婚姻事件養子縁組事件及ヒ禁治産事件ニ関スル訴訟規則
法令番号: 法律第百四號
公布年月日: 明治23年10月9日
法令の形式: 法律
朕民事訴訟法ノ補則トシテ婚姻事件養子緣組事件及ヒ禁治產事件ニ關スル訴訟規則ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム此法律ハ明治二十六年一月一日ヨリ施行スヘキコトヲ命ス
御名御璽
明治二十三年十月八日
內閣總理大臣 伯爵 山縣有朋
司法大臣 伯爵 山田顯義
法律第百四號
婚姻事件養子緣組事件及ヒ禁治產事件ニ關スル訴訟規則
第一章 婚姻事件及ヒ養子緣組事件ノ訴訟手續
第一條 婚姻ノ無效、離婚又ハ同居ヲ目的トスル訴訟ハ夫カ普通裁判籍ヲ有スル地ノ地方裁判所ノ管轄ニ專屬ス
緣組ノ無效又ハ離緣ヲ目的トスル訴訟ハ養子ヲ爲シタル者カ普通裁判籍ヲ有スル地ノ地方裁判所ニ專屬ス
婚姻又ハ緣組ノ不成立ニ關スル訴訟ハ被吿カ普通裁判籍ヲ有スル地ノ地方裁判所ニ專屬ス
第二條 婚姻事件及ヒ緣組事件ニ付テハ檢事ハ口頭辯論ニ立會フノ外受命判事若クハ受託判事ノ面前ニ於テ爲ス審問ニモ亦立會フコトヲ得檢事ニハ職權ヲ以テ總テノ期日ヲ通知ス可シ
檢事ハ婚姻又ハ緣組ヲ維持スル爲メ新ナル事實及ヒ證據方法ヲ提出スルコトヲ得
調書ニハ檢事ノ氏名及ヒ其申立ヲ記載ス可シ
第三條 婚姻ノ不成立、無效、離婚及ヒ同居ノ訴ハ之ヲ併合スルコトヲ得緣組ノ不成立、無效及ヒ離緣ノ訴モ亦同シ
婿養子緣組ノ場合ニ於テハ婚姻ノ不成立、無效、離婚又ハ同居ノ訴ニ緣組ノ不成立、無效又ハ離緣ノ訴ヲ併合スルコトヲ得
本條ノ訴ニ他ノ訴ヲ併合シ及ヒ他ノ種類ノ反訴ヲ提起スルコトヲ得ス但本條ノ訴ノ原因タル事實ヨリ生スル損害賠償及ヒ養料ノ請求ニ付テハ此限ニ在ラス
第四條 判決ニ接著スル口頭辨論ノ終結ニ至ルマテハ訴ニ於テ提出シタル以外ノ理由ヲ主張スルコトヲ得
第五條 婚姻ノ無效若クハ離婚ノ訴又ハ緣組ノ無效若クハ離緣ノ訴ニ付キ棄却ノ言渡ヲ受ケタル原吿ハ前訴訟ニ於テ又ハ訴ノ併合ニ因リ主張スルヲ得ヘカリシ事實ヲ獨立ナル訴ノ理由トシテ主張スルコトヲ得ス被吿ニ在テハ反訴ノ理由ト爲スヲ得ヘカリシ事實ニ付テモ亦同シ
第六條 民事訴訟法第百十一條第二項第三項、第二百十條及ヒ第三百三十五條乃至第三百四十一條ノ規定ハ之ヲ適用セス
第七條 口頭辨論ノ期日ニ被吿カ出頭セサルトキハ原吿ノ申立ニ因リ新期日ヲ定ム可シ
被吿ノ在廷セサル場合ニ於テ期日ヲ定メタルトキハ其都度被吿ヲ呼出ス可シ
闕席判決ハ本條ノ手續ノ效アラサルトキニ限リ被吿ニ對シテ之ヲ爲スコトヲ得
第八條 裁判所ハ原吿若クハ被吿ノ自身出頭ヲ命シテ其原吿若クハ被吿又ハ其相手方若クハ檢事ノ主張シタル事實ニ付キ原吿若クハ被吿ヲ審訊スルコトヲ得
