軍衙間囚人及刑事被告人押送規則
法令番号: 勅令第四百五號
公布年月日: 明治32年10月16日
法令の形式: 勅令
朕軍衙間囚人及刑事被吿人押送規則ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十二年十月十四日
內務大臣 侯爵 西鄕從道
陸軍大臣 子爵 桂太郞
海軍大臣 山本權兵衞
勅令第四百五號
軍衙間囚人及刑事被吿人押送規則
第一條 囚人及刑事被吿人ノ押送ハ陸軍ニ於テハ陸軍兵員海軍ニ於テハ海軍兵員憲兵若ハ海軍警査ヲシテ之ヲ爲サシム但シ被押送者在監人ナルトキハ陸軍監獄若ハ海軍監獄看守長看守ヲシテ押送セシムルコトヲ得
第二條 囚人及刑事被吿人ヲ押送セントスルトキハ發送官衙ニ於テ押送狀ヲ作リ被押送者ニ關スル必要ナル書類ヲ添ヘ被押送者ト共ニ押送者ニ交付スヘシ
押送狀ニハ被押送者ノ本籍住所所屬身分氏名年齡、刑名刑期又ハ被吿事件人相竝著用被服所持品送致貨幣物品書類ノ目錄等ヲ記載スヘシ
押送者ハ押送經路、宿泊、被押送者ノ傷痍疾病暴行其ノ他押送中ニ生シタル重要ナル事項ヲ押送狀ニ記入スヘシ
第三條 傷痍ヲ受ケ若ハ疾病ニ罹リタル者ハ醫師ニ於テ差支ナシト認ムルニ非サレハ之ヲ押送スルコトヲ得ス
第四條 被押送者ノ所持スル貨幣物品ヲ被押送者ト同時ニ送致スルトキハ左ノ手續ニ依ルヘシ
一 物品ハ押送者ニ託シテ送致ス但シ危險ノ虞アル物品及押送者ノ携帶ニ堪ヘサル物品ハ此ノ限ニ在ラス
二 貨幣ハ押送者ニ託セス保管金寄託替ノ手續ニ依リ送致ス但シ五圓未滿ノ金額若ハ押送期間一日以上ニ亙ラサル場合及刑事被吿人ニ屬スル貨幣ニシテ本人ノ請求アル場合ハ押送者ニ託スルコトヲ得
前項ニ依リ送致スル貨幣物品ハ押送者ニ託スル場合ニ於テハ押送官衙ノ保管ニ屬シ押送者ニ託セサル場合ニ於テハ發送官衙ノ保管ニ屬ス
第五條 押送ハ汽車汽船ニ依ルモノ若ハ特別ノ事由アルトキノ外日出前日沒後ニ於テ之ヲ爲スコトヲ得ス
第六條 押送中宿泊ヲ要スルトキハ被押送者ヲ陸軍監獄若ハ海軍監獄ニ付託シテ宿泊セシメ陸軍監獄若ハ海軍監獄ナキ地ニ於テハ警察署若ハ警察分署ニ付託シテ宿泊セシムヘシ
前項ノ官署ナキ地ニ於テハ適宜被押送者ノ宿泊ヲ定ムルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ憲兵警察官吏及市町村吏員ノ助力ヲ求ムルコトヲ得
第七條 押送中被押送者傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リタルトキハ押送者ハ速ニ相當ノ手當ヲ爲スヘシ此ノ場合ニ於テハ憲兵警察官吏及市町村吏員ノ助力ヲ求ムルコトヲ得
第八條 押送中被押送者逃走ヲ謀リ又ハ暴行ヲ爲サムトシ其ノ他押送ヲ全クスルコトヲ得サル虞アルトキハ押送者ハ憲兵及警察官吏ノ助力ヲ求ムルコトヲ得
