電気事業法の一部を改正する法律
法令番号: 法律第88号
公布年月日: 平成9年6月18日
法令の形式: 法律

改正対象法令

提案理由 (AIによる要約)

環境影響評価について、中央環境審議会の答申で法制化の方針が示され、発電所も対象とすることが決定された。発電所については過去20年間、通産省の省議決定に基づく環境影響評価で世界最高水準の環境保全対策を実現してきた実績がある。電気事業審議会の報告では、この実績を踏まえた仕組みを継続すべきとの提言がなされた。そこで、発電所を環境影響評価法案の対象としつつ、一般的手続は同法で、発電所固有の手続は電気事業法で規定することとし、本法改正を提案するものである。

参照した発言:
第140回国会 衆議院 商工委員会 第9号

審議経過

第140回国会

衆議院
(平成9年4月11日)
(平成9年4月16日)
(平成9年5月7日)
(平成9年5月8日)
参議院
(平成9年5月15日)
(平成9年5月29日)
(平成9年6月10日)
(平成9年6月11日)
電気事業法の一部を改正する法律をここに公布する。
御名御璽
平成九年六月十八日
内閣総理大臣 橋本龍太郎
法律第八十八号
電気事業法の一部を改正する法律
電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)の一部を次のように改正する。
目次中「第二款 自主的な保安(第四十二条―第四十六条)」を
第二款
自主的な保安(第四十二条―第四十六条)
第二款の二
環境影響評価に関する特例(第四十六条の二―第四十六条の二の二)
に改める。
第一条中「あわせて公害の防止」を「及び環境の保全」に改める。
第三章第二節第二款の次に次の一款を加える。
第二款の二 環境影響評価に関する特例
(事業用電気工作物に係る環境影響評価)
第四十六条の二 事業用電気工作物の設置又は変更の工事であつて環境影響評価法(平成九年法律第八十一号)第二条第二項に規定する第一種事業又は同条第三項に規定する第二種事業に該当するものに係る同条第一項に規定する環境影響評価(以下「環境影響評価」という。)その他の手続については、同法及びこの款の定めるところによる。
(簡易な方法による環境影響評価)
第四十六条の三 事業用電気工作物の設置又は変更の工事であつて環境影響評価法第二条第三項に規定する第二種事業に該当するものをしようとする者は、同法第四条第一項前段の書面には、同項前段に規定する事項のほか、その工事について通商産業省令で定める簡易な方法により環境影響評価を行つた結果を、通商産業省令で定めるところにより、記載しなければならない。
(方法書の作成)
第四十六条の四 事業用電気工作物の設置又は変更の工事であつて環境影響評価法第二条第四項に規定する対象事業に該当するもの(以下「特定対象事業」という。)をしようとする者(以下「特定事業者」という。)は、同法第五条第一項の環境影響評価方法書(以下「方法書」という。)には、同項第四号の規定にかかわらず、特定対象事業に係る環境影響評価の項目並びに調査、予測及び評価の手法を記載しなければならない。
(方法書の届出)
第四十六条の五 特定事業者は、環境影響評価法第六条第一項の規定による送付をするときは、併せて方法書を通商産業大臣に届け出なければならない。
(方法書についての意見の概要等の届出等)
第四十六条の六 特定事業者は、環境影響評価法第九条の書類には、同条に規定する事項のほか、同法第八条第一項の意見についての事業者の見解を記載しなければならない。
2 特定事業者は、環境影響評価法第九条の規定による送付をするときは、併せて同条の書類を通商産業大臣に届け出なければならない。
(方法書についての都道府県知事の意見)
第四十六条の七 環境影響評価法第十条第一項の都道府県知事の意見であつて特定対象事業に係るものについては、同項の規定にかかわらず、事業者に替えて通商産業大臣に対し、同項の意見として述べるものとする。
2 都道府県知事は、環境影響評価法第十条第一項の意見であつて特定対象事業に係るものについては、同条第三項の規定によるほか、前条第一項の規定により同法第九条の書類に記載された事業者の見解に配意しなければならない。
(方法書についての勧告)
第四十六条の八 通商産業大臣は、第四十六条の五の規定による方法書の届出があつた場合において、環境影響評価法第十条第一項の都道府県知事の意見を勘案するとともに、第四十六条の六第二項の規定による届出に係る同法第八条第一項の意見の概要及び当該意見についての事業者の見解に配意して、その方法書を審査し、その方法書に係る特定対象事業につき、環境の保全についての適正な配慮がなされることを確保するため必要があると認めるときは、第四十六条の五の規定による届出を受理した日から通商産業省令で定める期間内に限り、特定事業者に対し、その特定対象事業に係る環境影響評価の項目並びに調査、予測及び評価の手法について必要な勧告をすることができる。