審訊ヲ受ク可キ原吿若クハ被吿カ受訴裁判所ニ出頭スル能ハサルトキ又ハ受訴裁判所ノ所在地ヨリ遠隔ノ地ニ在ルトキハ受命判事若クハ受託判事ニ依リ審訊ヲ爲スコトヲ得
出頭セサル原吿若クハ被吿ニ對シテハ審訊期日ニ出頭セサル證人ニ對スル規定ヲ適用ス
第九條 和諧ノ調フ可キ見込アルトキハ裁判所ハ職權ヲ以テ離婚又ハ離緣ノ訴ニ關スル手續ヲ長クトモ一个年間中止スルコトヲ得
第十條 裁判所ハ婚姻又ハ緣組ヲ維持スル爲メ當事者ノ提出セサル事實ヲモ斟酌シ且職權ヲ以テ證據調ヲ爲スコトヲ得但裁判前ニ當事者ヲ審訊ス可シ
第十一條 婚姻及ヒ緣組ノ不成立若クハ無效又ハ離婚若クハ離緣ヲ言渡ス判決ハ職權ヲ以テ之ヲ當事者ニ送達ス可シ
第十二條 婚姻事件及ヒ緣組事件ノ判決ニ付テハ假執行ノ宣言ヲ付スルコトヲ得ス
第十三條 假處分ニ關シ殊ニ配偶者ノ一方又ハ養子カ住家ヲ去ルノ許可及ヒ養料ノ供給ヲ申立テタル場合ニ於テハ民事訴訟法第七百五十六條乃至第七百六十三條ノ規定ヲ準用ス
第十四條 婚姻及ヒ緣組ノ不成立若クハ無效又ハ離婚若クハ離緣ヲ言渡シタル判決確定シタルトキハ裁判所ノ揭示板ニ揭示シテ之ヲ公吿ス可シ
第十五條 民法ノ規定ニ從ヒ檢事ノ職權ヲ以テ起スコトヲ得ヘキ無效ノ訴ニ付テハ以下數條ニ定メタル特別ノ規定ニ從フ
第十六條 檢事又ハ第三者ヨリ訴ヲ起ストキハ夫婦又ハ養親子ヲ以テ相手方ト爲ス
夫婦又ハ養親子ノ一方ヨリ訴ヲ起ストキハ他ノ一方ヲ以テ相手方ト爲ス
第十七條 檢事ハ自ラ訴ヲ起ササルトキト雖モ訴訟ヲ追行シ殊ニ獨立シテ申立ヲ爲シ及ヒ上訴ヲ爲スコトヲ得
第十八條 檢事上訴ヲ爲シタルトキハ上訴手續ニ於テ前審ノ當事者雙方ヲ相手方ト看做ス
檢事カ訴訟人タル場合ニ於テ當事者ノ一方カ上訴ヲ爲シタルトキハ上訴手續ニ於テ他ノ一方ト檢事トヲ相手方ト看做ス
第十九條 訴訟人タル檢事カ敗訴スル場合ニ於テハ民事訴訟法第一編第二章第五節ノ規定ニ從ヒ勝訴者タル相手方ニ生シタル費用ハ國庫ノ負擔トス
第二章 禁治產事件ノ訴訟手續
第二十條 禁治產ノ申立ハ治產ヲ禁セラル可キ者カ普通裁判籍ヲ有スル地ノ區裁判所ノ管轄ニ專屬ス
第二十一條 申立ハ書面又ハ口頭ヲ以テ之ヲ爲スコトヲ得其申立ニハ申立ノ理由タル事實及ヒ證據方法ノ表示ヲ包含ス可シ
第二十二條 裁判所ハ申立ニ表示シタル事實及ヒ證據方法ニ依リ職權ヲ以テ心神喪失ノ常況ニ在ルヤ否ヲ定ムル爲メニ必要ナル探知ヲ爲シ且適當トスル證據方法ヲ調フ可シ
裁判所ハ訴訟手續ヲ開始スルノ前診斷書ノ提出ヲ命スルコトヲ得
檢事ハ總テノ場合ニ於テ申立ヲ爲シテ訴訟手續ヲ追行スルコトヲ得
證人及ヒ鑑定人ノ訊問及ヒ宣誓ニ付テハ民事訴訟法第二編第一章第六節及ヒ第七節ノ規定ヲ適用ス
第二十三條 裁判所ハ公開セサル法廷ニ於テ一人又ハ數人ノ鑑定人ノ立會ヲ以テ治產ヲ禁セラル可キ者ヲ訊問ス可シ此訊問ハ受託判事ヲシテ之ヲ爲サシムルコトヲ得
