再犯の防止等の推進に関する法律
法令番号: 法律第104号
公布年月日: 平成28年12月14日
法令の形式: 法律

提案理由 (AIによる要約)

我が国では犯罪件数は減少傾向にあるものの、再犯者率は平成9年以降上昇を続け、平成27年には約5割を占めるに至っている。再犯防止は、安全で安心して暮らせる社会を構築する上での重要課題となっている。政府は平成24年に再犯防止に向けた総合対策等を策定し対策を推進してきたが、委員会での海外視察等を通じ、再犯防止に関する基本法制定の必要性が強く認識された。このような状況を踏まえ、再犯防止等に関する施策を国を挙げて推進し、安全で安心して暮らせる社会の実現に寄与するため、本法案を提案するものである。

参照した発言:
第192回国会 衆議院 法務委員会 第8号

審議経過

第192回国会

衆議院
(平成28年11月16日)
(平成28年11月17日)
参議院
(平成28年12月1日)
(平成28年12月6日)
(平成28年12月7日)
再犯の防止等の推進に関する法律をここに公布する。
御名御璽
平成二十八年十二月十四日
内閣総理大臣 安倍晋三
法律第百四号
再犯の防止等の推進に関する法律
目次
第一章
総則(第一条―第十条)
第二章
基本的施策
第一節
国の施策(第十一条―第二十三条)
第二節
地方公共団体の施策(第二十四条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、国民の理解と協力を得つつ、犯罪をした者等の円滑な社会復帰を促進すること等による再犯の防止等が犯罪対策において重要であることに鑑み、再犯の防止等に関する施策に関し、基本理念を定め、国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、再犯の防止等に関する施策の基本となる事項を定めることにより、再犯の防止等に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって国民が犯罪による被害を受けることを防止し、安全で安心して暮らせる社会の実現に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「犯罪をした者等」とは、犯罪をした者又は非行少年(非行のある少年をいう。以下同じ。)若しくは非行少年であった者をいう。
2 この法律において「再犯の防止等」とは、犯罪をした者等が犯罪をすることを防ぐこと(非行少年の非行をなくすこと及び非行少年であった者が再び非行少年となることを防ぐことを含む。)をいう。
(基本理念)
第三条 再犯の防止等に関する施策は、犯罪をした者等の多くが安定した職業に就くこと及び住居を確保することができないこと等のために円滑な社会復帰をすることが困難な状況にあることを踏まえ、犯罪をした者等が、社会において孤立することなく、国民の理解と協力を得て再び社会を構成する一員となることを支援することにより、犯罪をした者等が円滑に社会に復帰することができるようにすることを旨として、講ぜられるものとする。
2 再犯の防止等に関する施策は、犯罪をした者等が、その特性に応じ、矯正施設(刑務所、少年刑務所、拘置所、少年院、少年鑑別所及び婦人補導院をいう。以下同じ。)に収容されている間のみならず、社会に復帰した後も途切れることなく、必要な指導及び支援を受けられるよう、矯正施設における適切な収容及び処遇のための施策と職業及び住居の確保に係る支援をはじめとする円滑な社会復帰のための施策との有機的な連携を図りつつ、関係行政機関の相互の密接な連携の下に、総合的に講ぜられるものとする。
3 再犯の防止等に関する施策は、犯罪をした者等が、犯罪の責任等を自覚すること及び被害者等の心情を理解すること並びに自ら社会復帰のために努力することが、再犯の防止等に重要であるとの認識の下に、講ぜられるものとする。
4 再犯の防止等に関する施策は、犯罪及び非行の実態、再犯の防止等に関する各般の施策の有効性等に関する調査研究の成果等を踏まえ、効果的に講ぜられるものとする。
(国等の責務)
第四条 国は、前条の基本理念(次項において「基本理念」という。)にのっとり、再犯の防止等に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。
2 地方公共団体は、基本理念にのっとり、再犯の防止等に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の地域の状況に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。
(連携、情報の提供等)
第五条 国及び地方公共団体は、再犯の防止等に関する施策が円滑に実施されるよう、相互に連携を図らなければならない。
