海軍礼砲条例
法令番号: 勅令第六號
公布年月日: 明治30年1月23日
法令の形式: 勅令
朕海軍禮砲條例ノ改正ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十年一月二十一日
海軍大臣 侯爵 西鄕從道
勅令第六號
海軍禮砲條例
第一章 總則
第一條 本條例中先任官後任官トハ官階ノ高下、同官階ニ在テハ任官ノ前後ヲ以テ區分シ軍隊指揮權ヲ有スル者ノミニ用フ但禮砲ヲ受クヘキ資格ヲ有スル者ハ總テ其ノ之ヲ有セサル者ニ對シ先任官トス
第二條 軍艦ヨリ禮砲ヲ行フ場合ニ於テ同所ニ海軍先任官在ルトキハ豫メ其ノ認可ヲ經ルコトヲ要ス但天皇旗皇后旗皇太子旗皇族旗及該先任官ニ對スル禮砲ハ此ノ限ニアラス
第三條 禮砲ハ之ヲ行フヘキ時機ニ遭遇シタル後二十四時間以內ニ努メテ速ニ行フヘシ若シ此ノ時間內ニ行フコト能ハサルトキハ對方ニ其ノ理由ヲ說明スヘシ
第四條 軍艦ニ於テ來乘者又ハ退艦者ニ對シ禮砲ヲ行フハ來乘ノ際ニハ其ノ乘艦ノ後ニ於テシ退艦ノ際ニハ本艦ヲ離レ適宜ノ距離ニ在ルトキニ於テス臨御若クハ還御ノ時亦同シ
第五條 禮砲ヲ受クヘキ上位ノ旗旒現在スル間ハ下位ノ旗旒ニ對シテハ禮砲ヲ行フコトナシ但國ヲ異ニスルトキ又ハ旗旒ヲ揭ケ來訪スル者アルトキハ此ノ限ニアラス
第六條 旗旒ヲ有スル文武官其ノ旗旒ヲ揭ケサルトキハ禮砲ヲ行ハサルモノトス
第七條 數箇ノ官職ヲ帶フル文武官ニ對スル禮砲ハ其ノ官職中最多數ヲ受クヘキ一官職ノミニ對シ之ヲ行フ
第八條 禮砲ヲ行フヘキ海岸砲臺及軍艦ハ左ノ如シ
一 禮砲ヲ行フ爲メ特ニ陸軍大臣ノ指定シタル海岸砲臺
二 口徑十六珊以下ノ砲熕速射砲ヲ除ク六門以上ヲ側砲トシテ備フル軍艦及禮砲用ノ砲熕ヲ備フル軍艦
三 口徑四十七密以上ノ同口徑速射砲四門以上ヲ備フル軍艦
軍艦ヨリ禮砲ヲ行フヘキ場合ニ於テ該艦本條ニ適合セサルトキハ海軍先任官ハ所在ノ軍艦中他ノ適合スルモノニ命シテ禮砲ヲ行ハシムルコトヲ得
第九條 軍艦外國ノ國旗外國ノ皇帝皇族大統領外國ノ祝日又ハ外國官吏ニ對シ禮砲ヲ行フヘキ場合ニ於テ第八條ニ適合スル軍艦ニアラサルトキハ對方ニ其ノ禮砲ヲ行ハサル理由ヲ說明スヘシ但外交上特ニ好意ヲ表スルヲ必要ト認ムルトキハ安全ナル方法ヲ以テ便宜禮砲ヲ行フコトヲ得
第十條 軍艦及砲臺ヨリ一齊ニ禮砲ヲ行フ場合ニハ各艦及各砲臺ハ所在海軍先任官ノ軍艦又ハ特ニ定メタル標準艦ノ第二發目ト同時ニ發砲ヲ始ムヘキモノトス
第十一條 禮砲ハ日出前及日沒後ニ於テ行ハサルヲ例トス碇泊中ノ軍艦其ノ軍艦旗揭揚前ニ於テ亦同シ
禮砲施行ノ時機日沒後ニ生シタル時ハ次日之ヲ行フヘシ但特別ノ場合ニ於テハ旗章ヲ識別シ得ル限リ日出前日沒後ト雖之ヲ行フコトヲ得
第十二條 禮砲ヲ受クヘキ資格ヲ有スル文武官ハ禮砲ヲ辭スルコトヲ得
第十三條 帝國軍ノ凱旋又ハ戰勝其ノ他全國ノ慶賀ニ當リテハ所在陸海軍各先任官ハ砲臺若クハ軍艦ヨリ禮砲ヲ行ハシムルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ事後其ノ詳細ヲ報吿スヘシ但第八條ノ軍艦及砲臺同所ニ在ルトキハ陸海軍各先任官協議ノ上之ヲ行ヒ唯其ノ一方ニ於テノミ之ヲ行フコトヲ得ス
第十四條 彼我ノ禮砲ニ厚薄ノ差ヲ生シ外交上不權衡ト認ムル場合ニハ帝國ノ威嚴ヲ損セサル限リ所在海軍先任官ハ臨機ノ處置ヲ施スコトヲ得此ノ場合ニ於テハ事後其ノ情況ヲ報吿スヘシ