右訊問ハ裁判所ノ意見ニ從ヒ實施シ難ク又ハ裁判ノ爲メニ必要ナラス又ハ治產ヲ禁セラル可キ者ノ健康ニ害アリトスルトキハ之ヲ爲ササルコトヲ得
第二十四條 禁治產ノ宣言ハ決定ヲ以テ之ヲ爲ス
右宣言ハ豫メ治產ヲ禁セラル可キ者ノ心神喪失ノ常況ニ付キ一人又ハ數人ノ鑑定人ヲ訊問シタル後ニ非サレハ之ヲ爲スコトヲ得ス
第二十五條 裁判所ハ治產ヲ禁セラル可キ者ノ身體ノ監護又ハ財產ノ保存ニ付キ必要ナル處分ヲ命スルコトヲ得
第二十六條 訴訟手續ノ費用ハ治產ヲ禁シタル場合ニ於テハ禁治產者之ヲ負擔シ其他ノ場合ニ於テハ禁治產ノ申立ヲ爲シタル者之ヲ負擔ス可シ但檢事カ申立ヲ爲シタルトキハ國庫之ヲ負擔ス
第二十七條 禁治產ニ付キ爲シタル決定ハ職權ヲ以テ申立人及ヒ檢事ニ之ヲ送達ス可シ
第二十八條 禁治產ヲ宣言スル決定ハ法律上ノ後見人アルトキハ其後見人ニ職權ヲ以テ之ヲ通知ス可シ
第二十九條 申立人及ヒ檢事ハ禁治產ノ申立ヲ却下スル決定ニ對シ卽時抗吿ヲ爲スコトヲ得
抗吿裁判所ノ訴訟手續ニハ第二十二條ノ規定ヲ準用ス
第三十條 禁治產ヲ宣言スル決定ニ對シテハ一个月ノ期間內ニ訴ヲ以テ不服ヲ申立ツルコトヲ得
訴ヲ起スノ權利ハ禁治產者、其後見人及ヒ民法ノ規定ニ從ヒ禁治產ノ申立ヲ爲スノ權ヲ有スル者ニ屬ス
右期間ハ禁治產者ニ對シテハ禁治產ヲ知リタル日ヲ以テ始マリ其他ノ者ニ對シテハ後見人ノ選定ヲ以テ始マリ又法律上ノ後見ノ場合ニ於テハ其決定ヲ法律上ノ後見人ニ通知スルヲ以テ始マル
第三十一條 訴ハ區裁判所ノ所在地ヲ管轄スル地方裁判所ノ管轄ニ專屬ス
第三十二條 禁治產ニ對シテ不服ヲ申立ル訴ニハ他ノ訴ヲ併合スルコトヲ得ス
反訴ハ之ヲ爲スコトヲ許サス
第三十三條 禁治產者カ訴ヲ起サントスルトキハ其申立ニ因リ受訴裁判所ノ裁判長ハ訴訟代理人トシテ辯護士ヲ之ニ附添ハシム可シ
第三十四條 第六條及ヒ第七條ノ規定ハ本章ニモ之ヲ準用ス
第三十五條 第二十三條及ヒ第二十四條第二項ノ規定ハ不服申立ノ訴ニ付テノ訴訟手續ニ之ヲ準用ス
裁判所ハ區裁判所ニ於テ爲シタル鑑定ヲ十分ナリト認ムルトキハ鑑定人ノ訊問ヲ爲ササルコトヲ得
第三十六條 不服申立ノ訴ヲ理由アリトスルトキハ禁治產ヲ宣言シタル決定ヲ取消ス可シ
然レトモ此取消ノ判決ハ後見人ノ既ニ爲シタル行爲ノ效力ニ影響ヲ及ホサス
第三十七條 不服申立ノ訴ニ關スル訴訟費用ニ付テハ第二十六條ノ規定ヲ準用ス
第三十八條 受訴裁判所ハ禁治產事件ニ付キ爲シタル總テノ終局判決ヲ區裁判所ニ通知ス可シ
第三十九條 禁治產ノ解止ニ付テハ第二十五條ヲ除クノ外本章ノ規定ヲ準用ス
第四十條 準禁治產事件ニ付テハ左ノ特別ナル規則ヲ除クノ外本章ノ規定ヲ準用ス
第二十二條第二項ハ浪費者ニ之ヲ適用セス
又同條第三項、第二十五條、第三十三條及ヒ檢事ニ關スル規定ハ總テノ準禁治產者ニ之ヲ適用セス
準禁治產ヲ解止スル決定ニ對シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス
朕民事訴訟法ノ補則トシテ婚姻事件養子縁組事件及ヒ禁治産事件ニ関スル訴訟規則ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム此法律ハ明治二十六年一月一日ヨリ施行スヘキコトヲ命ス
御名御璽
明治二十三年十月八日
内閣総理大臣 伯爵 山県有朋
司法大臣 伯爵 山田顕義
法律第百四号
婚姻事件養子縁組事件及ヒ禁治産事件ニ関スル訴訟規則
第一章 婚姻事件及ヒ養子縁組事件ノ訴訟手続
第一条 婚姻ノ無効、離婚又ハ同居ヲ目的トスル訴訟ハ夫カ普通裁判籍ヲ有スル地ノ地方裁判所ノ管轄ニ専属ス
縁組ノ無効又ハ離縁ヲ目的トスル訴訟ハ養子ヲ為シタル者カ普通裁判籍ヲ有スル地ノ地方裁判所ニ専属ス
婚姻又ハ縁組ノ不成立ニ関スル訴訟ハ被告カ普通裁判籍ヲ有スル地ノ地方裁判所ニ専属ス
第二条 婚姻事件及ヒ縁組事件ニ付テハ検事ハ口頭弁論ニ立会フノ外受命判事若クハ受託判事ノ面前ニ於テ為ス審問ニモ亦立会フコトヲ得検事ニハ職権ヲ以テ総テノ期日ヲ通知ス可シ
検事ハ婚姻又ハ縁組ヲ維持スル為メ新ナル事実及ヒ証拠方法ヲ提出スルコトヲ得
調書ニハ検事ノ氏名及ヒ其申立ヲ記載ス可シ
第三条 婚姻ノ不成立、無効、離婚及ヒ同居ノ訴ハ之ヲ併合スルコトヲ得縁組ノ不成立、無効及ヒ離縁ノ訴モ亦同シ
婿養子縁組ノ場合ニ於テハ婚姻ノ不成立、無効、離婚又ハ同居ノ訴ニ縁組ノ不成立、無効又ハ離縁ノ訴ヲ併合スルコトヲ得
本条ノ訴ニ他ノ訴ヲ併合シ及ヒ他ノ種類ノ反訴ヲ提起スルコトヲ得ス但本条ノ訴ノ原因タル事実ヨリ生スル損害賠償及ヒ養料ノ請求ニ付テハ此限ニ在ラス
第四条 判決ニ接著スル口頭弁論ノ終結ニ至ルマテハ訴ニ於テ提出シタル以外ノ理由ヲ主張スルコトヲ得
第五条 婚姻ノ無効若クハ離婚ノ訴又ハ縁組ノ無効若クハ離縁ノ訴ニ付キ棄却ノ言渡ヲ受ケタル原告ハ前訴訟ニ於テ又ハ訴ノ併合ニ因リ主張スルヲ得ヘカリシ事実ヲ独立ナル訴ノ理由トシテ主張スルコトヲ得ス被告ニ在テハ反訴ノ理由ト為スヲ得ヘカリシ事実ニ付テモ亦同シ
第六条 民事訴訟法第百十一条第二項第三項、第二百十条及ヒ第三百三十五条乃至第三百四十一条ノ規定ハ之ヲ適用セス
第七条 口頭弁論ノ期日ニ被告カ出頭セサルトキハ原告ノ申立ニ因リ新期日ヲ定ム可シ
被告ノ在廷セサル場合ニ於テ期日ヲ定メタルトキハ其都度被告ヲ呼出ス可シ
闕席判決ハ本条ノ手続ノ効アラサルトキニ限リ被告ニ対シテ之ヲ為スコトヲ得
第八条 裁判所ハ原告若クハ被告ノ自身出頭ヲ命シテ其原告若クハ被告又ハ其相手方若クハ検事ノ主張シタル事実ニ付キ原告若クハ被告ヲ審訊スルコトヲ得
審訊ヲ受ク可キ原告若クハ被告カ受訴裁判所ニ出頭スル能ハサルトキ又ハ受訴裁判所ノ所在地ヨリ遠隔ノ地ニ在ルトキハ受命判事若クハ受託判事ニ依リ審訊ヲ為スコトヲ得