2 通商産業大臣は、前項の規定による勧告をする必要がないと認めたときは、遅滞なく、その旨を特定事業者に通知しなければならない。
3 通商産業大臣は、第一項の規定による勧告又は前項の規定による通知を行うときは、併せて特定事業者に対し、環境影響評価法第十条第一項の書面の写しを送付しなければならない。
(環境影響評価の項目等の選定)
第四十六条の九 特定事業者は、前条第一項の規定による勧告があつたときは、環境影響評価法第十一条第一項の規定による検討において、同項の規定により同法第十条第一項の意見を勘案するとともに同法第八条第一項の意見に配意するほか、その勧告を踏まえて、当該検討を加えなければならない。
(準備書の作成)
第四十六条の十 特定事業者は、環境影響評価法第十四条第一項の環境影響評価準備書(以下「準備書」という。)には、同項各号に掲げる事項のほか、第四十六条の八第一項の規定による勧告の内容を記載しなければならない。
(準備書の届出)
第四十六条の十一 特定事業者は、環境影響評価法第十五条の規定による送付をするときは、併せて準備書及びこれを要約した書類を通商産業大臣に届け出なければならない。
(準備書についての意見の概要等の届出)
第四十六条の十二 特定事業者は、環境影響評価法第十九条の規定による送付をするときは、併せて同条の書類を通商産業大臣に届け出なければならない。
(準備書についての関係都道府県知事の意見)
第四十六条の十三 環境影響評価法第二十条第一項の関係都道府県知事の意見であつて特定対象事業に係るものについては、同項の規定にかかわらず、事業者に替えて通商産業大臣に対し、同項の意見として述べるものとする。
(準備書についての勧告)
第四十六条の十四 通商産業大臣は、第四十六条の十一の規定による準備書の届出があつた場合において、環境影響評価法第二十条第一項の関係都道府県知事の意見を勘案するとともに、第四十六条の十二の規定による届出に係る同法第十八条第一項の意見の概要及び当該意見についての事業者の見解に配意して、その準備書を審査し、その準備書に係る特定対象事業につき、環境の保全についての適正な配慮がなされることを確保するため必要があると認めるときは、第四十六条の十一の規定による届出を受理した日から通商産業省令で定める期間内に限り、特定事業者に対し、その特定対象事業に係る環境影響評価について必要な勧告をすることができる。
2 通商産業大臣は、前項の規定による審査をするときは、環境庁長官の環境の保全の見地からの意見を聴かなければならない。
3 通商産業大臣は、第一項の規定による勧告をする必要がないと認めたときは、遅滞なく、その旨を特定事業者に通知しなければならない。
4 通商産業大臣は、第一項の規定による勧告又は前項の規定による通知を行うときは、併せて特定事業者に対し、環境影響評価法第二十条第一項の書面の写しを送付しなければならない。
(評価書の作成)
第四十六条の十五 特定事業者は、前条第一項の規定による勧告があつたときは、環境影響評価法第二十一条第一項の規定による検討において、同項の規定により同法第二十条第一項の意見を勘案するとともに同法第十八条第一項の意見に配意するほか、その勧告を踏まえて、当該検討を加えなければならない。
2 特定事業者は、環境影響評価法第二十一条第二項の環境影響評価書(以下「評価書」という。)には、同項各号に掲げる事項のほか、第四十六条の八第一項及び前条第一項の規定による勧告の内容を記載しなければならない。
(評価書の届出)
第四十六条の十六 特定事業者は、環境影響評価法第二十一条第二項の規定により評価書を作成したときは、その評価書を通商産業大臣に届け出なければならない。次条第一項の規定による命令があつた場合において、これを変更したときも、同様とする。
(変更命令)
第四十六条の十七 通商産業大臣は、前条の規定による届出があつた評価書に係る特定対象事業につき、環境の保全についての適正な配慮がなされることを確保するため特に必要があり、かつ、適切であると認めるときは、同条の規定による届出を受理した日から通商産業省令で定める期間内に限り、特定事業者に対し、相当の期限を定め、その届出に係る評価書を変更すべきことを命ずることができる。