第九條 押送中被押送者ノ傷痍疾病其ノ他已ムコトヲ得サル事由ニ因リ押送ノ停止ヲ要スルトキハ押送者ハ一時被押送者ヲ陸軍監獄若ハ海軍監獄ニ付託シ陸軍監獄若ハ海軍監獄ナキ地ニ於テハ警察署若ハ警察分署ニ付託スルコトヲ得
押送ヲ停止シタルトキハ其ノ旨ヲ押送官衙ニ通知シ指揮ヲ待ツヘシ
第十條 押送中被押送者死亡シタルトキハ押送者ハ速ニ其ノ旨ヲ本人所屬ノ官衙發送押送受送ノ各官衙本籍市町村長及近地所在ノ親族ニ通知シ醫師ヨリ死亡證書ヲ徵シ死亡後二十四時ヲ經死體引取人ナキトキハ其ノ地ニ於テ假埋葬ヲ爲スヘシ但シ死體引渡及埋葬ニ付本人所屬ノ官衙若ハ押送官衙ヨリ別段ノ指示アリタルトキハ其ノ指示ニ從フヘシ
前項ノ處分ヲ爲スニ付テハ憲兵警察官吏及市町村吏員ノ助力ヲ求ムルコトヲ得
死體ニ關スル處分ハ之ヲ本人所屬ノ官衙押送官衙及本籍市町村長ニ通知スヘシ此ノ通知ニハ死亡證書ヲ添附スルコトヲ要ス
第十一條 被押送者ニ屬スル食料其ノ他ノ費用ハ押送官衙ノ負擔トス
第十二條 押送中被押送者逃走シタルトキハ押送者ハ直ニ其ノ旨ヲ最寄ノ憲兵屯所憲兵分屯所警察署警察分署巡査派出所若ハ巡査駐在所ニ急報シ且速ニ發送押送受送ノ各官衙ニ通知シ第二條及第四條ニ記載シタル書類貨幣及物品ヲ押送官衙ニ返付スヘシ
第十三條 被押送者傳染病流行地ヲ經過シタルトキハ離隔消毒法ヲ行フヘシ
第十四條 本令ニ於テ押送官衙ト稱スルハ押送者ノ屬スル官衙ヲ謂フ
朕軍衙間囚人及刑事被告人押送規則ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十二年十月十四日
内務大臣 侯爵 西郷従道
陸軍大臣 子爵 桂太郎
海軍大臣 山本権兵衛
勅令第四百五号
軍衙間囚人及刑事被告人押送規則
第一条 囚人及刑事被告人ノ押送ハ陸軍ニ於テハ陸軍兵員海軍ニ於テハ海軍兵員憲兵若ハ海軍警査ヲシテ之ヲ為サシム但シ被押送者在監人ナルトキハ陸軍監獄若ハ海軍監獄看守長看守ヲシテ押送セシムルコトヲ得
第二条 囚人及刑事被告人ヲ押送セントスルトキハ発送官衙ニ於テ押送状ヲ作リ被押送者ニ関スル必要ナル書類ヲ添ヘ被押送者ト共ニ押送者ニ交付スヘシ
押送状ニハ被押送者ノ本籍住所所属身分氏名年齢、刑名刑期又ハ被告事件人相並著用被服所持品送致貨幣物品書類ノ目録等ヲ記載スヘシ
押送者ハ押送経路、宿泊、被押送者ノ傷痍疾病暴行其ノ他押送中ニ生シタル重要ナル事項ヲ押送状ニ記入スヘシ
第三条 傷痍ヲ受ケ若ハ疾病ニ罹リタル者ハ医師ニ於テ差支ナシト認ムルニ非サレハ之ヲ押送スルコトヲ得ス
第四条 被押送者ノ所持スル貨幣物品ヲ被押送者ト同時ニ送致スルトキハ左ノ手続ニ依ルヘシ
