意匠条例
法令番号: 勅令第八十五號
公布年月日: 明治21年12月20日
法令の形式: 勅令
朕意匠條例ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十一年十二月十八日
內閣總理大臣 伯爵 黑田淸隆
農商務大臣 伯爵 井上馨
勅令第八十五號
意匠條例
第一條 工業上ノ物品ニ應用スヘキ形狀模樣若クハ色彩ニ係ル新規ノ意匠ヲ按出シタル者ハ此條例ニ依リ其意匠ノ登錄ヲ受ケ之ヲ專用スルコトヲ得
第二條 左ニ揭クル意匠ハ登錄ヲ受クルコトヲ得サルモノトス
一 風俗ヲ害スヘキモノ
二 登錄出願以前公ニ知ラレ又ハ公ニ用ヒラレタルモノ
第三條 意匠ノ登錄ヲ受ケント欲スル者ハ一意匠每ニ明細書及圖面ヲ添ヘ農商務大臣ニ出願スヘシ但其願書明細書及圖面ハ特許局ニ差出スヘシ
第四條 意匠ノ登錄ヲ出願スル者アルトキハ特許局長ハ特許局審査官ヲシテ其意匠ヲ審査セシメ登錄ヲ許スヘシト査定シタルモノハ農商務大臣ノ認可ヲ經テ意匠原簿ニ登錄シ其登錄證下付ノ手續ヲ爲スヘシ
第五條 登錄證ハ農商務大臣之ニ署名シ特許局長之ニ副署シ明細書及圖面ヲ添ヘ之ヲ下付スルモノトス
第六條 意匠專用ノ年限ハ三年五年七年及十年ノ四種ト爲シ原簿登錄ノ日ヨリ起算ス
第七條 意匠ノ專用ハ農商務大臣ノ定ムル物品類別ニ於テ出願人ノ指定シタル物品ニ限ルモノトス
第八條 二人以上同一又ハ類似意匠ノ登錄ヲ出願スル者アルトキハ願書日附ノ先ナルモノヲ登錄ス其日附同キモノハ共ニ之ヲ登錄セサルモノトス但出願人協議ノ上連名ニテ其登錄ヲ出願スルトキ又ハ其出願ヲ取消ス者アリテ出願者一人トナリタルトキハ此限ニ在ラス
第九條 意匠ノ登錄ヲ受ケタル者又ハ之ヲ受ケントスル者死亡シタルトキハ其權利ハ相續者ニ屬スルモノトス
第十條 他人ノ委託又ハ雇主ノ費用ヲ以テ按出シタル意匠ノ登錄出願ノ權利ハ其委託者若クハ雇主ニ屬ス但別ニ契約アル場合ニ於テハ此限ニ在ラス
第十一條 登錄ヲ受ケタル意匠ト雖モ第二條ニ該ルコトヲ發見セラレタルモノ又ハ第八條第十條ニ違ヒ登錄ヲ受ケタルコトヲ發見セラレタルモノハ其登錄ヲ無効トス
第十二條 意匠ノ審査査定審判ニ關スル事項ハ總テ特許條例ヲ適用ス
第十三條 意匠專用權ハ制限ヲ附シ若クハ附セスシテ賣與讓與シ若クハ共有トナシ又ハ書入ト爲スコトヲ得此場合ニ於テハ特許局ニ請求シ契約ノ登錄ヲ受クヘシ登錄ヲ受ケサル契約ハ第三者ニ對シ法律上其効ナキモノトス
第十四條 特許局ノ官吏ハ在職中意匠ノ登錄ヲ出願シ又ハ意匠專用權ヲ新ニ有スルコトヲ得ス但相續ニ由リ意匠專用權ヲ新ニ有スルハ此限ニ在ラス
