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本データベースについて
取引所条例
法令番号: 勅令第十一號
公布年月日: 明治20年5月14日
法令の形式: 勅令
沿革
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廃止:
明治26年3月4日 法律第5号
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国立公文書館『御署名原本』
日本法令索引
朕取引所條例ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十年五月十四日
內閣總理大臣 伯爵 伊藤博文
農商務大臣 伯爵 山縣有朋
勅令第十一號
取引所條例
第一章 總則
第一條
取引所ハ商業上ノ取引ヲ便利ニシ市價ヲ平準ニシ商業上公正直實ノ風ヲ養成シ商業上ノ慣習ヲ統一維持シ須要ノ報道ヲ傳播シ及取引所會員ノ間ニ生スル爭論ヲ仲裁スルヲ以テ目的トシ商業上便宜必要ノ地方ニ於テ其地方ノ商人農商務大臣ノ特許ヲ得テ設立スルモノトス
第二條
取引所ニ於テ賣買取引スヘキ物件ハ重要ノ商品公債證書證券株式等ニシテ創立員又ハ取引所ノ出願ニ依リ農商務大臣ノ認可シタルモノニ限ル
第三條
取引所ヲ設立スルニハ東京大阪ニ於テハ三十人以上其他ノ地方ニ於テハ十五人以上會員タルヲ得ヘキ者創立員トナリ地方官廳ヲ經テ農商務大臣ニ願出ヘシ
第四條
取引所ハ其賣買取引スヘキ物件ニ就キ之ヲ各部ニ分チ又ハ數物件ヲ合セテ一部トシ農商務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第五條
取引所ノ創立ニ係ル費用及之ヲ維持スルニ必要ナル費用ハ會員之ヲ負擔スヘシ
取引所ハ前項ノ費用ヲ補充スル爲メ賣買取引ニ就キ相當ノ手數料ヲ領收スルコトヲ得其手數料ノ割合ハ役員之ヲ議定シテ農商務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
前項ノ手數料ハ之ヲ分配スルヲ得サルモノトス
第六條
農商務大臣ハ取引所ヲ監督シ地方長官ヲシテ之ヲ監視セシメ其賣買取引法律命令ニ違反シ或ハ公衆ノ安寧ニ妨害アリト認ムルトキハ其全部又ハ幾部ヲ停止若クハ禁止シ其賣買取引ニ關涉シタル役員ヲ罷免シ仲買人ノ營業ヲ停止若クハ禁止シ及會員ヲ一時若クハ永久ニ除名スルコトヲ得
第七條
農商務大臣ハ必要ト認ムルトキハ取引所ノ規約ヲ改正セシメ又ハ決議及處分ヲ停止禁止若クハ取消スコトヲ得
第八條
農商務大臣ハ必要ト認ムルトキハ取引所ニ對シ委員ヲ命シ其一般ノ事務ヲ監察シ取引所ニ關スル法律命令ノ施行ヲ監視シ且其役員ノ集會ヲ整理セシムルコトヲ得
第九條
取引所ハ每日一定ノ時間ニ於テ商業上ノ集會ヲ開キ其時間外ハ賣買取引ヲ爲スコトヲ許サス
第十條
本條例施行ニ關スル細則ハ農商務大臣之ヲ定ム
第十一條
取引所ノ賣買取引ニ關スル稅則ハ別ニ之ヲ定ム
第二章 會員
第十二條
會員タルコトヲ得ル者ハ其取引所所在ノ地ニ居住スル商人ニシテ會員タルノ義務ヲ盡スコトヲ得ル者ニ限ル會同ニ非サレハ取引所ニ集會シ賣買取引ヲ爲スコトヲ得ス
