増価競売法
法令番号: 法律第九十二號
公布年月日: 明治23年10月4日
法令の形式: 法律
朕增價競賣法ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム此法律ハ明治二十六年一月一日ヨリ施行スヘキコトヲ命ス
御名御璽
明治二十三年十月三日
內閣總理大臣 伯爵 山縣有朋
司法大臣 伯爵 山田顯義
法律第九十二號
增價競賣法
第一條 民法債權擔保編第二百六十五條ニ從ヒテ抵當財產ノ增價競賣ヲ要求スル債權者ハ第三所持者及ヒ前所有者ニ競賣ノ要求書ヲ送達シタルヨリ三日內ニ抵當財產所在地ノ區裁判所ニ競賣ノ申立ヲ爲シ且保證人又ハ擔保ノ認許ヲ求ム可シ
前項ノ手續ヲ爲ササルトキハ競賣ノ要求ハ當然無効ナリトス
第二條 競賣ノ申立ニハ民事訴訟法第六百四十二條第一號及ヒ第二號ニ揭クル諸件ノ外第三所持者及ヒ前所有者ノ表示、擔保ノ表示、第三所持者ノ提供シタル金額及ヒ要求者ノ定メタル增額ヲ具備シ且民事訴訟法第六百四十三條第三號乃至第五號ノ證書ヲ添附スルコトヲ要ス
第三條 裁判所ハ期日ヲ定メテ要求者、第三所持者及ヒ前所有者ヲ呼出シ擔保ノ許否ニ付テノ決定ヲ爲ス可シ
否認ノ決定アリタルトキハ競賣ノ要求ハ當然無効ナリトス但競賣ノ要求ヲ爲ス權利アル他ノ債權者カ要求ニ參加スルノ申立ヲ爲シ又ハ期間ニ自ラ要求ヲ爲シタルトキハ右決定ヲ知リタルヨリ三日內ニ更ニ第一條ノ手續ヲ爲スコトヲ妨ケス
第四條 左ニ揭クル者ヲ增價競賣手續ニ於テノ利害關係人トス
第一 競賣要求者
第二 債務者
第三 第三所持者
第四 抵當債權者
第五 抵當財產ノ前所有者カ債務者ニ非サルトキハ其前所有者
第五條 裁判所ハ要求者ノ供シタル擔保ヲ十分ナリトスルトキハ競賣手續ノ開始決定ヲ爲シ同時ニ競賣期日及ヒ競落期日ヲ定メテ公吿ス可シ
第六條 競賣期日ノ公吿ニハ民事訴訟法第六百五十八條第一號乃至第三號、第五號、第七號乃至第十號ニ揭クル諸件ノ外增價競賣ノ要求ニ因リ競賣ヲ爲ス旨及ヒ最低競賣價額トシテ提供價額ニ附シタル增額ヲ具備スルコトヲ要ス
此他競賣及ヒ競落ノ手續ニ付テハ民事訴訟法第六百五十九條乃至第六百六十一條、第六百六十三條乃至第六百六十九條、第六百七十一條、第六百七十二條第二號及ヒ第四號乃至第八號、第六百七十三條、第六百七十四條、第六百七十六條乃至第六百八十七條ノ規定ヲ準用ス
第七條 競賣期日ニ於テ許ス可キ競買價額ノ申出ナキトキハ裁判所ハ要求者ヲ競落人ナリト言渡ス可シ
第八條 競落人ナリト言渡サレタル者カ要求者ナルト否トヲ問ハス競落代價ノ全額支拂ニ至ルマテハ要求者ノ供シタル擔保ハ負擔ヲ免カルルコト無シ
第九條 裁判所ハ要求者ノ申立アルトキハ競賣ニ換ヘテ入札拂ヲ命ス可シ
前項ノ場合ニ於テハ民事訴訟法第七百二條但書及ヒ第七百三條乃至第七百五條ノ規定ヲ適用ス
