義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律
法令番号: 法律第105号
公布年月日: 平成28年12月14日
法令の形式: 法律

提案理由 (AIによる要約)

義務教育は社会での自立的な生活の基礎だが、現在約12万人の児童生徒が不登校状態にあり、また戦後の混乱期に就学できなかった人々など、夜間中学での教育機会を希望する人も多数存在する。このような状況を踏まえ、教育機会確保のための施策を総合的に推進するため、安心して教育を受けられる学校環境の確保、不登校児童生徒への多様な学習活動支援、年齢等にかかわらない教育機会の確保などを基本理念として定める。また、文部科学大臣による基本指針の策定、不登校児童生徒への支援、夜間中学の整備、経済的支援の検討など、具体的な施策を実施することを目的とする。

参照した発言:
第192回国会 衆議院 文部科学委員会 第6号

審議経過

第192回国会

衆議院
(平成28年11月16日)
(平成28年11月18日)
(平成28年11月22日)
参議院
(平成28年12月6日)
(平成28年12月7日)
義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律をここに公布する。
御名御璽
平成二十八年十二月十四日
内閣総理大臣 安倍晋三
法律第百五号
義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律
目次
第一章
総則(第一条―第六条)
第二章
基本指針(第七条)
第三章
不登校児童生徒等に対する教育機会の確保等(第八条―第十三条)
第四章
夜間その他特別な時間において授業を行う学校における就学の機会の提供等(第十四条・第十五条)
第五章
教育機会の確保等に関するその他の施策(第十六条―第二十条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、教育基本法(平成十八年法律第百二十号)及び児童の権利に関する条約等の教育に関する条約の趣旨にのっとり、教育機会の確保等に関する施策に関し、基本理念を定め、並びに国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、基本指針の策定その他の必要な事項を定めることにより、教育機会の確保等に関する施策を総合的に推進することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 学校 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に規定する小学校、中学校、義務教育学校、中等教育学校の前期課程又は特別支援学校の小学部若しくは中学部をいう。
二 児童生徒 学校教育法第十八条に規定する学齢児童又は学齢生徒をいう。
三 不登校児童生徒 相当の期間学校を欠席する児童生徒であって、学校における集団の生活に関する心理的な負担その他の事由のために就学が困難である状況として文部科学大臣が定める状況にあると認められるものをいう。
四 教育機会の確保等 不登校児童生徒に対する教育の機会の確保、夜間その他特別な時間において授業を行う学校における就学の機会の提供その他の義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保及び当該教育を十分に受けていない者に対する支援をいう。
(基本理念)
第三条 教育機会の確保等に関する施策は、次に掲げる事項を基本理念として行われなければならない。
一 全ての児童生徒が豊かな学校生活を送り、安心して教育を受けられるよう、学校における環境の確保が図られるようにすること。
二 不登校児童生徒が行う多様な学習活動の実情を踏まえ、個々の不登校児童生徒の状況に応じた必要な支援が行われるようにすること。
三 不登校児童生徒が安心して教育を十分に受けられるよう、学校における環境の整備が図られるようにすること。
四 義務教育の段階における普通教育に相当する教育を十分に受けていない者の意思を十分に尊重しつつ、その年齢又は国籍その他の置かれている事情にかかわりなく、その能力に応じた教育を受ける機会が確保されるようにするとともに、その者が、その教育を通じて、社会において自立的に生きる基礎を培い、豊かな人生を送ることができるよう、その教育水準の維持向上が図られるようにすること。
五 国、地方公共団体、教育機会の確保等に関する活動を行う民間の団体その他の関係者の相互の密接な連携の下に行われるようにすること。
(国の責務)
第四条 国は、前条の基本理念にのっとり、教育機会の確保等に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。
(地方公共団体の責務)
第五条 地方公共団体は、第三条の基本理念にのっとり、教育機会の確保等に関する施策について、国と協力しつつ、当該地域の状況に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。
(財政上の措置等)
第六条 国及び地方公共団体は、教育機会の確保等に関する施策を実施するため必要な財政上の措置その他の措置を講ずるよう努めるものとする。
第二章 基本指針
第七条 文部科学大臣は、教育機会の確保等に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針(以下この条において「基本指針」という。)を定めるものとする。
2 基本指針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 教育機会の確保等に関する基本的事項
二 不登校児童生徒等に対する教育機会の確保等に関する事項
三 夜間その他特別な時間において授業を行う学校における就学の機会の提供等に関する事項
四 その他教育機会の確保等に関する施策を総合的に推進するために必要な事項
3 文部科学大臣は、基本指針を作成し、又はこれを変更しようとするときは、あらかじめ、地方公共団体及び教育機会の確保等に関する活動を行う民間の団体その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとする。
4 文部科学大臣は、基本指針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
第三章 不登校児童生徒等に対する教育機会の確保等
(学校における取組への支援)