第十三條
會員タル者ハ身元保證金三百圓以上三千圓以下ヲ差出スコトヲ要ス
第十四條
左ニ揭クル者ハ會員タルコトヲ得ス
一
婦女及未丁年者
但婦女ノ代理人未丁年者ノ後見人ハ會員タルコトヲ得
二
公權剝奪若クハ停止中ノ者
三
身代限ノ處分ヲ受ケ未タ辨償ノ義務ヲ終ヘサル者
四
第六條第十五條ニ依リ除名セラレタル者
第十五條
會員ニシテ不當ノ擧動ヲ爲シ爲メニ取引所內ニ於テ紛擾爭論ヲ釀スカ法律命令及規約ニ違反シタル不正ノ契約ヲ爲スカ又ハ故意ニ其商業上ノ責任ヲ果サヽルトキハ役員ノ決議ヲ以テ百圓以內ノ過怠金ヲ科シ一時若クハ永久ニ之ヲ除名スルコトヲ得
第三章 役員
第十六條
取引所ニ役員ヲ置クコト左ノ如シ
一
理事長
一
理事
一
常置委員
第十七條
役員ハ一箇年ヲ以テ任期トシ會員中ヨリ投票ヲ以テ選擧シ農商務大臣ノ認可ヲ受クヘシ但理事長及理事ハ會員ノ決議ニ由リ會員外ヨリ選擧スルコトヲ得
役員任期中ト雖モ其職務ヲ盡サヽルカ又ハ不正ノ所爲アルトキハ會員ノ決議ヲ以テ農商務大臣ノ認可ヲ受ケ退職セシムルコトヲ得
第十八條
理事長及理事ハ取引所ニ於テ賣買取引ヲ爲スコトヲ許サス
第十九條
役員ハ法律命令ノ範圍內ニ於テ農商務大臣ノ認可ヲ經其業務ニ關シ規約ヲ定ムルコトヲ得
第四章 仲買人
第二十條
取引所ニ仲買人ヲ置ク仲買人ハ他人ノ委托ニ由リ賣買取引ヲ爲スヲ以テ業トシ自己ノ爲メニ賣買取引ヲ爲スコトヲ得ス
第二十一條
仲買人ノ營業ハ一部ニ限リ數部ヲ兼ヌルコトヲ得ス
第二十二條
仲買人タラント欲スル者ハ農商務大臣ノ免許ヲ受クヘシ之ヲ受ケタルトキハ免許料金五十圓ヲ納ムヘシ
第二十三條
仲買人タルヘキ者ハ會員ニシテ營業保證金一千圓以上二萬圓以下ヲ差出スコトヲ要ス
第二十四條
仲買人ニシテ第十五條ニ揭クル所爲アルトキハ役員ノ決議ヲ以テ二百圓以內ノ過怠金ヲ科シ其營業ヲ停止若クハ禁止スルコトヲ得但營業ヲ禁止スルトキハ農商務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第二十五條
仲買人ハ自ラ取引所ノ賣買取引ニ從事スヘシ代理人又ハ手代ヲ使用スルコトヲ得ス
第二十六條
仲買人口錢ノ額ハ役員會議ニ於テ議決シ農商務大臣ノ認可ヲ得テ之ヲ定ム
第五章 賣買取引
第二十七條
取引所ニ於テ爲ス所ノ賣買取引ハ直取引及定期取引ノ二樣トス其方法ハ農商務省令及取引所ノ規約ヲ以テ之ヲ定ム
第二十八條
取引所ニ於テ賣買取引スヘキ物件ノ種類ニヨリ農商務大臣ハ取引所外ニ於テ取引所ノ賣買取引ト同一又ハ類似ノ方法ヲ以テ賣買取引ヲ爲スヲ禁止スルコトヲ得
第二十九條
取引所ニ於テ賣買取引シタル物件ノ相場ヲ以テ公定相場トス
第六章 仲裁
第三十條
取引所ニ於テ爲シタル賣買取引ニ關シ爭論ヲ生スルトキハ役員ニ申吿シテ仲裁ヲ受クヘシ但代言人ヲ出スコトヲ得ス
第三十一條
前條ノ場合ニ於テハ常置委員ノ多數決ヲ以テ其爭論ヲ仲裁スヘシ
第三十二條
法律上ノ見解ニ關スルモノヲ除クノ外前條ノ仲裁ニ對シテ裁判所ニ上訴スルコトヲ得ス
第七章 罰則
第三十三條
第五條第三項第九條第十八條第二十條及第二十五條ヲ犯シ又ハ第二十七條ニ依リ農商務省令ヲ以テ定メタル賣買取引法ニ違ヒ賣買取引ヲ爲シタル者ハ二十圓以上五百圓以下ノ罰金ニ處ス