2 国及び地方公共団体は、再犯の防止等に関する施策の実施に当たっては、再犯の防止等に関する活動を行う民間の団体その他の関係者との緊密な連携協力の確保に努めなければならない。
3 国及び地方公共団体は、再犯の防止等に関する施策の実施に当たっては、再犯の防止等に関する活動を行う民間の団体その他の関係者に対して必要な情報を適切に提供するものとする。
4 再犯の防止等に関する活動を行う民間の団体その他の関係者は、前項の規定により提供を受けた犯罪をした者等の個人情報その他の犯罪をした者等の個人情報を適切に取り扱わなければならない。
(再犯防止啓発月間)
第六条 国民の間に広く再犯の防止等についての関心と理解を深めるため、再犯防止啓発月間を設ける。
2 再犯防止啓発月間は、七月とする。
3 国及び地方公共団体は、再犯防止啓発月間の趣旨にふさわしい事業が実施されるよう努めなければならない。
(再犯防止推進計画)
第七条 政府は、再犯の防止等に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、再犯の防止等に関する施策の推進に関する計画(以下「再犯防止推進計画」という。)を定めなければならない。
2 再犯防止推進計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 再犯の防止等に関する施策の推進に関する基本的な事項
二 再犯の防止等に向けた教育及び職業訓練の充実に関する事項
三 犯罪をした者等の社会における職業及び住居の確保並びに保健医療サービス及び福祉サービスの利用に係る支援に関する事項
四 矯正施設における収容及び処遇並びに保護観察に関する体制その他の関係機関における体制の整備に関する事項
五 その他再犯の防止等に関する施策の推進に関する重要事項
3 法務大臣は、再犯防止推進計画の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。
4 法務大臣は、再犯防止推進計画の案を作成しようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長と協議しなければならない。
5 法務大臣は、第三項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、再犯防止推進計画を公表しなければならない。
6 政府は、少なくとも五年ごとに、再犯防止推進計画に検討を加え、必要があると認めるときは、これを変更しなければならない。
7 第三項から第五項までの規定は、再犯防止推進計画の変更について準用する。
(地方再犯防止推進計画)
第八条 都道府県及び市町村は、再犯防止推進計画を勘案して、当該都道府県又は市町村における再犯の防止等に関する施策の推進に関する計画(次項において「地方再犯防止推進計画」という。)を定めるよう努めなければならない。
2 都道府県及び市町村は、地方再犯防止推進計画を定め、又は変更したときは、遅滞なく、これを公表するよう努めなければならない。
(法制上の措置等)
第九条 政府は、この法律の目的を達成するため、必要な法制上、財政上又は税制上の措置その他の措置を講じなければならない。
(年次報告)
第十条 政府は、毎年、国会に、政府が講じた再犯の防止等に関する施策についての報告を提出しなければならない。
第二章 基本的施策
第一節 国の施策
(特性に応じた指導及び支援等)
第十一条 国は、犯罪をした者等に対する指導及び支援については、矯正施設内及び社会内を通じ、指導及び支援の内容に応じ、犯罪をした者等の犯罪又は非行の内容、犯罪及び非行の経歴その他の経歴、性格、年齢、心身の状況、家庭環境、交友関係、経済的な状況その他の特性を踏まえて行うものとする。
2 国は、犯罪をした者等に対する指導については、犯罪の責任等の自覚及び被害者等の心情の理解を促すとともに、円滑な社会復帰に資するものとなるように留意しなければならない。
(就労の支援)
第十二条 国は、犯罪をした者等が自立した生活を営むことができるよう、その就労を支援するため、犯罪をした者等に対し、その勤労意欲を高め、これに職業上有用な知識及び技能を習得させる作業の矯正施設における実施、矯正施設内及び社会内を通じた職業に関する免許又は資格の取得を目的とする訓練その他の効果的な職業訓練等の実施、就職のあっせん並びに就労及びその継続に関する相談及び助言等必要な施策を講ずるものとする。
(非行少年等に対する支援)
第十三条 国は、少年が可塑性に富む等の特性を有することに鑑み、非行少年及び非行少年であった者が、早期に立ち直り、善良な社会の一員として自立し、改善更生することを助けるため、少年院、少年鑑別所、保護観察所等の関係機関と学校、家庭、地域社会及び民間の団体等が連携した指導及び支援、それらの者の能力に応じた教育を受けられるようにするための教育上必要な支援等必要な施策を講ずるものとする。
