発達障害者支援法の一部を改正する法律
法令番号: 法律第六十四号
公布年月日: 平成28年6月3日
法令の形式: 法律
発達障害者支援法の一部を改正する法律をここに公布する。
御名御璽
平成二十八年六月三日
内閣総理大臣 安倍晋三
法律第六十四号
発達障害者支援法の一部を改正する法律
発達障害者支援法(平成十六年法律第百六十七号)の一部を次のように改正する。
目次中「第十九条」を「第十九条の二」に改める。
第一条中「に発達支援を行う」の下に「とともに、切れ目なく発達障害者の支援を行う」を加え、「かんがみ」を「鑑み、障害者基本法(昭和四十五年法律第八十四号)の基本的な理念にのっとり、発達障害者が基本的人権を享有する個人としての尊厳にふさわしい日常生活又は社会生活を営むことができるよう」に、「に資するよう」を「のための」に、「その福祉の増進に寄与する」を「全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資する」に改める。
第二条第二項中「を有するために」を「がある者であって発達障害及び社会的障壁により」に、「者を」を「ものを」に改め、同条第三項中「発達障害の」を「個々の発達障害者の」に改め、同項を同条第四項とし、同条第二項の次に次の一項を加える。
3 この法律において「社会的障壁」とは、発達障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。
第二条の次に次の一条を加える。
(基本理念)
第二条の二 発達障害者の支援は、全ての発達障害者が社会参加の機会が確保されること及びどこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないことを旨として、行われなければならない。
2 発達障害者の支援は、社会的障壁の除去に資することを旨として、行われなければならない。
3 発達障害者の支援は、個々の発達障害者の性別、年齢、障害の状態及び生活の実態に応じて、かつ、医療、保健、福祉、教育、労働等に関する業務を行う関係機関及び民間団体相互の緊密な連携の下に、その意思決定の支援に配慮しつつ、切れ目なく行われなければならない。
第三条第一項中「かんがみ」を「鑑み、前条の基本理念(次項及び次条において「基本理念」という。)にのっとり」に改め、同条第二項中「地方公共団体は」の下に「、基本理念にのっとり」を、「家族」の下に「その他の関係者」を加え、同条第四項中「及び労働」を「、労働等」に改め、「犯罪等により」を削り、「消費生活」の下に「、警察等」を加え、同項を同条第五項とし、同条第三項を同条第四項とし、同条第二項の次に次の一項を加える。
3 国及び地方公共団体は、発達障害者及びその家族その他の関係者からの各種の相談に対し、個々の発達障害者の特性に配慮しつつ総合的に応ずることができるようにするため、医療、保健、福祉、教育、労働等に関する業務を行う関係機関及び民間団体相互の有機的連携の下に必要な相談体制の整備を行うものとする。
第四条中「発達障害者の福祉について」を「個々の発達障害の特性その他発達障害に関する」に、「社会連帯の理念に基づき」を「基本理念にのっとり」に、「が社会経済活動に参加しようとする努力に対し、」を「の自立及び社会参加に」に改める。
第五条第三項中「についての」を「の保護者に対し、」に改め、「相談」の下に「、情報の提供及び助言」を加える。
第八条第一項中「特別支援学校」の下に「並びに専修学校の高等課程」を、「含む」の下に「。以下この項において同じ」を加え、「その障害の状態に応じ、」を「、その年齢及び能力に応じ、かつ、その特性を踏まえた」に改め、「ため」の下に「、可能な限り発達障害児が発達障害児でない児童と共に教育を受けられるよう配慮しつつ」を加え、「、支援体制」を「を行うこと、個別の教育支援計画の作成(教育に関する業務を行う関係機関と医療、保健、福祉、労働等に関する業務を行う関係機関及び民間団体との連携の下に行う個別の長期的な支援に関する計画の作成をいう。)及び個別の指導に関する計画の作成の推進、いじめの防止等のための対策の推進その他の支援体制」に改め、「整備」の下に「を行うこと」を加え、同条第二項中「高等専門学校は、」の下に「個々の」を加え、「障害の状態」を「特性」に改める。
第九条の次に次の一条を加える。
(情報の共有の促進)
第九条の二 国及び地方公共団体は、個人情報の保護に十分配慮しつつ、福祉及び教育に関する業務を行う関係機関及び民間団体が医療、保健、労働等に関する業務を行う関係機関及び民間団体と連携を図りつつ行う発達障害者の支援に資する情報の共有を促進するため必要な措置を講じるものとする。
第十条第一項中「都道府県は」を「国及び都道府県は、発達障害者が就労することができるようにするため」に改め、「確保しつつ、」の下に「個々の」を、「の確保」の下に「、就労の定着のための支援その他の必要な支援」を加え、同条に次の一項を加える。