第三十四條
第二十八條ニ依リ農商務大臣ノ禁止シタル賣買取引ヲ爲シ又ハ第二十九條ノ公定相場ヲ僞リタル者ハ十圓以上二百圓以下ノ罰金ニ處ス
附 則
本條例ハ明治二十年九月一日ヨリ施行ス但米商會所條例及株式取引所條例ハ米商會所及株式取引所ノ營業滿期ヲ待ツテ廢止スルモノトス
朕取引所条例ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十年五月十四日
内閣総理大臣 伯爵 伊藤博文
農商務大臣 伯爵 山県有朋
勅令第十一号
取引所条例
第一章 総則
第一条
取引所ハ商業上ノ取引ヲ便利ニシ市価ヲ平準ニシ商業上公正直実ノ風ヲ養成シ商業上ノ慣習ヲ統一維持シ須要ノ報道ヲ伝播シ及取引所会員ノ間ニ生スル争論ヲ仲裁スルヲ以テ目的トシ商業上便宜必要ノ地方ニ於テ其地方ノ商人農商務大臣ノ特許ヲ得テ設立スルモノトス
第二条
取引所ニ於テ売買取引スヘキ物件ハ重要ノ商品公債証書証券株式等ニシテ創立員又ハ取引所ノ出願ニ依リ農商務大臣ノ認可シタルモノニ限ル
第三条
取引所ヲ設立スルニハ東京大阪ニ於テハ三十人以上其他ノ地方ニ於テハ十五人以上会員タルヲ得ヘキ者創立員トナリ地方官庁ヲ経テ農商務大臣ニ願出ヘシ
第四条
取引所ハ其売買取引スヘキ物件ニ就キ之ヲ各部ニ分チ又ハ数物件ヲ合セテ一部トシ農商務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第五条
取引所ノ創立ニ係ル費用及之ヲ維持スルニ必要ナル費用ハ会員之ヲ負担スヘシ
取引所ハ前項ノ費用ヲ補充スル為メ売買取引ニ就キ相当ノ手数料ヲ領収スルコトヲ得其手数料ノ割合ハ役員之ヲ議定シテ農商務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
前項ノ手数料ハ之ヲ分配スルヲ得サルモノトス
第六条
農商務大臣ハ取引所ヲ監督シ地方長官ヲシテ之ヲ監視セシメ其売買取引法律命令ニ違反シ或ハ公衆ノ安寧ニ妨害アリト認ムルトキハ其全部又ハ幾部ヲ停止若クハ禁止シ其売買取引ニ関渉シタル役員ヲ罷免シ仲買人ノ営業ヲ停止若クハ禁止シ及会員ヲ一時若クハ永久ニ除名スルコトヲ得
第七条
農商務大臣ハ必要ト認ムルトキハ取引所ノ規約ヲ改正セシメ又ハ決議及処分ヲ停止禁止若クハ取消スコトヲ得
第八条
農商務大臣ハ必要ト認ムルトキハ取引所ニ対シ委員ヲ命シ其一般ノ事務ヲ監察シ取引所ニ関スル法律命令ノ施行ヲ監視シ且其役員ノ集会ヲ整理セシムルコトヲ得
第九条
取引所ハ毎日一定ノ時間ニ於テ商業上ノ集会ヲ開キ其時間外ハ売買取引ヲ為スコトヲ許サス
第十条
本条例施行ニ関スル細則ハ農商務大臣之ヲ定ム
第十一条
取引所ノ売買取引ニ関スル税則ハ別ニ之ヲ定ム
第二章 会員
第十二条
会員タルコトヲ得ル者ハ其取引所所在ノ地ニ居住スル商人ニシテ会員タルノ義務ヲ尽スコトヲ得ル者ニ限ル会同ニ非サレハ取引所ニ集会シ売買取引ヲ為スコトヲ得ス
第十三条
会員タル者ハ身元保証金三百円以上三千円以下ヲ差出スコトヲ要ス
第十四条
左ニ掲クル者ハ会員タルコトヲ得ス
一
婦女及未丁年者
但婦女ノ代理人未丁年者ノ後見人ハ会員タルコトヲ得
二
公権剥奪若クハ停止中ノ者
