防務条例
法令番号: 勅令第一號
公布年月日: 明治34年1月23日
法令の形式: 勅令
朕防務條例改正ノ件ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十四年一月二十二日
海軍大臣 山本權兵衞
陸軍大臣 男爵 兒玉源太郞
勅令第一號
防務條例
第一條 本條例ハ永久ノ目的ヲ以テ海岸ニ建設シタル防禦地㸃ノ防禦ニ關シ陸海軍協同作戰ノ分擔任務及其計畫指揮ヲ規定ス
第二條 海岸防禦地㸃ノ防禦ハ陸海軍協同シテ之ニ任スルモノトス而シテ陸海兩軍ノ性質ニ因リ分擔スヘキモノ槪ネ左ノ如シ
甲 陸軍ノ擔任
其一 陸地警戒勤務
其二 陸地防禦工事
其三 諸砲臺ノ勤務
其四 砲壘通信勤務
乙 海軍ノ擔任
其一 海上警戒勤務
其二 海中防禦及之ニ屬スル諸勤務
其三 船艦ヲ以テスル諸勤務
其四 海上通信勤務
第三條 平時陸海軍相連繫スル防禦計畫ノ要領ハ參謀總長海軍軍令部長ト協商シ裁定ノ後陸軍大臣及海軍大臣ニ移ス陸軍大臣若クハ海軍大臣ハ之ヲ當該長官ニ令達スルモノトス
第四條 東京灣、吳、佐世保、舞鶴ノ防禦ニ在テハ鎭守府司令長官及要塞司令官、由良、鳴門、藝豫、下ノ關、長崎、函館、對馬、基隆、澎湖島ノ防禦ニ在テハ要塞司令官、要港部司令官、警備隊司令官及海軍防禦部ノ長第二條ノ規定ニ依リ各其擔任ノ事項ヲ計畫ス
第五條 鎭守府司令長官、要塞司令官、要港部司令官、警備隊司令官及海軍防禦部ノ長ハ其協同作戰上相連繫スル事項ニ關シテハ互ニ諮議協商スヘシ
第六條 第四條ノ各防禦地ニ在テハ陸海軍司令官ノ下ニ互ニ連繫司令部ノ將校ヲ兼務セシム
第七條 凡テ策定セシ防禦計畫ハ每年三月左ノ如ク報吿移牒スヘシ
一 要塞司令官及警備隊司令官ハ二通ヲ調製シ所管師團長ヲ經由シ參謀總長ニ報吿シ參謀總長ハ其一通ヲ海軍軍令部長ニ移ス
二 鎭守府司令長官、要港部司令官及海軍防禦部ノ長ハ二通ヲ調製シ海軍軍令部長ニ報吿シ海軍軍令部長ハ其一通ヲ參謀總長ニ移ス但海軍防禦部ノ長ヨリ出ス報吿ハ所管鎭守府司令長官ヲ經由スヘシ
三 基隆及澎湖島ノ防禦計畫ハ臺灣總督ヲ經由シ參謀總長若クハ海軍軍令部長ニ報吿スルモノトス參謀總長及海軍軍令部長ノ互ニ其一通ヲ移スコトハ前二項ニ同シ
第八條 第四條各防禦地㸃ノ戰時ノ指揮官ハ每年三月陸軍大臣海軍大臣ト協議シ親裁ヲ經テ之ヲ定ム但シ陸軍大臣ハ參謀總長海軍大臣ハ海軍軍令部長ニ協議スルモノトス
四月一日ヨリ翌年三月盡日迄ノ間ニ指揮官ニ變更ヲ要スルトキハ同手續ニ依リ更ニ之ヲ定ム
第九條 戰時指揮官ノ幕僚ハ陸海兩軍ノ將校ヲ以テ編成ス其任命ハ臨時ニ指揮官ノ選定ト同キ手續ヲ經テ之ヲ行フモノトス但シ鎭守府司令長官、要塞司令官、要港部司令官、警備隊司令官ヲ以テ前條ノ指揮官ヲ兼掌セシムルトキハ別ニ幕僚ヲ編成セス指揮官タル各官ノ幕僚ニ所要ノ人員ヲ增加ス
附 則
第十條 舞鶴軍港ニ鎭守府ヲ澎湖島ニ要港部ヲ置カサル間ハ同港防禦上海軍ノ擔任ニ係ル事項ハ海軍首席將校之ヲ司リ基隆及澎湖島ニ要塞司令部ヲ置カサル間ハ同港防禦上陸軍ノ擔任ニ係ル事項ハ要塞砲兵隊長之ヲ司リ其防禦計畫ノ報吿移牒ハ第七條ニ准シ之ヲ行フモノトス