第十五條 外國ノ國旗外國ノ皇帝皇族大統領外國ノ祝日又ハ外國ノ官吏ニ對シテ禮砲ヲ行フハ我帝國ニ於テ其ノ政府ヲ公然承認シタルモノニ限ル
第十六條 本條例ハ在役艦船其ノ他軍艦旗揭揚中ノ艦船及海岸砲臺ニ適用ス
第十七條 禮砲ニ關シ本條例ニ規定セサルモノハ海軍大臣便宜之ヲ處理スルコトヲ得
第二章 皇禮砲
第十八條 天皇旗皇后旗皇太子旗及皇族旗ニ對シ行フ禮砲ヲ皇禮砲ト謂フ
皇禮砲ノ數ハ二十一發トス
第十九條 天皇帝國軍艦ノ在泊セル港灣又ハ海岸砲臺所在地ニ著御發御若クハ其ノ近傍通御ノトキハ在泊ノ各軍艦及該砲臺ヨリ皇禮砲ヲ行フヘシ
第二十條 天皇軍艦ニ臨御ノトキハ皇禮砲ヲ行フ所在各軍艦ニ於テモ亦臨御ノ軍艦ト齊シク皇禮砲ヲ行フヘシ但時宜ニ依リ乘御ノ舟艇本艦ニ近接セサル前ニ於テ禮砲ヲ畢ルコトヲ得
第二十一條 天皇軍艦ヨリ還御ノトキハ皇禮砲ヲ行フ所在各軍艦ニ於テモ亦該艦ト齊シク皇禮砲ヲ行フヘシ
第二十二條 軍艦海上ニ於テ天皇旗ヲ揭クル艦船ニ遇フトキ又ハ天皇旗ヲ揭ケアル場所ニ來著シ若クハ之ニ近接シテ航行スルトキハ必ス皇禮砲ヲ行フヘシ
第二十三條 天皇一境域內ニ滯御ノトキハ最初著御ノトキト最後發御ノトキノミ第十九條ノ禮砲ヲ行フモノトス但第二十條第二十一條ノ禮砲ハ此ノ限ニアラス若シ同日數隻ノ軍艦ニ臨御ノトキハ所在海軍先任官ハ適宜禮砲施行ノ場合ヲ定ムルコトヲ得
第二十四條 皇后旗皇太子旗及皇族旗ニ對シテハ天皇旗ニ對スルト同一ノ例ニ依リ皇禮砲ヲ行フヘシ但皇族旗ヲ揭クル皇族軍艦ニ來乘ノ時ハ其ノ來艦退艦ノ時該艦ノミ皇禮砲ヲ行フヘシ
第二十五條 天皇旗皇后旗皇太子旗及皇族旗ヲ揭揚セル間該地ニテハ帝國國旗ニ對スル禮砲ノ答砲ノ外總テ禮砲ヲ行フコトナシ
第二十六條 皇族ニ對シテハ公式ノ場合ニアラサレハ皇禮砲ヲ行ハス皇族ノ資格ニアラサル場合ニハ其ノ官職相當ノ禮遇ニ止マリ皇禮砲ヲ行フコトナシ
第二十七條 天皇旗皇后旗皇太子旗及皇族旗ハ唯皇禮砲ヲ受クルノミニシテ答砲ヲ行フコトナシ
第二十八條 外國ノ皇帝太皇太后皇太后皇后皇太子及皇太子妃又ハ大統領ニ對シテハ天皇旗ヲ揭クル場合ニ該國ノ軍艦旗(軍艦旗ノ制ナキ國ニ對シテハ國旗)ヲ揭クル外天皇旗ニ對スルト同一ノ例ニ依リ皇禮砲ヲ行フヘシ
第二十九條 前條ノ外ノ外國ノ皇族ニ對シテハ皇族旗ヲ揭クル場合ニ該國ノ軍艦旗(軍艦旗ノ制ナキ國ニ對シテハ國旗)ヲ揭クル外皇族旗ニ對スルト同一ノ例ニ依リ皇禮砲ヲ行フヘシ
第三十條 左ノ祝日ニハ各軍艦及砲臺ヨリ正午ニ皇禮砲ヲ行フヘシ
紀元節
天長節
右ノ祝日ニ當リ帝國軍艦外國ノ軍艦ト同所ニ在泊スルトキハ所在我海軍先任官ハ其ノ前日ニ士官ヲ各外國軍艦ノ海軍先任官ニ遣シ之ニ我祝日ノ吿知ヲナスヘシ
外國港灣ニ在リテハ所在地方廳ヲ經テ所在砲臺ニモ前項ノ吿知ヲナスヘシ
此ノ場合ニ於テハ該地ニ駐箚ノ我外務官吏アルトキハ豫メ之ト協議スルヲ要ス
前二項ノ吿知ヲ受ケ敬意ヲ表シタル各外國軍艦ノ海軍先任官及外國砲臺ノ長ニハ翌日士官ヲ遣シ謝意ヲ通スヘシ
內國港灣ニ外國軍艦ノミ在泊シ帝國軍艦在泊セサルトキハ該地ノ地方長官ハ部下ノ官吏ヲ遣シ本條ノ第二項及第四項ノ事ヲ行フヘシ
第三十一條 我軍艦內國ノ諸港灣ニ在テ同所在泊外國軍艦ノ其ノ本國ニ於ケル祝日等ニ會スルトキ又ハ外國ノ諸港灣ニ在テ該國ノ祝日或ハ同所ニ在泊スル他ノ外國軍艦ノ其ノ本國ニ於ケル祝日等ニ會スルトキ彼ヨリ我海軍先任官ニ公然吿知ヲナストキハ我軍艦ニ於テ禮砲ヲ行フヘシ但其ノ砲數ハ二十一發ヲ超ユヘカラス
