台湾憲兵隊条例
法令番号: 勅令第二百三十二號
公布年月日: 明治29年5月26日
法令の形式: 勅令
朕臺灣憲兵隊條例ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十九年五月二十五日
陸軍大臣 侯爵 大山巖
拓殖務大臣 子爵 高島鞆之助
勅令第二百三十二號
臺灣憲兵隊條例
第一條 臺灣憲兵ハ陸軍兵ノ一ニシテ陸軍大臣ノ管轄ニ屬シ臺灣總督之ヲ統率シ總督府管下ニ於ケル軍事警察、行政警察及司法警察ノ事務ヲ執行セシム其ノ他特ニ要スル服務ノ規程ハ臺灣總督之ヲ定ム
第二條 憲兵ノ職掌軍事警察ニ係ルモノハ臺灣總督府軍務局長ニ隸シ行政警察及司法警察ニ係ルモノハ臺灣總督府民政局長ニ隸ス
第三條 臺灣憲兵隊ノ職員左ノ如シ
憲兵隊本部
司令官 憲兵大中佐
副官 憲兵大尉及中尉
軍醫
獸醫
軍吏
下副官(准士官) 憲兵曹長
書記 憲兵下士及軍吏部下士
蹄鐵工長若クハ蹄鐵工下長
看護長
憲兵區隊
隊長 憲兵少佐
副官 憲兵大尉及中尉
軍醫
獸醫
軍吏
下副官(准士官) 憲兵曹長
書記 憲兵下士及軍吏部下士
蹄鐵工長若クハ蹄鐵工下長
看護長
鞍工
銃工
靴工
分隊
分隊長 憲兵大尉
分隊副長 憲兵中尉
軍醫
上等伍長(准士官) 憲兵曹長
伍長 憲兵下士
書記 憲兵下士及軍吏部下士
憲兵上等兵
看護長
蹄鐵工
看病人
憲兵區隊長、副官、分隊長、分隊副長ハ豫備、後備ノモノヲ以テ充ツルコトヲ得其ノ身分取扱ハ召集中ノモノニ同シ
第四條 臺灣憲兵隊本部ハ臺灣總督府ノ所在地ニ之ヲ置キ各守備管區ニ憲兵區隊ヲ配置ス其ノ管轄區域ハ守備管區ノ區域ニ依ル之ヲ憲兵管區トス
第五條 憲兵管區ノ要地ニ憲兵分隊ヲ置キ其ノ管轄區域ヲ憲兵警察區トス但必要ニ應シ憲兵分隊ノ一部ヲ分駐セシメ其ノ管轄區域ヲ憲兵警察區ト爲スコトヲ得
第六條 憲兵管區ハ區隊ノ番號ヲ冠シ憲兵警察區ハ分隊又ハ分隊ノ一部分駐スル所在地ノ地名ヲ冠ス
第七條 各憲兵警察區ハ其ノ必要ニ應シ數箇ノ巡察區ニ分チ各巡察區ニハ憲兵一伍若クハ數伍ヲ配置ス
一伍ハ伍長一名憲兵上等兵六名乃至十二名ヲ以テ編組ス伍ハ其ノ必要ニ應シ伍長ヲ增加シ又之ニ乘馬ヲ附ス
第八條 憲兵警察區ハ總督之ヲ定メ憲兵巡察區ハ憲兵區隊長之ヲ定ム
第九條 總督ニ於テ必要ト認ムルトキハ憲兵ヲ管區外ニ使用スルコトヲ得
第十條 伍若クハ二伍以上ノ憲兵ハ必要ニ應シ分隊副長、上等伍長若クハ高級ノ伍長ヲシテ其ノ指揮ヲ掌ラシム
第十一條 憲兵ハ行政警察及司法警察ニ就キ其ノ管轄區域內ニ在ル縣知事、島司、支廳長及法院檢察官ノ指示ヲ承ク
第十二條 憲兵ハ其ノ地方ノ守備ニ就テハ其ノ管轄區域內ニアル旅團長又ハ守備隊長ノ指揮ヲ承クヘキモノトス
第十三條 憲兵ハ其ノ職務上ニ關シ正當ノ職權ヲ有スル者ヨリ要求アルトキハ直ニ之ニ應スヘシ
第十四條 憲兵ハ特別ノ命令ヲ受クルニアラサレハ左ニ記載スル場合ノ外兵器ヲ用ウルコトヲ得ス
一 暴行ヲ受クルトキ
二 其ノ占守スル所ノ土地若クハ委託セラレタル場所又ハ人ヲ防衞スルニ兵力ヲ用ウルノ外他ニ手段ナキトキ又ハ兵力ヲ以テセサレハ抗抵ニ勝ツ能ハサルトキ
