判事検事官等俸給令
法令番号: 勅令第百五十八號
公布年月日: 明治23年8月4日
法令の形式: 勅令
朕玆ニ判事檢事官等俸給令ヲ裁可ス
御名御璽
明治二十三年八月二日
內閣總理大臣 伯爵 山縣有朋
司法大臣 伯爵 山田顯義
勅令第百五十八號
判事檢事官等俸給令
第一條 判事檢事ノ官等年俸ハ別表定ムル所ニ依ル
第二條 判事檢事ノ各職ニ付其人員官等年俸ヲ限定スルコト左ノ如シ
大審院
長 一人
勅任一等 年俸五千圓
但特ニ年俸五千五百圓ヲ給スルコトアルヘシ
部長 三人
勅任一等二等 年俸四千五百圓四千圓
判事 二十七人
勅任二等乃至奏任二等 年俸三千五百圓乃至千八百圓
大審院檢事局
檢事總長 一人
勅任一等 年俸五千圓又ハ四千五百圓
檢事 五人
勅任二等乃至奏任二等 年俸三千五百圓乃至千八百圓
控訴院
長 七人
東京大阪勅任一等 年俸四千五百圓
其他勅任二等 年俸四千圓三千五百圓
部長 十五人
奏任一等二等 年俸二千六百圓乃至千八百圓
判事 八十五人
奏任三等四等 年俸千六百圓乃至千圓
控訴院檢事局
檢事長 七人
勅任二等 年俸東京大阪四千圓其他三千五百圓三千圓
檢事 二十人
奏任一等乃至四等 年俸二千四百圓乃至千圓
地方裁判所
長 四十八人
東京大阪奏任一等 年俸二千六百圓
其他奏任一等乃至三等 年俸二千四百圓乃至千六百圓
部長 九十人
奏任三等四等 年俸千四百圓乃至千圓
判事 四百十五人
奏任四等乃至六等 年俸九百圓乃至五百圓
地方裁判所檢事局
檢事正 四十八人
東京大阪奏任一等 年俸二千四百圓
其他奏任二等乃至四等 年俸二千二百圓乃至千百圓
檢事 百二十五人
奏任四等乃至六等 年俸千圓乃至五百圓
區裁判所
判事 八百四十人
奏任四等乃至六等 年俸九百圓乃至五百圓
區裁判所檢事局
檢事 二百七十五人
奏任四等乃至六等 年俸九百圓乃至五百圓
第三條 豫備判事ハ其人員ヲ三十五人トシ豫備檢事ハ其人員ヲ十五人トス
豫備判事豫備檢事ハ奏任六等ニ敍シ年俸四百圓ヲ給ス
司法官試補ハ其人員ヲ百十人トス
司法官試補ハ其待遇ヲ奏任トシ年俸三百圓以下ヲ給ス
第四條 第二條ノ各職中年俸ニ等差アルモノハ每俸平等ニ其人員ヲ定ム但端數ノ人員ヲ生スルトキハ最下級ヨリ漸次上級ノ人員ニ併合ス
第五條 裁判所構成法第六十二條ニ依リ新任スル判事又ハ檢事ニシテ直チニ補職スル者ハ奏任六等ニ敍シ年俸五百圓ヲ給ス豫備判事又ハ豫備檢事ニシテ補職スル者モ亦同シ
裁判所構成法第六十五條第一項ニ依リ新任スル判事又ハ檢事ハ其補スヘキ職ノ最下ノ官等ニ敍シ最下ノ年俸ヲ給ス
判事又ハ檢事ニシテ他ニ轉官シ若ハ退官シタル者ヲ更ニ判事又ハ檢事ニ任スルトキハ前官ト同等若ハ其以下ノ官等ニ敍シ前官ト同年俸若ハ其以下ノ年俸ヲ給ス
第六條 判事又ハ檢事ノ進級ハ闕員アルトキニ限リ之ヲ行フ
進級トハ陞等又ハ增俸ヲ謂フ
第七條 判事又ハ檢事ノ進級ハ第二條ニ揭ケタル各職每ニ先任ノ順序ニ依リ之ヲ行フ但區裁判所判事ハ地方裁判所判事ト併合シ區裁判所檢事局檢事ハ地方裁判所檢事局檢事ト併合シテ先任順序ヲ定メ進級セシム
