民法の一部を改正する法律
法令番号: 法律第149号
公布年月日: 平成11年12月8日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

高齢社会への対応及び障害者福祉の充実の観点から、判断能力が不十分な者の保護を図るため、禁治産及び準禁治産の制度を後見及び保佐の制度に改め、新たに補助の制度を創設する。また、聴覚または言語機能に障害がある者が手話通訳等により公正証書遺言をすることができるよう遺言の方式を改める。具体的には、成年後見人等の取消権から日常生活行為を除外し、保佐人への取消権・代理権付与、軽度障害者向けの補助制度新設、複数または法人の成年後見人等選任を可能とする。さらに、成年後見人等による本人意思の尊重と心身状態への配慮義務、成年後見監督人に加え保佐・補助監督人制度の新設等を行う。

参照した発言:
第145回国会 衆議院 法務委員会 第19号

審議経過

第145回国会

衆議院
(平成11年6月11日)
(平成11年6月15日)
(平成11年7月2日)
(平成11年7月6日)
参議院
(平成11年8月5日)
(平成11年8月6日)

第146回国会

参議院
(平成11年11月16日)
(平成11年11月18日)
(平成11年11月19日)
(平成11年11月24日)
衆議院
(平成11年11月26日)
(平成11年12月1日)
参議院
(平成12年2月15日)
民法の一部を改正する法律をここに公布する。
御名御璽
平成十一年十二月八日
内閣総理大臣 小渕恵三
法律第百四十九号
民法の一部を改正する法律
民法(明治二十九年法律第八十九号)の一部を次のように改正する。
目次中「第六章 扶養」を
第五章の二
保佐及び補助
第一節
保佐
第二節
補助
第六章
扶養
に改める。
第七条中「心神喪失ノ」を「精神上ノ障害ニ因り事理ヲ弁識スル能力ヲ欠ク」に、「後見人、保佐人」を「未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人」に、「禁治産ノ宣告」を「後見開始ノ審判」に改める。
第八条を次のように改める。
第八条 後見開始ノ審判ヲ受ケタル者ハ成年被後見人トシテ之ニ成年後見人ヲ付ス
第九条中「禁治産者ノ行為」を「成年被後見人ノ法律行為」に改め、同条に次のただし書を加える。
但日用品ノ購入其他日常生活ニ関スル行為ニ付テハ此限ニ在ラズ
第十条中「禁治産ノ原因」を「第七条ニ定メタル原因」に、「第七条ニ掲ゲタル者」を「本人、配偶者、四親等内ノ親族、後見人(未成年後見人及ビ成年後見人ヲ謂フ以下同ジ)、後見監督人(未成年後見監督人及ビ成年後見監督人ヲ謂フ以下同ジ)又ハ検察官」に、「其宣告」を「後見開始ノ審判」に改める。
第十一条を次のように改める。
第十一条 精神上ノ障害ニ因リ事理ヲ弁識スル能力ガ著シク不十分ナル者ニ付テハ家庭裁判所ハ本人、配偶者、四親等内ノ親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人又ハ検察官ノ請求ニ因リ保佐開始ノ審判ヲ為スコトヲ得但第七条ニ定メタル原因アル者ニ付テハ此限ニ在ラズ
第十一条の次に次の一条を加える。
第十一条ノ二 保佐開始ノ審判ヲ受ケタル者ハ被保佐人トシテ之ニ保佐人ヲ付ス
第十二条第一項中「準禁治産者」を「被保佐人」に改め、同項に次のただし書を加える。
但第九条但書ニ定メタル行為ニ付テハ此限ニ在ラズ
第十二条第一項第三号中「又ハ重要ナル動産」を「其他重要ナル財産」に改め、同項第六号を次のように改める。
六 相続ノ承認若クハ放棄又ハ遺産ノ分割ヲ為スコト
