(この法律の目的)
第一条 この法律は、昭和二十八年における冷害(冷害による病虫害を含む。以下同じ。)によつて損失を受けた農業者に対する資金の融通を円滑にする措置を講じて、その経営の安定に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「経営資金」とは、農業協同組合(副業資金のうち薪炭原木購入資金及び炭がま構築資金については農業協同組合又は森林組合)又は金融機関が、昭和二十八年八月から十二月までの間において収穫される農作物又は繭(以下「農作物等」という。)の冷害による減収が当該農作物等の平年における収穫量の百分の三十以上である旨の市町村長の認定を受けた農業者(以下「被害農家」という。)に対し、種苗、肥料、飼料等の購入資金、副業資金、家畜維持資金その他農業経営を維持するため必要な資金として、昭和二十九年五月三十一日までに貸し付けるものであつて左の各号に該当するものをいう。
一 当該被害農家に対する貸付金額が、市町村長の認定する冷害による損失額から冷害を受けた農作物等に係る農業災害補償法(昭和二十二年法律第百八十五号)による支払共済金の額若しくはその見込額を差し引いた額又は十五万円(北海道にあつては二十万円)のいずれか低い額(牛又は馬を所有する被害農家に貸し付けられる場合にあつては、その額に更に三万円を加えた額)の範囲内のものであること。
二 償還期間が、五年の範囲内において政令で定める期間以内のものであること。
三 利率が、市町村又はその耕地面積が十町歩以上である開拓地区でその区域内における農作物の冷害による減収が平年における収穫量の百分の二十をこえるもの又は農作物の冷害による減収が平年における収穫量の百分の三十をこえる耕地の合計面積がその区域内における全耕地面積の百分の十若しくは百町歩をこえるものの区域内において農業を営む被害農家に貸し付けられる場合は年三分五厘以内、その他の被害農家に貸し付けられる場合は年六分五厘(当該被害農家が開拓者である場合には、年五分五厘)以内のものであること。
(国庫補助)
第三条 政府は、都道府県に対し、予算の範囲内で左に掲げる経費の全部又は一部を補助する。
一 都道府県が、農業協同組合その他の金融機関との契約により、当該金融機関に対しその貸し付けた経営資金(農業協同組合が農業協同組合連合会又は農林中央金庫から借り入れた資金をもつて貸し付けたものを除く。第三号、第五号及び第七号において同じ。)につき利子補給を行う場合における当該利子補給に要する経費
二 都道府県が、農業協同組合連合会又は農林中央金庫との契約により、当該農業協同組合連合会又は農林中央金庫が経営資金を貸し付けようとする農業協同組合又は森林組合に対し当該資金に充てるために貸し付けた資金につき、当該農業協同組合連合会又は農林中央金庫に対し利子補給を行う場合に於ける当該利子補給に要する経費
三 市町村が、農業協同組合その他の金融機関との契約により、当該金融機関に対しその貸し付けた経営資金につき利子補給を行うのに要する経費の全部又は一部を都道府県が補助する場合における当該補助に要する経費
四 市町村が、農業協同組合連合会又は農林中央金庫との契約により、当該農業協同組合連合会又は農林中央金庫が、経営資金を貸し付けようとする農業協同組合又は森林組合に対し当該資金に充てるために貸し付けた資金につき、当該農業協同組合連合会又は農林中央金庫に対し利子補給を行うのに要する経費の全部又は一部を都道府県が補助する場合における当該補助に要する経費
五 都道府県が、農業協同組合その他の金融機関との契約により、当該金融機関が経営資金を貸し付けたことによつて受けた損失をこれに対し補償する場合における当該損失補償に要する経費
六 都道府県が、農業協同組合連合会又は農林中央金庫との契約により、当該農業協同組合連合会又は農林中央金庫が、経営資金を貸し付けようとする農業協同組合又は森林組合に対し当該資金に充てるための資金を貸し付けたことによつて受けた損失を、当該農業協同組合連合会又は農林中央金庫に対し補償する場合における当該損失補償に要する経費
