公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律
法令番号: 法律第36号
公布年月日: 平成22年5月26日
法令の形式: 法律

提案理由 (AIによる要約)

森林は国土保全や地球温暖化防止など多面的機能を通じて国民生活に重要な役割を果たしているが、国産材利用の低調や木材価格下落により林業活動が停滞し、森林の多面的機能の低下が懸念されている。この状況を克服するため、木材需要の拡大による林業の再生が急務となっている。特に木造率が低く潜在的需要が期待できる公共建築物での木材利用を国等が率先して進めることが重要であり、これにより木材の適切な供給及び利用の確保を通じた林業の発展と森林の適正な整備を図るため、本法案を提出するものである。

参照した発言:
第174回国会 衆議院 農林水産委員会 第7号

審議経過

第174回国会

衆議院
(平成22年4月20日)
(平成22年4月22日)
(平成22年5月11日)
(平成22年5月13日)
(平成22年5月13日)
参議院
(平成22年5月13日)
(平成22年5月18日)
(平成22年5月19日)
公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律をここに公布する。
御名御璽
平成二十二年五月二十六日
内閣総理大臣 鳩山由紀夫
法律第三十六号
公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律
目次
第一章
総則(第一条―第六条)
第二章
公共建築物における木材の利用の促進に関する施策(第七条―第十六条)
第三章
公共建築物における木材の利用以外の木材の利用の促進に関する施策(第十七条―第二十条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、木材の利用を促進することが地球温暖化の防止、循環型社会の形成、森林の有する国土の保全、水源のかん養その他の多面的機能の発揮及び山村その他の地域の経済の活性化に貢献すること等にかんがみ、公共建築物等における木材の利用を促進するため、農林水産大臣及び国土交通大臣が策定する基本方針等について定めるとともに、公共建築物の整備の用に供する木材の適切な供給の確保に関する措置を講ずること等により、木材の適切な供給及び利用の確保を通じた林業の持続的かつ健全な発展を図り、もって森林の適正な整備及び木材の自給率の向上に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「公共建築物」とは、次に掲げる建築物(建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第二条第一号に規定する建築物をいう。以下同じ。)をいう。
一 国又は地方公共団体が整備する公共の用又は公用に供する建築物
二 国又は地方公共団体以外の者が整備する学校、老人ホームその他の前号に掲げる建築物に準ずる建築物として政令で定めるもの
2 この法律において「木材の利用」とは、建築基準法第二条第五号に規定する主要構造部その他の建築物の部分の建築材料、工作物の資材、製品の原材料及びエネルギー源として国内で生産された木材その他の木材を使用すること(これらの木材を使用した木製品を使用することを含む。)をいう。
3 この法律において「木材製造の高度化」とは、木材の製造を業として行う者が、公共建築物の整備の用に供する木材の製造のために必要な施設の整備、高度な知識又は技術を有する人材の確保その他の措置を行うことにより、公共建築物の整備の用に供する木材の供給能力の向上を図ることをいう。
(国の責務)
第三条 国は、木材の利用の促進に関する施策を総合的に策定し、及び実施するとともに、地方公共団体が実施する木材の利用の促進に関する施策を推進するために必要な助言その他の措置を講ずるよう努めなければならない。
2 国は、一般の利用に供されるものであることその他の前条第一項第一号に掲げる建築物の性質にかんがみ、木材に対する需要の増進に資するため、自ら率先してその整備する公共建築物における木材の利用に努めなければならない。
3 国は、木材に対する需要の増進を図るため、木材の利用の促進に係る取組を支援するために必要な財政上及び金融上の措置を講ずるよう努めなければならない。
4 国は、木材の利用の促進に当たっては、公共建築物の整備等の用に供する木材が適切に供給されることが重要であることにかんがみ、木材製造の高度化の促進その他の公共建築物の整備等の用に供する木材の適切な供給の確保のために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
5 国は、建築物における建築材料としての木材の利用を促進するため、木造の建築物に係る建築基準法等の規制の在り方について、木材の耐火性等に関する研究の成果、建築の専門家等の専門的な知見に基づく意見、諸外国における規制の状況等を踏まえて検討を加え、その結果に基づき、規制の撤廃又は緩和のために必要な法制上の措置その他の措置を講ずるものとする。
6 国は、木材の利用の促進に関する研究、技術の開発及び普及、人材の育成その他の木材の利用の促進を図るために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
7 国は、教育活動、広報活動等を通じて、木材の利用の促進に関する国民の理解を深めるとともに、その実施に関する国民の協力を求めるよう努めなければならない。
(地方公共団体の責務)
第四条 地方公共団体は、その区域の経済的社会的諸条件に応じ、国の施策に準じて木材の利用の促進に関する施策を策定し、及び実施するよう努めるとともに、その整備する公共建築物における木材の利用に努めなければならない。
(事業者の努力)
第五条 事業者は、その事業活動等に関し、木材の利用の促進に自ら努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する木材の利用の促進に関する施策に協力するよう努めるものとする。