第十二条第一項第七号中「負担附」を「負担付」に改め、同条第二項中「場合ニ依リ準禁治産者」を「第十一条本文ニ掲ゲタル者又ハ保佐人若クハ保佐監督人ノ請求ニ因リ被保佐人」に、「同意アル」を「同意ヲ得ル」に、「旨ヲ宣告スル」を「旨ノ審判ヲ為ス」に改め、同項に次のただし書を加える。
但第九条但書ニ定メタル行為ニ付テハ此限ニ在ラズ
第十二条第三項中「前二項ノ規定ニ反スル行為」を「保佐人ノ同意ヲ得ルコトヲ要スル行為ニシテ其同意又ハ之ニ代ハル許可ヲ得ズシテ為シタルモノ」に改め、同条第二項の次に次の一項を加える。
保佐人ノ同意ヲ得ルコトヲ要スル行為ニ付キ保佐人ガ被保佐人ノ利益ヲ害スル虞ナキニ拘ラズ同意ヲ為サザルトキハ家庭裁判所ハ被保佐人ノ請求ニ因リ保佐人ノ同意ニ代ハル許可ヲ与フルコトヲ得
第十三条を次のように改める。
第十三条 第十一条本文ニ定メタル原因止ミタルトキハ家庭裁判所ハ本人、配偶者、四親等内ノ親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人又ハ検察官ノ請求ニ因リ保佐開始ノ審判ヲ取消スコトヲ要ス
家庭裁判所ハ前項ニ掲ゲタル者ノ請求ニ因リ前条第二項ノ審判ノ全部又ハ一部ヲ取消スコトヲ得
第十四条から第十八条までを次のように改める。
第十四条 精神上ノ障害ニ因リ事理ヲ弁識スル能力ガ不十分ナル者ニ付テハ家庭裁判所ハ本人、配偶者、四親等内ノ親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又ハ検察官ノ請求ニ因リ補助開始ノ審判ヲ為スコトヲ得但第七条又ハ第十一条本文ニ定メタル原因アル者ニ付テハ此限ニ在ラズ
本人以外ノ者ノ請求ニ因リ補助開始ノ審判ヲ為スニハ本人ノ同意アルコトヲ要ス
補助開始ノ審判ハ第十六条第一項ノ審判又ハ第八百七十六条の九第一項ノ審判ト共ニ之ヲ為スコトヲ要ス
第十五条 補助開始ノ審判ヲ受ケタル者ハ被補助人トシテ之ニ補助人ヲ付ス
第十六条 家庭裁判所ハ第十四条第一項本文ニ掲ゲタル者又ハ補助人若クハ補助監督人ノ請求ニ因リ被補助人ガ特定ノ法律行為ヲ為スニハ其補助人ノ同意ヲ得ルコトヲ要スル旨ノ審判ヲ為スコトヲ得但其同意ヲ得ルコトヲ要スル行為ハ第十二条第一項ニ定メタル行為ノ一部ニ限ル
本人以外ノ者ノ請求ニ因リ前項ノ審判ヲ為スニハ本人ノ同意アルコトヲ要ス
補助人ノ同意ヲ得ルコトヲ要スル行為ニ付キ補助人ガ被補助人ノ利益ヲ害スル虞ナキニ拘ラズ同意ヲ為サザルトキハ家庭裁判所ハ被補助人ノ請求ニ因リ補助人ノ同意ニ代ハル許可ヲ与フルコトヲ得
補助人ノ同意ヲ得ルコトヲ要スル行為ニシテ其同意又ハ之ニ代ハル許可ヲ得ズシテ為シタルモノハ之ヲ取消スコトヲ得
第十七条 第十四条第一項本文ニ定メタル原因止ミタルトキハ家庭裁判所ハ本人、配偶者、四親等内ノ親族、未成年後見人、未成年後見監督人、補助人、補助監督人又ハ検察官ノ請求ニ因リ補助開始ノ審判ヲ取消スコトヲ要ス
家庭裁判所ハ前項ニ掲ゲタル者ノ請求ニ因リ前条第一項ノ審判ノ全部又ハ一部ヲ取消スコトヲ得
前条第一項ノ審判及ビ第八百七十六条の九第一項ノ審判ヲ総テ取消ス場合ニ於テハ家庭裁判所ハ補助開始ノ審判ヲ取消スコトヲ要ス
第十八条 後見開始ノ審判ヲ為ス場合ニ於テ本人ガ被保佐人又ハ被補助人ナルトキハ家庭裁判所ハ其本人ニ係ル保佐開始又ハ補助開始ノ審判ヲ取消スコトヲ要ス
前項ノ規定ハ保佐開始ノ審判ヲ為ス場合ニ於テ本人ガ成年被後見人若クハ被補助人ナルトキ又ハ補助開始ノ審判ヲ為ス場合ニ於テ本人ガ成年被後見人若クハ被保佐人ナルトキニ之ヲ準用ス
