第一條 自作農創設特別措置法第四十四條の登記については、この勅令の定めるところによる。
第三條 自作農創設特別措置法第三條、第十五條、第三十條第一項、第三十三條第二項、第三十六條若しくは第三十七條の規定により不動產に関する権利を買收した場合における権利の取得の登記、同法第十六條(同法第二十九條第二項において準用する場合を含む。)若しくは第四十一條の規定により不動產を賣り渡した場合における所有権移轉の登記、同法第二十三條の規定により土地を交換した場合における所有権移轉の登記又は同法第二十八條第一項(同法第四十一條第三項において準用する場合を含む。)の規定により土地を買い取つた場合における所有権移轉の登記は、地方長官が、職権でこれを嘱託することができる。
第四條 前條の登記の嘱託書は、附錄樣式によりこれを調製しなければならない。
第五條第二項又は第十五條第二項の規定による記載をする場合には、前項の嘱託書に同項の規定により設ける欄の外予備欄を設けなければならない。
第一項の嘱託書に登記事項を記載したときは、各欄に縱線を引いて余白と分界しなければならない。
第五條 自作農創設特別措置法第三條、第十五條、第三十條第一項、第三十三條第二項、第三十六條又は第三十七條の規定により不動產に関する権利を買收した場合における権利の取得の登記を嘱託する場合には、嘱託書の登記原因及びその日附欄に登記原因として自作農創設特別措置法第何條の規定により買收した旨を記載し、買收の当時当該権利を有した者が登記名義人と同一人でないときは、嘱託書の登記名義人の表示欄に登記名義人の表示の外当該権利を有した者の氏名又は名称及び住所又は事務所を記載しなければならない。
前項の登記を嘱託する場合において、当該不動產の登記用紙に所有権又は所有権以外の権利に関する登記があるときは当該登記の抹消につき登記すべき事項を、当該不動產につきその取得の当時旣登記の賃借権、永小作権、地上権若しくは地役権があり、又はこれらの権利の上に旣登記の先取特権、質権若しくは抵当権があつて自作農創設特別措置法第十二條第二項又は第三項(同法第十五條第二項において準用する場合を含む。)の規定によりこれらの権利が設定されたものとみなされたときは当該権利の設定につき登記すべき事項を嘱託書の予備欄に登記簿における從前の権利に関する登記の順序に從い、記載しなければならない。
第六條 前條の登記の嘱託書には、買收令書の謄本及び自作農創設特別措置法第九條第一項(同法第十五條第二項、第三十三條第四項、第三十四條、第三十六條第三項及び第三十七條第二項において準用する場合を含む。)の規定による交付又は公吿のあつたことを証する書面を添附しなければならない。
前項の嘱託書には、登記義務者の承諾書及び登記義務者の権利に関する登記済証を添附することを要しない。
第七條 第五條の登記を嘱託する場合において必要があるときは、地方長官は、登記名義人又は相続人に代わり不動產の表示若しくは登記名義人の表示の変更又は相続に因る所有権移轉の登記を嘱託することができる。
前項の登記については、不動產登記法第四十六條ノ二、第五十條第三項、第六十條ノ二及び第六十三條ノ三の規定を準用する。
第一項の規定により不動產の表示の変更の登記を嘱託する場合には、その嘱託書にその不動產の所有権以外の権利に関する登記名義人の承諾書又はこれに対抗することを得べき裁判の謄本を添附することを要しない。
第八條 同一の登記所の管轄內に在る二箇以上の不動產につき第五條の登記を嘱託する場合には、登記原因又は登記の目的が同一でなくても、土地、建物又は立木の別に同一の嘱託書で、その登記を嘱託することができる。
第九條 第五條の登記の嘱託については、不動產登記法第二十五條第二項の規定にかかわらず、同法第四十九條第六号の規定を準用しない。
第十條 登記官吏は、第五條の登記の嘱託書を受理したときは、第二條第一号、第二号又は第三号に揭げる綴込帳に受附番号の順序に從い、これを編綴しなければならない。
前項の規定により嘱託書が編綴されたときは、当該綴込帳は、これを登記簿の一部とみなし、その嘱託書により登記の嘱託のあつた登記事項及び当該嘱託書の予備欄に記載された事項については、編綴の時にその登記があつたものとみなし、その登記の前後は、嘱託書の記載の順序によるものとする。
登記官吏は、第一項の規定により嘱託書を編綴したときは、嘱託書の登記簿の册数及び登記番号欄に当該不動產の登記用紙を編綴した登記簿の册数及び登記番号を、嘱託書の順位番号欄に当該登記簿における登記の順序を追つて新しい順位番号を記載しなければならない。
第十一條 前條第二項の規定により第五條第二項の登記の抹消につき登記すべき事項の登記があつたものとみなされたときは、登記官吏は、登記簿における抹消すべき登記を朱抹しなければならない。
第十二條 第十條第二項の規定により登記があつたものとみなされた不動產に関して新登記の申請、嘱託(第十五條の嘱託を除く。)又は不動產登記法第百條ノ二第一項の規定による通知があつた場合には、登記官吏は、第十條第二項の規定により登記があつたものとみなされた登記事項で抹消に係らないもの及びその順位番号を登記簿の相当区事項欄及び順位番号欄に記載した後新登記をしなければならない。不動產登記法第九條の規定により登記簿及びその附属書類又は登記簿の謄本及びその附属書類若しくはその謄本を移送する場合も同樣とする。
登記官吏は、前項の規定により登記簿に記載したときは、第十條第一項の規定により編綴された当該嘱託書の備考欄にその旨及び年月日を記載し、押印しなければならない。
登記官吏は、前項の規定により備考欄に記載をしたときは、第十條第二項の規定により登記があつたものとみなされた登記事項で抹消に係らないもの及びその順位番号を朱抹しなければならない。
登記官吏は、第一項の規定により登記簿の事項欄に記載したときは、その登記の末尾に綴込帳第何册第何丁に基いて記載した旨及びその年月日を記載し、押印しなければならない。
第十三條 自作農創設特別措置法第三十條第一項の規定により買收した未登記の土地につきその所有権の登記を嘱託する場合には、その嘱託書に同項の規定により買收した旨を記載しなければならない。
登記官吏は、前項の登記の嘱託に因り不動產登記法第五十條第二項の記載をしたときは、その記載の末尾に自作農創設特別措置法第三十條第一項の規定により買收した旨を記載しなければならない。
第十四條 地方長官は、必要があると認めるときは、自作農創設特別措置法第三十條第一項の規定により買收した土地で第十條第二項の規定によりその所有権の取得の登記があつたものとみなされたもの又は前條の登記の嘱託に因り所有権の登記があつたものの登記用紙の閉鎖を申し出ることができる。
前項の申出があつたときは、登記官吏は、当該登記用紙を閉鎖しなければならない。
第十五條 自作農創設特別措置法第十六條(同法第二十九條第二項において準用する場合を含む。)又は第四十一條の規定により不動產を賣り渡した場合における所有権移轉の登記を嘱託する場合には、その嘱託書の登記原因及びその日附欄に登記原因として自作農創設特別措置法第何條の規定により賣り渡した旨を記載しなければならない。
前項の登記を嘱託する場合において自作農創設特別措置法第二十二條第一項(同法第二十九條第二項において準用する場合を含む。)の規定により消滅し、又は混同に因り消滅した旣登記の権利があるときは、当該登記の抹消につき登記すべき事項を嘱託書の予備欄に登記簿における從前の権利に関する登記の順序に從い、記載しなければならない。
第十六條 前條の登記の嘱託書には、登記原因を証する書面として賣渡通知書の謄本を添附しなければならない。
前項の嘱託書には、登記義務者の権利に関する登記済証を添附することを要しない。
第十七條 自作農創設特別措置法第十六條(同法第二十九條第二項において準用する場合を含む。)又は第四十一條の規定により不動產を賣り渡した場合における先取特権の保存の登記は、当該不動產の賣渡に因る所有権移轉の登記の嘱託書と同一の嘱託書でこれを嘱託することができる。
前項の規定により先取特権の保存の登記を嘱託する場合には、第六條第二項の規定を準用する。
第十八條 第十五條及び前條第一項の登記の嘱託については、第八條、第十條及び第十一條の規定を準用する。
この場合において、第十條第一項中「第一号、第二号又は第三号」とあるのは、「第四号、第五号又は第六号」と、第十一條中「第五條第二項」とあるのは、「第十五條第二項」と読み替えるものとする。
前項において準用する第十條第三項の規定により前條第一項の規定による先取特権の保存の登記につき新しい順位番号を記載するには、登記簿(第十條第二項の規定により登記簿の一部とみなされたものを含む。)における登記及び第十五條の登記の嘱託書の予備欄に記載された登記事項の順序を追つてしなければならない。
第十九條 登記官吏は、前條第一項において準用する第十條第一項の規定により嘱託書を編綴したときは、同條第二項の規定により登記があつたものとみなされた登記事項で抹消に係らないもの及びその順位番号を遅滯なく登記簿の相当区事項欄及び順位番号欄に記載しなければならない。
前項の場合には、第十二條第二項乃至第四項の規定を準用する。
第二十條 自作農創設特別措置法第二十三條の規定による交換に因る土地の所有権移轉の登記については、第五條第一項及び第七條乃至第九條の規定を準用する。
第二十一條 前條の登記を嘱託する場合には、交換のあつたことを証する書面の謄本を以てその嘱託書に添附すべき登記原因を証する書面とすることができる。
前項の嘱託書には、登記義務者の承諾書、登記義務者の権利に関する登記済証及び登記原因につき第三者の許可、同意又は承諾のあつたことを証する書面を添附することを要しない。
