京釜鉄道買収法
法令番号: 法律第十八號
公布年月日: 明治39年3月31日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル京釜鐵道買收法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十九年三月三十日
內閣總理大臣兼外務大臣 侯爵 西園寺公望
陸軍大臣 寺內正毅
大藏大臣 法學博士 阪谷芳郞
遞信大臣 山縣伊三郞
法律第十八號
京釜鐵道買收法
第一條 政府ハ本法ノ規定ニ依リ明治三十九年ニ於テ京釜鐵道株式會社所屬ノ鐵道ヲ買收スヘシ
買收ノ期日ハ政府ニ於テ之ヲ指定ス
第二條 政府ハ買收ノ日ニ於テ會社ノ現ニ有スル權利義務ヲ承繼ス但シ會社ノ株主ニ對スル權利義務竝收益勘定、積立金勘定及雜勘定ニ屬スルモノハ此ノ限ニ在ラス
第三條 買收價額ハ左ニ揭クルモノトス
一 拂込株金ノ六分ニ相當スル金額ヲ二十倍シタル金額
二 京仁線ニ於ケル明治三十五年後半期乃至明治三十八年前半期ノ六營業年度間ニ於ケル建設費ニ對スル益金ノ平均割合ヲ買收ノ日ニ於ケル建設費ニ乘シタル額ヲ二十倍シタル金額
前項第二號ニ於テ益金ト稱スルハ營業收入ヨリ營業費及收益勘定以外ノ諸勘定ヨリ生シタル利息ヲ控除シタルモノヲ謂ヒ益金ノ平均割合ト稱スルハ明治三十五年後半期乃至明治三十八年前半期ノ每營業年度ニ於ケル建設費合計ヲ以テ同期間ニ於ケル益金ノ合計ヲ除シタルモノノ二倍ヲ謂フ
第四條 會社ニ於テ塡補スヘキ社債發行ノ差損金ハ會社ノ負擔トス
第五條 左ニ揭クル金額ハ時價ニ依リ公債券面金額ニ換算シ買收價額ヨリ之ヲ控除ス
一 京仁線ヘ繰替使用シタル金額
二 京仁線ノ債務ニシテ政府ヘ返還スヘキ金額
前項第二號ノ金額ハ買收ノ日ヲ以テ年五分ノ單利利引法ニ依リテ之ヲ算定ス
第六條 會社カ鐵道及附屬物件ノ補修ヲ爲ササル場合ニ於テハ其ノ補修ニ要スル金額ハ前條第一項ノ例ニ依リ買收價額ヨリ之ヲ控除ス
第七條 權利義務ノ承繼ニ關シ又ハ計算ニ關シ會社ニ於テ異議アルトキハ政府ハ審査委員ヲシテ決定ヲ爲サシムヘシ
審査委員ノ決定ハ終局トス
審査委員ニ關スル規定ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第八條 買收ノ執行ハ審査委員ノ審査中ト雖之ヲ停止セス
第九條 會社カ買收ニ因リテ解散シタルトキハ主務大臣ハ解散ノ登記ヲ登記所ニ囑託スヘシ
第十條 買收代價ハ買收ノ日ヨリ二箇年以內ニ於テ券面金額ニ依リ五分利付公債證書ヲ以テ之ヲ交付ス但シ五十圓未滿ノ端數ハ之ヲ五十圓トス
會社殘餘財產ノ分配ハ前項公債證書ヲ以テス
第十一條 政府ハ買收ノ日ヨリ公債證書交付ノ日ニ至ル迄買收價額ニ對シ一箇年百分ノ五ノ割合ニ相當スル金額ヲ從前ノ決算期每ニ會社ニ交付スヘシ
前項ニ依リ交付シタル金額ハ淸算中ト雖之ヲ株主ニ配當スルコトヲ得
第十二條 政府ハ買收ノ執行ニ必要ナル額ヲ限度トシ公債ヲ發行ス
第十三條 政府ハ前條ニ依リ發行シタル公債及第二條ニ依リ承繼シタル債務ノ整理ニ必要ナル額ヲ限度トシ公債ヲ發行スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ利率、募集ノ方法、規約、据置年限及償還年限ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十四條 前二條ノ公債ニ關シテハ本法ニ別段ノ規定アルモノヲ除クノ外整理公債條例ヲ適用ス
第十五條 第五條ニ規定シタル公債時價ハ買收期日前六箇月間ニ於ケル帝國五分利公債ノ平均相場ニ依ル
