国有林野部分林規則
法令番号: 勅令第三百六十二號
公布年月日: 明治32年8月3日
法令の形式: 勅令
朕樞密顧問ノ諮詢ヲ經テ國有林野部分林規則ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十二年八月二日
農商務大臣 曾禰荒助
勅令第三百六十二號
國有林野部分林規則
第一條 國有林野ニ部分林ヲ設定スルハ本令ノ定ムル所ニ依ル
第二條 部分林ノ收益分收ノ部合ハ地代及造林費ヲ參酌シテ農商務大臣之ヲ定ム
造林者ノ分收部合ハ十分ノ八ヲ超ユルコトヲ得ス
第三條 造林者ハ大林區署長ノ許可ヲ得ルニ非サレハ其ノ權利ヲ處分スルコトヲ得ス
第四條 造林者ハ部分林ノ植樹、補植、手入其ノ他造林ニ必要ナル行爲ヲ爲スヘシ
第五條 造林者ハ大林區署長ノ指定シタル期間內ニ植樹ヲ終ルヘシ
大林區署長ハ已ムヲ得サル事由アリト認ムル場合ニ限リ造林者ノ請求ニ依リ二年以內ニ於テ植樹期間ノ延長ヲ許可スルコトヲ得
第六條 造林者植樹準備又ハ手入ノ爲部分林ニ耕作ヲ爲サントスルトキハ大林區署長ノ許可ヲ受クヘシ
第七條 造林者ハ左ノ事項ニ關シ部分林ヲ保護スル義務ヲ負フ
一 火災ノ豫防及消防
二 盜伐、誤伐、冒認、侵墾其ノ他ノ加害行爲ノ豫防及防止
三 有害動物ノ豫防及驅除
四 境界標其ノ他ノ標識ノ保存
五 稚樹ノ保育
六 大林區署長ノ命ニ依リ看守人ヲ配置スルコト
第八條 造林者ハ左ノ產物ヲ採取スルコトヲ得
一 下草、落葉及落枝
二 樹實及菌蕈ノ類
三 部分林設定後天然ニ生育シタル雜木
四 植樹後二十年以內ニ於テ手入ノ爲伐採スル樹木
第九條 部分林設定後天然ニ生育シタル樹木ニシテ雜木ニ非サルモノハ之ヲ部分林ノ樹木ト看做ス
第十條 根株ハ特別ノ契約アル場合ヲ除ク外國ノ所有トス
第十一條 部分林ノ收益ハ其ノ樹木ノ賣拂代金ヲ以テ分收ス但シ國ノ分收スヘキ樹木ヲ保存スル必要アルトキハ材積ヲ以テ分收ヲ爲スコトヲ得
第十二條 代金ヲ以テ分收スルトキハ樹木ノ賣拂ハ當該官廳之ヲ行フ
材積ヲ以テ分收スルトキハ造林者ハ大林區署長ノ指定シタル期間內ニ其ノ分收樹木ノ搬出ヲ終ルヘシ
前項ノ搬出期間ハ三年ヲ超ユルコトヲ得ス
大林區署長ハ已ムヲ得サル事由アリト認ムル場合ニ於テハ二年以內ヲ限リ搬出期間ノ延長ヲ許可スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ延長期間ニ對スル地代ヲ前納セシムヘシ
第十三條 造林者搬出期間內ニ分收樹木ノ搬出ヲ終ラサルトキハ其ノ搬出セサル樹木ハ國ノ所有ニ歸ス
第十四條 大林區署長ハ森林經濟上利益ナリト認ムル場合ニ限リ造林者ノ請求ニ因リ十年以內ニ於テ部分林ノ存續期間又ハ伐期ヲ變更スルコトヲ得
第十五條 部分林ニ損害ヲ加ヘタル第三者ヨリ賠償トシテ得タル金額ハ分收部合ニ依リ之ヲ分收ス
第十六條 天災其ノ他避クヘカラサル事變ニ因リ契約無效ト爲リタル場合ニ於テハ現存ノ樹木ハ分收部合ニ依リ之ヲ分收ス已ムヲ得サル事由ニ因リ造林者契約ノ解除ヲ願出テ之ヲ許可シタル場合亦同シ