大審院ノ部長判事大審院檢事局ノ檢事總長檢事控訴院ノ長部長判事控訴院檢事局ノ檢事長檢事地方裁判所ノ長部長及地方裁判所檢事局ノ檢事正ノ補職ハ拔擢ヲ以テ之ヲ行フコトヲ得但官等ヲ超越セシムルコトヲ得ス又其補スヘキ職ノ最下ノ年俸ニ非サレハ給スルコトヲ得ス
東京大阪ノ控訴院ノ長同院檢事局ノ檢事長及東京大阪ノ地方裁判所ノ長同地方裁判所檢事局ノ檢事正ノ補職モ亦拔擢ヲ以テ之ヲ行フコトヲ得但官等ヲ超越セシムルコトヲ得ス
第八條 判事檢事ノ各職ニ於ケル先任順序ハ年俸ノ多寡ニ依リ之ヲ定ム年俸相同シキモノハ年俸下賜辭令ノ日付ノ前後ニ依リ其日付相同シキモノハ前年俸下賜辭令ノ日付ノ前後ニ依リ其日付相同シキモノハ年齡ニ依リ之ヲ定ム
判事檢事ノ裁判所內ニ於ケル席次ハ前項ノ規程ニ從フ
第九條 判事又ハ檢事轉職スルトキハ前職ト同年俸若ハ其以下ノ年俸ニ非サレハ給スルコトヲ得ス此場合ニ於テハ前職ノ年俸下賜辭令ノ日付ノ前後ニ依リ後職ノ先任順序ヲ定ム
待命ノ判事又ハ檢事補職セラルヽトキ及司法行政官吏ニシテ判事檢事タルノ資格ヲ有スル者判事又ハ檢事ニ轉任シ補職セラルヽトキモ亦同シ
退職ノ判事又ハ檢事補職セラルヽトキハ前職ト同年俸若ハ其以下ノ年俸ニ非サレハ給スルコトヲ得ス此場合ニ於テハ後職ノ年俸下賜辭令ノ日付ノ前後ニ依リ先任順序ヲ定ム
第十條 高等官官等俸給令第二條第三條第四條第六條第二十一條乃至第二十四條第二十六條及第二十七條ハ判事檢事ニモ亦之ヲ準用ス
附 則
第十一條 裁判所構成法實施ノ際敍任スル者ハ第七條第一項ノ規程ニ依ラス進級セシムルコトヲ得
第十二條 裁判所構成法實施ノ際在職ノ裁判官檢察官ハ其官等年俸第二條ニ定メタル官等年俸ヨリ高等多額ナルモ其官等年俸ノ儘其職ニ補スルコトヲ得
第十三條 本令ハ明治二十三年十一月一日ヨリ施行ス
【表】
朕茲ニ判事検事官等俸給令ヲ裁可ス
御名御璽
明治二十三年八月二日
内閣総理大臣 伯爵 山県有朋
司法大臣 伯爵 山田顕義
勅令第百五十八号
判事検事官等俸給令
第一条 判事検事ノ官等年俸ハ別表定ムル所ニ依ル
第二条 判事検事ノ各職ニ付其人員官等年俸ヲ限定スルコト左ノ如シ
大審院
長 一人
勅任一等 年俸五千円
但特ニ年俸五千五百円ヲ給スルコトアルヘシ
部長 三人
勅任一等二等 年俸四千五百円四千円
判事 二十七人
勅任二等乃至奏任二等 年俸三千五百円乃至千八百円
大審院検事局
検事総長 一人
勅任一等 年俸五千円又ハ四千五百円
検事 五人
勅任二等乃至奏任二等 年俸三千五百円乃至千八百円
控訴院
長 七人
東京大阪勅任一等 年俸四千五百円
其他勅任二等 年俸四千円三千五百円
部長 十五人
奏任一等二等 年俸二千六百円乃至千八百円
判事 八十五人
奏任三等四等 年俸千六百円乃至千円
控訴院検事局
検事長 七人
勅任二等 年俸東京大阪四千円其他三千五百円三千円
検事 二十人
奏任一等乃至四等 年俸二千四百円乃至千円
地方裁判所
長 四十八人
東京大阪奏任一等 年俸二千六百円
其他奏任一等乃至三等 年俸二千四百円乃至千六百円
部長 九十人
奏任三等四等 年俸千四百円乃至千円
判事 四百十五人
奏任四等乃至六等 年俸九百円乃至五百円
地方裁判所検事局
検事正 四十八人
東京大阪奏任一等 年俸二千四百円
其他奏任二等乃至四等 年俸二千二百円乃至千百円
検事 百二十五人
