニ不服アル町村又ハ町村長其ノ他ノ吏員ハ府県知事ニ訴願スルコトヲ得
第九十四条 左ニ掲クル事件ハ内務大臣及大蔵大臣ノ許可ヲ受クルコトヲ要ス
一 町村債ヲ起シ並起債ノ方法利息ノ定率及償還ノ方法ヲ定メ又ハ変更スル事但シ第七十四条第三項ノ借入金ハ此ノ限ニ在ラス
第九十五条 左ニ掲クル事件ハ府県知事ノ許可ヲ受クルコトヲ要ス
一 町村規則ヲ設ケ及改廃スル事
二 基本財産ノ管理及処分ニ関スル事
三 特別基本財産及積立金穀等ノ設置管理及処分ニ関スル事
四 不動産ノ管理及処分ニ関スル事
五 使用料手数料加入金ヲ新設シ増額シ又ハ変更スル事
六 寄附又ハ補助ヲ為ス事
七 第六十七条ニ依リ不均一ノ賦課ヲ為ス事
第九十六条 左ニ掲クル事件ハ島司郡長ノ許可ヲ受クルコトヲ要ス
一 第五十五条ノ処分ヲ為ス事
二 第六十六条ニ依リ数個人又ハ町村内ノ一部ニ費用ヲ負担セシムル事
三 継続費ヲ定メ又ハ変更スル事
四 特別会計ヲ設クル事
第九十七条 町村ノ行政ニ関シ監督官庁ノ許可ヲ要スヘキ事件ニ付テハ監督官庁ハ許可申請ノ趣旨ニ反セスト認ムル範囲内ニ於テ更正シテ許可ヲ与フルコトヲ得
第九十八条 町村吏員ノ服務紀律懲戒賠償責任身元保証及事務引継ニ関スル規程ハ内務大臣之ヲ定ム
第九十九条 町村ノ行政ニ関シ監督官庁ノ許可ヲ要スヘキ事件中其ノ軽易ナルモノハ其ノ許可ノ職権ヲ下級監督官庁ニ委任スルコトヲ得
町村ノ行政ニ関シ島司ノ職権ニ属スル事件ノ一部及前項ニ依リ島司ニ委任セラレタル事件ノ一部ハ之ヲ島庁出張所長ニ委任スルコトヲ得
第七章 雑則
第百条 本令ノ規定ニ依リ郡長ノ職権ニ属スル事件ニシテ数郡ニ渉ルモノアルトキハ関係郡長ノ具申ニ依リ府県知事ニ於テ其ノ事件ヲ管理スヘキ郡長ヲ指定スヘシ
第百一条 内務大臣ハ特別ノ事情アル町村ノ町村会議員選挙権被選挙権ニ関シ別段ノ規定ヲ設クルコトヲ得
第百二条 本令ニ定ムル直接国税ノ種類ハ内務大臣及大蔵大臣之ヲ告示ス
附 則
本令施行ノ地域及期日ハ府県知事ノ具申ニ依リ内務大臣之ヲ定ム