第十五條 憲兵司令官ハ各憲兵區隊ヲ統轄シ本部ノ事務ヲ總理ス
第十六條 憲兵司令官非常若クハ緊要ノ事件アルコトヲ知リタルトキハ速ニ軍務局長、民政局長ヲ經テ總督ニ申報スヘシ
第十七條 憲兵司令官ハ軍紀、風紀、訓練、敎育、職務服行ノ程度ヲ檢閱スル爲メ必要ト認ムル時機ニ於テ各憲兵區隊ヲ巡視シ其ノ景況ヲ軍務局長ヲ經テ總督ニ申報スヘシ
第十八條 憲兵區隊長ハ各分隊ヲ統轄シ其ノ勤務ノ方法ヲ指定シ隊中ノ事務ヲ總理ス
第十九條 憲兵區隊長ハ地方ノ情勢ヲ審ニシ非常若クハ緊要ノ事件アルコトヲ知リタルトキハ速ニ憲兵司令官ニ申報シ且其ノ事件ノ必要ニ依リ管轄區域內ノ旅團長、縣知事、法院檢察官ニ申報シ鄰接憲兵區隊長ニ通報スヘシ
第二十條 憲兵分隊長ハ警察區內ノ情勢ヲ審ニシ部下ヲ指揮シ分隊ノ事務ヲ總理ス又區內ノ島司、支廳長及鄰接分隊長ト相互諜報スヘシ
憲兵分隊長非常若クハ緊要ノ事件アルコトヲ知リタルトキハ速ニ警察區內ノ守備隊長、島司、支廳長、法院檢察官及管轄憲兵區隊長ニ申報シ鄰接分隊長ニ通報スヘシ
第二十一條 憲兵分隊副長一ノ警察區ニ分駐ヲ命セラレタルトキハ分隊長ト同一ノ職務ニ服ス但其ノ分隊長ノ統轄ヲ離ルルコトナシ
憲兵分隊副長分隊長ノ許ニアルトキハ分隊長ヲ補佐シ分隊內ノ事務ヲ處理ス
第二十二條 憲兵上等伍長、伍長ハ憲兵上等兵ノ勤務ヲ指示監督シ且巡察區內ヲ巡視シ其ノ事情ヲ審ニスヘシ
第二十三條 憲兵上等兵ハ常ニ巡察區內ヲ巡察シ其ノ事情ヲ審ニスヘシ
第二十四條 憲兵ノ勤務諸報吿等ニ係ル細則ハ總督之ヲ定ム
朕台湾憲兵隊条例ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十九年五月二十五日
陸軍大臣 侯爵 大山巌
拓殖務大臣 子爵 高島鞆之助
勅令第二百三十二号
台湾憲兵隊条例
第一条 台湾憲兵ハ陸軍兵ノ一ニシテ陸軍大臣ノ管轄ニ属シ台湾総督之ヲ統率シ総督府管下ニ於ケル軍事警察、行政警察及司法警察ノ事務ヲ執行セシム其ノ他特ニ要スル服務ノ規程ハ台湾総督之ヲ定ム
第二条 憲兵ノ職掌軍事警察ニ係ルモノハ台湾総督府軍務局長ニ隷シ行政警察及司法警察ニ係ルモノハ台湾総督府民政局長ニ隷ス
第三条 台湾憲兵隊ノ職員左ノ如シ
憲兵隊本部
司令官 憲兵大中佐
副官 憲兵大尉及中尉
軍医
獣医
軍吏
下副官(准士官) 憲兵曹長
書記 憲兵下士及軍吏部下士
蹄鉄工長若クハ蹄鉄工下長
看護長
憲兵区隊
隊長 憲兵少佐
副官 憲兵大尉及中尉
軍医
獣医
軍吏
下副官(准士官) 憲兵曹長
書記 憲兵下士及軍吏部下士
蹄鉄工長若クハ蹄鉄工下長
看護長
鞍工
銃工
靴工
分隊
分隊長 憲兵大尉
分隊副長 憲兵中尉
軍医
上等伍長(准士官) 憲兵曹長
伍長 憲兵下士
書記 憲兵下士及軍吏部下士
憲兵上等兵
看護長
蹄鉄工
看病人
憲兵区隊長、副官、分隊長、分隊副長ハ予備、後備ノモノヲ以テ充ツルコトヲ得其ノ身分取扱ハ召集中ノモノニ同シ
