カネミ油症患者に関する施策の総合的な推進に関する法律
法令番号: 法律第82号
公布年月日: 平成24年9月5日
法令の形式: 法律

提案理由 (AIによる要約)

1968年に九州地方を中心に発生したカネミ油症事件は、PCBやダイオキシン類が混入した食用油による健康被害であった。治療法が確立されておらず、患者は長年多様な症状に苦しんでいる。原因企業のカネミ倉庫から医療費等が支給されているが、同社の経営状況への懸念から患者は将来に不安を抱えている。そこで、患者が適切な医療を受け、生活の質を維持向上できるよう、国や地方公共団体等の責務を明確にし、基本指針の策定、医療費支援、健康状態の把握、診断基準の見直し、調査研究の促進など、カネミ油症患者に関する施策を総合的に推進するため、本法案を提出するものである。

参照した発言:
第180回国会 衆議院 厚生労働委員会 第19号

審議経過

第180回国会

衆議院
(平成24年8月24日)
(平成24年8月24日)
参議院
(平成24年8月28日)
(平成24年8月29日)
カネミ油症患者に関する施策の総合的な推進に関する法律をここに公布する。
御名御璽
平成二十四年九月五日
内閣総理大臣 野田佳彦
法律第八十二号
カネミ油症患者に関する施策の総合的な推進に関する法律
目次
第一章
総則(第一条―第七条)
第二章
基本指針(第八条)
第三章
基本的施策(第九条―第十三条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、食品を介してポリ塩化ビフェニル等を摂取したこと等を原因とする特殊な健康被害その他のカネミ油症患者が置かれている事情に鑑み、カネミ油症患者に関する施策に関し、基本理念を定め、国、関係地方公共団体、原因事業者及び国民の責務を明らかにし、並びに基本指針の策定について定めるとともに、カネミ油症患者に関する施策の基本となる事項を定めることにより、カネミ油症患者に関する施策を総合的に推進することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「ポリ塩化ビフェニル等」とは、ポリ塩化ビフェニル及びこれに由来するダイオキシン類(ダイオキシン類対策特別措置法(平成十一年法律第百五号)第二条第一項に規定するダイオキシン類をいう。)をいう。
2 この法律において「カネミ油症」とは、昭和四十三年に九州地方を中心に発生したポリ塩化ビフェニル等が混入した食用油の摂取等を原因とする健康被害が生じた事件(以下「カネミ油症事件」という。)における当該摂取等を原因として発生した疾患をいう。
3 この法律において「カネミ油症患者」とは、カネミ油症にかかった者をいう。
4 この法律において「原因事業者」とは、カネミ油症が生ずる原因となった食用油を製造した事業者をいう。
(基本理念)
第三条 カネミ油症患者に関する施策は、次に掲げる事項を基本理念として行われなければならない。
一 カネミ油症患者がその居住する地域にかかわらず等しくその状態に応じた適切なカネミ油症に係る医療を受けることができるようにするとともに、カネミ油症患者の生活の質の維持向上が図られるようにすること。
二 カネミ油症に関する専門的、学際的又は総合的な研究を推進することによりカネミ油症の診断、治療等に係る技術の向上を図るとともに、その成果を普及し、活用し、及び発展させること。
三 カネミ油症患者に関する施策を推進するに当たっては、カネミ油症患者及びその家族(以下「カネミ油症患者等」という。)の人権が尊重され、カネミ油症患者等がカネミ油症患者等であることを理由に差別されないように配慮するものとすること。
四 原因事業者に対し国が行う支援は、カネミ油症患者の生活の質の維持向上に資することを旨として、行われるものとすること。
(国の責務)
第四条 国は、前条の基本理念にのっとり、カネミ油症患者に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。
(関係地方公共団体の責務)
第五条 関係地方公共団体は、第三条の基本理念にのっとり、カネミ油症患者に関する施策に関し、国との連携を図りつつ、その地域の特性に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。
(原因事業者の責務)
第六条 原因事業者は、カネミ油症患者に対する医療費の支払その他カネミ油症患者のカネミ油症事件に係る被害の回復を誠実に行うとともに、国及び関係地方公共団体が講ずるカネミ油症患者に関する施策に協力する責務を有する。
(国民の責務)
第七条 国民は、カネミ油症に関する正しい知識を持ち、カネミ油症患者等がカネミ油症患者等であることを理由に差別されないように配慮するよう努めなければならない。
第二章 基本指針
第八条 厚生労働大臣及び農林水産大臣は、カネミ油症患者に関する施策の総合的な推進を図るため、カネミ油症患者に関する施策の推進に関する基本的な指針(以下「基本指針」という。)を策定しなければならない。
2 基本指針は、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 カネミ油症患者に関する施策の基本的な方向
二 原因事業者によるカネミ油症患者に対する医療費の支払その他カネミ油症患者のカネミ油症事件に係る被害の回復の支援に関する事項
三 カネミ油症患者の健康状態の把握に関する事項
四 カネミ油症の診断基準の見直し並びに調査及び研究に関する事項
五 カネミ油症に係る医療を提供する体制の確保に関する事項
六 カネミ油症の症状、治療等に関する情報の収集及び提供を行う体制の整備並びにカネミ油症患者等に対する相談支援の推進に関する事項
七 その他カネミ油症患者に関する施策に関する重要事項
3 厚生労働大臣及び農林水産大臣は、基本指針を策定しようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長に協議するものとする。
4 厚生労働大臣及び農林水産大臣は、基本指針を策定したときは、遅滞なく、これをインターネットの利用その他適切な方法により公表しなければならない。
5 前二項の規定は、基本指針の変更について準用する。
第三章 基本的施策
(医療費の支払等の支援)
第九条 国は、カネミ油症患者が必要に応じ適切なカネミ油症に係る医療を受け、その他カネミ油症患者がカネミ油症事件に係る被害の回復を図ることによりその生活の質を維持向上させることができるよう、原因事業者によるカネミ油症患者に対する医療費の支払その他カネミ油症患者のカネミ油症事件に係る被害の回復を支援するために必要な施策を講ずるものとする。
(健康状態の把握)
第十条 国は、カネミ油症に関する調査及び研究を推進するため、カネミ油症患者の健康状態を把握するために必要な施策を講ずるものとする。
(診断基準の見直し並びに調査及び研究の促進等)
第十一条 国は、カネミ油症の診断基準の科学的知見に基づく見直し並びに診断、治療等に関する調査及び研究が促進され、及びその成果が活用されるよう必要な施策を講ずるものとする。
(医療提供体制の確保)
第十二条 国及び関係地方公共団体は、カネミ油症患者がその居住する地域にかかわらず等しくその状態に応じた適切なカネミ油症に係る医療を受けることができるよう、医療機関と原因事業者の間における連携協力体制の整備を図るために必要な施策を講ずるものとする。
(情報の収集提供体制の整備等)
第十三条 国及び関係地方公共団体は、カネミ油症の症状、治療等に関する情報の収集及び提供を行う体制を整備するために必要な施策を講ずるとともに、カネミ油症患者等に対する相談支援を推進するために必要な施策を講ずるものとする。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から施行する。
(検討)
第二条 政府は、この法律の施行後三年を目途として、この法律の施行の状況を勘案し、カネミ油症患者の福祉を増進する観点から、カネミ油症患者に関する施策の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
第三条 経済的社会的環境の変化その他の事情により原因事業者の事業の継続が困難となることが明らかとなった場合には、この法律の規定について速やかに検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとする。
厚生労働大臣 小宮山洋子
農林水産大臣 郡司彰
内閣総理大臣 野田佳彦