(国民の努力)
第六条 国民は、木材の利用の促進に自ら努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する木材の利用の促進に関する施策に協力するよう努めるものとする。
第二章 公共建築物における木材の利用の促進に関する施策
(基本方針)
第七条 農林水産大臣及び国土交通大臣は、公共建築物における木材の利用の促進に関する基本方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならない。
2 基本方針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 公共建築物における木材の利用の促進の意義及び基本的方向
二 公共建築物における木材の利用の促進のための施策に関する基本的事項
三 国が整備する公共建築物における木材の利用の目標
四 基本方針に基づき各省各庁の長(財政法(昭和二十二年法律第三十四号)第二十条第二項に規定する各省各庁の長をいう。以下この条において同じ。)が定める公共建築物における木材の利用の促進のための計画に関する基本的事項
五 公共建築物の整備の用に供する木材の適切な供給の確保に関する基本的事項
六 その他公共建築物における木材の利用の促進に関する重要事項
3 基本方針は、公共建築物における木材の利用の状況、建築物における木材の利用に関する技術水準その他の事情を勘案して定めるものとする。
4 農林水産大臣及び国土交通大臣は、経済事情の変動その他情勢の推移により必要が生じたときは、基本方針を変更するものとする。
5 農林水産大臣及び国土交通大臣は、基本方針を定め、又はこれを変更しようとするときは、あらかじめ、各省各庁の長に協議しなければならない。
6 農林水産大臣及び国土交通大臣は、基本方針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表するとともに、各省各庁の長及び都道府県知事に通知しなければならない。
7 農林水産大臣及び国土交通大臣は、毎年一回、基本方針に基づく措置の実施の状況を公表しなければならない。
(都道府県方針)
第八条 都道府県知事は、基本方針に即して、当該都道府県の区域内の公共建築物における木材の利用の促進に関する方針(以下「都道府県方針」という。)を定めることができる。
2 都道府県方針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 当該都道府県の区域内の公共建築物における木材の利用の促進のための施策に関する基本的事項
二 当該都道府県が整備する公共建築物における木材の利用の目標
三 当該都道府県の区域内における公共建築物の整備の用に供する木材の適切な供給の確保に関する基本的事項
四 その他当該都道府県の区域内の公共建築物における木材の利用の促進に関し必要な事項
3 都道府県知事は、都道府県方針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表するよう努めるとともに、関係市町村長に通知しなければならない。
(市町村方針)
第九条 市町村は、都道府県方針に即して、当該市町村の区域内の公共建築物における木材の利用の促進に関する方針(以下この条において「市町村方針」という。)を定めることができる。
2 市町村方針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 当該市町村の区域内の公共建築物における木材の利用の促進のための施策に関する基本的事項
二 当該市町村が整備する公共建築物における木材の利用の目標
三 その他当該市町村の区域内の公共建築物における木材の利用の促進に関し必要な事項
3 市町村方針においては、前項各号に掲げる事項のほか、当該市町村の区域内における公共建築物の整備の用に供する木材の適切な供給の確保に関する基本的事項を定めることができる。
4 市町村は、市町村方針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表するよう努めなければならない。
(木材製造高度化計画の認定)
第十条 木材の製造を業として行う者は、木材製造の高度化に関する計画(以下「木材製造高度化計画」という。)を作成し、農林水産省令で定めるところにより、これを農林水産大臣に提出して、その木材製造高度化計画が適当である旨の認定を受けることができる。
2 木材製造高度化計画には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 木材製造の高度化の目標
二 木材製造の高度化の内容及び実施期間
三 公共建築物の整備の用に供する木材の製造の用に供する施設を整備しようとする場合にあっては、当該施設の種類及び規模
四 森林法(昭和二十六年法律第二百四十九号)第五条第一項の規定によりたてられた地域森林計画の対象となっている同項に規定する民有林(同法第二十五条又は第二十五条の二の規定により指定された保安林並びに同法第四十一条の規定により指定された保安施設地区の区域内及び海岸法(昭和三十一年法律第百一号)第三条の規定により指定された海岸保全区域内の森林(森林法第二条第一項に規定する森林をいう。第四項において同じ。)を除く。)において前号の施設を整備するために開発行為(森林法第十条の二第一項に規定する開発行為をいう。以下同じ。)をしようとする場合にあっては、当該施設の位置、配置及び構造
五 木材製造の高度化を実施するために必要な資金の額及びその調達方法
3 農林水産大臣は、第一項の認定の申請があった場合において、その木材製造高度化計画が基本方針に照らし適切なものであり、かつ、木材製造の高度化を確実に遂行するため適切なものであると認めるときは、その認定をするものとする。