第十九条第一項中「無能力者ノ」を「制限能力者(未成年者、成年被後見人、被保佐人及ビ第十六条第一項ノ審判ヲ受ケタル被補助人ヲ謂フ以下同ジ)ノ」に、「其無能力者」を「其制限能力者」に、「一个月」を「一箇月」に、「若シ無能力者」を「若シ其制限能力者」に改め、同条第二項中「無能力者」を「制限能力者」に、「法定代理人」を「其法定代理人、保佐人又八補助人」に改め、同条第四項中「準禁治産者ニ」を「被保佐人又ハ第十六条第一項ノ審判ヲ受ケタル被補助人ニ」に、「保佐人ノ同意ヲ得テ其行為ヲ追認スベキ旨」を「其保佐人又ハ補助人ノ追認ヲ得ベキ旨」に、「準禁治産者ガ」を「其被保佐人又ハ被補助人ガ」に、「右ノ同意」を「右ノ追認」に改める。
第二十条中「無能力者」を「制限能力者」に、「用ヰタル」を「用ヒタル」に改める。
第九十八条中「禁治産者」を「成年被後見人」に改める。
第百十一条第一項第二号中「、禁治産又ハ破産」を「若クハ破産又ハ代理人ガ後見開始ノ審判ヲ受ケタルコト」に改める。
第百二十条中「取消シ」を「能力ノ制限ニ因リテ取消シ」に、「無能力者若クハ瑕疵アル意思表示ヲ為シタル者、其代理人又ハ承継人」を「制限能力者又ハ其代理人、承継人若クハ同意ヲ為スコトヲ得ル者」に改め、同条に次の一項を加える。
詐欺又ハ強迫ニ因リテ取消シ得ベキ行為ハ瑕疵アル意思表示ヲ為シタル者又ハ其代理人若クハ承継人ニ限リ之ヲ取消スコトヲ得
第百二十一条ただし書中「無能力者」を「制限能力者」に改める。
第百二十四条第二項中「禁治産者ガ能力ヲ回復シタル」を「成年被後見人ガ能力者ト為リタル」に改め、同条第三項中「法定代理人」の下に「又ハ制限能力者ノ保佐人若クハ補助人」を加える。
第百五十八条中「六个月」を「六箇月」に、「禁治産者」を「成年被後見人」に改める。
第百五十九条中「無能力者」を「未成年者又ハ成年被後見人」に、「六个月」を「六箇月」に改める。
第四百四十九条中「無能力」を「能力ノ制限」に改める。
第六百五十三条中「禁治産ノ宣告」を「後見開始ノ審判」に改める。
第六百七十九条第三号を次のように改める。
三 後見開始ノ審判ヲ受ケタルコト
第七百十三条中「心神喪失ノ」を「精神上ノ障害ニ因リ自己ノ行為ノ責任ヲ弁識スル能力ヲ欠ク状態ニ在ル」に、同条ただし書中「一時ノ心神喪失」を「一時其状態」に改める。
第七百三十八条中「禁治産者」を「成年被後見人」に、「後見人」を「成年後見人」に改める。
第七百七十八条中「禁治産者」を「成年被後見人」に、「禁治産の取消」を「後見開始の審判の取消し」に改める。
第七百八十条中「無能力者」を「未成年者又は成年被後見人」に改める。
第七百九十四条中「被後見人」の下に「(未成年被後見人及び成年被後見人をいう。以下同じ。)」を加える。
第八百十一条第五項中「後見人」を「未成年後見人」に改める。
第八百三十八条中「左の」を「次に掲げる」に改め、同条第二号中「禁治産の宣告」を「後見開始の審判」に改める。
第八百三十九条第一項中「後見人」を「未成年後見人」に改め、同項ただし書中「但し」を「ただし」に改め、同条第二項中「後見人」を「未成年後見人」に改める。
第八百四十条から第八百四十三条までを次のように改める。
第八百四十条 前条の規定によつて未成年後見人となるべき者がないときは、家庭裁判所は、未成年被後見人又はその親族その他の利害関係人の請求によつて、未成年後見人を選任する。未成年後見人が欠けたときも、同様である。
第八百四十一条 父若しくは母が親権若しくは管理権を辞し、又は親権を失つたことによつて未成年後見人を選任する必要が生じたときは、その父又は母は、遅滞なく未成年後見人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない。
第八百四十二条 未成年後見人は、一人でなければならない。
第八百四十三条 家庭裁判所は、後見開始の審判をするときは、職権で、成年後見人を選任する。
成年後見人が欠けたときは、家庭裁判所は、成年被後見人若しくはその親族その他の利害関係人の請求によつて、又は職権で、成年後見人を選任する。
