(外国ニ於テ流通スル貨幣紙幣銀行券証券偽造変造及模造ニ関スル法律)
法令番号: 法律第66号
公布年月日: 明治38年3月20日
法令の形式: 法律

提案理由 (AIによる要約)

現行刑法には外国で流通する貨幣・紙幣・銀行券・証券の偽造・変造に関する規定が欠如しているため、これを取り締まる必要がある。また、明治37年勅令第177号は罪と刑の権衡を失し不備な点があるため、これを補完する必要がある。さらに、勅令は議員の権能では修正できないため、将来の修正に備えて法律として制定する必要がある。加えて、人の身体・生命・自由を制限する制裁は法律によるべきという原則に基づき、この法律の制定が必要である。

参照した発言:
第21回帝国議会 衆議院 俘虜刑罰法案外三件委員会 第2号

審議経過

第21回帝国議会

衆議院
本会議 - 第10号
(明治38年1月24日)
俘虜刑罰法案外三件委員会 - 第2号
(明治38年2月2日)
俘虜刑罰法案外三件委員会 - 第3号
(明治38年2月4日)
本会議 - 第14号
(明治38年2月7日)
貴族院
本会議 - 第11号
(明治38年2月13日)
明治三十七年勅令第百七十七号承諾を求むるの件外三件特別委員会 - 第1号
(明治38年2月15日)
明治三十七年勅令第百七十七号承諾を求むるの件外三件特別委員会 - 第2号
(明治38年2月21日)
本会議 - 第16号
(明治38年2月23日)
衆議院
本会議 - 第21号
(明治38年2月25日)
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル外國ニ於テ流通スル貨幣紙幣銀行券證券僞造變造及模造ニ關スル法律ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十八年三月十八日
內閣總理大臣　伯爵　桂太郞
內務大臣　子爵　芳川顯正
大藏大臣　男爵　曾禰荒助
外務大臣　男爵　小村壽太郞
司法大臣　波多野敬直
法律第六十六號
第一條　流通セシムルノ目的ヲ以テ外國ニ於テノミ流通スル金銀貨、紙幣、銀行券、帝國官府發行ノ證券ヲ僞造シ又ハ變造シタル者ハ重懲役又ハ輕懲役ニ處ス
金銀貨以外ノ硬貨ヲ僞造シ又ハ變造シタル者ハ輕懲役又ハ二年以上五年以下ノ重禁錮ニ處ス
第二條　流通セシムルノ目的ヲ以テ僞造又ハ變造ニ係ル前條ニ記載シタル物ヲ帝國若ハ外國ニ輸入シタル者ハ前條ノ例ニ同シ
第三條　情ヲ知テ僞造又ハ變造ニ係ル第一條ニ記載シタル物ヲ行使シ若ハ流通セシムルノ目的ヲ以テ授受シタル者ハ輕懲役又ハ六月以上五年以下ノ重禁錮ニ處ス
收得シタル後其ノ僞造又ハ變造ナルコトヲ知テ行使シ若ハ流通セシムルノ目的ヲ以テ授付シタル者ハ其ノ名價三倍以下ノ罰金ニ處ス但シ二圓以下ニ降スコトヲ得ス
第四條　第一條ノ僞造又ハ變造ノ用ニ供シ若ハ供セシムルノ目的ヲ以テ器械若ハ原料ヲ製造シ、授受シ若ハ準備シ又ハ帝國若ハ外國ニ輸入シタル者ハ六月以上五年以下ノ重禁錮ニ處ス
第五條　販賣スルノ目的ヲ以テ第一條ニ記載シタル物ニ紛ハシキ外觀ヲ有スル物ヲ製造シ又ハ帝國若ハ外國ニ輸入シタル者ハ二年以下ノ重禁錮又ハ二百圓以下ノ罰金ニ處ス
前項ニ記載シタル物ヲ販賣シタル者ハ前項ノ例ニ同シ
第六條　前數條ニ規定シタル輕罪ヲ犯サムトシテ未タ遂ケサル者ハ未遂犯罪ノ例ニ照シテ處斷ス
第七條　本法ニ規定シタル罪ヲ犯シ禁錮ノ刑ニ處スル者ハ六月以上二年以下ノ監視ニ付ス
第八條　本法ニ規定シタル罪ヲ犯シタル者僞造又ハ變造ニ係ル第一條ニ記載シタル物ノ未タ行使セラレサル前又ハ第五條ニ記載シタル物ノ未タ授付セラレサル前ニ於テ官ニ自首シタルトキハ主刑ヲ免除スルコトヲ得