4 農林水産大臣は、第二項第四号に掲げる事項が記載された木材製造高度化計画について第一項の認定をしようとするときは、第二項第三号及び第四号に掲げる事項について、同項第三号の施設の整備の用に供する森林の所在地を管轄する都道府県知事に協議し、その同意を得なければならない。この場合において、当該都道府県知事は、当該施設を整備するための開発行為が森林法第十条の二第二項各号のいずれにも該当しないと認めるときは、同意をするものとする。
5 都道府県知事は、前項の同意をしようとするときは、都道府県森林審議会及び関係市町村長の意見を聴かなければならない。
(木材製造高度化計画の変更等)
第十一条 前条第一項の認定を受けた者(以下「認定木材製造業者」という。)は、当該認定に係る木材製造高度化計画を変更しようとするときは、農林水産省令で定めるところにより、農林水産大臣の認定を受けなければならない。ただし、農林水産省令で定める軽微な変更については、この限りでない。
2 認定木材製造業者は、前項ただし書の農林水産省令で定める軽微な変更をしたときは、遅滞なく、その旨を農林水産大臣に届け出なければならない。
3 農林水産大臣は、認定木材製造業者が前条第一項の認定に係る木材製造高度化計画(第一項の規定による変更の認定又は前項の規定による変更の届出があったときは、その変更後のもの。以下「認定木材製造高度化計画」という。)に従って木材製造の高度化を行っていないと認めるときは、その認定を取り消すことができる。
4 前条第三項から第五項までの規定は、第一項の認定について準用する。
(林業・木材産業改善資金助成法の特例)
第十二条 林業・木材産業改善資金助成法(昭和五十一年法律第四十二号)第二条第一項の林業・木材産業改善資金であって、認定木材製造業者が認定木材製造高度化計画に従って木材製造の高度化を行うのに必要なものの償還期間(据置期間を含む。)は、同法第五条第一項の規定にかかわらず、十二年を超えない範囲内で政令で定める期間とする。
(森林法の特例)
第十三条 認定木材製造業者が認定木材製造高度化計画(第十条第二項第四号に掲げる事項が記載されたものに限る。)に従って同項第三号の施設を整備するため開発行為を行う場合には、森林法第十条の二第一項の許可があったものとみなす。
(国有施設の使用)
第十四条 国は、政令で定めるところにより、公共建築物の整備の用に供する木材の生産に関する試験研究を行う者に国有の試験研究施設を使用させる場合において、公共建築物における木材の利用の促進を図るため特に必要があると認めるときは、その使用の対価を時価よりも低く定めることができる。
(報告の徴収)
第十五条 農林水産大臣は、認定木材製造業者に対し、認定木材製造高度化計画の実施状況について報告を求めることができる。
(罰則)
第十六条 前条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、三十万円以下の罰金に処する。
2 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前項の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して同項の刑を科する。
第三章 公共建築物における木材の利用以外の木材の利用の促進に関する施策
(住宅における木材の利用)
第十七条 国及び地方公共団体は、木材が断熱性、調湿性等に優れ、紫外線を吸収する効果が高いこと、国民の木造住宅への志向が強いこと、木材の利用が地域経済の活性化に貢献するものであること等にかんがみ、木材を利用した住宅の建築等を促進するため、木造住宅を建築する者に対する情報の提供等の援助、木造住宅に関する展示会の開催その他のその需要の開拓のための支援その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
(公共施設に係る工作物における景観の向上及び癒しの醸成のための木材の利用)
第十八条 国及び地方公共団体は、木材を利用したガードレール、高速道路の遮音壁、公園の柵その他の公共施設に係る工作物を設置することが、その周囲における良好な景観の形成に資するとともに、利用者等を癒すものであることにかんがみ、それらの木材を利用した工作物の設置を促進するため、木材を利用したそれらの工作物を設置する者に対する技術的な助言、情報の提供等の援助その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
(木質バイオマスの製品利用)
第十九条 国及び地方公共団体は、バイオマス(動植物に由来する有機物である資源(原油、石油ガス、可燃性天然ガス及び石炭(以下「化石資源」という。)を除く。)をいう。)のうち木に由来するもの(以下「木質バイオマス」という。)について、パルプ、紙等の製品の原材料としての利用等従来から行われている利用の促進を図るほか、その用途の拡大及び多段階の利用(まず製品の原材料として利用し、再使用し、及び再生利用し、最終的にエネルギー源として利用することをいう。)を図ることにより製品の原材料として最大限利用することができるよう、木質バイオマスを化学的方法又は生物的作用を利用する方法等によって処理することによりプラスチックを製造する技術等の研究開発の推進その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
(木質バイオマスのエネルギー利用)
第二十条 国及び地方公共団体は、木質バイオマスを化石資源の代替エネルギーとして利用することが二酸化炭素の排出の抑制及び木の伐採又は間伐により発生する未利用の木質バイオマスの有効な利用に資すること等にかんがみ、木質バイオマスをエネルギー源として利用することを促進するため、公共施設等におけるその利用の促進、木質バイオマスのエネルギー源としての利用に係る情報の提供、技術等の研究開発の推進その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
(検討)
第二条 政府は、この法律の施行後五年を経過した場合において、この法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
農林水産大臣 赤松広隆
経済産業大臣 直嶋正行
国土交通大臣 前原誠司
内閣総理大臣 鳩山由紀夫