第十五條 登錄意匠主其登錄證ヲ毀損若クハ亡失シタルトキハ事由ヲ具シ再下付ヲ出願スルコトヲ得
第十六條 登錄意匠主其明細書若クハ圖面ノ不完全ナルコトヲ發見シタルトキハ登錄ノ効力ヲ全クスル爲メ改訂明細書若クハ圖面ヲ添ヘ登錄證ノ改訂ヲ出願スルコトヲ得但其意匠ニ變更ヲ生スルモノハ此限ニ在ラス
第十七條 登錄意匠主ハ其意匠ヲ應用シタル物品ニ農商務大臣ノ定メタル登錄標記ヲ爲スヘシ
第十八條 意匠ニ關シ出願又ハ請求スル者ハ左ノ手數料ヲ納ムヘシ
一 意匠ノ登錄ヲ出願スルトキ
一意匠ニ付物品一類每ニ 金五拾錢
二 登錄意匠ノ賣與讓與共有又ハ書入契約ノ登錄ヲ請求スルトキ
一意匠ニ付物品一類每ニ 金三圓
三 登錄證ノ再下付ヲ出願スルトキ
證書一枚每ニ 金壹圓
四 登錄證ノ改訂ヲ出願スルトキ
一意匠ニ付物品一類每ニ 金貳圓
五 審判ヲ請求スルトキ
一事件每ニ 金七圓
第十九條 意匠登錄證又ハ其改訂登錄證ヲ受クル者ハ意匠ヲ應用スル物品一類每ニ左ノ區別ニ從ヒ登錄料ヲ納ムヘシ
一 三年ノ專用 金壹圓
二 五年ノ專用 金貳圓
三 七年ノ專用 金四圓
四 十年ノ專用 金八圓
第二十條 登錄意匠ニ關スル書類ノ謄本若クハ圖面ノ調製ヲ要スル者ハ特許局ニ之ヲ請求スルコトヲ得此場合ニ於テハ相當ノ手數料ヲ納ムヘシ
第二十一條 登錄意匠ノ專用權ヲ侵シタル者ハ其意匠主ニ對シ損害賠償ノ責ニ任スヘシ
第二十二條 前條損害賠償ノ責ハ三年ヲ以テ期滿免除ノ期トス
第二十三條 他人ノ登錄意匠ナルコトヲ知リ之ヲ同一物品ニ應用シテ之ヲ販賣シタル者又ハ情ヲ知リテ其物品ヲ受託販賣シタル者ハ十五日以上六月以下ノ重禁錮又ハ十圓以上百圓以下ノ罰金ニ處ス
登錄意匠主ノ權利ヲ侵スヘキ物品ナルコトヲ知リ之ヲ外國ヨリ輸入シテ販賣シタル者又ハ情ヲ知リ其物品ヲ受託販賣シタル者ハ罰前項ニ同シ
詐欺ノ所爲ヲ以テ登錄證ヲ受ケタル者又ハ登錄ヲ受ケサル意匠ヲ應用シタル物品ニ登錄標記若クハ類似ノ標記ヲ爲シテ販賣シタル者又ハ情ヲ知リ其物品ヲ受託販賣シタル者ハ罰第一項ニ同シ
第二十四條 前條第一項第二項ノ場合ニ於テハ其犯罪ノ物件ヲ沒收シテ登錄意匠主ニ給付シ其既ニ賣捌キタルモノハ代價ヲ追徵シテ之ヲ給付ス
第二十五條 第二十三條第一項第二項ノ犯罪ハ被害者ノ吿訴ヲ待テ其罪ヲ論ス
前項ノ場合ニ於テ吿訴人ノ請求ニ依リ裁判官ハ假ニ其吿訴ニ係ル物品ノ販賣ヲ差止ムルコトヲ得
第二十六條 登錄意匠主第十七條ノ登錄標記ヲ爲スコトヲ怠リタルトキハ吿訴又ハ要償ノ訴ヲ爲スコトヲ得ス
第二十七條 此條例ヲ犯シタル者ニハ刑法ノ數罪倶發ノ例ヲ用ヒス
第二十八條 此條例施行ノ細則ハ農商務大臣之ヲ定ム