出頭セサル原告若クハ被告ニ対シテハ審訊期日ニ出頭セサル証人ニ対スル規定ヲ適用ス
第九条 和諧ノ調フ可キ見込アルトキハ裁判所ハ職権ヲ以テ離婚又ハ離縁ノ訴ニ関スル手続ヲ長クトモ一个年間中止スルコトヲ得
第十条 裁判所ハ婚姻又ハ縁組ヲ維持スル為メ当事者ノ提出セサル事実ヲモ斟酌シ且職権ヲ以テ証拠調ヲ為スコトヲ得但裁判前ニ当事者ヲ審訊ス可シ
第十一条 婚姻及ヒ縁組ノ不成立若クハ無効又ハ離婚若クハ離縁ヲ言渡ス判決ハ職権ヲ以テ之ヲ当事者ニ送達ス可シ
第十二条 婚姻事件及ヒ縁組事件ノ判決ニ付テハ仮執行ノ宣言ヲ付スルコトヲ得ス
第十三条 仮処分ニ関シ殊ニ配偶者ノ一方又ハ養子カ住家ヲ去ルノ許可及ヒ養料ノ供給ヲ申立テタル場合ニ於テハ民事訴訟法第七百五十六条乃至第七百六十三条ノ規定ヲ準用ス
第十四条 婚姻及ヒ縁組ノ不成立若クハ無効又ハ離婚若クハ離縁ヲ言渡シタル判決確定シタルトキハ裁判所ノ掲示板ニ掲示シテ之ヲ公告ス可シ
第十五条 民法ノ規定ニ従ヒ検事ノ職権ヲ以テ起スコトヲ得ヘキ無効ノ訴ニ付テハ以下数条ニ定メタル特別ノ規定ニ従フ
第十六条 検事又ハ第三者ヨリ訴ヲ起ストキハ夫婦又ハ養親子ヲ以テ相手方ト為ス
夫婦又ハ養親子ノ一方ヨリ訴ヲ起ストキハ他ノ一方ヲ以テ相手方ト為ス
第十七条 検事ハ自ラ訴ヲ起ササルトキト雖モ訴訟ヲ追行シ殊ニ独立シテ申立ヲ為シ及ヒ上訴ヲ為スコトヲ得
第十八条 検事上訴ヲ為シタルトキハ上訴手続ニ於テ前審ノ当事者双方ヲ相手方ト看做ス
検事カ訴訟人タル場合ニ於テ当事者ノ一方カ上訴ヲ為シタルトキハ上訴手続ニ於テ他ノ一方ト検事トヲ相手方ト看做ス
第十九条 訴訟人タル検事カ敗訴スル場合ニ於テハ民事訴訟法第一編第二章第五節ノ規定ニ従ヒ勝訴者タル相手方ニ生シタル費用ハ国庫ノ負担トス
第二章 禁治産事件ノ訴訟手続
第二十条 禁治産ノ申立ハ治産ヲ禁セラル可キ者カ普通裁判籍ヲ有スル地ノ区裁判所ノ管轄ニ専属ス
第二十一条 申立ハ書面又ハ口頭ヲ以テ之ヲ為スコトヲ得其申立ニハ申立ノ理由タル事実及ヒ証拠方法ノ表示ヲ包含ス可シ
第二十二条 裁判所ハ申立ニ表示シタル事実及ヒ証拠方法ニ依リ職権ヲ以テ心神喪失ノ常況ニ在ルヤ否ヲ定ムル為メニ必要ナル探知ヲ為シ且適当トスル証拠方法ヲ調フ可シ
裁判所ハ訴訟手続ヲ開始スルノ前診断書ノ提出ヲ命スルコトヲ得
検事ハ総テノ場合ニ於テ申立ヲ為シテ訴訟手続ヲ追行スルコトヲ得
証人及ヒ鑑定人ノ訊問及ヒ宣誓ニ付テハ民事訴訟法第二編第一章第六節及ヒ第七節ノ規定ヲ適用ス
第二十三条 裁判所ハ公開セサル法廷ニ於テ一人又ハ数人ノ鑑定人ノ立会ヲ以テ治産ヲ禁セラル可キ者ヲ訊問ス可シ此訊問ハ受託判事ヲシテ之ヲ為サシムルコトヲ得
右訊問ハ裁判所ノ意見ニ従ヒ実施シ難ク又ハ裁判ノ為メニ必要ナラス又ハ治産ヲ禁セラル可キ者ノ健康ニ害アリトスルトキハ之ヲ為ササルコトヲ得