第三章 帝國文武官ニ對スル禮砲
第三十二條 帝國文武官ニ對スル禮砲數ハ左表ノ如シ
【表】
第三十三條 司令長官若クハ司令官ノ旗旒ニ對スル禮砲ハ左ノ諸項ニ依ルヘシ
第一 新任ノ司令長官若クハ司令官始メテ其ノ旗旒ヲ揭揚スルトキ所在海軍將校中ノ先任官ナルトキハ所在ノ次席海軍先任官之ニ對シ禮砲ヲ行フヘシ
第二 海軍先任司令長官若クハ司令官進級ニ因リ其ノ旗旒ヲ換揚スルトキハ所在ノ次席海軍先任官之ニ對シ禮砲ヲ行フヘシ
第三 新任ノ司令長官若クハ司令官始メテ其ノ旗旒ヲ揭揚スルカ又ハ司令長官若クハ司令官進級ニ因リ其ノ旗旒ヲ換揚スルトキ所在海軍將校中自己ヨリ先任ノ者アルトキハ之ニ對シ禮砲ヲ行フヘシ
第四 司令長官若クハ司令官自己ヨリ先任ノ司令長官若クハ司令官ト出會スルトキハ之ニ對シ禮砲ヲ行フヘシ軍艦司令長官若クハ司令官ニ出會スルトキ亦同シ若シ二艦以上同時ニ出會スルトキハ各所管ノ先任官ノミ禮砲ヲ行フ但同所ニ同所管ノ先任官在ルトキハ之ヲ行ハサルモノトス
司令長官司令官他ノ司令長官司令官ト分離セルニ因リ所在先任官ト爲ルトキハ各所管ノ先任官ハ之ニ對シ禮砲ヲ行フヘシ
第五 第一乃至第四ノ禮砲ニハ禮砲ヲ行ヘル將校ノ官等ニ相當スル砲數ヲ以テ答砲スヘシト雖同時ニ二艦以上ヨリ禮砲ヲ受クルトキハ其ノ答砲ハ各別ニ行ハス其ノ最多數ヲ受クヘキ一艦ニ對スル砲數ヲ以テ之ニ應スヘキモノトス
第六 司令長官司令官若クハ軍艦ヨリ本條第四ニ依リ先任司令長官司令官ニ對シ行フ禮砲ハ該先任司令長官司令官在職中一囘ニ限ルヘシ但進級セシトキハ此ノ限ニアラス
第三十四條 司令長官司令官其ノ職ヲ罷メ退艦若クハ退廳スルトキハ其ノ艦若クハ其ノ麾下タリシ一艦ヨリ其ノ官ニ相當スル禮砲ヲ行フヘシ
司令長官司令官又ハ艦長タル海軍大佐進級ニ因リ其ノ職ヲ罷メ退艦若クハ退廳スルトキハ其ノ艦若クハ其ノ麾下タリシ一艦ヨリ新官ニ相當スル禮砲ヲ行フヘシ
第三十五條 司令長官司令官旗艦ヲ變更シ其ノ旗旒ヲ轉揭スルトキハ禮砲ヲ行フコトナシ又在職中一時其ノ旗旒ヲ撤スルトキハ其ノ揭揚撤去ノ場合ニ於テモ禮砲ヲ行フコトナシ
第三十六條 帝國軍艦ト帝國領內ノ砲臺トノ間ニ於テハ何等ノ場合ト雖禮砲ヲ交換スルコトナシ
第四章 外國及其ノ文武官ニ對スル禮砲
第三十七條 一隻若クハ二隻以上ノ帝國軍艦外國ノ港灣ニ入リタルトキ其ノ地ニ堡砦砲臺或ハ其ノ國ノ軍艦アリテ彼ヨリ答砲アルヘキコトヲ確知スルトキハ我先任官ハ其ノ國旗ニ對シ二十一發ノ禮砲ヲ行フヘシ但其ノ國ノ砲臺若クハ軍艦ニ於テ我國ノ成規ヨリモ少數ノ禮砲ヲ行フヘキ通知ヲナストキハ之ト同一ノ砲數ヲ以テスルコトヲ得
第三十八條 一隻若クハ二隻以上ノ帝國軍艦外國ノ鎭守府司令長官艦隊司令長官司令官ノ旗旒ニ出會シタルトキ我先任官彼ヨリ後任ナルトキハ第三十二條ノ表ニ準シ其ノ艦ヨリ相當ノ禮砲ヲ行フヘシ但外國ノ港灣ニ於テハ該地方ニ發砲ノ禁ナク且旣ニ該國ト相當ノ禮砲ヲ交換シタル後ニ之ヲ行フヘキモノトス
第三十九條 一隻若クハ二隻以上ノ帝國軍艦同時ニ數箇國ノ司令長官司令官ノ旗旒ト出會スルトキハ我先任官ハ我ヨリ先任ノ司令長官司令官ノ旗旒ニ對シテハ上位ノモノヨリ逐次ニ禮砲ヲ行フヘシ但港灣ニ在テハ禮砲ヲ受クヘキ者ノ官等同シキトキハ最前ヨリ該地方ニ在ル者ヲ先ニスルヲ例トス又外國ノ港灣ニ在テハ官ノ高下ニ關セス該國司令長官司令官ノ旗旒ニ對スル禮砲ヲ先ニスヘシ
前項ノ場合ニ於テ同一國ノ司令長官司令官ノ旗旒二箇以上現在スルトキハ其ノ上位ノモノニノミ禮砲ヲ行フ