第二十九條 此條例ハ明治二十二年二月一日ヨリ施行ス
朕意匠条例ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十一年十二月十八日
内閣総理大臣 伯爵 黒田清隆
農商務大臣 伯爵 井上馨
勅令第八十五号
意匠条例
第一条 工業上ノ物品ニ応用スヘキ形状模様若クハ色彩ニ係ル新規ノ意匠ヲ按出シタル者ハ此条例ニ依リ其意匠ノ登録ヲ受ケ之ヲ専用スルコトヲ得
第二条 左ニ掲クル意匠ハ登録ヲ受クルコトヲ得サルモノトス
一 風俗ヲ害スヘキモノ
二 登録出願以前公ニ知ラレ又ハ公ニ用ヒラレタルモノ
第三条 意匠ノ登録ヲ受ケント欲スル者ハ一意匠毎ニ明細書及図面ヲ添ヘ農商務大臣ニ出願スヘシ但其願書明細書及図面ハ特許局ニ差出スヘシ
第四条 意匠ノ登録ヲ出願スル者アルトキハ特許局長ハ特許局審査官ヲシテ其意匠ヲ審査セシメ登録ヲ許スヘシト査定シタルモノハ農商務大臣ノ認可ヲ経テ意匠原簿ニ登録シ其登録証下付ノ手続ヲ為スヘシ
第五条 登録証ハ農商務大臣之ニ署名シ特許局長之ニ副署シ明細書及図面ヲ添ヘ之ヲ下付スルモノトス
第六条 意匠専用ノ年限ハ三年五年七年及十年ノ四種ト為シ原簿登録ノ日ヨリ起算ス
第七条 意匠ノ専用ハ農商務大臣ノ定ムル物品類別ニ於テ出願人ノ指定シタル物品ニ限ルモノトス
第八条 二人以上同一又ハ類似意匠ノ登録ヲ出願スル者アルトキハ願書日附ノ先ナルモノヲ登録ス其日附同キモノハ共ニ之ヲ登録セサルモノトス但出願人協議ノ上連名ニテ其登録ヲ出願スルトキ又ハ其出願ヲ取消ス者アリテ出願者一人トナリタルトキハ此限ニ在ラス
第九条 意匠ノ登録ヲ受ケタル者又ハ之ヲ受ケントスル者死亡シタルトキハ其権利ハ相続者ニ属スルモノトス
第十条 他人ノ委託又ハ雇主ノ費用ヲ以テ按出シタル意匠ノ登録出願ノ権利ハ其委託者若クハ雇主ニ属ス但別ニ契約アル場合ニ於テハ此限ニ在ラス
第十一条 登録ヲ受ケタル意匠ト雖モ第二条ニ該ルコトヲ発見セラレタルモノ又ハ第八条第十条ニ違ヒ登録ヲ受ケタルコトヲ発見セラレタルモノハ其登録ヲ無効トス
第十二条 意匠ノ審査査定審判ニ関スル事項ハ総テ特許条例ヲ適用ス
第十三条 意匠専用権ハ制限ヲ附シ若クハ附セスシテ売与譲与シ若クハ共有トナシ又ハ書入ト為スコトヲ得此場合ニ於テハ特許局ニ請求シ契約ノ登録ヲ受クヘシ登録ヲ受ケサル契約ハ第三者ニ対シ法律上其効ナキモノトス
第十四条 特許局ノ官吏ハ在職中意匠ノ登録ヲ出願シ又ハ意匠専用権ヲ新ニ有スルコトヲ得ス但相続ニ由リ意匠専用権ヲ新ニ有スルハ此限ニ在ラス
第十五条 登録意匠主其登録証ヲ毀損若クハ亡失シタルトキハ事由ヲ具シ再下付ヲ出願スルコトヲ得
