(趣旨)
第一条 この法律は、夫婦、親子その他の親族関係から生ずる扶養の義務(以下「扶養義務」という。)の準拠法に関し必要な事項を定めるものとする。
(準拠法)
第二条 扶養義務は、扶養権利者の常居所地法によつて定める。ただし、扶養権利者の常居所地法によればその者が扶養義務者から扶養を受けることができないときは、当事者の共通本国法によつて定める。
2 前項の規定により適用すべき法律によれば扶養権利者が扶養義務者から扶養を受けることができないときは、扶養義務は、日本の法律によつて定める。
(傍系親族間及び姻族間の扶養義務の準拠法の特例)
第三条 傍系親族間又は姻族間の扶養義務は、扶養義務者が、当事者の共通本国法によれば扶養権利者に対して扶養する義務を負わないことを理由として異議を述べたときは、前条の規定にかかわらず、その法律によつて定める。当事者の共通本国法がない場合において、扶養義務者が、その者の常居所地法によれば扶養権利者に対して扶養をする義務を負わないことを理由として異議を述べたときも、同様とする。
2 前項の規定は、子に対する扶養義務の準拠法に関する条約(昭和五十二年条約第八号)が適用される場合には、適用しない。
(離婚をした当事者間等の扶養義務の準拠法についての特則)
第四条 離婚をした当事者間の扶養義務は、第二条の規定にかかわらず、その離婚について適用された法律によつて定める。
2 前項の規定は、法律上の別居をした夫婦間及び婚姻が無効とされ、又は取り消された当事者間の扶養義務について準用する。
(公的機関の費用償還を受ける権利の準拠法)
第五条 公的機関が扶養権利者に対して行つた給付について扶養義務者からその費用の償還を受ける権利は、その機関が従う法律による。
(扶養義務の準拠法の適用範囲)
第六条 扶養権利者のためにその者の扶養を受ける権利を行使することができる者の範囲及びその行使をすることができる期間並びに前条の扶養義務者の義務の限度は、扶養義務の準拠法による。
(常居所地法及び本国法)
第七条 当事者が、地域的に、若しくは人的に法律を異にする国に常居所を有し、又はその国の国籍を有する場合には、第二条第一項及び第三条第一項の規定の適用については、その国の規則に従い指定される法律を、そのような規則がないときは当事者に最も密接な関係がある法律を、当事者の常居所地法又は本国法とする。
(公序)
第八条 外国法によるべき場合において、その規定の適用が明らかに公の秩序に反するときは、これを適用しない。
2 扶養の程度は、適用すべき外国の法律に別段の定めがある場合においても、扶養権利者の需要及び扶養義務者の資力を考慮して定める。