奏任四等乃至六等 年俸千円乃至五百円
区裁判所
判事 八百四十人
奏任四等乃至六等 年俸九百円乃至五百円
区裁判所検事局
検事 二百七十五人
奏任四等乃至六等 年俸九百円乃至五百円
第三条 予備判事ハ其人員ヲ三十五人トシ予備検事ハ其人員ヲ十五人トス
予備判事予備検事ハ奏任六等ニ叙シ年俸四百円ヲ給ス
司法官試補ハ其人員ヲ百十人トス
司法官試補ハ其待遇ヲ奏任トシ年俸三百円以下ヲ給ス
第四条 第二条ノ各職中年俸ニ等差アルモノハ毎俸平等ニ其人員ヲ定ム但端数ノ人員ヲ生スルトキハ最下級ヨリ漸次上級ノ人員ニ併合ス
第五条 裁判所構成法第六十二条ニ依リ新任スル判事又ハ検事ニシテ直チニ補職スル者ハ奏任六等ニ叙シ年俸五百円ヲ給ス予備判事又ハ予備検事ニシテ補職スル者モ亦同シ
裁判所構成法第六十五条第一項ニ依リ新任スル判事又ハ検事ハ其補スヘキ職ノ最下ノ官等ニ叙シ最下ノ年俸ヲ給ス
判事又ハ検事ニシテ他ニ転官シ若ハ退官シタル者ヲ更ニ判事又ハ検事ニ任スルトキハ前官ト同等若ハ其以下ノ官等ニ叙シ前官ト同年俸若ハ其以下ノ年俸ヲ給ス
第六条 判事又ハ検事ノ進級ハ闕員アルトキニ限リ之ヲ行フ
進級トハ陞等又ハ増俸ヲ謂フ
第七条 判事又ハ検事ノ進級ハ第二条ニ掲ケタル各職毎ニ先任ノ順序ニ依リ之ヲ行フ但区裁判所判事ハ地方裁判所判事ト併合シ区裁判所検事局検事ハ地方裁判所検事局検事ト併合シテ先任順序ヲ定メ進級セシム
大審院ノ部長判事大審院検事局ノ検事総長検事控訴院ノ長部長判事控訴院検事局ノ検事長検事地方裁判所ノ長部長及地方裁判所検事局ノ検事正ノ補職ハ抜擢ヲ以テ之ヲ行フコトヲ得但官等ヲ超越セシムルコトヲ得ス又其補スヘキ職ノ最下ノ年俸ニ非サレハ給スルコトヲ得ス
東京大阪ノ控訴院ノ長同院検事局ノ検事長及東京大阪ノ地方裁判所ノ長同地方裁判所検事局ノ検事正ノ補職モ亦抜擢ヲ以テ之ヲ行フコトヲ得但官等ヲ超越セシムルコトヲ得ス
第八条 判事検事ノ各職ニ於ケル先任順序ハ年俸ノ多寡ニ依リ之ヲ定ム年俸相同シキモノハ年俸下賜辞令ノ日付ノ前後ニ依リ其日付相同シキモノハ前年俸下賜辞令ノ日付ノ前後ニ依リ其日付相同シキモノハ年齢ニ依リ之ヲ定ム
判事検事ノ裁判所内ニ於ケル席次ハ前項ノ規程ニ従フ
第九条 判事又ハ検事転職スルトキハ前職ト同年俸若ハ其以下ノ年俸ニ非サレハ給スルコトヲ得ス此場合ニ於テハ前職ノ年俸下賜辞令ノ日付ノ前後ニ依リ後職ノ先任順序ヲ定ム
待命ノ判事又ハ検事補職セラルヽトキ及司法行政官吏ニシテ判事検事タルノ資格ヲ有スル者判事又ハ検事ニ転任シ補職セラルヽトキモ亦同シ
退職ノ判事又ハ検事補職セラルヽトキハ前職ト同年俸若ハ其以下ノ年俸ニ非サレハ給スルコトヲ得ス此場合ニ於テハ後職ノ年俸下賜辞令ノ日付ノ前後ニ依リ先任順序ヲ定ム
第十条 高等官官等俸給令第二条第三条第四条第六条第二十一条乃至第二十四条第二十六条及第二十七条ハ判事検事ニモ亦之ヲ準用ス
附 則
第十一条 裁判所構成法実施ノ際叙任スル者ハ第七条第一項ノ規程ニ依ラス進級セシムルコトヲ得
第十二条 裁判所構成法実施ノ際在職ノ裁判官検察官ハ其官等年俸第二条ニ定メタル官等年俸ヨリ高等多額ナルモ其官等年俸ノ儘其職ニ補スルコトヲ得
第十三条 本令ハ明治二十三年十一月一日ヨリ施行ス
【表】