第十六条 登録意匠主其明細書若クハ図面ノ不完全ナルコトヲ発見シタルトキハ登録ノ効力ヲ全クスル為メ改訂明細書若クハ図面ヲ添ヘ登録証ノ改訂ヲ出願スルコトヲ得但其意匠ニ変更ヲ生スルモノハ此限ニ在ラス
第十七条 登録意匠主ハ其意匠ヲ応用シタル物品ニ農商務大臣ノ定メタル登録標記ヲ為スヘシ
第十八条 意匠ニ関シ出願又ハ請求スル者ハ左ノ手数料ヲ納ムヘシ
一 意匠ノ登録ヲ出願スルトキ
一意匠ニ付物品一類毎ニ 金五拾銭
二 登録意匠ノ売与譲与共有又ハ書入契約ノ登録ヲ請求スルトキ
一意匠ニ付物品一類毎ニ 金三円
三 登録証ノ再下付ヲ出願スルトキ
証書一枚毎ニ 金壱円
四 登録証ノ改訂ヲ出願スルトキ
一意匠ニ付物品一類毎ニ 金弐円
五 審判ヲ請求スルトキ
一事件毎ニ 金七円
第十九条 意匠登録証又ハ其改訂登録証ヲ受クル者ハ意匠ヲ応用スル物品一類毎ニ左ノ区別ニ従ヒ登録料ヲ納ムヘシ
一 三年ノ専用 金壱円
二 五年ノ専用 金弐円
三 七年ノ専用 金四円
四 十年ノ専用 金八円
第二十条 登録意匠ニ関スル書類ノ謄本若クハ図面ノ調製ヲ要スル者ハ特許局ニ之ヲ請求スルコトヲ得此場合ニ於テハ相当ノ手数料ヲ納ムヘシ
第二十一条 登録意匠ノ専用権ヲ侵シタル者ハ其意匠主ニ対シ損害賠償ノ責ニ任スヘシ
第二十二条 前条損害賠償ノ責ハ三年ヲ以テ期満免除ノ期トス
第二十三条 他人ノ登録意匠ナルコトヲ知リ之ヲ同一物品ニ応用シテ之ヲ販売シタル者又ハ情ヲ知リテ其物品ヲ受託販売シタル者ハ十五日以上六月以下ノ重禁錮又ハ十円以上百円以下ノ罰金ニ処ス
登録意匠主ノ権利ヲ侵スヘキ物品ナルコトヲ知リ之ヲ外国ヨリ輸入シテ販売シタル者又ハ情ヲ知リ其物品ヲ受託販売シタル者ハ罰前項ニ同シ
詐欺ノ所為ヲ以テ登録証ヲ受ケタル者又ハ登録ヲ受ケサル意匠ヲ応用シタル物品ニ登録標記若クハ類似ノ標記ヲ為シテ販売シタル者又ハ情ヲ知リ其物品ヲ受託販売シタル者ハ罰第一項ニ同シ
第二十四条 前条第一項第二項ノ場合ニ於テハ其犯罪ノ物件ヲ没収シテ登録意匠主ニ給付シ其既ニ売捌キタルモノハ代価ヲ追徴シテ之ヲ給付ス
第二十五条 第二十三条第一項第二項ノ犯罪ハ被害者ノ告訴ヲ待テ其罪ヲ論ス
前項ノ場合ニ於テ告訴人ノ請求ニ依リ裁判官ハ仮ニ其告訴ニ係ル物品ノ販売ヲ差止ムルコトヲ得
第二十六条 登録意匠主第十七条ノ登録標記ヲ為スコトヲ怠リタルトキハ告訴又ハ要償ノ訴ヲ為スコトヲ得ス
第二十七条 此条例ヲ犯シタル者ニハ刑法ノ数罪倶発ノ例ヲ用ヒス
第二十八条 此条例施行ノ細則ハ農商務大臣之ヲ定ム
第二十九条 此条例ハ明治二十二年二月一日ヨリ施行ス