第八条 国及び地方公共団体は、全ての児童生徒が豊かな学校生活を送り、安心して教育を受けられるよう、児童生徒と学校の教職員との信頼関係及び児童生徒相互の良好な関係の構築を図るための取組、児童生徒の置かれている環境その他の事情及びその意思を把握するための取組、学校生活上の困難を有する個々の児童生徒の状況に応じた支援その他の学校における取組を支援するために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
(支援の状況等に係る情報の共有の促進等)
第九条 国及び地方公共団体は、不登校児童生徒に対する適切な支援が組織的かつ継続的に行われることとなるよう、不登校児童生徒の状況及び不登校児童生徒に対する支援の状況に係る情報を学校の教職員、心理、福祉等に関する専門的知識を有する者その他の関係者間で共有することを促進するために必要な措置その他の措置を講ずるものとする。
(特別の教育課程に基づく教育を行う学校の整備等)
第十条 国及び地方公共団体は、不登校児童生徒に対しその実態に配慮して特別に編成された教育課程に基づく教育を行う学校の整備及び当該教育を行う学校における教育の充実のために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
(学習支援を行う教育施設の整備等)
第十一条 国及び地方公共団体は、不登校児童生徒の学習活動に対する支援を行う公立の教育施設の整備及び当該支援を行う公立の教育施設における教育の充実のために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
(学校以外の場における学習活動の状況等の継続的な把握)
第十二条 国及び地方公共団体は、不登校児童生徒が学校以外の場において行う学習活動の状況、不登校児童生徒の心身の状況その他の不登校児童生徒の状況を継続的に把握するために必要な措置を講ずるものとする。
(学校以外の場における学習活動等を行う不登校児童生徒に対する支援)
第十三条 国及び地方公共団体は、不登校児童生徒が学校以外の場において行う多様で適切な学習活動の重要性に鑑み、個々の不登校児童生徒の休養の必要性を踏まえ、当該不登校児童生徒の状況に応じた学習活動が行われることとなるよう、当該不登校児童生徒及びその保護者(学校教育法第十六条に規定する保護者をいう。)に対する必要な情報の提供、助言その他の支援を行うために必要な措置を講ずるものとする。
第四章 夜間その他特別な時間において授業を行う学校における就学の機会の提供等
(就学の機会の提供等)
第十四条 地方公共団体は、学齢期を経過した者(その者の満六歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初めから満十五歳に達した日の属する学年の終わりまでの期間を経過した者をいう。次条第二項第三号において同じ。)であって学校における就学の機会が提供されなかったもののうちにその機会の提供を希望する者が多く存在することを踏まえ、夜間その他特別な時間において授業を行う学校における就学の機会の提供その他の必要な措置を講ずるものとする。
(協議会)
第十五条 都道府県及び当該都道府県の区域内の市町村は、前条に規定する就学の機会の提供その他の必要な措置に係る事務についての当該都道府県及び当該市町村の役割分担に関する事項の協議並びに当該事務の実施に係る連絡調整を行うための協議会(以下この条において「協議会」という。)を組織することができる。
2 協議会は、次に掲げる者をもって構成する。
一 都道府県の知事及び教育委員会
二 当該都道府県の区域内の市町村の長及び教育委員会
三 学齢期を経過した者であって学校における就学の機会が提供されなかったもののうちその機会の提供を希望する者に対する支援活動を行う民間の団体その他の当該都道府県及び当該市町村が必要と認める者
3 協議会において協議が調った事項については、協議会の構成員は、その協議の結果を尊重しなければならない。
4 前三項に定めるもののほか、協議会の運営に関し必要な事項は、協議会が定める。
第五章 教育機会の確保等に関するその他の施策
(調査研究等)
第十六条 国は、義務教育の段階における普通教育に相当する教育を十分に受けていない者の実態の把握に努めるとともに、その者の学習活動に対する支援の方法に関する調査研究並びにこれに関する情報の収集、整理、分析及び提供を行うものとする。
(国民の理解の増進)
第十七条 国及び地方公共団体は、広報活動等を通じて、教育機会の確保等に関する国民の理解を深めるよう必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
(人材の確保等)
第十八条 国及び地方公共団体は、教育機会の確保等が専門的知識に基づき適切に行われるよう、学校の教職員その他の教育機会の確保等に携わる者の養成及び研修の充実を通じたこれらの者の資質の向上、教育機会の確保等に係る体制等の充実のための学校の教職員の配置、心理、福祉等に関する専門的知識を有する者であって教育相談に応じるものの確保その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
(教材の提供その他の学習の支援)
第十九条 国及び地方公共団体は、義務教育の段階における普通教育に相当する教育を十分に受けていない者のうち中学校を卒業した者と同等以上の学力を修得することを希望する者に対して、教材の提供(通信の方法によるものを含む。)その他の学習の支援のために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
(相談体制の整備)
第二十条 国及び地方公共団体は、義務教育の段階における普通教育に相当する教育を十分に受けていない者及びこれらの者以外の者であって学校生活上の困難を有する児童生徒であるもの並びにこれらの者の家族からの教育及び福祉に関する相談をはじめとする各種の相談に総合的に応ずることができるようにするため、関係省庁相互間その他関係機関、学校及び民間の団体の間の連携の強化その他必要な体制の整備に努めるものとする。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から起算して二月を経過した日から施行する。ただし、第四章の規定は、公布の日から施行する。
(検討)
2 政府は、速やかに、教育機会の確保等のために必要な経済的支援の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
3 政府は、義務教育の段階における普通教育に相当する教育を十分に受けていない者が行う多様な学習活動の実情を踏まえ、この法律の施行後三年以内にこの法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づき、教育機会の確保等の在り方の見直しを含め、必要な措置を講ずるものとする。
文部科学大臣 松野博一
内閣総理大臣 安倍晋三