(目的)
第一条 この法律は、昭和二十八年六月下旬から七月までの間に生じた水害(以下「水害」という。)によつて損失を受けた農林漁業者及び農林漁業者の組織する法人に対し、農林漁業経営、農林漁業施設の災害復旧等に必要な資金の融通を円滑にする措置を講じてその経営の安定に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「被害農業者」とは水害によりその栽培する農作物の減収がその平年における収穫量の百分の三十以上である旨、水害によりその耕地若しくはその生産に直結する家屋その他政令で定める施設が流失し、埋没した等のため著しい被害を被つた旨又はその所有する家畜若しくは家きんが流失し、へい死した等のため著しい被害を被つた旨の市町村長の認定を受けた農業者をいい、「被害林業者」とは水害によりその生産する薪炭その他政令で定める林産物が流失した等のため著しい被害を被つた旨又はその所有する炭がまその他政令で定める施設が流失し、埋没した等のため著しい被害を被つた旨の市町村長の認定を受けた林業者をいい、「被害漁業者」とは水害によりその生産する魚類、貝類及び政令で定める水産物が流失し、埋没し、腐敗した等のため著しい被害を被つた旨又はその所有する漁船、漁網その他政令で定める施設が流失し、損壊した等のため著しい被害を被つた旨の市町村長の認定を受けた漁業者をいう。
2 この法律において「被害組合」とは、農業協同組合、農業協同組合連合会、土地改良区、土地改良区連合、森林組合、森林組合連合会又は水産業協同組合であつて水害によりその所有し又は管理する施設、在庫品等につき著しい被害を受けた者をいう。
3 この法律において「経営資金」とは、農業協同組合、森林組合、漁業協同組合(以下「組合」と総称する。)又は金融機関が被害農業者、被害林業者又は被害漁業者(以下「被害農林漁業者」と総称する。)に対し、種苗、肥料、薬剤、薪炭原木、稚魚、稚貝等の購入資金その他農林漁業経営に必要な資金(農林漁業用施設の復旧資金を除く。)で昭和二十九年三月三十一日までに貸し付けるものであつて左の各号に該当するものをいう。
一 市町村長が認定する損失額を基準として政令で定めるところにより算出される額又は十五万円のいずれか低い額の範囲内のものであること。
二 償還期限が政令の定めるところにより五年以内のものであること。
三 利率が政令で指定する地域(以下「指定地域」という。)における被害農林漁業者に貸し付けられる場合は年三分五厘以内、開拓地における農業経営に必要な資金として貸し付けられる場合は年五分五厘以内、その他の場合は年六分五厘以内のものであること。
4 この法律において「施設復旧資金」とは、左の各号に掲げるものをいう。
一 組合又は金融機関(農林漁業金融公庫を除く。以下同じ。)が被害農林漁業者に対し、農林漁業用施設であつて政令で定めるものの災害復旧に必要な資金(水害を原因とする地すべりによつて危険状態が発生し都道府県知事がその旨を告示した地域内の農林漁業者の生産に直結する家屋の移転又はこれに代るべきものの建築に必要な資金を含む。)として、一千万円の範囲内において、償還期限五年以内、利率年六分五厘以内(指定地域における被害農林漁業者に貸し付けられる場合は年三分五厘以内)及び貸付を受けた者が当該災害復旧につき必要な資金を農林漁業金融公庫から借り入れた場合は返済することを条件として、昭和二十九年三月三十一日までに貸し付けるもの
二 農業協同組合連合会、森林組合連合会、漁業協同組合連合会(以下「連合会」と総称する。)又は金融機関が被害組合に対し、その所有する農林漁業金融公庫法(昭和二十七年法律第三百五十五号)第十八条第一項第七号に掲げる施設であつて水害によつて被害を被つたものの災害復旧に必要な資金として、一千万円の範囲内において、償還期限五年以内、利率年六分五厘以内及び貸付を受けた者が当該災害復旧につき必要な資金を農林漁業金融公庫から借り入れた場合は返済することを条件として、昭和二十九年三月三十一日までに貸し付けるもの
三 農林中央金庫その他の金融機関が被害農林漁業者又は被害組合に対し、その所有又は管理する農地、牧野、林道又は漁港であつて水害によつて被害を受けたものの災害復旧に必要な資金で政令で定めるものを、農林漁業金融公庫から借り入れるまでの間のつなぎ資金として、一千万円の範囲内において、償還期限二年以内、利率年六分五厘以内の条件で昭和二十九年三月三十一日までに貸し付けるもの