第九條　本法ニ規定シタル罪ヲ犯シ外國ニ於テ確定裁判ヲ經タル者ト雖更ニ之ヲ處罰スルコトヲ妨ケス但シ犯人旣ニ外國ニ於テ言渡サレタル刑ノ全部又ハ一部ノ執行ヲ受ケタルトキハ刑ノ執行ヲ減免スルコトヲ得
第十條　僞造又ハ變造ニ係ル第一條ニ記載シタル物及第五條ニ記載シタル物ハ裁判ニ依リ沒收スル場合ノ外何人ノ所有ヲ問ハス行政ノ處分ヲ以テ之ヲ官沒ス
官沒ニ關スル手續ハ別ニ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十一條　僞造又ハ變造ニ係ル第一條ニ記載シタル物及第五條ニ記載シタル物ニハ明治九年布吿第五十七號ヲ準用ス
附　則
本法ハ發布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
明治三十七年勅令第百七十七號ハ之ヲ廢止ス
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル外国ニ於テ流通スル貨幣紙幣銀行券証券偽造変造及模造ニ関スル法律ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十八年三月十八日
内閣総理大臣　伯爵　桂太郎
内務大臣　子爵　芳川顕正
大蔵大臣　男爵　曽祢荒助
外務大臣　男爵　小村寿太郎
司法大臣　波多野敬直
法律第六十六号
第一条　流通セシムルノ目的ヲ以テ外国ニ於テノミ流通スル金銀貨、紙幣、銀行券、帝国官府発行ノ証券ヲ偽造シ又ハ変造シタル者ハ重懲役又ハ軽懲役ニ処ス
金銀貨以外ノ硬貨ヲ偽造シ又ハ変造シタル者ハ軽懲役又ハ二年以上五年以下ノ重禁錮ニ処ス
第二条　流通セシムルノ目的ヲ以テ偽造又ハ変造ニ係ル前条ニ記載シタル物ヲ帝国若ハ外国ニ輸入シタル者ハ前条ノ例ニ同シ
第三条　情ヲ知テ偽造又ハ変造ニ係ル第一条ニ記載シタル物ヲ行使シ若ハ流通セシムルノ目的ヲ以テ授受シタル者ハ軽懲役又ハ六月以上五年以下ノ重禁錮ニ処ス
収得シタル後其ノ偽造又ハ変造ナルコトヲ知テ行使シ若ハ流通セシムルノ目的ヲ以テ授付シタル者ハ其ノ名価三倍以下ノ罰金ニ処ス但シ二円以下ニ降スコトヲ得ス
第四条　第一条ノ偽造又ハ変造ノ用ニ供シ若ハ供セシムルノ目的ヲ以テ器械若ハ原料ヲ製造シ、授受シ若ハ準備シ又ハ帝国若ハ外国ニ輸入シタル者ハ六月以上五年以下ノ重禁錮ニ処ス
第五条　販売スルノ目的ヲ以テ第一条ニ記載シタル物ニ紛ハシキ外観ヲ有スル物ヲ製造シ又ハ帝国若ハ外国ニ輸入シタル者ハ二年以下ノ重禁錮又ハ二百円以下ノ罰金ニ処ス
前項ニ記載シタル物ヲ販売シタル者ハ前項ノ例ニ同シ
第六条　前数条ニ規定シタル軽罪ヲ犯サムトシテ未タ遂ケサル者ハ未遂犯罪ノ例ニ照シテ処断ス
第七条　本法ニ規定シタル罪ヲ犯シ禁錮ノ刑ニ処スル者ハ六月以上二年以下ノ監視ニ付ス
第八条　本法ニ規定シタル罪ヲ犯シタル者偽造又ハ変造ニ係ル第一条ニ記載シタル物ノ未タ行使セラレサル前又ハ第五条ニ記載シタル物ノ未タ授付セラレサル前ニ於テ官ニ自首シタルトキハ主刑ヲ免除スルコトヲ得
第九条　本法ニ規定シタル罪ヲ犯シ外国ニ於テ確定裁判ヲ経タル者ト雖更ニ之ヲ処罰スルコトヲ妨ケス但シ犯人既ニ外国ニ於テ言渡サレタル刑ノ全部又ハ一部ノ執行ヲ受ケタルトキハ刑ノ執行ヲ減免スルコトヲ得
第十条　偽造又ハ変造ニ係ル第一条ニ記載シタル物及第五条ニ記載シタル物ハ裁判ニ依リ没収スル場合ノ外何人ノ所有ヲ問ハス行政ノ処分ヲ以テ之ヲ官没ス
官没ニ関スル手続ハ別ニ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第十一条　偽造又ハ変造ニ係ル第一条ニ記載シタル物及第五条ニ記載シタル物ニハ明治九年布告第五十七号ヲ準用ス
附　則
本法ハ発布ノ日ヨリ之ヲ施行ス
明治三十七年勅令第百七十七号ハ之ヲ廃止ス