(刑事訴訟法中改正法律)
法令番号: 法律第七十三號
公布年月日: 明治32年3月22日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル刑事訴訟法中改正法律ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十二年三月二十日
內閣總理大臣 侯爵 山縣有朋
大藏大臣 伯爵 松方正義
內務大臣 侯爵 西鄕從道
陸軍大臣 子爵 桂太郞
文部大臣 伯爵 樺山資紀
外務大臣 子爵 靑木周藏
遞信大臣 子爵 芳川顯正
海軍大臣 山本權兵衞
司法大臣 淸浦奎吾
農商務大臣 曾禰荒助
法律第七十三號
刑事訴訟法中左ノ通改正ス
第二十條第二項中「若シ署名捺印スルコト能ハサルトキハ官吏、公吏ノ面前ニ於テ作リタル場合ヲ除ク外立會人代署シ其事由ヲ記載ス可シ」ヲ削ル
第二十一條 官吏、公吏訴訟ニ關スル書類ノ原本、正本又ハ謄本ヲ作ルニ付キ文字ヲ改竄ス可カラス若シ挿入、削除及ヒ欄外ノ記入アルトキハ之ニ認印ス可シ文字ヲ削除スルトキハ之ヲ讀ミ得ヘキ爲メ字體ヲ存シ其數ヲ記載ス可シ此規定ニ背キタルトキハ其變更增減ノ效ナカル可シ
第二十一條ノ次ニ左ノ一條ヲ加フ
第二十一條ノ二 官吏、公吏ニ非サル者ノ署名捺印ス可キ場合ニ於テ捺印スルコト能ハサルトキハ署名ノミヲ爲シ署名スルコト能ハサルトキハ立會人ヲシテ代署セシメ捺印ノミヲ爲シ若シ署名捺印スルコト能ハサルトキハ立會人ヲシテ代署セシム可シ
立會人ハ其代署ノ事由ヲ記載シテ署名シ又ハ署名捺印ス可シ
官吏、公吏ノ面前ニ於テハ本人署名スルコト能ハサル場合ト雖モ立會人ヲ要セス官吏、公吏代署シテ其事由ヲ附記ス可シ
第七十七條第二項ヲ左ノ如ク改ム
勾引狀、勾留狀ヲ執行スルニハ其正本ヲ携帶シ被吿人ノ請求アルトキハ之ヲ示ス可シ
同條ニ左ノ二項ヲ加フ
勾引狀、勾留狀ヲ執行シタルトキハ其正本ニ執行ノ場所及ヒ日時ヲ記載シ若シ執行スルコト能ハサルトキハ其事由ヲ記載シテ署名捺印ス可シ
巡査、憲兵卒ハ令狀ニ關スル書類ヲ檢事ニ差出ス可シ
第八十三條削除
第八十四條 在監中ノ被吿人ニ對シ發シタル勾留狀ハ司獄官吏ヲシテ之ヲ執行セシム
勾留狀執行ニ關シテハ第七十七條ノ規定ヲ適用ス
第八十五條 勾留ヲ受ケタル被吿人ハ官吏ノ立會ニ依リ他人ト接見スルコトヲ得
書類ハ豫審判事又ハ檢事ノ檢閱ヲ經タル後他人ト之ヲ授受スルコトヲ得
豫審判事ハ必要ナリト思料シタルトキハ被吿人ノ監房ヲ別異シ、他人トノ接見、書類物件ノ授受ヲ禁シ又ハ其書類物件ヲ差押フルコトヲ得
第二節密室監禁第八十七條第八十八條及第八十九條削除
第百三十六條ニ左ノ一項ヲ加フ
第百條第百一條ノ規定ハ鑑定人ニ付テモ亦之ヲ適用ス
第百五十八條ノ次ニ左ノ一條ヲ加フ
第百五十八條ノ二 保釋ヲ許ササル言渡ニ對シテハ其裁判所ヘ異議ノ申立ヲ爲スコトヲ得
裁判所ハ檢事ノ意見ヲ聽キ其許否ヲ決定ス可シ
第百七十八條 裁判長ハ何時ニテモ禁錮以上ノ刑ニ該ル可キ被吿人ニ對シ勾引狀ヲ發スルコトヲ得
裁判所ハ被吿人ヲ訊問シタル後何時ニテモ禁錮以上ノ刑ニ該ル可キ被吿人ニ對シ勾留狀ヲ發スルコトヲ得
第百七十九條ノ次ニ左ノ一條ヲ加フ
第百七十九條ノ二 左ノ場合ニ於テ被吿人自ラ辯護人ヲ選任セサルトキハ裁判所ハ檢事ノ申立ニ因リ又ハ職權ヲ以テ辯護人ヲ付スルコトヲ得
第一 被吿人十五歲未滿ナルトキ
第二 被吿人婦女ナルトキ
第三 被吿人聾者又ハ啞者ナルトキ
第四 被吿人精神病ニ罹リ又ハ意識不十分ナルノ疑アルトキ
第五 被吿事件ノ模樣ニ因リ裁判所ニ於テ辯護人ヲ必要ナリトスルトキ
前項ノ辯護人ハ裁判長ノ職權ヲ以テ其裁判所所屬ノ辯護士中ヨリ選任ス可シ但辯護士一名ヲシテ被吿人數名ノ辯護ヲ爲サシムルコトヲ得
第二百三條 刑ノ言渡ヲ爲スニハ罪トナルヘキ事實及ヒ證據ニ依リテ之ヲ認メタル理由ヲ明示シ且法律ヲ適用シ其理由ヲ付ス可シ