第二十二條 自作農創設特別措置法第二十三條の規定による交換に因り小作地の所有者が取得した農地につき所有権移轉の登記を嘱託する場合において当該小作地の上に旣登記の先取特権、質権又は抵当権があるときは、その嘱託書の備考欄にその小作地に関する当該旣登記の権利を表示しなければならない。
第二十三條 前條の登記の嘱託に因り所有権移轉の登記をした場合において当該小作地の上に旣登記の先取特権、質権又は抵当権があつて自作農創設特別措置法第二十四條第二項の規定により当該権利が小作地の所有者の取得した農地の上にあるものとされたときは、登記官吏は、第二十四條第二項に規定する場合を除いて、当該農地の登記用紙中相当区事項欄にその権利に関する登記を記載し、その末尾に当該権利が同法第二十四條第二項の規定により小作地の所有者が取得した農地の上にあるものとされたので登記何号順位何番から登記を記載した旨並びに嘱託書受附の年月日及び受附番号を記載し、押印しなければならない。
登記官吏は、前項の登記をしたときは、当該小作地の登記用紙中相当区事項欄に自作農創設特別措置登記令第二十三條第一項の規定により当該権利に関する登記を登記何号順位何番に記載した旨並びに嘱託書受附の年月日及び受附番号を記載し、押印しなければならない。
登記官吏は、前項の手続をしたときは、当該権利に関する登記を朱抹しなければならない。
第二十四條 第二十二條の登記を嘱託する場合において当該小作地が他の登記所の管轄に属しその小作地の上に旣登記の先取特権、質権又は抵当権があるときは、その登記の嘱託書に当該小作地の登記簿の謄本を添附しなければならない。
前項の登記の嘱託により所有権移轉の登記をした場合において当該小作地の上に旣登記の先取特権、質権又は抵当権があつて自作農創設特別措置法第二十四條第二項の規定により当該権利が小作地の所有者の取得した農地の上にあるものとされたときは、登記官吏は、前項の規定により添附された登記簿の謄本により小作地の所有者が取得した農地の登記用紙中相当区事項欄に当該権利に関する登記を記載し、その末尾に当該小作地を表示して当該権利が同法第二十四條第二項の規定により小作地の所有者が取得した農地の上にあるものとされたのでその小作地の登記簿の謄本により登記を記載した旨並びに嘱託書受附の年月日及び受附番号を記載し、押印しなければならない。
登記官吏は、前項の登記をしたときは、遅滯なく当該小作地の管轄登記所にその登記をした旨を通知しなければならない。
小作地の管轄登記所が前項の通知を受けたときは、登記官吏は、遅滯なくその小作地の登記用紙中相当区事項欄に同項の規定により通知のあつた事項及びその通知のあつた旨並びに通知書受附の年月日及び受附番号を記載し、押印しなければならない。
第二十五條 自作農創設特別措置法第二十五條の規定による政府の賣り渡すべき農地の上にある賃借権又は永小作権と政府の買收しない農地の上にある賃借権又は永小作権との交換に因る権利移轉の登記は、登記権利者の請求に因り、地方長官が、これを嘱託しなければならない。
前項の登記を嘱託する場合において登記権利者の相手方に移轉した賃借権又は永小作権の上に旣登記の先取特権、質権又は抵当権があつて自作農創設特別措置法第二十五條第六項において準用する同法第二十四條第二項の規定により当該権利が登記権利者の取得した賃借権又は永小作権の上にあるものとされたときは、その嘱託書の備考欄に相手方に移轉した賃借権又は永小作権に関する当該旣登記の権利を表示しなければならない。
第一項の登記については、第四條第一項第三項、第七條、第八條、第二十三條及び前條の規定を準用する。
第二十六條 自作農創設特別措置法第二十八條第一項(同法第四十一條第三項において準用する場合を含む。)の規定により農地を買い取つた場合における所有権移轉の登記を嘱託する場合には、その嘱託書に当該農地の賣買が成立したことを証する書面を添附しなければならない。
前項の登記を嘱託する場合には、第六條第二項及び第七條の規定を準用する。
第二十七條 政府が自作農創設特別措置法第十五條の規定により農業用施設を買收した場合においてその施設につき農業動產信用法による抵当権設定の登記があるときは、地方長官は、その抵当権設定の登記の抹消を嘱託することができる。
第一項の登記の抹消を嘱託する場合において買收当時における当該農業用施設の所有者が甲区表示欄の登記名義人と同一人でないときは、その嘱託書の登記名義人の表示欄に登記名義人の外当該所有者の氏名又は名称及び住所又は事務所を記載しなければならない。
第二十八條 この勅令に特別の定のある場合を除いて、自作農創設特別措置法第四十四條の登記については、不動產登記法、明治四十二年法律第二十二号、農業用動產抵当登記令及び戰時登記特別手続令の定めるところによる。
第二十九條 この勅令の施行に関する細則は、司法大臣が、これを定める。