2 通商産業大臣は、前項の規定による命令をする必要がないと認めたときは、遅滞なく、その旨を特定事業者に通知しなければならない。
(評価書の送付)
第四十六条の十八 通商産業大臣は、前条第二項の規定による通知をしたときは、その通知に係る評価書の写しを環境庁長官に送付しなければならない。
2 特定事業者は、前条第二項の規定による通知を受けたときは、速やかに、環境影響評価法第十五条に規定する関係都道府県知事及び関係市町村長に対し、その通知に係る評価書、これを要約した書類及び前条第一項の規定による命令の内容を記載した書類を送付しなければならない。
(評価書の公告及び縦覧)
第四十六条の十九 特定事業者に対する環境影響評価法第二十七条の適用については、同条中「第二十五条第三項の規定による送付又は通知をした」とあるのは「電気事業法第四十六条の十七第二項の規定による通知を受けた」と、「評価書を」とあるのは「当該通知に係る評価書を」と、「評価書、要約書及び第二十四条の書面」とあるのは「当該通知に係る評価書、これを要約した書類及び同条第一項の規定による命令の内容を記載した書類」とする。
(環境の保全の配慮)
第四十六条の二十 特定事業者は、環境影響評価法第三十八条第一項の規定により、環境の保全についての適正な配慮をしてその特定対象事業を実施するとともに、第四十六条の十七第二項の規定による通知に係る評価書に記載されているところにより、環境の保全についての適正な配慮をしてその特定対象事業に係る事業用電気工作物を維持し、及び運用しなければならない。
(環境影響評価法の適用に当たつての技術的読替え等)
第四十六条の二十一 この款に定めるもののほか、特定事業者に対する環境影響評価法の規定の適用に当たつての技術的読替えその他特定事業者に対する同法の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。
(環境影響評価法の適用除外)
第四十六条の二十二 特定事業者の特定対象事業については、環境影響評価法第二十二条から第二十六条まで及び第三十三条から第三十七条までの規定は、適用しない。
第四十七条第三項に次の二号を加える。
四 特定対象事業に係るものにあつては、その特定対象事業に係る第四十六条の十七第二項の規定による通知に係る評価書に従つているものであること。
五 環境影響評価法第二条第三項に規定する第二種事業(特定対象事業を除く。)に係るものにあつては、同法第四条第三項第二号(同条第四項及び同法第二十九条第二項において準用する場合を含む。)の措置がとられたものであること。
第百二十二条第二号中「第三十五条」の下に「又は第四十六条の十七第一項」を加える。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、環境影響評価法の施行の日から施行する。
(経過措置)
第二条 環境影響評価法附則第三条第一項又は第三項の規定により、同法第二章から第七章までの規定の適用を受けないこととされた第一種事業又は第二種事業に係る事業用電気工作物については、この法律による改正後の電気事業法(以下「新法」という。)第三章第二節第二款の二の規定は、適用しない。
2 この法律による改正前の電気事業法(以下「旧法」という。)第四十七条第一項の規定による認可であってこの法律の施行前にされたものに係る工事の計画の変更の認可であって、環境影響評価法附則第三条第一項又は第三項の規定により、同法第二章から第七章までの規定の適用を受けないこととされた第一種事業又は第二種事業に該当する工事の計画の変更に係るものについての新法第四十七条第三項の規定の適用については、同項中「次の各号」とあるのは、「次の各号(第四号及び第五号を除く。)」とする。
3 旧法第四十八条第一項の規定による届出であってこの法律の施行前にされたもの及び当該届出に係る工事の計画の変更の届出であって環境影響評価法附則第三条第一項又は第三項の規定により同法第二章から第七章までの規定の適用を受けないこととされた第一種事業又は第二種事業に該当する工事の計画の変更に係るものについての新法第四十八条第三項及び第四項の規定の適用については、同条第三項及び第四項中「前条第三項各号」とあるのは、「前条第三項各号(第四号及び第五号を除く。)」とする。
(政令への委任)
第三条 前条に定めるもののほか、この法律の施行に関して必要な経過措置は、政令で定める。
(検討)
第四条 政府は、この法律の施行後十年を経過した場合において、この法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
通商産業大臣 佐藤信二
内閣総理大臣 橋本龍太郎