3 事業主は、発達障害者の雇用に関し、その有する能力を正当に評価し、適切な雇用の機会を確保するとともに、個々の発達障害者の特性に応じた適正な雇用管理を行うことによりその雇用の安定を図るよう努めなければならない。
第十一条中「対し」の下に「、その性別、年齢、障害の状態及び生活の実態に応じて」を加える。
第十二条の見出しを「(権利利益の擁護)」に改め、同条中「差別される」を「差別され、並びにいじめ及び虐待を受けること、消費生活における被害を受ける」に、「権利擁護」を「その差別の解消、いじめの防止等及び虐待の防止等のための対策を推進すること、成年後見制度が適切に行われ又は広く利用されるようにすることその他の発達障害者の権利利益の擁護」に改め、同条の次に次の一条を加える。
(司法手続における配慮)
第十二条の二 国及び地方公共団体は、発達障害者が、刑事事件若しくは少年の保護事件に関する手続その他これに準ずる手続の対象となった場合又は裁判所における民事事件、家事事件若しくは行政事件に関する手続の当事者その他の関係人となった場合において、発達障害者がその権利を円滑に行使できるようにするため、個々の発達障害者の特性に応じた意思疎通の手段の確保のための配慮その他の適切な配慮をするものとする。
第十三条の見出し中「家族」を「家族等」に改め、同条中「発達障害児の保護者」を「発達障害者の家族その他の関係者」に、「監護」を「対応」に、「等を通じて発達障害者の福祉の増進に寄与する」を「等の」に改め、「家族」の下に「その他の関係者」を、「、相談」の下に「、情報の提供」を、「助言」の下に「、発達障害者の家族が互いに支え合うための活動の支援」を加える。
第十四条第一項第一号中「家族」の下に「その他の関係者」を、「又は」の下に「情報の提供若しくは」を加え、同項第三号中「教育」の下に「、労働」を加え、「(次号において「医療等の業務」という。)」を削り、「情報提供」を「情報の提供」に改め、同項第四号中「医療等の」を「医療、保健、福祉、教育、労働等に関する」に改め、同条に次の一項を加える。
3 都道府県は、第一項に規定する業務を発達障害者支援センターに行わせ、又は自ら行うに当たっては、地域の実情を踏まえつつ、発達障害者及びその家族その他の関係者が可能な限りその身近な場所において必要な支援を受けられるよう適切な配慮をするものとする。
第三章中第十九条の次に次の一条を加える。
(発達障害者支援地域協議会)
第十九条の二 都道府県は、発達障害者の支援の体制の整備を図るため、発達障害者及びその家族、学識経験者その他の関係者並びに医療、保健、福祉、教育、労働等に関する業務を行う関係機関及び民間団体並びにこれに従事する者(次項において「関係者等」という。)により構成される発達障害者支援地域協議会を置くことができる。
2 前項の発達障害者支援地域協議会は、関係者等が相互の連絡を図ることにより、地域における発達障害者の支援体制に関する課題について情報を共有し、関係者等の連携の緊密化を図るとともに、地域の実情に応じた体制の整備について協議を行うものとする。
第二十一条中「地方公共団体は、」の下に「個々の発達障害の特性その他」を、「ため」の下に「、学校、地域、家庭、職域その他の様々な場を通じて」を加える。
第二十三条中「地方公共団体は、」の下に「個々の」を加え、「に対する支援」を「の特性に応じた支援」に改め、「、医療、保健、福祉、教育等に関する業務に従事する職員について、」を削り、「を確保するよう努めるとともに、」を「の確保、養成及び資質の向上を図るため、医療、保健、福祉、教育、労働等並びに捜査及び裁判に関する業務に従事する者に対し、個々の」に、「に対する理解」を「の特性その他発達障害に関する理解」に、「研修等」を「研修を実施することその他の」に改める。
第二十四条中「国は」の下に「、性別、年齢その他の事情を考慮しつつ」を、「ともに、」の下に「個々の」を加え、「、発達障害の診断及び治療」を「及び診断」に改める。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
(検討)
2 政府は、疾病等の分類に関する国際的動向等を勘案し、知的発達の遅滞の疑いがあり、日常生活を営むのにその一部につき援助が必要で、かつ、社会生活への適応の困難の程度が軽い者等の実態について調査を行い、その結果を踏まえ、これらの者の支援の在り方について、児童、若者、高齢者等の福祉に関する施策、就労の支援に関する施策その他の関連する施策の活用を含めて検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。
内閣総理大臣 安倍晋三
総務大臣 山本早苗
法務大臣 岩城光英
文部科学大臣 馳浩
厚生労働大臣 塩崎恭久