第四条 台湾憲兵隊本部ハ台湾総督府ノ所在地ニ之ヲ置キ各守備管区ニ憲兵区隊ヲ配置ス其ノ管轄区域ハ守備管区ノ区域ニ依ル之ヲ憲兵管区トス
第五条 憲兵管区ノ要地ニ憲兵分隊ヲ置キ其ノ管轄区域ヲ憲兵警察区トス但必要ニ応シ憲兵分隊ノ一部ヲ分駐セシメ其ノ管轄区域ヲ憲兵警察区ト為スコトヲ得
第六条 憲兵管区ハ区隊ノ番号ヲ冠シ憲兵警察区ハ分隊又ハ分隊ノ一部分駐スル所在地ノ地名ヲ冠ス
第七条 各憲兵警察区ハ其ノ必要ニ応シ数箇ノ巡察区ニ分チ各巡察区ニハ憲兵一伍若クハ数伍ヲ配置ス
一伍ハ伍長一名憲兵上等兵六名乃至十二名ヲ以テ編組ス伍ハ其ノ必要ニ応シ伍長ヲ増加シ又之ニ乗馬ヲ附ス
第八条 憲兵警察区ハ総督之ヲ定メ憲兵巡察区ハ憲兵区隊長之ヲ定ム
第九条 総督ニ於テ必要ト認ムルトキハ憲兵ヲ管区外ニ使用スルコトヲ得
第十条 伍若クハ二伍以上ノ憲兵ハ必要ニ応シ分隊副長、上等伍長若クハ高級ノ伍長ヲシテ其ノ指揮ヲ掌ラシム
第十一条 憲兵ハ行政警察及司法警察ニ就キ其ノ管轄区域内ニ在ル県知事、島司、支庁長及法院検察官ノ指示ヲ承ク
第十二条 憲兵ハ其ノ地方ノ守備ニ就テハ其ノ管轄区域内ニアル旅団長又ハ守備隊長ノ指揮ヲ承クヘキモノトス
第十三条 憲兵ハ其ノ職務上ニ関シ正当ノ職権ヲ有スル者ヨリ要求アルトキハ直ニ之ニ応スヘシ
第十四条 憲兵ハ特別ノ命令ヲ受クルニアラサレハ左ニ記載スル場合ノ外兵器ヲ用ウルコトヲ得ス
一 暴行ヲ受クルトキ
二 其ノ占守スル所ノ土地若クハ委託セラレタル場所又ハ人ヲ防衛スルニ兵力ヲ用ウルノ外他ニ手段ナキトキ又ハ兵力ヲ以テセサレハ抗抵ニ勝ツ能ハサルトキ
第十五条 憲兵司令官ハ各憲兵区隊ヲ統轄シ本部ノ事務ヲ総理ス
第十六条 憲兵司令官非常若クハ緊要ノ事件アルコトヲ知リタルトキハ速ニ軍務局長、民政局長ヲ経テ総督ニ申報スヘシ
第十七条 憲兵司令官ハ軍紀、風紀、訓練、教育、職務服行ノ程度ヲ検閲スル為メ必要ト認ムル時機ニ於テ各憲兵区隊ヲ巡視シ其ノ景況ヲ軍務局長ヲ経テ総督ニ申報スヘシ
第十八条 憲兵区隊長ハ各分隊ヲ統轄シ其ノ勤務ノ方法ヲ指定シ隊中ノ事務ヲ総理ス
第十九条 憲兵区隊長ハ地方ノ情勢ヲ審ニシ非常若クハ緊要ノ事件アルコトヲ知リタルトキハ速ニ憲兵司令官ニ申報シ且其ノ事件ノ必要ニ依リ管轄区域内ノ旅団長、県知事、法院検察官ニ申報シ隣接憲兵区隊長ニ通報スヘシ
第二十条 憲兵分隊長ハ警察区内ノ情勢ヲ審ニシ部下ヲ指揮シ分隊ノ事務ヲ総理ス又区内ノ島司、支庁長及隣接分隊長ト相互諜報スヘシ
憲兵分隊長非常若クハ緊要ノ事件アルコトヲ知リタルトキハ速ニ警察区内ノ守備隊長、島司、支庁長、法院検察官及管轄憲兵区隊長ニ申報シ隣接分隊長ニ通報スヘシ
第二十一条 憲兵分隊副長一ノ警察区ニ分駐ヲ命セラレタルトキハ分隊長ト同一ノ職務ニ服ス但其ノ分隊長ノ統轄ヲ離ルルコトナシ
憲兵分隊副長分隊長ノ許ニアルトキハ分隊長ヲ補佐シ分隊内ノ事務ヲ処理ス
第二十二条 憲兵上等伍長、伍長ハ憲兵上等兵ノ勤務ヲ指示監督シ且巡察区内ヲ巡視シ其ノ事情ヲ審ニスヘシ
第二十三条 憲兵上等兵ハ常ニ巡察区内ヲ巡察シ其ノ事情ヲ審ニスヘシ
第二十四条 憲兵ノ勤務諸報告等ニ係ル細則ハ総督之ヲ定ム