(防除実施基準)
第七条の二 農林水産大臣は、薬剤による防除が自然環境及び生活環境の保全に適切な考慮を払いつつ安全かつ適正に行われることを確保するため、森林病害虫等の薬剤による防除の実施に関する基準(以下「防除実施基準」という。)を定めなければならない。
2 防除実施基準においては、特別防除(森林病害虫等を駆除し、又はそのまん延を防止するため航空機を利用して行う薬剤による防除をいう。以下同じ。)を行うことのできる森林に関する基準、特別防除を行う森林の周囲の自然環境及び生活環境の保全に関する事項、特別防除により農業、漁業その他の事業に被害を及ぼさないようにするために必要な措置に関する事項その他森林病害虫等の薬剤による防除に関する基本的な事項を定めるものとする。
3 前項に規定する特別防除を行うことのできる森林に関する基準は、当該森林の存する地域の自然環境及び生活環境に対する特別防除による影響に配慮し、国内希少野生動植物種(絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(平成四年法律第七十五号)第四条第三項に規定する国内希少野生動植物種をいう。)、天然記念物(文化財保護法(昭和二十五年法律第二百十四号)第六十九条第一項の規定により指定された天然記念物をいう。)等の貴重な野生動植物の生存する森林その他の森林で特別防除を行うことが適当でないと認められるものが明確になるように定められなければならない。
4 農林水産大臣は、防除実施基準を定め、又はこれを変更しようとするときは、関係行政機関の長に協議するとともに、中央森林審議会及び関係都道府県知事の意見を聴かなければならない。
5 農林水産大臣は、防除実施基準を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表するとともに、関係行政機関の長及び関係都道府県知事に通知しなければならない。
(都道府県防除実施基準)
第七条の三 都道府県知事は、前条第五項の規定による通知を受けた場合において、当該都道府県の区域内にある民有林(森林法第二条第三項に規定する民有林をいう。以下同じ。)において薬剤による防除が自然環境及び生活環境の保全に適切な考慮を払いつつ安全かつ適正に行われることを確保するため必要があると認めるときは、防除実施基準に従つて、森林病害虫等の薬剤による防除の実施に関する基準(以下「都道府県防除実施基準」という。)を定め、又はこれを変更しなければならない。
2 都道府県防除実施基準においては、防除実施基準に定める特別防除を行うことのできる森林に関する基準に適合する森林に関する事項、特別防除を行う森林の周囲の自然環境及び生活環境の保全に関する事項、特別防除により農業、漁業その他の事業に被害を及ぼさないようにするために必要な措置に関する事項その他森林病害虫等の薬剤による防除に関する事項を定めるものとする。
3 都道府県知事は、都道府県防除実施基準を定め、又はこれを変更しようとするときは、都道府県森林審議会及び関係市町村長の意見を聴くとともに、農林水産大臣に協議しなければならない。
4 都道府県知事は、都道府県防除実施基準を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表するとともに、関係市町村長に通知しなければならない。
(薬剤の安全かつ適正な使用等)
第七条の四 特別防除を行う者は、防除実施基準及び都道府県防除実施基準に従つて、自然環境及び生活環境の保全に配慮し、薬剤の安全かつ適正な使用を確保するとともに、農業、漁業その他の事業に被害を及ぼさないように必要な措置を講ずるものとし、地域住民等関係者の理解と協力が得られることとなるように努めるものとする。
(高度公益機能森林及び被害拡大防止森林の区域の指定)
第七条の五 都道府県知事は、特定原因病害虫により当該都道府県の区域内にある特定森林に発生している被害の状況からみて、松くい虫等を駆除し、又はそのまん延を防止することにより、森林資源として重要な特定森林を保護し、及びその有する機能を確保するため特に必要があると認めるときは、松くい虫等の種類ごとに、民有林である特定森林について高度公益機能森林及び被害拡大防止森林の区域を指定しなければならない。
2 高度公益機能森林及び被害拡大防止森林の区域の指定又は変更については、第七条の三第三項及び第四項の規定を準用する。
(樹種転換促進指針)
第七条の六 都道府県知事は、前条第一項の規定により高度公益機能森林及び被害拡大防止森林の区域を指定した場合において、高度公益機能森林を保護し、及びその有する機能を確保するため必要があると認めるときは、当該都道府県の区域内にある民有林である特定森林において樹種転換を促進するための指針(以下「樹種転換促進指針」という。)を定めなければならない。