第十條 增價競賣ニ依ル競落ニ對シテハ更ニ增價競賣ノ要求ヲ爲スコトヲ許サス
朕増価競売法ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム此法律ハ明治二十六年一月一日ヨリ施行スヘキコトヲ命ス
御名御璽
明治二十三年十月三日
内閣総理大臣 伯爵 山県有朋
司法大臣 伯爵 山田顕義
法律第九十二号
増価競売法
第一条 民法債権担保編第二百六十五条ニ従ヒテ抵当財産ノ増価競売ヲ要求スル債権者ハ第三所持者及ヒ前所有者ニ競売ノ要求書ヲ送達シタルヨリ三日内ニ抵当財産所在地ノ区裁判所ニ競売ノ申立ヲ為シ且保証人又ハ担保ノ認許ヲ求ム可シ
前項ノ手続ヲ為ササルトキハ競売ノ要求ハ当然無効ナリトス
第二条 競売ノ申立ニハ民事訴訟法第六百四十二条第一号及ヒ第二号ニ掲クル諸件ノ外第三所持者及ヒ前所有者ノ表示、担保ノ表示、第三所持者ノ提供シタル金額及ヒ要求者ノ定メタル増額ヲ具備シ且民事訴訟法第六百四十三条第三号乃至第五号ノ証書ヲ添附スルコトヲ要ス
第三条 裁判所ハ期日ヲ定メテ要求者、第三所持者及ヒ前所有者ヲ呼出シ担保ノ許否ニ付テノ決定ヲ為ス可シ
否認ノ決定アリタルトキハ競売ノ要求ハ当然無効ナリトス但競売ノ要求ヲ為ス権利アル他ノ債権者カ要求ニ参加スルノ申立ヲ為シ又ハ期間ニ自ラ要求ヲ為シタルトキハ右決定ヲ知リタルヨリ三日内ニ更ニ第一条ノ手続ヲ為スコトヲ妨ケス
第四条 左ニ掲クル者ヲ増価競売手続ニ於テノ利害関係人トス
第一 競売要求者
第二 債務者
第三 第三所持者
第四 抵当債権者
第五 抵当財産ノ前所有者カ債務者ニ非サルトキハ其前所有者
第五条 裁判所ハ要求者ノ供シタル担保ヲ十分ナリトスルトキハ競売手続ノ開始決定ヲ為シ同時ニ競売期日及ヒ競落期日ヲ定メテ公告ス可シ
第六条 競売期日ノ公告ニハ民事訴訟法第六百五十八条第一号乃至第三号、第五号、第七号乃至第十号ニ掲クル諸件ノ外増価競売ノ要求ニ因リ競売ヲ為ス旨及ヒ最低競売価額トシテ提供価額ニ附シタル増額ヲ具備スルコトヲ要ス
此他競売及ヒ競落ノ手続ニ付テハ民事訴訟法第六百五十九条乃至第六百六十一条、第六百六十三条乃至第六百六十九条、第六百七十一条、第六百七十二条第二号及ヒ第四号乃至第八号、第六百七十三条、第六百七十四条、第六百七十六条乃至第六百八十七条ノ規定ヲ準用ス
第七条 競売期日ニ於テ許ス可キ競買価額ノ申出ナキトキハ裁判所ハ要求者ヲ競落人ナリト言渡ス可シ
第八条 競落人ナリト言渡サレタル者カ要求者ナルト否トヲ問ハス競落代価ノ全額支払ニ至ルマテハ要求者ノ供シタル担保ハ負担ヲ免カルルコト無シ
第九条 裁判所ハ要求者ノ申立アルトキハ競売ニ換ヘテ入札払ヲ命ス可シ
前項ノ場合ニ於テハ民事訴訟法第七百二条但書及ヒ第七百三条乃至第七百五条ノ規定ヲ適用ス
第十条 増価競売ニ依ル競落ニ対シテハ更ニ増価競売ノ要求ヲ為スコトヲ許サス