臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律
法令番号: 法律第83号
公布年月日: 平成21年7月17日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

現行の臓器移植法は、本人の書面による意思表示がある場合のみ脳死下での臓器移植を認めているが、施行から10年が経過し、日本の移植医療は諸外国と比べて後進的な状況となっている。臓器不足により、生体間移植の増加や渡航移植の増加など様々な問題が生じている。一方で、移植により通常の生活に戻れる可能性がある患者が、現行法の厳格な要件により命を落とす事態も発生している。そこで、本人の生前意思を尊重しつつ、本人が書面で拒否していない場合に家族の承諾で移植を可能とすることで、主要先進国と同等の要件に改めようとするものである。

参照した発言:
第166回国会 衆議院 厚生労働委員会 第32号

審議経過

第166回国会

衆議院
(平成19年6月20日)

第168回国会

衆議院
(平成19年11月28日)

第169回国会

衆議院
(平成20年2月22日)

第170回国会

衆議院
(平成20年11月7日)

第171回国会

衆議院
(平成21年3月4日)
(平成21年5月22日)
(平成21年5月27日)
(平成21年6月5日)
(平成21年6月9日)
(平成21年6月16日)
(平成21年6月18日)
参議院
(平成21年6月26日)
(平成21年6月30日)
(平成21年7月2日)
(平成21年7月6日)
(平成21年7月7日)
(平成21年7月9日)
(平成21年7月10日)
(平成21年7月13日)
臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律をここに公布する。
御名御璽
国事行為臨時代行名
平成二十一年七月十七日
内閣総理大臣 麻生太郎
法律第八十三号
臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律
臓器の移植に関する法律(平成九年法律第百四号)の一部を次のように改正する。
第六条第一項を次のように改める。
医師は、次の各号のいずれかに該当する場合には、移植術に使用されるための臓器を、死体(脳死した者の身体を含む。以下同じ。)から摘出することができる。
一 死亡した者が生存中に当該臓器を移植術に使用されるために提供する意思を書面により表示している場合であって、その旨の告知を受けた遺族が当該臓器の摘出を拒まないとき又は遺族がないとき。
二 死亡した者が生存中に当該臓器を移植術に使用されるために提供する意思を書面により表示している場合及び当該意思がないことを表示している場合以外の場合であって、遺族が当該臓器の摘出について書面により承諾しているとき。
第六条第二項中「その身体から移植術に使用されるための臓器が摘出されることとなる者であって」を削り、「もの」を「者」に改め、同条第三項を次のように改める。
3 臓器の摘出に係る前項の判定は、次の各号のいずれかに該当する場合に限り、行うことができる。
一 当該者が第一項第一号に規定する意思を書面により表示している場合であり、かつ、当該者が前項の判定に従う意思がないことを表示している場合以外の場合であって、その旨の告知を受けたその者の家族が当該判定を拒まないとき又は家族がないとき。
二 当該者が第一項第一号に規定する意思を書面により表示している場合及び当該意思がないことを表示している場合以外の場合であり、かつ、当該者が前項の判定に従う意思がないことを表示している場合以外の場合であって、その者の家族が当該判定を行うことを書面により承諾しているとき。
第六条の次に次の一条を加える。
(親族への優先提供の意思表示)
第六条の二 移植術に使用されるための臓器を死亡した後に提供する意思を書面により表示している者又は表示しようとする者は、その意思の表示に併せて、親族に対し当該臓器を優先的に提供する意思を書面により表示することができる。
第七条中「前条」を「第六条」に改める。
第十七条の次に次の一条を加える。
(移植医療に関する啓発等)
第十七条の二 国及び地方公共団体は、国民があらゆる機会を通じて移植医療に対する理解を深めることができるよう、移植術に使用されるための臓器を死亡した後に提供する意思の有無を運転免許証及び医療保険の被保険者証等に記載することができることとする等、移植医療に関する啓発及び知識の普及に必要な施策を講ずるものとする。
附則第四条の前の見出しを削り、同条を次のように改める。
第四条 削除
附則第五条の前に見出しとして「(経過措置)」を付する。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から起算して一年を経過した日から施行する。ただし、第六条の次に一条を加える改正規定及び第七条の改正規定並びに次項の規定は、公布の日から起算して六月を経過した日から施行する。
(経過措置)
2 前項ただし書に規定する日からこの法律の施行の日の前日までの間における臓器の移植に関する法律附則第四条第二項の規定の適用については、同項中「前条」とあるのは、「第六条」とする。
3 この法律の施行前にこの法律による改正前の臓器の移植に関する法律附則第四条第一項に規定する場合に該当していた場合の眼球又は腎臓の摘出、移植術に使用されなかった部分の眼球又は腎臓の処理並びに眼球又は腎臓の摘出及び摘出された眼球又は腎臓を使用した移植術に関する記録の作成、保存及び閲覧については、なお従前の例による。
4 この法律の施行前にした行為及び前項の規定によりなお従前の例によることとされる場合におけるこの法律の施行後にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
(検討)
5 政府は、虐待を受けた児童が死亡した場合に当該児童から臓器(臓器の移植に関する法律第五条に規定する臓器をいう。)が提供されることのないよう、移植医療に係る業務に従事する者がその業務に係る児童について虐待が行われた疑いがあるかどうかを確認し、及びその疑いがある場合に適切に対応するための方策に関し検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
厚生労働大臣 舛添要一
内閣総理大臣 麻生太郎