成年後見人が選任されている場合においても、家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前項に掲げる者若しくは成年後見人の請求によつて、又は職権で、更に成年後見人を選任することができる。
成年後見人を選任するには、成年被後見人の心身の状態並びに生活及び財産の状況、成年後見人となる者の職業及び経歴並びに成年被後見人との利害関係の有無(成年後見人となる者が法人であるときは、その事業の種類及び内容並びにその法人及びその代表者と成年被後見人との利害関係の有無)、成年被後見人の意見その他一切の事情を考慮しなければならない。
第八百四十五条から第八百四十七条までを次のように改める。
第八百四十五条 後見人がその任務を辞したことによつて新たに後見人を選任する必要が生じたときは、その後見人は、遅滞なく新たな後見人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない。
第八百四十六条 後見人に不正な行為、著しい不行跡その他後見の任務に適しない事由があるときは、家庭裁判所は、後見監督人、被後見人若しくはその親族若しくは検察官の請求によつて、又は職権で、これを解任することができる。
第八百四十七条 次に掲げる者は、後見人となることができない。
一 未成年者
二 家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人
三 破産者
四 被後見人に対して訴訟をし、又はした者及びその配偶者並びに直系血族
五 行方の知れない者
第八百四十八条中「後見人」を「未成年後見人」に、「後見監督人」を「未成年後見監督人」に改める。
第八百四十九条中「後見監督人」を「未成年後見監督人」に、「被後見人の親族又は後見人」を「未成年被後見人、その親族若しくは未成年後見人」に改め、「請求によつて」の下に「、又は職権で」を加え、同条の次に次の一条を加える。
第八百四十九条の二 家庭裁判所は、必要があると認めるときは、成年被後見人、その親族若しくは成年後見人の請求によつて、又は職権で、成年後見監督人を選任することができる。
第八百五十二条中「及び」を「、第六百五十四条、第六百五十五条、第八百四十三条第四項、」に、「乃至第八百四十六条」を「、第八百四十六条、第八百四十七条、第八百五十九条の二、第八百五十九条の三、第八百六十一条第二項及び第八百六十二条」に、「これを」を「ついて」に改める。
第八百五十七条中「未成年者の後見人」を「未成年後見人」に、「乃至第八百二十三条」を「から第八百二十三条まで」に改め、同条ただし書中「但し」を「ただし」に、「未成年者」を「未成年被後見人」に、「後見監督人」を「未成年後見監督人」に改める。
第八百五十八条を次のように改める。
第八百五十八条 成年後見人は、成年被後見人の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務を行うに当たつては、成年被後見人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない。
第八百五十九条の次に次の二条を加える。
第八百五十九条の二 成年後見人が数人あるときは、家庭裁判所は、職権で、数人の成年後見人が、共同して又は事務を分掌して、その権限を行使すべきことを定めることができる。
家庭裁判所は、職権で、前項の規定による定めを取り消すことができる。
成年後見人が数人あるときは、第三者の意思表示は、その一人に対してすれば足りる。