第四十條 外國文武官帝國軍艦又ハ砲臺ヲ訪問スルトキハ該官カ其ノ本國軍艦又ハ砲臺ヨリ受クヘキ禮砲ト同數ノ禮砲ヲ行フヘシ但其ノ砲數ハ十九發ヲ超ユヘカラス若シ第三十二條ノ表ニ記スル我相當官ニ對スル禮砲數ヨリ少キトキハ同條ニ表示スル所ニ從フヘシ
外國ノ全權辨理大臣公然帝國ノ砲臺所在地ニ到著又ハ出發スルトキハ其ノ砲臺ヨリ帝國ノ全權辨理大臣ニ對スルト同數ノ禮砲ヲ行フヘシ
第四十一條 帝國文武官ニ對シ外國ノ軍艦砲臺等ヨリ帝國ノ規定以外ノ禮砲ヲ行フニ於テハ之ニ相當スル其ノ國ノ文武官ニ對シ帝國ノ軍艦砲臺ヨリモ彼ト同數ノ禮砲ヲ行フヘシ
第四十二條 特別ノ理由ニ依リ本章ノ禮砲ヲ行フコト能ハサルトキハ現場ニ於テ對方ニ其ノ理由ヲ說明スヘシ
第五章 答砲
第四十三條 帝國軍艦若クハ砲臺ヨリ答砲ヲ行フヘキ場合及答砲ヲ行ハサル場合ハ左ノ如シ
第一 皇禮砲ニ對シテハ答砲ヲ行フコトナシ
第二 帝國ノ文武官ニ對スル禮砲ニハ本條第三ニ揭クルモノノ外答砲ヲ行フコトナシ
第三 司令長官司令官ノ旗旒ニ對スル禮砲ハ外國軍艦ヨリスルトキハ都テ同數ノ答砲ヲ行ヒ帝國軍艦ヨリスルトキハ第三十三條ニ依リ答砲ヲ行フヘシ
第四 一外國ノ軍艦入港シ若クハ數外國ノ軍艦同時ニ入港シ各其ノ檣頂ニ我旗章ヲ揭ケ國旗ニ對シテ禮砲ヲ行フトキハ之ニ應シ一國每ニ同數ノ答砲ヲ行フヘシ但此ノ答砲ハ砲臺ヨリ爲スモノニシテ若シ禮砲ヲ行フヘキ砲臺ナキトキハ所在海軍先任官ノ艦ヨリ之ヲ行フヘシ
第四十四條 帝國軍艦若クハ砲臺ヨリ外國若クハ外國人ニ對シテ禮砲ヲ行ヒ其ノ答砲ヲ受クヘキ場合及受ケサル場合ハ左ノ如シ
第一 答砲ヲ受ケサルモノ
(一) 皇帝皇族若クハ大統領ニ對シ行フ禮砲
(二) 文武官軍艦若クハ砲臺ニ來訪ノトキニ行フ禮砲
(三) 祝日等ヲ賀スル禮砲
第二 答砲ヲ受クヘキモノ
(一) 帝國軍艦外國ノ港灣等ニ到著ノトキ其ノ國旗ニ對スル禮砲
(二) 帝國軍艦外國ノ司令長官或ハ司令官ト海上又ハ港灣內ニ於テ出會ノトキ其ノ旗旒ニ對スル禮砲
第四十五條 內國或ハ外國ノ商船若クハ官用船舶ヨリ我將旗代將旒若クハ軍艦ニ對シ禮砲ヲ行ヒタルトキハ船舶一隻ナラハ五發二隻以上ナラハ七發ノ答砲ヲ行フヘシ
第六章 禮砲或ハ答砲ヲ行フトキ旗章ノ揭揚法
第四十六條 帝國軍艦外國ノ艦船若クハ其ノ砲臺ト禮砲ヲ交換スルトキ又ハ外國人ニ對スル禮砲ヲ帝國軍艦ヨリ行フトキハ左ノ規定ニ依リ旗章ヲ揭揚スヘシ
(一) 外國ノ皇帝皇族或ハ大統領ニ對スル禮砲ヲ行フトキハ第二十八條及第二十九條ニ依ルヘシ
(二) 內外國ノ港灣ニ於テ外國ノ祝日等ニ當リ禮砲ヲ行フトキハ之ヲ行フ間若クハ其ノ前後トモ該國軍艦ニ準シテ大檣頂ニ其ノ國ノ軍艦旗(軍艦旗ノ制ナキ國ニ對シテハ國旗)ヲ揭クヘシ
(三) 外國ノ港灣ニ到著ノ際其ノ國ノ國旗ニ對シ禮砲ヲ行フトキハ之ヲ行フ間該國ノ軍艦旗(軍艦旗ノ制ナキ國ニ對シテハ國旗)ヲ大檣頂ニ揭クヘシ外國軍艦帝國國旗ニ對シ禮砲ヲ行ヒシ際軍艦ヨリ之ニ答砲スルトキ亦同シ
(四) 軍艦ヨリ外國ノ海軍將官佐官ニ對スル禮砲答砲及外國ノ艦船ニ答砲ヲ行フトキハ之ヲ行フ間該國ノ軍艦旗(軍艦旗ノ制ナキ國ニ對シテハ國旗)ヲ前檣頂ニ揭クヘシ
(五) 外國ノ文武官來訪ノ際禮砲ヲ行フトキハ之ヲ行フ間該國ノ軍艦旗(軍艦旗ノ制ナキ國ニ對シテハ國旗)ヲ前檣頂ニ揭クヘシ
第四十七條 帝國ノ陸軍武官外交官外交事務官及領事官ニ對シ禮砲ヲ行フトキハ之ヲ行フ間國旗ヲ前檣頂ニ揭クヘシ