七 市町村が、農業協同組合その他の金融機関との契約により、当該金融機関が経営資金を貸し付けたことによつて受けた損失をこれに対し補償するのに要する経費の全部又は一部を都道府県が補助する場合における当該補助に要する経費
八 市町村が、農業協同組合連合会又は農林中央金庫との契約により、当該農業協同組合連合会又は農林中央金庫が、経営資金を貸し付けようとする農業協同組合又は森林組合に対し当該資金に充てるための資金を貸し付けたことによつて受けた損失を、当該農業協同組合連合会又は農林中央金庫に対し補償するのに要する経費の全部又は一部を都道府県が補助する場合における当該補助に要する経費
2 前項第五号から第八号までの契約には、左の各号の事項を含まなければならない。
一 当該契約の当事者である農業協同組合、農業協同組合連合会、農林中央金庫その他の金融機関(以下「融資機関」という。)は、当該契約により損失補償を受けた後も、善良な管理者の注意をもつて当該融資に係る債権の回収に努めなければならないこと。
二 融資機関は、当該契約により損失補償を受けた後に当該融資に係る債権の回収によつて得た金額のうちから、債権行使のために必要とした費用を控除し、残額があるときは、これを当該融資について損失補償を受けない損失のてん補に充当し、なお残額があるときは、当該契約により都道府県又は市町村から受けた損失補償の金額に達するまでの金額を当該都道府県又は当該市町村に納付しなければならないこと。
3 第一項第五号から第八号までの損失は、融資元本の償還期限到来後三月を経過してなお元本又は利子(政令で定める遅延利子を含む。)の全部又は一部が回収されなかつた場合におけるその回収されなかつた金額とする。
第四条 前条第一項の規定により政府が都道府県に対し補助する場合における当該補助に係る同項各号の経営資金の総額は、二百二十億円を限度とする。
2 前条第一項の規定により政府が都道府県に対して交付する補助金は、同項第一号から第四号までの経費については、当該利子補給額の二分の一に相当する額又は当該利子補給の対象となつた貸付金の総額につき年二分五厘の割合で計算した額のいずれか低い額の範囲内とし、同項第五号から第八号までの経費については、当該損失補償額の二分の一に相当する額又は当該損失補償の対象となつた貸付金の総額の百分の二十に相当する額のいずれか低い額の範囲内とする。但し、同項第一号から第四号までの経費につき、貸付の利率が第二条の規定により年五分五厘以内に定められている資金に係るものにあつては当該利子補給額の二分の一又は当該利子補給の対象となつた貸付金の総額につき年三分の割合で計算した額のいずれか低い額の範囲内とし、貸付の利率が同条の規定により年三分五厘以内に定められている資金に係るものにあつては当該利子補給額から当該利子補給の対象となつた貸付金の総額につき年二分五厘の割合で計算した額を控除した額又は当該利子補給の対象となつた貸付金の総額につき年五分五厘の割合で計算した額のいずれか低い額の範囲内とする。
(政府への納付金)
第五条 第三条第一項の規定により補助金の交付を受けた都道府県は、融資機関から同条第二項第二号の契約事項による納付金を受けたときは、その一部を政府から補助を受けた割合に応じて政府に納付しなければならない。
2 第三条第一項の規定により補助金の交付を受けた都道府県は、当該都道府県から補助金の交付を受けた市町村が融資機関から同条第二項第二号の契約事項によつて納付金を受けたときは、その全部又は一部を当該市町村が都道府県から補助を受けた割合に応じて当該市町村から納付させ、その納付金の全部又は一部を政府から補助を受けた割合に応じて政府に納付しなければならない。
(補助金の打切又は返還)
第六条 政府は、都道府県若しくはその補助を受けた市町村がこの法律若しくはこの法律に基く命令に違反したとき、又は当該都道府県若しくは市町村と第三条第一項各号の契約を結んだ融資機関が同条第二項各号の契約事項に違反したときは、当該都道府県に対し交付すべき補助金の全部若しくは一部を交付せず、又は既に交付した補助金の全部若しくは一部の返還を命ずることができる。