第八百五十九条の三 成年後見人は、成年被後見人に代わつて、その居住の用に供する建物又はその敷地について、売却、賃貸、賃貸借の解除又は抵当権の設定その他これらに準ずる処分をするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。
第八百六十一条に次の一項を加える。
後見人が後見の事務を行うために必要な費用は、被後見人の財産の中から支弁する。
第八百六十三条第二項中「被後見人の親族」を「被後見人若しくはその親族」に改める。
第八百六十四条中「未成年者」を「未成年被後見人」に改め、同条ただし書中「但し」を「ただし」に改める。
第八百六十七条第一項中「後見人は、未成年者」を「未成年後見人は、未成年被後見人」に改める。
第八百六十八条中「後見人」を「未成年後見人」に改める。
第八百七十二条第一項中「未成年者」を「未成年被後見人」に、「後見人」を「未成年後見人」に改める。
第八百七十五条の次に次の章名及び節名を付する。
第五章の二 保佐及び補助
第一節 保佐
第八百七十六条を次のように改める。
第八百七十六条 保佐は、保佐開始の審判によつて開始する。
第八百七十六条の次に次の四条及び一節を加える。
第八百七十六条の二 家庭裁判所は、保佐開始の審判をするときは、職権で、保佐人を選任する。
第八百四十三条第二項から第四項まで及び第八百四十四条から第八百四十七条までの規定は、保佐人について準用する。
保佐人又はその代表する者と被保佐人との利益が相反する行為については、保佐人は、臨時保佐人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない。ただし、保佐監督人がある場合は、この限りでない。
第八百七十六条の三 家庭裁判所は、必要があると認めるときは、被保佐人、その親族若しくは保佐人の請求によつて、又は職権で、保佐監督人を選任することができる。
第六百四十四条、第六百五十四条、第六百五十五条、第八百四十三条第四項、第八百四十四条、第八百四十六条、第八百四十七条、第八百五十条、第八百五十一条、第八百五十九条の二、第八百五十九条の三、第八百六十一条第二項及び第八百六十二条の規定は、保佐監督人について準用する。この場合において、第八百五十一条第四号中「被後見人を代表する」とあるのは、「被保佐人を代表し、又は被保佐人がこれをすることに同意する」と読み替えるものとする。
第八百七十六条の四 家庭裁判所は、第十一条本文に掲げる者又は保佐人若しくは保佐監督人の請求によつて、被保佐人のために特定の法律行為について保佐人に代理権を付与する旨の審判をすることができる。
本人以外の者の請求によつて前項の審判をするには、本人の同意がなければならない。
家庭裁判所は、第一項に掲げる者の請求によつて、同項の審判の全部又は一部を取り消すことができる。
第八百七十六条の五 保佐人は、保佐の事務を行うに当たつては、被保佐人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない。
第六百四十四条、第八百五十九条の二、第八百五十九条の三、第八百六十一条第二項、第八百六十二条及び第八百六十三条の規定は保佐の事務について、第八百二十四条ただし書の規定は保佐人が前条第一項の代理権を付与する旨の審判に基づき被保佐人を代表する場合について準用する。
第六百五十四条、第六百五十五条、第八百七十条、第八百七十一条及び第八百七十三条の規定は保佐人の任務が終了した場合について、第八百三十二条の規定は保佐人又は保佐監督人と被保佐人との間において保佐に関して生じた債権について準用する。
第二節 補助
第八百七十六条の六 補助は、補助開始の審判によつて開始する。
第八百七十六条の七 家庭裁判所は、補助開始の審判をするときは、職権で、補助人を選任する。