第四十八條 禮砲ヲ行フヘキ砲臺ハ常ニ國旗ヲ全揭シ置クヘク禮砲若クハ答砲シ行フニ當リ之ヲ變換セサルモノトス
朕海軍礼砲条例ノ改正ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治三十年一月二十一日
海軍大臣 侯爵 西郷従道
勅令第六号
海軍礼砲条例
第一章 総則
第一条 本条例中先任官後任官トハ官階ノ高下、同官階ニ在テハ任官ノ前後ヲ以テ区分シ軍隊指揮権ヲ有スル者ノミニ用フ但礼砲ヲ受クヘキ資格ヲ有スル者ハ総テ其ノ之ヲ有セサル者ニ対シ先任官トス
第二条 軍艦ヨリ礼砲ヲ行フ場合ニ於テ同所ニ海軍先任官在ルトキハ予メ其ノ認可ヲ経ルコトヲ要ス但天皇旗皇后旗皇太子旗皇族旗及該先任官ニ対スル礼砲ハ此ノ限ニアラス
第三条 礼砲ハ之ヲ行フヘキ時機ニ遭遇シタル後二十四時間以内ニ努メテ速ニ行フヘシ若シ此ノ時間内ニ行フコト能ハサルトキハ対方ニ其ノ理由ヲ説明スヘシ
第四条 軍艦ニ於テ来乗者又ハ退艦者ニ対シ礼砲ヲ行フハ来乗ノ際ニハ其ノ乗艦ノ後ニ於テシ退艦ノ際ニハ本艦ヲ離レ適宜ノ距離ニ在ルトキニ於テス臨御若クハ還御ノ時亦同シ
第五条 礼砲ヲ受クヘキ上位ノ旗旒現在スル間ハ下位ノ旗旒ニ対シテハ礼砲ヲ行フコトナシ但国ヲ異ニスルトキ又ハ旗旒ヲ掲ケ来訪スル者アルトキハ此ノ限ニアラス
第六条 旗旒ヲ有スル文武官其ノ旗旒ヲ掲ケサルトキハ礼砲ヲ行ハサルモノトス
第七条 数箇ノ官職ヲ帯フル文武官ニ対スル礼砲ハ其ノ官職中最多数ヲ受クヘキ一官職ノミニ対シ之ヲ行フ
第八条 礼砲ヲ行フヘキ海岸砲台及軍艦ハ左ノ如シ
一 礼砲ヲ行フ為メ特ニ陸軍大臣ノ指定シタル海岸砲台
二 口径十六珊以下ノ砲熕速射砲ヲ除ク六門以上ヲ側砲トシテ備フル軍艦及礼砲用ノ砲熕ヲ備フル軍艦
三 口径四十七密以上ノ同口径速射砲四門以上ヲ備フル軍艦
軍艦ヨリ礼砲ヲ行フヘキ場合ニ於テ該艦本条ニ適合セサルトキハ海軍先任官ハ所在ノ軍艦中他ノ適合スルモノニ命シテ礼砲ヲ行ハシムルコトヲ得
第九条 軍艦外国ノ国旗外国ノ皇帝皇族大統領外国ノ祝日又ハ外国官吏ニ対シ礼砲ヲ行フヘキ場合ニ於テ第八条ニ適合スル軍艦ニアラサルトキハ対方ニ其ノ礼砲ヲ行ハサル理由ヲ説明スヘシ但外交上特ニ好意ヲ表スルヲ必要ト認ムルトキハ安全ナル方法ヲ以テ便宜礼砲ヲ行フコトヲ得
第十条 軍艦及砲台ヨリ一斉ニ礼砲ヲ行フ場合ニハ各艦及各砲台ハ所在海軍先任官ノ軍艦又ハ特ニ定メタル標準艦ノ第二発目ト同時ニ発砲ヲ始ムヘキモノトス
第十一条 礼砲ハ日出前及日没後ニ於テ行ハサルヲ例トス碇泊中ノ軍艦其ノ軍艦旗掲揚前ニ於テ亦同シ
礼砲施行ノ時機日没後ニ生シタル時ハ次日之ヲ行フヘシ但特別ノ場合ニ於テハ旗章ヲ識別シ得ル限リ日出前日没後ト雖之ヲ行フコトヲ得
第十二条 礼砲ヲ受クヘキ資格ヲ有スル文武官ハ礼砲ヲ辞スルコトヲ得
第十三条 帝国軍ノ凱旋又ハ戦勝其ノ他全国ノ慶賀ニ当リテハ所在陸海軍各先任官ハ砲台若クハ軍艦ヨリ礼砲ヲ行ハシムルコトヲ得此ノ場合ニ於テハ事後其ノ詳細ヲ報告スヘシ但第八条ノ軍艦及砲台同所ニ在ルトキハ陸海軍各先任官協議ノ上之ヲ行ヒ唯其ノ一方ニ於テノミ之ヲ行フコトヲ得ス
第十四条 彼我ノ礼砲ニ厚薄ノ差ヲ生シ外交上不権衡ト認ムル場合ニハ帝国ノ威厳ヲ損セサル限リ所在海軍先任官ハ臨機ノ処置ヲ施スコトヲ得此ノ場合ニ於テハ事後其ノ情況ヲ報告スヘシ
第十五条 外国ノ国旗外国ノ皇帝皇族大統領外国ノ祝日又ハ外国ノ官吏ニ対シテ礼砲ヲ行フハ我帝国ニ於テ其ノ政府ヲ公然承認シタルモノニ限ル