5 この法律において「事業資金」とは、連合会又は金融機関が、被害組合に対し、水害により被害を受けたために必要となつた事業運営資金として、一千万円の範囲内において、償還期限五年以内及び利率年六分五厘以内の条件で昭和二十九年三月三十一日までに貸し付けるものをいう。
(国庫補助)
第三条 政府は、都道府県に対し、予算の範囲内で左の各号に掲げる経費の全部又は一部を補助する。
一 都道府県が、農業協同組合、漁業協同組合その他の金融機関との契約により、当該金融機関が被害農林漁業者に対し貸し付けた経営資金又は施設復旧資金(農業協同組合又は漁業協同組合が農業協同組合連合会、漁業協同組合連合会又は農林中央金庫その他の金融機関から借り入れた資金をもつて貸し付けたものを除く。第三号、第五号及び第七号において同じ。)につき利子補給を行う場合における当該利子補給に要する経費
二 都道府県が、連合会又は農林中央金庫その他の金融機関との契約により、当該連合会又は当該金融機関が、被害農林漁業者に経営資金又は施設復旧資金を貸し付けようとする組合に対し当該資金に充てるために貸し付けた資金につき、当該連合会又は当該金融機関に対し利子補給を行う場合における当該利子補給に要する経費
三 市町村が、農業協同組合、漁業協同組合その他の金融機関との契約により、当該金融機関が被害農林漁業者に対し貸し付けた経営資金又は施設復旧資金につき利子補給を行うのに要する経費の全部又は一部を都道府県が補助する場合における当該補助に要する経費
四 市町村が、連合会又は農林中央金庫その他の金融機関との契約により、当該連合会又は当該金融機関が、被害農林漁業者に経営資金又は施設復旧資金を貸し付けようとする組合に対し当該資金に充てるために貸し付けた資金につき、当該連合会又は当該金融機関に対し利子補給を行うのに要する経費の全部又は一部を都道府県が補助する場合における当該補助に要する経費
五 都道府県が、農業協同組合、漁業協同組合その他の金融機関との契約により、当該金融機関が被害農林漁業者に対し経営資金又は施設復旧資金を貸し付けることによつて受けた損失をこれに対し補償する場合における当該損失補償に要する経費
六 都道府県が、連合会又は農林中央金庫その他の金融機関との契約により、当該連合会又は当該金融機関が、被害農林漁業者に経費資金又は施設復旧資金を貸し付けようとする組合に対し当該資金に充てるための資金を貸し付けたことによつて受けた損失を、当該連合会又は当該金融機関に対し補償する場合における当該損失補償に要する経費
七 市町村が、農業協同組合、漁業協同組合その他の金融機関との契約により当該金融機関が被害農林漁業者に対し経費資金又は施設復旧資金を貸し付けたことによつて受けた損失をこれに対し補償するのに要する経費の全部又は一部を都道府県が補助する場合における当該補助に要する経費
八 市町村が、連合会又は農林中央金庫その他の金融機関との契約により、当該連合会又は当該金融機関が、被害農林漁業者に経営資金又は施設復旧資金を貸し付けようとする組合に対し当該資金に充てるための資金を貸し付けたことによつて受けた損失を、当該連合会又は当該金融機関に対して補償するのに要する経費の全部又は一部を都道府県が補助する場合における当該補助に要する経費
九 都道府県が、農業協同組合連合会、漁業協同組合連合会、農林中央金庫その他の金融機関との契約により、当該金融機関が被害組合に対し貸し付けた施設復旧資金又は事業資金につき利子補給を行う場合における当該利子補給に要する経費
十 市町村が、農業協同組合連合会、漁業協同組合連合会、農林中央金庫その他の金融機関との契約により、当該金融機関が被害組合に対し貸し付けた施設復旧資金又は事業資金につき利子補給を行うのに要する経費の全部又は一部を都道府県が補助する場合における当該補助に要する経費
十一 都道府県が、農業協同組合連合会、漁業協同組合連合会、農林中央金庫その他の金融機関との契約により、当該金融機関が被害組合に対し施設復旧資金又は事業資金を貸し付けたことによつて受けた損失をこれに対し補償する場合における当該損失補償に要する経費
十二 市町村が、農業協同組合連合会、漁業協同組合連合会、農林中央金庫その他の金融機関との契約により、当該金融機関が、被害組合に対し施設復旧資金又は事業資金を貸し付けたことによつて受けた損失をこれに対し補償するのに要する経費の全部又は一部を都道府県が補助する場合における当該補助に要する経費
十三 都道府県が、農林中央金庫その他の金融機関との契約により、当該金融機関が農林大臣の指定する農業共済組合連合会に対し貸し付けた建物共済資金(農業災害補償法(昭和二十二年法律第百八十五号)に基く建物共済に係る保険金の支払のため必要な資金で償還期限五年以内及び利率年六分五厘以内の条件で貸し付けられるものをいう。以下同じ。)につき利子補給を行う場合における当該利子補給に要する経費
十四 都道府県が、農林中央金庫その他の金融機関との契約により、当該金融機関が前号の農業共済組合連合会に対し建物共済資金を貸し付けたことによつて受けた損失を当該金融機関に対し補償する場合における当該損失補償に要する経費
2 前項第五号から第八号まで、第十一号、第十二号及び第十四号の契約には、左の各号に掲げる事項を含まなければならない。
一 当該契約の当事者である農業協同組合、農業協同組合連合会、森林組合連合会、漁業協同組合、漁業協同組合連合会又は農林中央金庫その他の金融機関(以下「融資機関」と総称する。)は、当該契約により損失補償を受けた後も善良な管理者の注意をもつて当該融資に係る債権の回収に努めなければならないこと。
二 融資機関は、当該契約により損失補償を受けた後に当該融資に係る債券の回収によつて得た金額のうちから、債権行使のために必要とした費用を控除し、残額があるときは、これを当該融資について損失補償を受けない損失のてん補に充当し、なお残額があるときは、当該契約により都道府県又は市町村から受けた損失補償の金額に達するまでの金額を当該都道府県又は当該市町村に納付しなければならないこと。
3 第一項第五号から第八号まで、第十一号、第十二号及び第十四号の損失は、融資元本の償還期限到来後政令で定める期間を経過してなお元本又は利子(政令で定める遅延利子を含む。)の全部又は一部が回収されなかつた場合におけるその回収されなかつた金額とする。
第四条 前条第一項の規定により政府が都道府県に対し補助する場合における当該補助に係る同項各号の資金の総額は、百億円を限度とする。
2 前条第一項の規定により政府が都道府県に対して交付する補助金は、同項第一号から第四号まで、第九号、第十号及び第十三号の経費については当該利子補給額の二分の一に相当する額又は当該利子補給の対象となつた貸付金の総額につき年二分五厘の割合で計算した額のいずれか低い額の範囲内とし、同項第五号から第八号まで、第十一号、第十二号及び第十四号の経費については当該損失補償額の二分の一に相当する額又は当該損失補償の対象となつた貸付金の総額の百分の二十に相当する額のいずれか低い額の範囲内とする。但し、同項第一号から第四号までの経費につき、経営資金の貸付の利率が第二条第三項の規定により年五分五厘以内に定められている資金に係るものにあつては当該利子補給額の二分の一又は当該利子補給の対象となつた貸付金の総額につき年三分の割合で計算した額のいずれか低い額の範囲内とし、経営資金又は施設復旧資金の貸付の利率が同条第三項又は第四項第一号の規定により年三分五厘以内に定められている資金に係るものにあつては当該利子補給額から当該利子補給の対象となつた貸付金の総額につき年二分五厘の割合で計算した額を控除した額又は当該利子補給の対象となつた貸付金の総額につき年五分五厘の割合で計算した額のいずれか低い額の範囲内とする。
(政府への納付金)
第五条 第三条第一項の規定により補助金の交付を受けた都道府県は、融資機関から同条第二項第二号の契約事項による納付金を受けたときは、その一部を政府から補助を受けた割合に応じて政府に納付しなければならない。
2 第三条第一項の規定により補助金の交付を受けた都道府県は、当該都道府県から補助金の交付を受けた市町村が融資機関から同条第二項第二号の契約事項によつて納付金を受けたときは、その全部又は一部を当該市町村が都道府県から補助を受けた割合に応じて当該市町村から納付させ、その納付金の全部又は一部を政府から補助を受けた割合に応じて政府に納付しなければならない。
(補助金の打切又は返還)
第六条 政府は、都道府県若しくはその補助を受けた市町村がこの法律又はこの法律に基く命令に違反したとき、又は当該都道府県若しくは市町村と第三条第一項の契約を結んだ融資機関が同条第二項各号の契約事項に違反したときは、当該都道府県に対し交付すべき補助金の全部若しくは一部を交付せず、又は既に交付した補助金の全部若しくは一部の返還を命ずることができる。