第八百四十三条第二項から第四項まで及び第八百四十四条から第八百四十七条までの規定は、補助人について準用する。
補助人又はその代表する者と被補助人との利益が相反する行為については、補助人は、臨時補助人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない。ただし、補助監督人がある場合は、この限りでない。
第八百七十六条の八 家庭裁判所は、必要があると認めるときは、被補助人、その親族若しくは補助人の請求によつて、又は職権で、補助監督人を選任することができる。
第六百四十四条、第六百五十四条、第六百五十五条、第八百四十三条第四項、第八百四十四条、第八百四十六条、第八百四十七条、第八百五十条、第八百五十一条、第八百五十九条の二、第八百五十九条の三、第八百六十一条第二項及び第八百六十二条の規定は、補助監督人について準用する。この場合において、第八百五十一条第四号中「被後見人を代表する」とあるのは、「被補助人を代表し、又は被補助人がこれをすることに同意する」と読み替えるものとする。
第八百七十六条の九 家庭裁判所は、第十四条第一項本文に掲げる者又は補助人若しくは補助監督人の請求によつて、被補助人のために特定の法律行為について補助人に代理権を付与する旨の審判をすることができる。
第八百七十六条の四第二項及び第三項の規定は、前項の審判について準用する。
第八百七十六条の十 第六百四十四条、第八百五十九条の二、第八百五十九条の三、第八百六十一条第二項、第八百六十二条、第八百六十三条及び第八百七十六条の五第一項の規定は補助の事務について、第八百二十四条ただし書の規定は補助人が前条第一項の代理権を付与する旨の審判に基づき被補助人を代表する場合について準用する。
第六百五十四条、第六百五十五条、第八百七十条、第八百七十一条及び第八百七十三条の規定は補助人の任務が終了した場合について、第八百三十二条の規定は補助人又は補助監督人と被補助人との間において補助に関して生じた債権について準用する。
第九百十七条中「無能力者」を「未成年者又は成年被後見人」に改める。
第九百六十二条中「及び第十二条」を「、第十二条及び第十六条」に改める。
第九百六十九条中「左の」を「次の」に改め、同条第一号中「立会」を「立会い」に改め、同条第三号中「読み聞かせ」の下に「、又は閲覧させ」を加え、同条第四号中「おす」を「押す」に改め、同号ただし書中「但し」を「ただし」に、「附記し」を「付記し」に改め、同条第五号中「附記し」を「付記し」に、「おす」を「押す」に改め、同条の次に次の一条を加える。
第九百六十九条の二 口がきけない者が公正証書によつて遺言をする場合には、遺言者は、公証人及び証人の前で、遺言の趣旨を通訳人の通訳により申述し、又は自書して、前条第二号の口授に代えなければならない。この場合における同条第三号の規定の適用については、同号中「口述」とあるのは、「通訳人の通訳による申述」又は「自書」とする。
前条の遺言者又は証人が耳が聞こえない者である場合には、公証人は、同条第三号に規定する筆記した内容を通訳人の通訳により遺言者又は証人に伝えて、同号の読み聞かせに代えることができる。
公証人は、前二項に定める方式に従つて公正証書を作つたときは、その旨をその証書に付記しなければならない。
第九百七十二条第一項中「言語を発することができない」を「口がきけない」に改め、「住所を」の下に「通訳人の通訳により申述し、又は」を加え、同条第二項中「公証人は、遺言者が前項に定める方式を践んだ旨」を「第一項の場合において、遺言者が封紙に自書したときは、公証人は、その旨」に改め、「記載して、」の下に「第九百七十条第一項第四号に規定する」を加え、同条第一項の次に次の一項を加える。