第十六条 本条例ハ在役艦船其ノ他軍艦旗掲揚中ノ艦船及海岸砲台ニ適用ス
第十七条 礼砲ニ関シ本条例ニ規定セサルモノハ海軍大臣便宜之ヲ処理スルコトヲ得
第二章 皇礼砲
第十八条 天皇旗皇后旗皇太子旗及皇族旗ニ対シ行フ礼砲ヲ皇礼砲ト謂フ
皇礼砲ノ数ハ二十一発トス
第十九条 天皇帝国軍艦ノ在泊セル港湾又ハ海岸砲台所在地ニ著御発御若クハ其ノ近傍通御ノトキハ在泊ノ各軍艦及該砲台ヨリ皇礼砲ヲ行フヘシ
第二十条 天皇軍艦ニ臨御ノトキハ皇礼砲ヲ行フ所在各軍艦ニ於テモ亦臨御ノ軍艦ト斉シク皇礼砲ヲ行フヘシ但時宜ニ依リ乗御ノ舟艇本艦ニ近接セサル前ニ於テ礼砲ヲ畢ルコトヲ得
第二十一条 天皇軍艦ヨリ還御ノトキハ皇礼砲ヲ行フ所在各軍艦ニ於テモ亦該艦ト斉シク皇礼砲ヲ行フヘシ
第二十二条 軍艦海上ニ於テ天皇旗ヲ掲クル艦船ニ遇フトキ又ハ天皇旗ヲ掲ケアル場所ニ来著シ若クハ之ニ近接シテ航行スルトキハ必ス皇礼砲ヲ行フヘシ
第二十三条 天皇一境域内ニ滞御ノトキハ最初著御ノトキト最後発御ノトキノミ第十九条ノ礼砲ヲ行フモノトス但第二十条第二十一条ノ礼砲ハ此ノ限ニアラス若シ同日数隻ノ軍艦ニ臨御ノトキハ所在海軍先任官ハ適宜礼砲施行ノ場合ヲ定ムルコトヲ得
第二十四条 皇后旗皇太子旗及皇族旗ニ対シテハ天皇旗ニ対スルト同一ノ例ニ依リ皇礼砲ヲ行フヘシ但皇族旗ヲ掲クル皇族軍艦ニ来乗ノ時ハ其ノ来艦退艦ノ時該艦ノミ皇礼砲ヲ行フヘシ
第二十五条 天皇旗皇后旗皇太子旗及皇族旗ヲ掲揚セル間該地ニテハ帝国国旗ニ対スル礼砲ノ答砲ノ外総テ礼砲ヲ行フコトナシ
第二十六条 皇族ニ対シテハ公式ノ場合ニアラサレハ皇礼砲ヲ行ハス皇族ノ資格ニアラサル場合ニハ其ノ官職相当ノ礼遇ニ止マリ皇礼砲ヲ行フコトナシ
第二十七条 天皇旗皇后旗皇太子旗及皇族旗ハ唯皇礼砲ヲ受クルノミニシテ答砲ヲ行フコトナシ
第二十八条 外国ノ皇帝太皇太后皇太后皇后皇太子及皇太子妃又ハ大統領ニ対シテハ天皇旗ヲ掲クル場合ニ該国ノ軍艦旗(軍艦旗ノ制ナキ国ニ対シテハ国旗)ヲ掲クル外天皇旗ニ対スルト同一ノ例ニ依リ皇礼砲ヲ行フヘシ
第二十九条 前条ノ外ノ外国ノ皇族ニ対シテハ皇族旗ヲ掲クル場合ニ該国ノ軍艦旗(軍艦旗ノ制ナキ国ニ対シテハ国旗)ヲ掲クル外皇族旗ニ対スルト同一ノ例ニ依リ皇礼砲ヲ行フヘシ
第三十条 左ノ祝日ニハ各軍艦及砲台ヨリ正午ニ皇礼砲ヲ行フヘシ
紀元節
天長節
右ノ祝日ニ当リ帝国軍艦外国ノ軍艦ト同所ニ在泊スルトキハ所在我海軍先任官ハ其ノ前日ニ士官ヲ各外国軍艦ノ海軍先任官ニ遣シ之ニ我祝日ノ告知ヲナスヘシ
外国港湾ニ在リテハ所在地方庁ヲ経テ所在砲台ニモ前項ノ告知ヲナスヘシ
此ノ場合ニ於テハ該地ニ駐箚ノ我外務官吏アルトキハ予メ之ト協議スルヲ要ス
前二項ノ告知ヲ受ケ敬意ヲ表シタル各外国軍艦ノ海軍先任官及外国砲台ノ長ニハ翌日士官ヲ遣シ謝意ヲ通スヘシ
内国港湾ニ外国軍艦ノミ在泊シ帝国軍艦在泊セサルトキハ該地ノ地方長官ハ部下ノ官吏ヲ遣シ本条ノ第二項及第四項ノ事ヲ行フヘシ
第三十一条 我軍艦内国ノ諸港湾ニ在テ同所在泊外国軍艦ノ其ノ本国ニ於ケル祝日等ニ会スルトキ又ハ外国ノ諸港湾ニ在テ該国ノ祝日或ハ同所ニ在泊スル他ノ外国軍艦ノ其ノ本国ニ於ケル祝日等ニ会スルトキ彼ヨリ我海軍先任官ニ公然告知ヲナストキハ我軍艦ニ於テ礼砲ヲ行フヘシ但其ノ砲数ハ二十一発ヲ超ユヘカラス
第三章 帝国文武官ニ対スル礼砲
第三十二条 帝国文武官ニ対スル礼砲数ハ左表ノ如シ
【表】