一 物品ハ押送者ニ託シテ送致ス但シ危険ノ虞アル物品及押送者ノ携帯ニ堪ヘサル物品ハ此ノ限ニ在ラス
二 貨幣ハ押送者ニ託セス保管金寄託替ノ手続ニ依リ送致ス但シ五円未満ノ金額若ハ押送期間一日以上ニ亘ラサル場合及刑事被告人ニ属スル貨幣ニシテ本人ノ請求アル場合ハ押送者ニ託スルコトヲ得
前項ニ依リ送致スル貨幣物品ハ押送者ニ託スル場合ニ於テハ押送官衙ノ保管ニ属シ押送者ニ託セサル場合ニ於テハ発送官衙ノ保管ニ属ス
第五条 押送ハ汽車汽船ニ依ルモノ若ハ特別ノ事由アルトキノ外日出前日没後ニ於テ之ヲ為スコトヲ得ス
第六条 押送中宿泊ヲ要スルトキハ被押送者ヲ陸軍監獄若ハ海軍監獄ニ付託シテ宿泊セシメ陸軍監獄若ハ海軍監獄ナキ地ニ於テハ警察署若ハ警察分署ニ付託シテ宿泊セシムヘシ
前項ノ官署ナキ地ニ於テハ適宜被押送者ノ宿泊ヲ定ムルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ憲兵警察官吏及市町村吏員ノ助力ヲ求ムルコトヲ得
第七条 押送中被押送者傷痍ヲ受ケ又ハ疾病ニ罹リタルトキハ押送者ハ速ニ相当ノ手当ヲ為スヘシ此ノ場合ニ於テハ憲兵警察官吏及市町村吏員ノ助力ヲ求ムルコトヲ得
第八条 押送中被押送者逃走ヲ謀リ又ハ暴行ヲ為サムトシ其ノ他押送ヲ全クスルコトヲ得サル虞アルトキハ押送者ハ憲兵及警察官吏ノ助力ヲ求ムルコトヲ得
第九条 押送中被押送者ノ傷痍疾病其ノ他已ムコトヲ得サル事由ニ因リ押送ノ停止ヲ要スルトキハ押送者ハ一時被押送者ヲ陸軍監獄若ハ海軍監獄ニ付託シ陸軍監獄若ハ海軍監獄ナキ地ニ於テハ警察署若ハ警察分署ニ付託スルコトヲ得
押送ヲ停止シタルトキハ其ノ旨ヲ押送官衙ニ通知シ指揮ヲ待ツヘシ
第十条 押送中被押送者死亡シタルトキハ押送者ハ速ニ其ノ旨ヲ本人所属ノ官衙発送押送受送ノ各官衙本籍市町村長及近地所在ノ親族ニ通知シ医師ヨリ死亡証書ヲ徴シ死亡後二十四時ヲ経死体引取人ナキトキハ其ノ地ニ於テ仮埋葬ヲ為スヘシ但シ死体引渡及埋葬ニ付本人所属ノ官衙若ハ押送官衙ヨリ別段ノ指示アリタルトキハ其ノ指示ニ従フヘシ
前項ノ処分ヲ為スニ付テハ憲兵警察官吏及市町村吏員ノ助力ヲ求ムルコトヲ得
死体ニ関スル処分ハ之ヲ本人所属ノ官衙押送官衙及本籍市町村長ニ通知スヘシ此ノ通知ニハ死亡証書ヲ添附スルコトヲ要ス
第十一条 被押送者ニ属スル食料其ノ他ノ費用ハ押送官衙ノ負担トス
第十二条 押送中被押送者逃走シタルトキハ押送者ハ直ニ其ノ旨ヲ最寄ノ憲兵屯所憲兵分屯所警察署警察分署巡査派出所若ハ巡査駐在所ニ急報シ且速ニ発送押送受送ノ各官衙ニ通知シ第二条及第四条ニ記載シタル書類貨幣及物品ヲ押送官衙ニ返付スヘシ
第十三条 被押送者伝染病流行地ヲ経過シタルトキハ離隔消毒法ヲ行フヘシ
第十四条 本令ニ於テ押送官衙ト称スルハ押送者ノ属スル官衙ヲ謂フ