(臨時陸軍軍法会議並其管轄地内ニ於ケル陸軍刑法ノ適用ニ関スル件)
法令番号: 勅令第九十二號
公布年月日: 明治28年7月1日
法令の形式: 勅令
朕玆ニ緊急ノ必要アリト認メ樞密顧問ノ諮詢ヲ經テ帝國憲法第八條ニ依リ臨時陸軍軍法會議竝其ノ管轄地內ニ於ケル陸軍刑法ノ適用ニ關スル件ヲ裁可シ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十八年六月二十九日
內閣總理大臣 伯爵 伊藤博文
大藏大臣 伯爵 松方正義
海軍大臣 伯爵 西鄕從道
陸軍大臣 伯爵 大山巖
農商務大臣 子爵 榎本武揚
遞信大臣 渡邊國武
司法大臣 芳川顯正
外務大臣臨時代理 文部大臣 侯爵 西園寺公望
文部大臣 侯爵 西園寺公望
內務大臣 子爵 野村靖
勅令第九十二號
第一條 戰時若クハ事變ニ際シ特設又ハ分駐セル陸軍軍衙若クハ陸軍團隊ニハ必要ニ應シ臨時陸軍軍法會議ヲ設クルコトヲ得
事平定ノ後ト雖仍引續キ前項ノ軍衙又ハ團隊ヲ置クトキハ臨時陸軍軍法會議ヲ設クルコトヲ得
第二條 臨時陸軍軍法會議ノ管轄ハ特設軍衙又ハ分駐團隊ノ管轄若クハ守備地方ヲ以テ管轄トシ其ノ構成權限及治罪ニ關スル諸般ノ規定ハ本令ニ於テ特ニ定メタルモノヲ除ク外陸軍治罪法合圍ノ地ノ軍法會議ノ例ニ依ル
第三條 臨時陸軍軍法會議ハ管轄地內ニ在ル常人ノ犯罪及他ノ軍法會議ノ管轄ニ屬スル者ノ犯罪ヲ審判スルコトヲ得但高等軍法會議ノ管轄ニ屬スルモノハ此ノ限ニ在ラス
第四條 臨時陸軍軍法會議ヲ設ケタル軍衙ノ長官若クハ團隊ノ長ノ其ノ軍法會議ニ關スル職權ハ陸軍治罪法第四條ノ長官ニ同シク其ノ副官及其ノ職務副官ト同シキ者ノ陸軍檢察ニ關スル職權ハ陸軍治罪法第三十一條ノ諸官ニ同シ
第五條 臨時陸軍軍法會議ノ管轄地內ニ於テ陸軍刑法第五十三條第五十四條第五十六條第五十七條第五十八條第五十九條第六十條第六十一條ニ揭クル所ノ罪ヲ犯ス者ハ軍人ニ非スト雖陸軍刑法ニ依テ處斷ス但其ノ豫備若クハ陰謀ニ止マル者ハ陸軍刑法第六十二條第六十三條ニ照シテ處斷ス
第六條 本令ハ發布ノ日ヨリ施行ス
朕茲ニ緊急ノ必要アリト認メ枢密顧問ノ諮詢ヲ経テ帝国憲法第八条ニ依リ臨時陸軍軍法会議並其ノ管轄地内ニ於ケル陸軍刑法ノ適用ニ関スル件ヲ裁可シ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十八年六月二十九日
内閣総理大臣 伯爵 伊藤博文
大蔵大臣 伯爵 松方正義
海軍大臣 伯爵 西郷従道
陸軍大臣 伯爵 大山巌
農商務大臣 子爵 榎本武揚
逓信大臣 渡辺国武
司法大臣 芳川顕正
外務大臣臨時代理 文部大臣 侯爵 西園寺公望
文部大臣 侯爵 西園寺公望
内務大臣 子爵 野村靖
勅令第九十二号
第一条 戦時若クハ事変ニ際シ特設又ハ分駐セル陸軍軍衙若クハ陸軍団隊ニハ必要ニ応シ臨時陸軍軍法会議ヲ設クルコトヲ得
事平定ノ後ト雖仍引続キ前項ノ軍衙又ハ団隊ヲ置クトキハ臨時陸軍軍法会議ヲ設クルコトヲ得
第二条 臨時陸軍軍法会議ノ管轄ハ特設軍衙又ハ分駐団隊ノ管轄若クハ守備地方ヲ以テ管轄トシ其ノ構成権限及治罪ニ関スル諸般ノ規定ハ本令ニ於テ特ニ定メタルモノヲ除ク外陸軍治罪法合囲ノ地ノ軍法会議ノ例ニ依ル
第三条 臨時陸軍軍法会議ハ管轄地内ニ在ル常人ノ犯罪及他ノ軍法会議ノ管轄ニ属スル者ノ犯罪ヲ審判スルコトヲ得但高等軍法会議ノ管轄ニ属スルモノハ此ノ限ニ在ラス
第四条 臨時陸軍軍法会議ヲ設ケタル軍衙ノ長官若クハ団隊ノ長ノ其ノ軍法会議ニ関スル職権ハ陸軍治罪法第四条ノ長官ニ同シク其ノ副官及其ノ職務副官ト同シキ者ノ陸軍検察ニ関スル職権ハ陸軍治罪法第三十一条ノ諸官ニ同シ
第五条 臨時陸軍軍法会議ノ管轄地内ニ於テ陸軍刑法第五十三条第五十四条第五十六条第五十七条第五十八条第五十九条第六十条第六十一条ニ掲クル所ノ罪ヲ犯ス者ハ軍人ニ非スト雖陸軍刑法ニ依テ処断ス但其ノ予備若クハ陰謀ニ止マル者ハ陸軍刑法第六十二条第六十三条ニ照シテ処断ス
第六条 本令ハ発布ノ日ヨリ施行ス