第三十三条 司令長官若クハ司令官ノ旗旒ニ対スル礼砲ハ左ノ諸項ニ依ルヘシ
第一 新任ノ司令長官若クハ司令官始メテ其ノ旗旒ヲ掲揚スルトキ所在海軍将校中ノ先任官ナルトキハ所在ノ次席海軍先任官之ニ対シ礼砲ヲ行フヘシ
第二 海軍先任司令長官若クハ司令官進級ニ因リ其ノ旗旒ヲ換揚スルトキハ所在ノ次席海軍先任官之ニ対シ礼砲ヲ行フヘシ
第三 新任ノ司令長官若クハ司令官始メテ其ノ旗旒ヲ掲揚スルカ又ハ司令長官若クハ司令官進級ニ因リ其ノ旗旒ヲ換揚スルトキ所在海軍将校中自己ヨリ先任ノ者アルトキハ之ニ対シ礼砲ヲ行フヘシ
第四 司令長官若クハ司令官自己ヨリ先任ノ司令長官若クハ司令官ト出会スルトキハ之ニ対シ礼砲ヲ行フヘシ軍艦司令長官若クハ司令官ニ出会スルトキ亦同シ若シ二艦以上同時ニ出会スルトキハ各所管ノ先任官ノミ礼砲ヲ行フ但同所ニ同所管ノ先任官在ルトキハ之ヲ行ハサルモノトス
司令長官司令官他ノ司令長官司令官ト分離セルニ因リ所在先任官ト為ルトキハ各所管ノ先任官ハ之ニ対シ礼砲ヲ行フヘシ
第五 第一乃至第四ノ礼砲ニハ礼砲ヲ行ヘル将校ノ官等ニ相当スル砲数ヲ以テ答砲スヘシト雖同時ニ二艦以上ヨリ礼砲ヲ受クルトキハ其ノ答砲ハ各別ニ行ハス其ノ最多数ヲ受クヘキ一艦ニ対スル砲数ヲ以テ之ニ応スヘキモノトス
第六 司令長官司令官若クハ軍艦ヨリ本条第四ニ依リ先任司令長官司令官ニ対シ行フ礼砲ハ該先任司令長官司令官在職中一回ニ限ルヘシ但進級セシトキハ此ノ限ニアラス
第三十四条 司令長官司令官其ノ職ヲ罷メ退艦若クハ退庁スルトキハ其ノ艦若クハ其ノ麾下タリシ一艦ヨリ其ノ官ニ相当スル礼砲ヲ行フヘシ
司令長官司令官又ハ艦長タル海軍大佐進級ニ因リ其ノ職ヲ罷メ退艦若クハ退庁スルトキハ其ノ艦若クハ其ノ麾下タリシ一艦ヨリ新官ニ相当スル礼砲ヲ行フヘシ
第三十五条 司令長官司令官旗艦ヲ変更シ其ノ旗旒ヲ転掲スルトキハ礼砲ヲ行フコトナシ又在職中一時其ノ旗旒ヲ撤スルトキハ其ノ掲揚撤去ノ場合ニ於テモ礼砲ヲ行フコトナシ
第三十六条 帝国軍艦ト帝国領内ノ砲台トノ間ニ於テハ何等ノ場合ト雖礼砲ヲ交換スルコトナシ
第四章 外国及其ノ文武官ニ対スル礼砲
第三十七条 一隻若クハ二隻以上ノ帝国軍艦外国ノ港湾ニ入リタルトキ其ノ地ニ堡砦砲台或ハ其ノ国ノ軍艦アリテ彼ヨリ答砲アルヘキコトヲ確知スルトキハ我先任官ハ其ノ国旗ニ対シ二十一発ノ礼砲ヲ行フヘシ但其ノ国ノ砲台若クハ軍艦ニ於テ我国ノ成規ヨリモ少数ノ礼砲ヲ行フヘキ通知ヲナストキハ之ト同一ノ砲数ヲ以テスルコトヲ得
第三十八条 一隻若クハ二隻以上ノ帝国軍艦外国ノ鎮守府司令長官艦隊司令長官司令官ノ旗旒ニ出会シタルトキ我先任官彼ヨリ後任ナルトキハ第三十二条ノ表ニ準シ其ノ艦ヨリ相当ノ礼砲ヲ行フヘシ但外国ノ港湾ニ於テハ該地方ニ発砲ノ禁ナク且既ニ該国ト相当ノ礼砲ヲ交換シタル後ニ之ヲ行フヘキモノトス
第三十九条 一隻若クハ二隻以上ノ帝国軍艦同時ニ数箇国ノ司令長官司令官ノ旗旒ト出会スルトキハ我先任官ハ我ヨリ先任ノ司令長官司令官ノ旗旒ニ対シテハ上位ノモノヨリ逐次ニ礼砲ヲ行フヘシ但港湾ニ在テハ礼砲ヲ受クヘキ者ノ官等同シキトキハ最前ヨリ該地方ニ在ル者ヲ先ニスルヲ例トス又外国ノ港湾ニ在テハ官ノ高下ニ関セス該国司令長官司令官ノ旗旒ニ対スル礼砲ヲ先ニスヘシ
前項ノ場合ニ於テ同一国ノ司令長官司令官ノ旗旒二箇以上現在スルトキハ其ノ上位ノモノニノミ礼砲ヲ行フ