(就業の機会の確保等)
第十四条 国は、国を当事者の一方とする契約で国以外の者のする工事の完成若しくは作業その他の役務の給付又は物品の納入に対し国が対価の支払をすべきものを締結するに当たって予算の適正な使用に留意しつつ協力雇用主(犯罪をした者等の自立及び社会復帰に協力することを目的として、犯罪をした者等を雇用し、又は雇用しようとする事業主をいう。第二十三条において同じ。)の受注の機会の増大を図るよう配慮すること、犯罪をした者等の国による雇用の推進その他犯罪をした者等の就業の機会の確保及び就業の継続を図るために必要な施策を講ずるものとする。
(住居の確保等)
第十五条 国は、犯罪をした者等のうち適切な住居、食事その他の健全な社会生活を営むために必要な手段を確保することができないことによりその改善更生が妨げられるおそれのある者の自立を支援するため、その自助の責任を踏まえつつ、宿泊場所の供与、食事の提供等必要な施策を講ずるとともに、犯罪をした者等が地域において生活を営むための住居を確保することを支援するため、公営住宅(公営住宅法(昭和二十六年法律第百九十三号)第二条第二号に規定する公営住宅をいう。)への入居における犯罪をした者等への特別の配慮等必要な施策を講ずるものとする。
(更生保護施設に対する援助)
第十六条 国は、犯罪をした者等の宿泊場所の確保及びその改善更生に資するよう、更生保護施設の整備及び運営に関し、財政上の措置、情報の提供等必要な施策を講ずるものとする。
(保健医療サービス及び福祉サービスの提供)
第十七条 国は、犯罪をした者等のうち高齢者、障害者等であって自立した生活を営む上での困難を有するもの及び薬物等に対する依存がある者等について、その心身の状況に応じた適切な保健医療サービス及び福祉サービスが提供されるよう、医療、保健、福祉等に関する業務を行う関係機関における体制の整備及び充実を図るために必要な施策を講ずるとともに、当該関係機関と矯正施設、保護観察所及び民間の団体との連携の強化に必要な施策を講ずるものとする。
(関係機関における体制の整備等)
第十八条 国は、犯罪をした者等に対し充実した指導及び支援を行うため、関係機関における体制を整備するとともに、再犯の防止等に係る人材の確保、養成及び資質の向上のために必要な施策を講ずるものとする。
(再犯防止関係施設の整備)
第十九条 国は、再犯防止関係施設(矯正施設その他再犯の防止等に関する施策を実施する施設をいう。以下この条において同じ。)が再犯の防止等に関する施策の推進のための重要な基盤であることに鑑み、再犯防止関係施設の整備を推進するために必要な施策を講ずるものとする。
(情報の共有、検証、調査研究の推進等)
第二十条 国は、再犯の防止等に関する施策の効果的な実施に資するよう、関係機関が保有する再犯の防止等に資する情報を共有し、再犯の防止等に関する施策の実施状況及びその効果を検証し、並びに犯罪をした者等の再犯の防止等を図る上で効果的な処遇の在り方等に関する調査及び研究を推進するとともに、それらの結果等を踏まえて再犯の防止等に関する施策の在り方について検討する等必要な施策を講ずるものとする。
(社会内における適切な指導及び支援)
第二十一条 国は、犯罪をした者等のうち社会内において適切な指導及び支援を受けることが再犯の防止等に有効であると認められる者について、矯正施設における処遇を経ないで、又は一定期間の矯正施設における処遇に引き続き、社会内において指導及び支援を早期かつ効果的に受けることができるよう、必要な施策を講ずるものとする。
(国民の理解の増進及び表彰)
第二十二条 国は、再犯の防止等に関する施策の重要性について、国民の理解を深め、その協力を得られるよう必要な施策を講ずるものとする。
2 国は、再犯の防止等の推進に寄与した民間の団体及び個人の表彰に努めるものとする。
(民間の団体等に対する援助)
第二十三条 国は、保護司会及び協力雇用主その他民間の団体又は個人の再犯の防止等に関する活動の促進を図るため、財政上又は税制上の措置等必要な施策を講ずるものとする。
第二節 地方公共団体の施策
第二十四条 地方公共団体は、国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の地域の状況に応じ、前節に規定する施策を講ずるように努めなければならない。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から施行する。
(検討)
2 国は、この法律の施行後五年を目途として、この法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
法務大臣 金田勝年
内閣総理大臣 安倍晋三