写真版権条例
法令番号: 勅令第七十九號
公布年月日: 明治20年12月29日
法令の形式: 勅令
朕寫眞版權條例改正ノ件ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十年十二月二十八日
內閣總理大臣 伯爵 伊藤博文
內務大臣 伯爵 山縣有朋
司法大臣 伯爵 山田顯義
勅令第七十九號
寫眞版權條例
第一條 凡ソ光線ト藥品トノ作用ニヨリ人物器物景色其他物象ノ眞形ヲ寫シタルモノヲ寫眞ト云ヒ寫眞ヲ發行シテ其利益ヲ專有スルノ權ヲ寫眞版權ト云フ
第二條 寫眞版權ハ寫眞師ニ屬シ寫眞師死亡後ニ在テハ其相續者ニ屬スルモノトス但他人ノ囑托ニ係ルモノヽ寫眞版權ハ囑托者ニ屬シ囑托者死亡後ニ在テハ其相續者ニ屬スルモノトス
囑托ニ係ル寫眞ノ種板ニシテ現存スルモノハ版權所有者ニ於テ之ヲ寫眞師ヨリ受取ルコトヲ得ルモノトス
第三條 寫眞版權ノ保護ヲ受ント欲スル者ハ發行前寫眞一版ニ付見本二葉及六葉ノ定價ヲ添ヘ版權登錄ヲ內務省ニ願出ヘシ但人物ノ寫眞ハ登錄ヲ待タスシテ其保護ヲ受クルモノトス
第四條 版權登錄ノ寫眞ニハ其保護年限間ハ版權所有者ノ氏名住所版權登錄ノ年月ヲ記載スヘシ其記載セサル者ハ登錄ノ効ヲ失フモノトス
第五條 內務省ニ於テハ寫眞版權登錄簿ヲ備ヘ置キ登錄ノ願出アリタルトキハ之ヲ登錄シ登錄證書ヲ下付スヘシ
寫眞版權登錄證書ノ取扱ハ總テ文書圖畵ノ版權登錄證書ニ準スルモノトス
第六條 寫眞版權保護ノ年限ハ登錄ノ月ヨリ十年トス
第七條 寫眞版權ハ制限ヲ付シ若クハ付セスシテ賣渡シ讓渡スコトヲ得
第八條 版權ノ保護ヲ受ル寫眞ハ之ヲ覆寫シ若クハ機械又ハ舍密ノ作用ニヨリ多數ヲ增製シ得ヘキ方法ヲ以テ寫眞術ト類似ノ摸寫ヲ爲シ及寫眞師ニ於テ本人又ハ其相續者ノ承諾ヲ受スシテ囑托ニ係ル寫眞ヲ增製スルコトヲ得ス
第九條 第三條ノ手續ヲナサスシテ版權登錄ヲ詐稱シタル者ハ二圓以上二十圓以下ノ罰金ニ處ス
第十條 第八條ニ違フ者ハ版權條例ニ據リ僞版ヲ以テ論シ二十圓以上二百圓以下ノ罰金ニ處シ及損害賠償ノ責ニ任セシム
損害賠償ノ責ハ其原寫眞ノ版權年限終ルノ後一年ヲ以テ期滿得免ノ期トス
第十一條 此條例ニ關スル公訴ノ期限ハ一年トシ其犯罪ト認メラレタル寫眞又ハ摸寫物作爲ノ時ヨリ起算シ其發賣セルモノハ最後ニ發賣シタル時ヨリ起算ス
第十二條 此條例ヲ犯シタル者ニハ刑法ノ自首減輕再犯加重數罪俱發ノ例ヲ用井ス
朕写真版権条例改正ノ件ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十年十二月二十八日
内閣総理大臣 伯爵 伊藤博文
内務大臣 伯爵 山県有朋
司法大臣 伯爵 山田顕義
勅令第七十九号
写真版権条例
第一条 凡ソ光線ト薬品トノ作用ニヨリ人物器物景色其他物象ノ真形ヲ写シタルモノヲ写真ト云ヒ写真ヲ発行シテ其利益ヲ専有スルノ権ヲ写真版権ト云フ
第二条 写真版権ハ写真師ニ属シ写真師死亡後ニ在テハ其相続者ニ属スルモノトス但他人ノ嘱托ニ係ルモノヽ写真版権ハ嘱托者ニ属シ嘱托者死亡後ニ在テハ其相続者ニ属スルモノトス
嘱托ニ係ル写真ノ種板ニシテ現存スルモノハ版権所有者ニ於テ之ヲ写真師ヨリ受取ルコトヲ得ルモノトス
第三条 写真版権ノ保護ヲ受ント欲スル者ハ発行前写真一版ニ付見本二葉及六葉ノ定価ヲ添ヘ版権登録ヲ内務省ニ願出ヘシ但人物ノ写真ハ登録ヲ待タスシテ其保護ヲ受クルモノトス
第四条 版権登録ノ写真ニハ其保護年限間ハ版権所有者ノ氏名住所版権登録ノ年月ヲ記載スヘシ其記載セサル者ハ登録ノ効ヲ失フモノトス
第五条 内務省ニ於テハ写真版権登録簿ヲ備ヘ置キ登録ノ願出アリタルトキハ之ヲ登録シ登録証書ヲ下付スヘシ
写真版権登録証書ノ取扱ハ総テ文書図画ノ版権登録証書ニ準スルモノトス
第六条 写真版権保護ノ年限ハ登録ノ月ヨリ十年トス
第七条 写真版権ハ制限ヲ付シ若クハ付セスシテ売渡シ譲渡スコトヲ得
第八条 版権ノ保護ヲ受ル写真ハ之ヲ覆写シ若クハ機械又ハ舎密ノ作用ニヨリ多数ヲ増製シ得ヘキ方法ヲ以テ写真術ト類似ノ摸写ヲ為シ及写真師ニ於テ本人又ハ其相続者ノ承諾ヲ受スシテ嘱托ニ係ル写真ヲ増製スルコトヲ得ス
第九条 第三条ノ手続ヲナサスシテ版権登録ヲ詐称シタル者ハ二円以上二十円以下ノ罰金ニ処ス
第十条 第八条ニ違フ者ハ版権条例ニ拠リ偽版ヲ以テ論シ二十円以上二百円以下ノ罰金ニ処シ及損害賠償ノ責ニ任セシム
損害賠償ノ責ハ其原写真ノ版権年限終ルノ後一年ヲ以テ期満得免ノ期トス
第十一条 此条例ニ関スル公訴ノ期限ハ一年トシ其犯罪ト認メラレタル写真又ハ摸写物作為ノ時ヨリ起算シ其発売セルモノハ最後ニ発売シタル時ヨリ起算ス
第十二条 此条例ヲ犯シタル者ニハ刑法ノ自首減軽再犯加重数罪俱発ノ例ヲ用井ス