前項平均相場ハ日本銀行ノ證明ニ依リ政府之ヲ定ム
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル京釜鉄道買収法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十九年三月三十日
内閣総理大臣兼外務大臣 侯爵 西園寺公望
陸軍大臣 寺内正毅
大蔵大臣 法学博士 阪谷芳郎
逓信大臣 山県伊三郎
法律第十八号
京釜鉄道買収法
第一条 政府ハ本法ノ規定ニ依リ明治三十九年ニ於テ京釜鉄道株式会社所属ノ鉄道ヲ買収スヘシ
買収ノ期日ハ政府ニ於テ之ヲ指定ス
第二条 政府ハ買収ノ日ニ於テ会社ノ現ニ有スル権利義務ヲ承継ス但シ会社ノ株主ニ対スル権利義務並収益勘定、積立金勘定及雑勘定ニ属スルモノハ此ノ限ニ在ラス
第三条 買収価額ハ左ニ掲クルモノトス
一 払込株金ノ六分ニ相当スル金額ヲ二十倍シタル金額
二 京仁線ニ於ケル明治三十五年後半期乃至明治三十八年前半期ノ六営業年度間ニ於ケル建設費ニ対スル益金ノ平均割合ヲ買収ノ日ニ於ケル建設費ニ乗シタル額ヲ二十倍シタル金額
前項第二号ニ於テ益金ト称スルハ営業収入ヨリ営業費及収益勘定以外ノ諸勘定ヨリ生シタル利息ヲ控除シタルモノヲ謂ヒ益金ノ平均割合ト称スルハ明治三十五年後半期乃至明治三十八年前半期ノ毎営業年度ニ於ケル建設費合計ヲ以テ同期間ニ於ケル益金ノ合計ヲ除シタルモノノ二倍ヲ謂フ
第四条 会社ニ於テ填補スヘキ社債発行ノ差損金ハ会社ノ負担トス
第五条 左ニ掲クル金額ハ時価ニ依リ公債券面金額ニ換算シ買収価額ヨリ之ヲ控除ス
一 京仁線ヘ繰替使用シタル金額
二 京仁線ノ債務ニシテ政府ヘ返還スヘキ金額
前項第二号ノ金額ハ買収ノ日ヲ以テ年五分ノ単利利引法ニ依リテ之ヲ算定ス
第六条 会社カ鉄道及附属物件ノ補修ヲ為ササル場合ニ於テハ其ノ補修ニ要スル金額ハ前条第一項ノ例ニ依リ買収価額ヨリ之ヲ控除ス
第七条 権利義務ノ承継ニ関シ又ハ計算ニ関シ会社ニ於テ異議アルトキハ政府ハ審査委員ヲシテ決定ヲ為サシムヘシ
審査委員ノ決定ハ終局トス
審査委員ニ関スル規定ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第八条 買収ノ執行ハ審査委員ノ審査中ト雖之ヲ停止セス
第九条 会社カ買収ニ因リテ解散シタルトキハ主務大臣ハ解散ノ登記ヲ登記所ニ嘱託スヘシ
第十条 買収代価ハ買収ノ日ヨリ二箇年以内ニ於テ券面金額ニ依リ五分利付公債証書ヲ以テ之ヲ交付ス但シ五十円未満ノ端数ハ之ヲ五十円トス
会社残余財産ノ分配ハ前項公債証書ヲ以テス
第十一条 政府ハ買収ノ日ヨリ公債証書交付ノ日ニ至ル迄買収価額ニ対シ一箇年百分ノ五ノ割合ニ相当スル金額ヲ従前ノ決算期毎ニ会社ニ交付スヘシ
前項ニ依リ交付シタル金額ハ清算中ト雖之ヲ株主ニ配当スルコトヲ得
第十二条 政府ハ買収ノ執行ニ必要ナル額ヲ限度トシ公債ヲ発行ス
第十三条 政府ハ前条ニ依リ発行シタル公債及第二条ニ依リ承継シタル債務ノ整理ニ必要ナル額ヲ限度トシ公債ヲ発行スルコトヲ得
前項ノ場合ニ於テ利率、募集ノ方法、規約、据置年限及償還年限ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十四条 前二条ノ公債ニ関シテハ本法ニ別段ノ規定アルモノヲ除クノ外整理公債条例ヲ適用ス
第十五条 第五条ニ規定シタル公債時価ハ買収期日前六箇月間ニ於ケル帝国五分利公債ノ平均相場ニ依ル
前項平均相場ハ日本銀行ノ証明ニ依リ政府之ヲ定ム