第十七條 造林者左ノ諸項ニ該當スルトキハ農商務大臣ハ部分林設定契約ノ解除ヲ爲スコトヲ得但シ造林者ノ責ニ歸スヘカラサル事由アルトキハ此ノ限ニ在ラス
一 植樹期間ノ始期ヨリ一年ヲ經過スルモ植樹ニ著手セサルトキ
二 植樹期間內ニ植樹シタル面積カ總面積ノ二分ノ一ニ及ハサルトキ
三 植樹期間延長ノ許可ヲ得タル場合ニ於テ其ノ期間內ニ植樹ヲ終ラサルトキ
四 植樹ヲ終リタル後五年ヲ過クルモ成林ノ見込ナキトキ
五 造林者其ノ部分林ニ關シ罪ヲ犯シタルトキ
第十八條 前條ノ規定ニ依リ部分林設定契約ノ解除ヲ爲シタルトキハ部分林設定ノ日ニ遡リ地代ヲ徵收シ旣植ノ樹木ハ國ノ所有ニ歸ス
第十九條 造林者部分林ヲ他ノ目的ニ使用シタルトキハ五十圓以下ノ罰金ニ處ス部分林ヲ他人ニ貸付シ又ハ使用セシメタルトキ亦同シ
附 則
第二十條 明治十一年三月內務省甲第四號布達部分木仕付條例ハ之ヲ廢止ス
第二十一條 第二條ノ規定ハ國有林野法第十九條第二項ノ規定ニ依ル部分林ニハ之ヲ適用セス
第二十二條 國有林野法第十九條第二項ノ規定ニ依ル部分林ニシテ存續期間ノ定ナキモノ又ハ其ノ期間本令施行ノ日ヨリ起算シテ八十年ヲ超ユルモノニ付テハ其ノ部分林ノ存續期間及伐期ハ現存スル樹木ノ年齡ヲ參酌シテ農商務大臣之ヲ定ム
第二十三條 國有林野法第十九條第二項ノ規定ニ依ル部分林ニシテ天然ニ生育シタル雜木ノ分收ヲ目的トスルモノナルトキハ其ノ雜木ハ部分林ノ樹木ト看做ス
朕枢密顧問ノ諮詢ヲ経テ国有林野部分林規則ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十二年八月二日
農商務大臣 曽祢荒助
勅令第三百六十二号
国有林野部分林規則
第一条 国有林野ニ部分林ヲ設定スルハ本令ノ定ムル所ニ依ル
第二条 部分林ノ収益分収ノ部合ハ地代及造林費ヲ参酌シテ農商務大臣之ヲ定ム
造林者ノ分収部合ハ十分ノ八ヲ超ユルコトヲ得ス
第三条 造林者ハ大林区署長ノ許可ヲ得ルニ非サレハ其ノ権利ヲ処分スルコトヲ得ス
第四条 造林者ハ部分林ノ植樹、補植、手入其ノ他造林ニ必要ナル行為ヲ為スヘシ
第五条 造林者ハ大林区署長ノ指定シタル期間内ニ植樹ヲ終ルヘシ
大林区署長ハ已ムヲ得サル事由アリト認ムル場合ニ限リ造林者ノ請求ニ依リ二年以内ニ於テ植樹期間ノ延長ヲ許可スルコトヲ得
第六条 造林者植樹準備又ハ手入ノ為部分林ニ耕作ヲ為サントスルトキハ大林区署長ノ許可ヲ受クヘシ
第七条 造林者ハ左ノ事項ニ関シ部分林ヲ保護スル義務ヲ負フ
一 火災ノ予防及消防
二 盗伐、誤伐、冒認、侵墾其ノ他ノ加害行為ノ予防及防止
三 有害動物ノ予防及駆除
四 境界標其ノ他ノ標識ノ保存
五 稚樹ノ保育
六 大林区署長ノ命ニ依リ看守人ヲ配置スルコト
第八条 造林者ハ左ノ産物ヲ採取スルコトヲ得
一 下草、落葉及落枝
二 樹実及菌蕈ノ類