三
身代限ノ処分ヲ受ケ未タ弁償ノ義務ヲ終ヘサル者
四
第六条第十五条ニ依リ除名セラレタル者
第十五条
会員ニシテ不当ノ挙動ヲ為シ為メニ取引所内ニ於テ紛擾争論ヲ醸スカ法律命令及規約ニ違反シタル不正ノ契約ヲ為スカ又ハ故意ニ其商業上ノ責任ヲ果サヽルトキハ役員ノ決議ヲ以テ百円以内ノ過怠金ヲ科シ一時若クハ永久ニ之ヲ除名スルコトヲ得
第三章 役員
第十六条
取引所ニ役員ヲ置クコト左ノ如シ
一
理事長
一
理事
一
常置委員
第十七条
役員ハ一箇年ヲ以テ任期トシ会員中ヨリ投票ヲ以テ選挙シ農商務大臣ノ認可ヲ受クヘシ但理事長及理事ハ会員ノ決議ニ由リ会員外ヨリ選挙スルコトヲ得
役員任期中ト雖モ其職務ヲ尽サヽルカ又ハ不正ノ所為アルトキハ会員ノ決議ヲ以テ農商務大臣ノ認可ヲ受ケ退職セシムルコトヲ得
第十八条
理事長及理事ハ取引所ニ於テ売買取引ヲ為スコトヲ許サス
第十九条
役員ハ法律命令ノ範囲内ニ於テ農商務大臣ノ認可ヲ経其業務ニ関シ規約ヲ定ムルコトヲ得
第四章 仲買人
第二十条
取引所ニ仲買人ヲ置ク仲買人ハ他人ノ委托ニ由リ売買取引ヲ為スヲ以テ業トシ自己ノ為メニ売買取引ヲ為スコトヲ得ス
第二十一条
仲買人ノ営業ハ一部ニ限リ数部ヲ兼ヌルコトヲ得ス
第二十二条
仲買人タラント欲スル者ハ農商務大臣ノ免許ヲ受クヘシ之ヲ受ケタルトキハ免許料金五十円ヲ納ムヘシ
第二十三条
仲買人タルヘキ者ハ会員ニシテ営業保証金一千円以上二万円以下ヲ差出スコトヲ要ス
第二十四条
仲買人ニシテ第十五条ニ掲クル所為アルトキハ役員ノ決議ヲ以テ二百円以内ノ過怠金ヲ科シ其営業ヲ停止若クハ禁止スルコトヲ得但営業ヲ禁止スルトキハ農商務大臣ノ認可ヲ受クヘシ
第二十五条
仲買人ハ自ラ取引所ノ売買取引ニ従事スヘシ代理人又ハ手代ヲ使用スルコトヲ得ス
第二十六条
仲買人口銭ノ額ハ役員会議ニ於テ議決シ農商務大臣ノ認可ヲ得テ之ヲ定ム
第五章 売買取引
第二十七条
取引所ニ於テ為ス所ノ売買取引ハ直取引及定期取引ノ二様トス其方法ハ農商務省令及取引所ノ規約ヲ以テ之ヲ定ム
第二十八条
取引所ニ於テ売買取引スヘキ物件ノ種類ニヨリ農商務大臣ハ取引所外ニ於テ取引所ノ売買取引ト同一又ハ類似ノ方法ヲ以テ売買取引ヲ為スヲ禁止スルコトヲ得
第二十九条
取引所ニ於テ売買取引シタル物件ノ相場ヲ以テ公定相場トス
第六章 仲裁
第三十条
取引所ニ於テ為シタル売買取引ニ関シ争論ヲ生スルトキハ役員ニ申告シテ仲裁ヲ受クヘシ但代言人ヲ出スコトヲ得ス
第三十一条
前条ノ場合ニ於テハ常置委員ノ多数決ヲ以テ其争論ヲ仲裁スヘシ
第三十二条
法律上ノ見解ニ関スルモノヲ除クノ外前条ノ仲裁ニ対シテ裁判所ニ上訴スルコトヲ得ス
第七章 罰則
第三十三条
第五条第三項第九条第十八条第二十条及第二十五条ヲ犯シ又ハ第二十七条ニ依リ農商務省令ヲ以テ定メタル売買取引法ニ違ヒ売買取引ヲ為シタル者ハ二十円以上五百円以下ノ罰金ニ処ス
第三十四条
第二十八条ニ依リ農商務大臣ノ禁止シタル売買取引ヲ為シ又ハ第二十九条ノ公定相場ヲ偽リタル者ハ十円以上二百円以下ノ罰金ニ処ス
附 則
本条例ハ明治二十年九月一日ヨリ施行ス但米商会所条例及株式取引所条例ハ米商会所及株式取引所ノ営業満期ヲ待ツテ廃止スルモノトス
本文
詳細・沿革