朕防務条例改正ノ件ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十四年一月二十二日
海軍大臣 山本権兵衛
陸軍大臣 男爵 児玉源太郎
勅令第一号
防務条例
第一条 本条例ハ永久ノ目的ヲ以テ海岸ニ建設シタル防禦地点ノ防禦ニ関シ陸海軍協同作戦ノ分担任務及其計画指揮ヲ規定ス
第二条 海岸防禦地点ノ防禦ハ陸海軍協同シテ之ニ任スルモノトス而シテ陸海両軍ノ性質ニ因リ分担スヘキモノ概ネ左ノ如シ
甲 陸軍ノ担任
其一 陸地警戒勤務
其二 陸地防禦工事
其三 諸砲台ノ勤務
其四 砲塁通信勤務
乙 海軍ノ担任
其一 海上警戒勤務
其二 海中防禦及之ニ属スル諸勤務
其三 船艦ヲ以テスル諸勤務
其四 海上通信勤務
第三条 平時陸海軍相連繋スル防禦計画ノ要領ハ参謀総長海軍軍令部長ト協商シ裁定ノ後陸軍大臣及海軍大臣ニ移ス陸軍大臣若クハ海軍大臣ハ之ヲ当該長官ニ令達スルモノトス
第四条 東京湾、呉、佐世保、舞鶴ノ防禦ニ在テハ鎮守府司令長官及要塞司令官、由良、鳴門、芸予、下ノ関、長崎、函館、対馬、基隆、澎湖島ノ防禦ニ在テハ要塞司令官、要港部司令官、警備隊司令官及海軍防禦部ノ長第二条ノ規定ニ依リ各其担任ノ事項ヲ計画ス
第五条 鎮守府司令長官、要塞司令官、要港部司令官、警備隊司令官及海軍防禦部ノ長ハ其協同作戦上相連繋スル事項ニ関シテハ互ニ諮議協商スヘシ
第六条 第四条ノ各防禦地ニ在テハ陸海軍司令官ノ下ニ互ニ連繋司令部ノ将校ヲ兼務セシム
第七条 凡テ策定セシ防禦計画ハ毎年三月左ノ如ク報告移牒スヘシ
一 要塞司令官及警備隊司令官ハ二通ヲ調製シ所管師団長ヲ経由シ参謀総長ニ報告シ参謀総長ハ其一通ヲ海軍軍令部長ニ移ス
二 鎮守府司令長官、要港部司令官及海軍防禦部ノ長ハ二通ヲ調製シ海軍軍令部長ニ報告シ海軍軍令部長ハ其一通ヲ参謀総長ニ移ス但海軍防禦部ノ長ヨリ出ス報告ハ所管鎮守府司令長官ヲ経由スヘシ
三 基隆及澎湖島ノ防禦計画ハ台湾総督ヲ経由シ参謀総長若クハ海軍軍令部長ニ報告スルモノトス参謀総長及海軍軍令部長ノ互ニ其一通ヲ移スコトハ前二項ニ同シ
第八条 第四条各防禦地点ノ戦時ノ指揮官ハ毎年三月陸軍大臣海軍大臣ト協議シ親裁ヲ経テ之ヲ定ム但シ陸軍大臣ハ参謀総長海軍大臣ハ海軍軍令部長ニ協議スルモノトス
四月一日ヨリ翌年三月尽日迄ノ間ニ指揮官ニ変更ヲ要スルトキハ同手続ニ依リ更ニ之ヲ定ム
第九条 戦時指揮官ノ幕僚ハ陸海両軍ノ将校ヲ以テ編成ス其任命ハ臨時ニ指揮官ノ選定ト同キ手続ヲ経テ之ヲ行フモノトス但シ鎮守府司令長官、要塞司令官、要港部司令官、警備隊司令官ヲ以テ前条ノ指揮官ヲ兼掌セシムルトキハ別ニ幕僚ヲ編成セス指揮官タル各官ノ幕僚ニ所要ノ人員ヲ増加ス
附 則
第十条 舞鶴軍港ニ鎮守府ヲ澎湖島ニ要港部ヲ置カサル間ハ同港防禦上海軍ノ担任ニ係ル事項ハ海軍首席将校之ヲ司リ基隆及澎湖島ニ要塞司令部ヲ置カサル間ハ同港防禦上陸軍ノ担任ニ係ル事項ハ要塞砲兵隊長之ヲ司リ其防禦計画ノ報告移牒ハ第七条ニ准シ之ヲ行フモノトス