無罪又ハ免訴ノ言渡ヲ爲スニ付テモ亦其理由ヲ明示スヘシ
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル刑事訴訟法中改正法律ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十二年三月二十日
内閣総理大臣 侯爵 山県有朋
大蔵大臣 伯爵 松方正義
内務大臣 侯爵 西郷従道
陸軍大臣 子爵 桂太郎
文部大臣 伯爵 樺山資紀
外務大臣 子爵 青木周蔵
逓信大臣 子爵 芳川顕正
海軍大臣 山本権兵衛
司法大臣 清浦奎吾
農商務大臣 曽祢荒助
法律第七十三号
刑事訴訟法中左ノ通改正ス
第二十条第二項中「若シ署名捺印スルコト能ハサルトキハ官吏、公吏ノ面前ニ於テ作リタル場合ヲ除ク外立会人代署シ其事由ヲ記載ス可シ」ヲ削ル
第二十一条 官吏、公吏訴訟ニ関スル書類ノ原本、正本又ハ謄本ヲ作ルニ付キ文字ヲ改竄ス可カラス若シ挿入、削除及ヒ欄外ノ記入アルトキハ之ニ認印ス可シ文字ヲ削除スルトキハ之ヲ読ミ得ヘキ為メ字体ヲ存シ其数ヲ記載ス可シ此規定ニ背キタルトキハ其変更増減ノ効ナカル可シ
第二十一条ノ次ニ左ノ一条ヲ加フ
第二十一条ノ二 官吏、公吏ニ非サル者ノ署名捺印ス可キ場合ニ於テ捺印スルコト能ハサルトキハ署名ノミヲ為シ署名スルコト能ハサルトキハ立会人ヲシテ代署セシメ捺印ノミヲ為シ若シ署名捺印スルコト能ハサルトキハ立会人ヲシテ代署セシム可シ
立会人ハ其代署ノ事由ヲ記載シテ署名シ又ハ署名捺印ス可シ
官吏、公吏ノ面前ニ於テハ本人署名スルコト能ハサル場合ト雖モ立会人ヲ要セス官吏、公吏代署シテ其事由ヲ附記ス可シ
第七十七条第二項ヲ左ノ如ク改ム
勾引状、勾留状ヲ執行スルニハ其正本ヲ携帯シ被告人ノ請求アルトキハ之ヲ示ス可シ
同条ニ左ノ二項ヲ加フ
勾引状、勾留状ヲ執行シタルトキハ其正本ニ執行ノ場所及ヒ日時ヲ記載シ若シ執行スルコト能ハサルトキハ其事由ヲ記載シテ署名捺印ス可シ
巡査、憲兵卒ハ令状ニ関スル書類ヲ検事ニ差出ス可シ
第八十三条削除
第八十四条 在監中ノ被告人ニ対シ発シタル勾留状ハ司獄官吏ヲシテ之ヲ執行セシム
勾留状執行ニ関シテハ第七十七条ノ規定ヲ適用ス
第八十五条 勾留ヲ受ケタル被告人ハ官吏ノ立会ニ依リ他人ト接見スルコトヲ得
書類ハ予審判事又ハ検事ノ検閲ヲ経タル後他人ト之ヲ授受スルコトヲ得
予審判事ハ必要ナリト思料シタルトキハ被告人ノ監房ヲ別異シ、他人トノ接見、書類物件ノ授受ヲ禁シ又ハ其書類物件ヲ差押フルコトヲ得
第二節密室監禁第八十七条第八十八条及第八十九条削除
第百三十六条ニ左ノ一項ヲ加フ
第百条第百一条ノ規定ハ鑑定人ニ付テモ亦之ヲ適用ス
第百五十八条ノ次ニ左ノ一条ヲ加フ
第百五十八条ノ二 保釈ヲ許ササル言渡ニ対シテハ其裁判所ヘ異議ノ申立ヲ為スコトヲ得
裁判所ハ検事ノ意見ヲ聴キ其許否ヲ決定ス可シ
第百七十八条 裁判長ハ何時ニテモ禁錮以上ノ刑ニ該ル可キ被告人ニ対シ勾引状ヲ発スルコトヲ得
裁判所ハ被告人ヲ訊問シタル後何時ニテモ禁錮以上ノ刑ニ該ル可キ被告人ニ対シ勾留状ヲ発スルコトヲ得
第百七十九条ノ次ニ左ノ一条ヲ加フ
第百七十九条ノ二 左ノ場合ニ於テ被告人自ラ弁護人ヲ選任セサルトキハ裁判所ハ検事ノ申立ニ因リ又ハ職権ヲ以テ弁護人ヲ付スルコトヲ得
第一 被告人十五歳未満ナルトキ
第二 被告人婦女ナルトキ
第三 被告人聾者又ハ唖者ナルトキ
第四 被告人精神病ニ罹リ又ハ意識不十分ナルノ疑アルトキ
第五 被告事件ノ模様ニ因リ裁判所ニ於テ弁護人ヲ必要ナリトスルトキ
前項ノ弁護人ハ裁判長ノ職権ヲ以テ其裁判所所属ノ弁護士中ヨリ選任ス可シ但弁護士一名ヲシテ被告人数名ノ弁護ヲ為サシムルコトヲ得
第二百三条 刑ノ言渡ヲ為スニハ罪トナルヘキ事実及ヒ証拠ニ依リテ之ヲ認メタル理由ヲ明示シ且法律ヲ適用シ其理由ヲ付ス可シ
無罪又ハ免訴ノ言渡ヲ為スニ付テモ亦其理由ヲ明示スヘシ