三 部分林設定後天然ニ生育シタル雑木
四 植樹後二十年以内ニ於テ手入ノ為伐採スル樹木
第九条 部分林設定後天然ニ生育シタル樹木ニシテ雑木ニ非サルモノハ之ヲ部分林ノ樹木ト看做ス
第十条 根株ハ特別ノ契約アル場合ヲ除ク外国ノ所有トス
第十一条 部分林ノ収益ハ其ノ樹木ノ売払代金ヲ以テ分収ス但シ国ノ分収スヘキ樹木ヲ保存スル必要アルトキハ材積ヲ以テ分収ヲ為スコトヲ得
第十二条 代金ヲ以テ分収スルトキハ樹木ノ売払ハ当該官庁之ヲ行フ
材積ヲ以テ分収スルトキハ造林者ハ大林区署長ノ指定シタル期間内ニ其ノ分収樹木ノ搬出ヲ終ルヘシ
前項ノ搬出期間ハ三年ヲ超ユルコトヲ得ス
大林区署長ハ已ムヲ得サル事由アリト認ムル場合ニ於テハ二年以内ヲ限リ搬出期間ノ延長ヲ許可スルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ延長期間ニ対スル地代ヲ前納セシムヘシ
第十三条 造林者搬出期間内ニ分収樹木ノ搬出ヲ終ラサルトキハ其ノ搬出セサル樹木ハ国ノ所有ニ帰ス
第十四条 大林区署長ハ森林経済上利益ナリト認ムル場合ニ限リ造林者ノ請求ニ因リ十年以内ニ於テ部分林ノ存続期間又ハ伐期ヲ変更スルコトヲ得
第十五条 部分林ニ損害ヲ加ヘタル第三者ヨリ賠償トシテ得タル金額ハ分収部合ニ依リ之ヲ分収ス
第十六条 天災其ノ他避クヘカラサル事変ニ因リ契約無効ト為リタル場合ニ於テハ現存ノ樹木ハ分収部合ニ依リ之ヲ分収ス已ムヲ得サル事由ニ因リ造林者契約ノ解除ヲ願出テ之ヲ許可シタル場合亦同シ
第十七条 造林者左ノ諸項ニ該当スルトキハ農商務大臣ハ部分林設定契約ノ解除ヲ為スコトヲ得但シ造林者ノ責ニ帰スヘカラサル事由アルトキハ此ノ限ニ在ラス
一 植樹期間ノ始期ヨリ一年ヲ経過スルモ植樹ニ著手セサルトキ
二 植樹期間内ニ植樹シタル面積カ総面積ノ二分ノ一ニ及ハサルトキ
三 植樹期間延長ノ許可ヲ得タル場合ニ於テ其ノ期間内ニ植樹ヲ終ラサルトキ
四 植樹ヲ終リタル後五年ヲ過クルモ成林ノ見込ナキトキ
五 造林者其ノ部分林ニ関シ罪ヲ犯シタルトキ
第十八条 前条ノ規定ニ依リ部分林設定契約ノ解除ヲ為シタルトキハ部分林設定ノ日ニ遡リ地代ヲ徴収シ既植ノ樹木ハ国ノ所有ニ帰ス
第十九条 造林者部分林ヲ他ノ目的ニ使用シタルトキハ五十円以下ノ罰金ニ処ス部分林ヲ他人ニ貸付シ又ハ使用セシメタルトキ亦同シ
附 則
第二十条 明治十一年三月内務省甲第四号布達部分木仕付条例ハ之ヲ廃止ス
第二十一条 第二条ノ規定ハ国有林野法第十九条第二項ノ規定ニ依ル部分林ニハ之ヲ適用セス
第二十二条 国有林野法第十九条第二項ノ規定ニ依ル部分林ニシテ存続期間ノ定ナキモノ又ハ其ノ期間本令施行ノ日ヨリ起算シテ八十年ヲ超ユルモノニ付テハ其ノ部分林ノ存続期間及伐期ハ現存スル樹木ノ年齢ヲ参酌シテ農商務大臣之ヲ定ム
第二十三条 国有林野法第十九条第二項ノ規定ニ依ル部分林ニシテ天然ニ生育シタル雑木ノ分収ヲ目的トスルモノナルトキハ其ノ雑木ハ部分林ノ樹木ト看做ス