前項の場合において、遺言者が通訳人の通訳により申述したときは、公証人は、その旨を封紙に記載しなければならない。
第九百七十三条第一項中「禁治産者が本心に復し」を「成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復し」に、「立会」を「立会い」に改め、同条第二項中「心神喪失の状況」を「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態」に、「附記し」を「付記し」に、「おさなければ」を「押さなければ」に、「但し」を「ただし」に改める。
第九百七十四条中「左に」を「次に」に改め、第二号を削り、第三号を第二号とし、第四号を第三号とする。
第九百七十六条第一項中「立会を以て」を「立会いをもつて」に改め、「読み聞かせ」の下に「、又は閲覧させ」を加え、「おさなければ」を「押さなければ」に改め、同条第二項中「前項」を「前三項」に改め、同条第一項の次に次の二項を加える。
口がきけない者が前項の規定によつて遺言をする場合には、遺言者は、証人の前で、遺言の趣旨を通訳人の通訳により申述して、同項の口授に代えなければならない。
第一項後段の遺言者又は他の証人が耳が聞こえない者である場合には、遺言の趣旨の口授又は申述を受けた者は、同項後段に規定する筆記した内容を通訳人の通訳によりその遺言者又は他の証人に伝えて、同項後段の読み聞かせに代えることができる。
第九百七十九条第二項中「前項」を「前二項」に、「おし、且つ」を「押し、かつ」に改め、同条第三項中「第九百七十六条第三項」を「第九百七十六条第五項」に、「これを」を「ついて」に改め、同条第一項の次に次の一項を加える。
口がきけない者が前項の規定によつて遺言をする場合には、遺言者は、通訳人の通訳によりこれをしなければならない。
第千九条中「無能力者」を「未成年者」に改める。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、平成十二年四月一日から施行する。ただし、第九百六十九条、第九百七十二条、第九百七十六条及び第九百七十九条の改正規定、第九百六十九条の次に一条を加える改正規定並びに次条の規定は、公布の日から起算して一月を経過した日から施行する。
(民法の一部改正に伴う経過措置の原則)
第二条 この法律による改正後の民法(次条において「新法」という。)の規定は、次条第三項の規定による場合を除き、当該改正規定の施行前に生じた事項にも適用する。ただし、改正前の民法(次条において「旧法」という。)の規定によって生じた効力を妨げない。
(禁治産及び準禁治産の宣告等に関する経過措置)
第三条 旧法の規定による禁治産の宣告は新法の規定による後見開始の審判と、当該禁治産の宣告を受けた禁治産者並びにその後見人及び後見監督人は当該後見開始の審判を受けた成年被後見人並びにその成年後見人及び成年後見監督人とみなす。
2 旧法の規定による心神耗弱を原因とする準禁治産の宣告は新法の規定による保佐開始の審判と、当該準禁治産の宣告を受けた準禁治産者及びその保佐人は当該保佐開始の審判を受けた被保佐人及びその保佐人とみなす。
3 前項に規定する準禁治産者以外の準禁治産者及びその保佐人に関する民法の規定の適用については、第八百四十六条、第九百七十四条及び第千九条の改正規定を除き、なお従前の例による。
4 旧法の規定による禁治産又は準禁治産の宣告の請求(この法律の施行前に当該請求に係る審判が確定したものを除く。)は、新法の規定による後見開始又は保佐開始の審判の請求とみなす。
法務大臣 臼井日出男
内閣総理大臣 小渕恵三