第四十条 外国文武官帝国軍艦又ハ砲台ヲ訪問スルトキハ該官カ其ノ本国軍艦又ハ砲台ヨリ受クヘキ礼砲ト同数ノ礼砲ヲ行フヘシ但其ノ砲数ハ十九発ヲ超ユヘカラス若シ第三十二条ノ表ニ記スル我相当官ニ対スル礼砲数ヨリ少キトキハ同条ニ表示スル所ニ従フヘシ
外国ノ全権弁理大臣公然帝国ノ砲台所在地ニ到著又ハ出発スルトキハ其ノ砲台ヨリ帝国ノ全権弁理大臣ニ対スルト同数ノ礼砲ヲ行フヘシ
第四十一条 帝国文武官ニ対シ外国ノ軍艦砲台等ヨリ帝国ノ規定以外ノ礼砲ヲ行フニ於テハ之ニ相当スル其ノ国ノ文武官ニ対シ帝国ノ軍艦砲台ヨリモ彼ト同数ノ礼砲ヲ行フヘシ
第四十二条 特別ノ理由ニ依リ本章ノ礼砲ヲ行フコト能ハサルトキハ現場ニ於テ対方ニ其ノ理由ヲ説明スヘシ
第五章 答砲
第四十三条 帝国軍艦若クハ砲台ヨリ答砲ヲ行フヘキ場合及答砲ヲ行ハサル場合ハ左ノ如シ
第一 皇礼砲ニ対シテハ答砲ヲ行フコトナシ
第二 帝国ノ文武官ニ対スル礼砲ニハ本条第三ニ掲クルモノノ外答砲ヲ行フコトナシ
第三 司令長官司令官ノ旗旒ニ対スル礼砲ハ外国軍艦ヨリスルトキハ都テ同数ノ答砲ヲ行ヒ帝国軍艦ヨリスルトキハ第三十三条ニ依リ答砲ヲ行フヘシ
第四 一外国ノ軍艦入港シ若クハ数外国ノ軍艦同時ニ入港シ各其ノ檣頂ニ我旗章ヲ掲ケ国旗ニ対シテ礼砲ヲ行フトキハ之ニ応シ一国毎ニ同数ノ答砲ヲ行フヘシ但此ノ答砲ハ砲台ヨリ為スモノニシテ若シ礼砲ヲ行フヘキ砲台ナキトキハ所在海軍先任官ノ艦ヨリ之ヲ行フヘシ
第四十四条 帝国軍艦若クハ砲台ヨリ外国若クハ外国人ニ対シテ礼砲ヲ行ヒ其ノ答砲ヲ受クヘキ場合及受ケサル場合ハ左ノ如シ
第一 答砲ヲ受ケサルモノ
(一) 皇帝皇族若クハ大統領ニ対シ行フ礼砲
(二) 文武官軍艦若クハ砲台ニ来訪ノトキニ行フ礼砲
(三) 祝日等ヲ賀スル礼砲
第二 答砲ヲ受クヘキモノ
(一) 帝国軍艦外国ノ港湾等ニ到著ノトキ其ノ国旗ニ対スル礼砲
(二) 帝国軍艦外国ノ司令長官或ハ司令官ト海上又ハ港湾内ニ於テ出会ノトキ其ノ旗旒ニ対スル礼砲
第四十五条 内国或ハ外国ノ商船若クハ官用船舶ヨリ我将旗代将旒若クハ軍艦ニ対シ礼砲ヲ行ヒタルトキハ船舶一隻ナラハ五発二隻以上ナラハ七発ノ答砲ヲ行フヘシ
第六章 礼砲或ハ答砲ヲ行フトキ旗章ノ掲揚法
第四十六条 帝国軍艦外国ノ艦船若クハ其ノ砲台ト礼砲ヲ交換スルトキ又ハ外国人ニ対スル礼砲ヲ帝国軍艦ヨリ行フトキハ左ノ規定ニ依リ旗章ヲ掲揚スヘシ
(一) 外国ノ皇帝皇族或ハ大統領ニ対スル礼砲ヲ行フトキハ第二十八条及第二十九条ニ依ルヘシ
(二) 内外国ノ港湾ニ於テ外国ノ祝日等ニ当リ礼砲ヲ行フトキハ之ヲ行フ間若クハ其ノ前後トモ該国軍艦ニ準シテ大檣頂ニ其ノ国ノ軍艦旗(軍艦旗ノ制ナキ国ニ対シテハ国旗)ヲ掲クヘシ
(三) 外国ノ港湾ニ到著ノ際其ノ国ノ国旗ニ対シ礼砲ヲ行フトキハ之ヲ行フ間該国ノ軍艦旗(軍艦旗ノ制ナキ国ニ対シテハ国旗)ヲ大檣頂ニ掲クヘシ外国軍艦帝国国旗ニ対シ礼砲ヲ行ヒシ際軍艦ヨリ之ニ答砲スルトキ亦同シ
(四) 軍艦ヨリ外国ノ海軍将官佐官ニ対スル礼砲答砲及外国ノ艦船ニ答砲ヲ行フトキハ之ヲ行フ間該国ノ軍艦旗(軍艦旗ノ制ナキ国ニ対シテハ国旗)ヲ前檣頂ニ掲クヘシ
(五) 外国ノ文武官来訪ノ際礼砲ヲ行フトキハ之ヲ行フ間該国ノ軍艦旗(軍艦旗ノ制ナキ国ニ対シテハ国旗)ヲ前檣頂ニ掲クヘシ
第四十七条 帝国ノ陸軍武官外交官外交事務官及領事官ニ対シ礼砲ヲ行フトキハ之ヲ行フ間国旗ヲ前檣頂ニ掲クヘシ
第四十八条 礼砲ヲ行フヘキ砲台ハ常ニ国旗ヲ全掲シ置クヘク礼砲若クハ答砲シ行フニ当リ之ヲ変換セサルモノトス