2 樹種転換促進指針においては、樹種転換に係る施業に関する事項、森林組合等による樹種転換の促進に関する事項その他樹種転換の実施の指針となるべき事項を定めるものとする。
3 都道府県知事は、樹種転換促進指針を定め、又はこれを変更しようとするときは、都道府県森林審議会及び関係市町村長の意見を聴かなければならない。
4 都道府県知事は、樹種転換促進指針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表するとともに、関係市町村長に通知しなければならない。
(森林組合等に対する樹種転換に関する助言等)
第七条の七 都道府県知事は、高度公益機能森林を保護し、及びその有する機能を確保するため必要があると認めるときは、樹種転換促進指針に即して、森林組合又は森林整備法人(分収林特別措置法(昭和三十三年法律第五十七号)第九条第二号に掲げる森林整備法人をいう。)に対し、これらの者が行う樹種転換に関する規程の設定その他の樹種転換の促進に資する措置に関し必要な助言、指導及び勧告をすることができる。
(樹種転換を特に促進すべき特定森林の公表)
第七条の八 都道府県知事は、高度公益機能森林を保護し、及びその有する機能を確保するため必要があると認めるときは、樹種転換促進指針に即して、高度公益機能森林又は被害拡大防止森林につき、樹種転換を実施することを特に促進すべき特定森林を選定し、これを公表することができる。この場合において、都道府県知事は、当該特定森林を所有し、又は管理する者に対し、施業その他必要な事項に関し助言及び指導を行うよう努めるものとする。
(地区防除指針)
第七条の九 都道府県知事は、第七条の五第一項の規定により高度公益機能森林及び被害拡大防止森林の区域を指定した場合において、高度公益機能森林及び被害拡大防止森林以外の特定森林と併せて松くい虫等の被害対策を行う必要があると認めるときは、当該都道府県の区域内にある民有林である特定森林であつて次条第一項の地区実施計画の対象となるものにつき、当該特定森林を所有し、又は管理する者が行うべき松くい虫等の駆除又はそのまん延の防止のため必要な措置(以下「自主防除措置」という。)に関する指針(以下「地区防除指針」という。)を定めなければならない。
2 地区防除指針においては、高度公益機能森林及び被害拡大防止森林以外の特定森林であつて、その位置及び規模からみて、当該特定森林を所有し、又は管理する者が自主防除措置を的確に行わないとすれば、特定原因病害虫により当該特定森林に発生している被害が高度公益機能森林に拡大するおそれがあると認められるものに関する基準その他次条第一項の地区実施計画の指針となるべき事項(第七条の三第二項の規定により都道府県防除実施基準において定めることとされている事項及び第七条の六第二項の規定により樹種転換促進指針において定めることとされている事項を除く。)を定めるものとする。
3 地区防除指針については、第七条の六第三項及び第四項の規定を準用する。
(地区実施計画)
第七条の十 前条第二項の基準に適合する特定森林がその区域内にある市町村は、同条第三項において準用する第七条の六第四項の規定による通知を受けた場合において、松くい虫等を駆除し、又はそのまん延を防止するため必要があると認めるときは、地区防除指針(薬剤による防除に関する事項にあつては都道府県防除実施基準、樹種転換に関する事項にあつては樹種転換促進指針)に即して、その区域内にある当該基準に適合する特定森林につき、自主防除措置の実施に関する計画(以下「地区実施計画」という。)を定め、又はこれを変更しなければならない。
2 地区実施計画においては、その対象となる特定森林の区域及び当該特定森林についての自主防除措置の実施に関し必要な事項を定めるものとする。
3 市町村は、地区実施計画を定め、又はこれを変更しようとするときは、その対象となる特定森林を所有する者の意見を聴くとともに、都道府県知事に協議しなければならない。
4 市町村は、地区実施計画を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
(地区実施計画の遵守)
第七条の十一 地区実施計画の対象となる特定森林を所有し、又は管理する者は、地区実施計画に即して自主防除措置を実施するよう努めなければならない。
2 市町村長は、前項に規定する者が自主防除措置を実施していないと認める場合において、地区実施計画の達成上必要があるときは、その者に対し、遵守すべき事項を示して、これに従うべき旨を勧告することができる。
(国の機関及び関係地方公共団体の連携)
第七条の十二 国有林(森林法第二条第三項に規定する国有林をいう。)である特定森林を所管する国の機関及び関係地方公共団体は、森林資源として重要な特定森林を保護し、及びその有する機能を確保するため、相互に連携を図り、松くい虫等の被害対策が調和を保ちつつ行われるよう努めなければならない。