第二十四条 禁治産ノ宣言ハ決定ヲ以テ之ヲ為ス
右宣言ハ予メ治産ヲ禁セラル可キ者ノ心神喪失ノ常況ニ付キ一人又ハ数人ノ鑑定人ヲ訊問シタル後ニ非サレハ之ヲ為スコトヲ得ス
第二十五条 裁判所ハ治産ヲ禁セラル可キ者ノ身体ノ監護又ハ財産ノ保存ニ付キ必要ナル処分ヲ命スルコトヲ得
第二十六条 訴訟手続ノ費用ハ治産ヲ禁シタル場合ニ於テハ禁治産者之ヲ負担シ其他ノ場合ニ於テハ禁治産ノ申立ヲ為シタル者之ヲ負担ス可シ但検事カ申立ヲ為シタルトキハ国庫之ヲ負担ス
第二十七条 禁治産ニ付キ為シタル決定ハ職権ヲ以テ申立人及ヒ検事ニ之ヲ送達ス可シ
第二十八条 禁治産ヲ宣言スル決定ハ法律上ノ後見人アルトキハ其後見人ニ職権ヲ以テ之ヲ通知ス可シ
第二十九条 申立人及ヒ検事ハ禁治産ノ申立ヲ却下スル決定ニ対シ即時抗告ヲ為スコトヲ得
抗告裁判所ノ訴訟手続ニハ第二十二条ノ規定ヲ準用ス
第三十条 禁治産ヲ宣言スル決定ニ対シテハ一个月ノ期間内ニ訴ヲ以テ不服ヲ申立ツルコトヲ得
訴ヲ起スノ権利ハ禁治産者、其後見人及ヒ民法ノ規定ニ従ヒ禁治産ノ申立ヲ為スノ権ヲ有スル者ニ属ス
右期間ハ禁治産者ニ対シテハ禁治産ヲ知リタル日ヲ以テ始マリ其他ノ者ニ対シテハ後見人ノ選定ヲ以テ始マリ又法律上ノ後見ノ場合ニ於テハ其決定ヲ法律上ノ後見人ニ通知スルヲ以テ始マル
第三十一条 訴ハ区裁判所ノ所在地ヲ管轄スル地方裁判所ノ管轄ニ専属ス
第三十二条 禁治産ニ対シテ不服ヲ申立ル訴ニハ他ノ訴ヲ併合スルコトヲ得ス
反訴ハ之ヲ為スコトヲ許サス
第三十三条 禁治産者カ訴ヲ起サントスルトキハ其申立ニ因リ受訴裁判所ノ裁判長ハ訴訟代理人トシテ弁護士ヲ之ニ附添ハシム可シ
第三十四条 第六条及ヒ第七条ノ規定ハ本章ニモ之ヲ準用ス
第三十五条 第二十三条及ヒ第二十四条第二項ノ規定ハ不服申立ノ訴ニ付テノ訴訟手続ニ之ヲ準用ス
裁判所ハ区裁判所ニ於テ為シタル鑑定ヲ十分ナリト認ムルトキハ鑑定人ノ訊問ヲ為ササルコトヲ得
第三十六条 不服申立ノ訴ヲ理由アリトスルトキハ禁治産ヲ宣言シタル決定ヲ取消ス可シ
然レトモ此取消ノ判決ハ後見人ノ既ニ為シタル行為ノ効力ニ影響ヲ及ホサス
第三十七条 不服申立ノ訴ニ関スル訴訟費用ニ付テハ第二十六条ノ規定ヲ準用ス
第三十八条 受訴裁判所ハ禁治産事件ニ付キ為シタル総テノ終局判決ヲ区裁判所ニ通知ス可シ
第三十九条 禁治産ノ解止ニ付テハ第二十五条ヲ除クノ外本章ノ規定ヲ準用ス
第四十条 準禁治産事件ニ付テハ左ノ特別ナル規則ヲ除クノ外本章ノ規定ヲ準用ス
第二十二条第二項ハ浪費者ニ之ヲ適用セス
又同条第三項、第二十五条、第三十三条及ヒ検事ニ関スル規定ハ総テノ準禁治産者ニ之ヲ適用セス
準禁治産ヲ解止スル決定ニ対シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス