第一條 本令ニ於テ會社ト稱スルハ私設鐵道株式會社ヲ謂フ
本令ニ於テ軍事輸送ト稱スルハ特ニ準備シタル列車ニ依リ又ハ普通列車中一車輛以上ヲ專用シテ陸海軍團隊及其ノ携行シ又ハ之ニ宛テ追送スル馬匹及軍需品ヲ輸送スルヲ謂フ
本令ニ於テ軍用列車ト稱スルハ軍事輸送ノ爲特ニ準備シタル列車ヲ謂フ
第二條 會社ハ陸海軍官憲ノ要求ニ從ヒ軍事輸送ヲ爲スヘシ
軍事列車ニハ陸海軍官憲ノ承認アルトキハ郵便物ヲ搭載シ又ハ郵便車ヲ聯結スルコトヲ得
第三條 會社ハ他ノ會社ヨリ軍事輸送上必要ナル幇助ヲ請求セラレタルトキハ業務ニ支障ナキ限リ之ニ應スヘシ
第四條 軍用列車ハ搭載地ヨリ卸下地迄直通ノ運轉ヲ爲スヘシ
第五條 乘用ニ供スル車輛ハ將校、同相當官、准士官及軍屬タル高等文官若ハ之ニ準スヘキ者ニ在リテハ一等又ハ二等客車、下士卒及判任文官以下ノ軍屬ニ在リテハ三等客車トス
前項車輛ノ乘車人員ハ普通旅客定員ノ十分ノ八ヲ標準トス
第七條 戰用器材ハ無蓋貨車ニ搭載シ其ノ他ノ軍需品ハ其ノ種類及形狀ニ應シ有蓋貨車又ハ無蓋貨車ニ搭載スヘシ
第八條 客車ニハ普通旅客ニ供スルト同一ノ設備ヲ爲シ第六條ノ貨車ニハ燈器、敷藁及馬栓棒若ハ胸板ヲ備ヘ第七條ノ貨車中戰用車輛ヲ搭載スルモノニハ搭載品固定用ノ木楔、鎹、釘等ヲ備フヘシ
第九條 車輛ノ缺乏其ノ他己ヲ得サル場合ニ於テ陸海軍官憲ノ承認アルトキ又ハ陸海軍官憲ノ要求アル場合ニ於テ會社ニ支障ナキトキハ第四條乃至第八條ノ規定ニ依ラサルコトヲ得
第十條 軍事輸送ニ供スル車輛ハ淸潔ニ掃除シ必要ナル場合ニ於テハ消毒ヲ爲スヘシ
第十一條 會社ハ馬匹及軍需品ノ積卸ノ爲ニ要スル踏板及輸送上必要ナル雨覆等ヲ準備スヘシ
第十二條 會社ハ軍事輸送ニ際シ停車場內ノ㸃燈、公衆待合所、乘降場、厠等ヲ軍用ニ供スヘシ
第十三條 陸海軍官憲ニ於テ軍事輸送ニ際シ搭載卸下ノ爲必要ナル補足工事又ハ特別ノ施設ヲ爲サムトスルトキハ會社ハ正當ノ事由ナクシテ其ノ供用線ニ屬スル土地建物機械器具又ハ材料ノ供用ヲ拒ムコトヲ得ス
會社ニ於テ前項ノ工事又ハ施設ヲ爲スヘキ要求ヲ受ケタルトキハ正當ノ事由ナクシテ之ヲ拒ムコトヲ得ス
前二項ノ場合ニ於テ供用ノ費用又ハ工事若ハ施設ニ要スル費用ハ之ヲ補償ス但シ其ノ金額ハ陸軍大臣又ハ海軍大臣遞信大臣ト協議シテ之ヲ決定ス
第十四條 會社ハ陸海軍官憲ノ要求アルトキハ無償ニテ其ノ電信電話ニ依リ軍事輸送上直接ニ必要ナル通信ヲ取扱フヘシ
前項ノ料金ハ陸海軍官憲會社ト協議シテ之ヲ低減スルコトヲ得
第十六條 軍事輸送ノ實施ニ關スル規定ハ陸軍大臣海軍大臣遞信大臣協議シテ之ヲ定ム
第十八條 第二條第一項及第十三條ノ規定ニ違反シタルトキハ取締役ヲ二百圓以下ノ罰金又ハ一年以下ノ重禁錮ニ處シ第三條第四條第六條乃至第八條及第十四條ノ規定ニ違反シタルトキハ取締役ヲ百圓以下ノ罰金又ハ三月以下ノ重禁錮ニ處シ第十條乃至第十二條ノ規定ニ違反シタルトキハ取締役ヲ五十圓以下ノ罰金又ハ一月以下ノ重禁錮ニ處ス