(目的)
第一条 この法律は、インターネットその他の高度情報通信ネットワークを通じて流通する多様かつ大量の情報を適正かつ効果的に活用することにより、急速な少子高齢化の進展への対応等の我が国が直面する課題の解決に資する環境をより一層整備することが重要であることに鑑み、官民データの適正かつ効果的な活用(以下「官民データ活用」という。)の推進に関し、基本理念を定め、国、地方公共団体及び事業者の責務を明らかにし、並びに官民データ活用推進基本計画の策定その他官民データ活用の推進に関する施策の基本となる事項を定めるとともに、官民データ活用推進戦略会議を設置することにより、官民データ活用の推進に関する施策を総合的かつ効果的に推進し、もって国民が安全で安心して暮らせる社会及び快適な生活環境の実現に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「官民データ」とは、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録をいう。第十三条第二項において同じ。)に記録された情報(国の安全を損ない、公の秩序の維持を妨げ、又は公衆の安全の保護に支障を来すことになるおそれがあるものを除く。)であって、国若しくは地方公共団体又は独立行政法人(独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第一項に規定する独立行政法人をいう。第二十六条第一項において同じ。)若しくはその他の事業者により、その事務又は事業の遂行に当たり、管理され、利用され、又は提供されるものをいう。
2 この法律において「人工知能関連技術」とは、人工的な方法による学習、推論、判断等の知的な機能の実現及び人工的な方法により実現した当該機能の活用に関する技術をいう。
3 この法律において「インターネット・オブ・シングス活用関連技術」とは、インターネットに多様かつ多数の物が接続されて、それらの物から送信され、又はそれらの物に送信される大量の情報の活用に関する技術であって、当該情報の活用による付加価値の創出によって、事業者の経営の能率及び生産性の向上、新たな事業の創出並びに就業の機会の増大をもたらし、もって国民生活の向上及び国民経済の健全な発展に寄与するものをいう。
4 この法律において「クラウド・コンピューティング・サービス関連技術」とは、インターネットその他の高度情報通信ネットワークを通じて電子計算機(入出力装置を含む。以下同じ。)を他人の情報処理の用に供するサービスに関する技術をいう。
(基本理念)
第三条 官民データ活用の推進は、高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(平成十二年法律第百四十四号)及びサイバーセキュリティ基本法(平成二十六年法律第百四号)、個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十七号)、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成二十五年法律第二十七号)その他の関係法律による施策と相まって、個人及び法人の権利利益を保護しつつ情報の円滑な流通の確保を図ることを旨として、行われなければならない。
2 官民データ活用の推進は、地域経済の活性化及び地域における就業の機会の創出を通じた自立的で個性豊かな地域社会の形成並びに新たな事業の創出並びに産業の健全な発展及び国際競争力の強化を図ることにより、活力ある日本社会の実現に寄与することを旨として、行われなければならない。
3 官民データ活用の推進は、国及び地方公共団体における施策の企画及び立案が官民データ活用により得られた情報を根拠として行われることにより、効果的かつ効率的な行政の推進に資することを旨として、行われなければならない。
4 官民データ活用の推進に当たっては、情報通信の技術の利用における安全性及び信頼性が確保されるとともに、個人及び法人の権利利益、国の安全等が害されることのないようにされなければならない。
5 官民データ活用の推進に当たっては、国民の利便性の向上を図るとともに、行政運営の簡素化及び効率化に資するよう、国民の利便性の向上に資する分野及び当該分野以外の行政分野において、情報通信の技術の更なる活用の促進が図られなければならない。
6 官民データ活用の推進に当たっては、個人及び法人の権利利益を保護しつつ、個人に関する官民データの適正な活用を図るために必要な基盤の整備がなされなければならない。
7 官民データ活用の推進に当たっては、官民データを活用する多様な主体の連携を確保するため、情報システムに係る規格の整備及び互換性の確保その他の官民データの円滑な流通の確保を図るために必要な基盤の整備がなされなければならない。
8 官民データ活用の推進に当たっては、官民データの効果的かつ効率的な活用を図るため、人工知能関連技術、インターネット・オブ・シングス活用関連技術、クラウド・コンピューティング・サービス関連技術その他の先端的な技術の活用が促進されなければならない。
(国の責務)
第四条 国は、前条の基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、官民データ活用の推進に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。
(地方公共団体の責務)
第五条 地方公共団体は、基本理念にのっとり、官民データ活用の推進に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の区域の経済的条件等に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。
(事業者の責務)
第六条 事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動に関し、自ら積極的に官民データ活用の推進に努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する官民データ活用の推進に関する施策に協力するよう努めるものとする。
(法制上の措置等)
第七条 政府は、官民データ活用の推進に関する施策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならない。