(被害者参加弁護士の選定の請求)
第五条 刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第三百十六条の三十四から第三百十六条の三十八までに規定する行為を弁護士に委託しようとする被害者参加人(同法第三百十六条の三十三第三項に規定する被害者参加人をいう。以下同じ。)であって、その資力(その者に属する現金、預金その他政令で定めるこれらに準ずる資産の合計額をいう。以下同じ。)から、手続への参加を許された刑事被告事件に係る犯罪行為により生じた負傷又は疾病の療養に要する費用その他の当該犯罪行為を原因として請求の日から三月以内に支出することとなると認められる費用の額(以下「療養費等の額」という。)を控除した額が基準額(標準的な三月間の必要生計費を勘案して一般に被害者参加弁護士(被害者参加人の委託を受けて同法第三百十六条の三十四から第三百十六条の三十八までに規定する行為を行う弁護士をいう。以下同じ。)の報酬及び費用を賄うに足りる額として政令で定める額をいう。以下同じ。)に満たないものは、当該被告事件の係属する裁判所に対し、被害者参加弁護士を選定することを請求することができる。
2 前項の規定による請求は、日本司法支援センター(総合法律支援法(平成十六年法律第七十四号)第十三条に規定する日本司法支援センターをいう。以下同じ。)を経由してしなければならない。この場合においては、被害者参加人は、次の各号に掲げる区分に従い、当該各号に定める書面を提出しなければならない。
一 その資力が基準額に満たない者 資力及びその内訳を申告する書面
二 前号に掲げる者以外の者 資力及び療養費等の額並びにこれらの内訳を申告する書面
3 日本司法支援センターは、第一項の規定による請求があったときは、裁判所に対し、これを通知するとともに、前項の規定により提出を受けた書面を送付しなければならない。
(被害者参加弁護士の候補の指名及び通知)
第六条 日本司法支援センターは、前条第一項の規定による請求があったときは、裁判所が選定する被害者参加弁護士の候補を指名し、裁判所に通知しなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、日本司法支援センターは、次条第一項各号のいずれかに該当することが明らかであると認めるときは、前項の規定による指名及び通知をしないことができる。この場合においては、日本司法支援センターは、裁判所にその旨を通知しなければならない。
3 日本司法支援センターは、第一項の規定による指名をするに当たっては、前条第一項の規定による請求をした者の意見を聴かなければならない。
(被害者参加弁護士の選定)
第七条 裁判所は、第五条第一項の規定による請求があったときは、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、当該被害者参加人のため被害者参加弁護士を選定するものとする。
二 請求をした者が第五条第一項に規定する者に該当しないとき。
三 請求をした者がその責めに帰すべき事由により被害者参加弁護士の選定を取り消された者であるとき。
2 裁判所は、前項の規定により被害者参加弁護士を選定する場合において、必要があるときは、日本司法支援センターに対し、被害者参加弁護士の候補を指名して通知するよう求めることができる。この場合においては、前条第一項及び第三項の規定を準用する。
(被害者参加弁護士の選定の効力)
第八条 裁判所による被害者参加弁護士の選定は、審級ごとにしなければならない。
2 被害者参加弁護士の選定は、弁論が併合された事件についてもその効力を有する。ただし、被害者参加人が手続への参加を許されていない事件については、この限りでない。
3 被害者参加弁護士の選定は、刑事訴訟法第三百十六条の三十三第三項の決定があったときは、その効力を失う。
4 裁判所により選定された被害者参加弁護士は、旅費、日当、宿泊料及び報酬を請求することができる。
5 前項の規定により被害者参加弁護士に支給すべき旅費、日当、宿泊料及び報酬の額については、刑事訴訟法第三十八条第二項の規定により弁護人に支給すべき旅費、日当、宿泊料及び報酬の例による。
(被害者参加弁護士の選定の取消し)
第九条 裁判所は、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、被害者参加弁護士の選定を取り消すことができる。
一 被害者参加人が自ら刑事訴訟法第三百十六条の三十四から第三百十六条の三十八までに規定する行為を他の弁護士に委託したことその他の事由により被害者参加弁護士にその職務を行わせる必要がなくなったとき。
二 被害者参加人と被害者参加弁護士との利益が相反する状況にあり被害者参加弁護士にその職務を継続させることが相当でないとき。
三 心身の故障その他の事由により、被害者参加弁護士が職務を行うことができず、又は職務を行うことが困難となったとき。
四 被害者参加弁護士がその任務に著しく反したことによりその職務を継続させることが相当でないとき。
五 被害者参加弁護士に対する暴行、脅迫その他の被害者参加人の責めに帰すべき事由により被害者参加弁護士にその職務を継続させることが相当でないとき。
2 裁判所は、前項第二号から第四号までに掲げる事由により被害者参加弁護士の選定を取り消したときは、更に被害者参加弁護士を選定するものとする。この場合においては、第七条第二項の規定を準用する。
(虚偽の申告書の提出に対する制裁)
第十条 被害者参加人が、裁判所の判断を誤らせる目的で、その資力又は療養費等の額について虚偽の記載のある第五条第二項各号に定める書面を提出したときは、十万円以下の過料に処する。
(費用の徴収)
第十一条 被害者参加人が、裁判所の判断を誤らせる目的で、その資力又は療養費等の額について虚偽の記載のある第五条第二項各号に定める書面を提出したことによりその判断を誤らせたときは、裁判所は、決定で、当該被害者参加人から、被害者参加弁護士に支給した旅費、日当、宿泊料及び報酬の全部又は一部を徴収することができる。
2 前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。この場合においては、即時抗告に関する刑事訴訟法の規定を準用する。
3 費用賠償の裁判の執行に関する刑事訴訟法の規定は、第一項の決定の執行について準用する。
(刑事訴訟法の準用)
第十二条 刑事訴訟法第四十三条第三項及び第四項の規定は被害者参加弁護士の選定及びその取消しについて、同条第三項及び第四項並びに同法第四十四条第一項の規定は前条第一項の決定について、それぞれ準用する。