第一條 この勅令において外國通貨とは、政府の發行した貨幣、小額紙幣及び軍用手票、日本銀行券、B号円表示補助通貨、南方開発金庫券、中央儲備銀行券、中國連合準備銀行券、蒙疆銀行券並びに滿洲中央銀行券以外の一切の通貨をいい、朝鮮銀行券及び臺灣銀行券を含む。
この勅令において外國爲替証書とは、左の各号の一に該当する証書で外國通貨を以て表示するものをいう。
一 本邦以外の地域に仕向けた爲替手形(本邦から仕向けた送金爲替手形を除く。)
二 本邦以外の地域から仕向けた送金爲替手形、送金小切手、郵便爲替証書その他これらに準ずべき支拂指図書
三 本邦以外の地域にある地を支拂地とする約束手形又は当座小切手
五 本邦以外の地域で発行した又は発行を指図した信用狀で、この勅令施行の際現にその原因たる債権が発生しているもの(その全部又は一部がこの勅令施行の際未使用のものに限る。)
この勅令において本邦內に居住する日本人とは、左の各号の一に該当するものをいう。
三 日本國の法令によつて設立された法人但し、左に揭げる法人を除く。
イ この勅令施行の際、外國人又は外國の法令によつて設立された法人(第四号に該当する法人を除く。)が資本の二分の一以上に当る株式又は出資を有する法人
ロ その他、この勅令施行の際、外國人又は外國の法令によつて設立された法人(第四号に該当する法人を除く。)がその経営を支配する法人
四 外國の法令によつて設立された法人で左に揭げるもの
イ この勅令施行の際、日本人又は日本國の法令によつて設立された法人(前号但書イ又はロに該当する法人を除く。)が資本の二分の一以上に当る株式又は出資を有する法人
ロ その他日本人又は日本國の法令によつて設立された法人(前号但書イ又はロに該当する法人を除く。)がこの勅令施行の際経営を支配する法人又はこの勅令施行前に経営を支配したことのある法人
この勅令において本邦とは、本州、四國、九州及び北海道並びにその附屬の島をいう。
第二條 本邦內に居住する日本人で、この勅令施行の際現に本邦內において外國通貨又は外國爲替証書を所持又は保管する者は、他の法令又は契約にかかわらず、昭和二十二年一月三十一日までに、その外國通貨又は外國爲替証書を、日本銀行に引き渡して、これを保管させなければならない。本邦內に居住する外國人で、この勅令施行の際現に本邦內において日本人の所有に属する外國通貨又は外國爲替証書を所持又は保管する者も、また同樣とする。
本邦內に居住する日本人で、この勅令施行後、外國通貨又は外國爲替証書を本邦內において所持又は保管することとなつた者は、他の法令又は契約にかかわらず、その外國通貨又は外國爲替証書を所持又は保管することとなつた日から十日以內(その外國通貨又は外國爲替証書を所持又は保管することとなつた日が昭和二十二年一月二十二日以前である場合においては同月三十一日まで)に、その外國通貨又は外國爲替証書を、日本銀行に引き渡して、これを保管させなければならない。本邦內に居住する外國人で、この勅令施行後、本邦內において日本人の所有に属する外國通貨又は外國爲替證書を所持又は保管することになつた者も、また同樣とする。
日本銀行は、前二項の規定により、外國通貨又は外國爲替証書の引渡をなした者に対して、保管証を交付しなければならない。
第三條 前條第一項又は第二項の規定は、左の各号の一に該当する外國通貨又は外國爲替証書には、これを適用しない。
三 本邦以外の地域からの引揚邦人が持ち歸つたもので、稅関又は日本銀行が保管するもの
四 本邦から引き揚げる朝鮮人、臺灣人、琉球島民、奄美大島島民及び外國人から稅関が引渡を受けて保管するもの
六 本邦から朝鮮に引き揚げる朝鮮人の持帰金引換のため日本銀行が保管する朝鮮銀行券
七 未発行の銀行券(朝鮮銀行又は臺灣銀行の本店の勘定において発行高に算入されているものを除く。)
八 官廳又は學校その他の公益を目的とする團体が標本として所持又は保管しているもので、大藏大臣の許可のあつたもの
九 支拂の見込のない爲替手形で、大藏大臣の許可のあつたもの
前項第八号乃至第十号に規定する大藏大臣の許可を受けようとする者は、前條第一項の規定に該当する場合においては昭和二十二年一月三十一日までに、同條第二項の規定に該当する場合においては同項に規定する期限までに、その旨の申請書を、日本銀行を経由して、大藏大臣に提出しなければならない。
日本銀行が第二項に規定する期限までに同項の申請書を受け取つたときは、前條第一項又は第二項の規定による引渡は、大藏大臣の指示する日まで、これを猶予する。
第四條 この勅令に違反して、日本銀行へ外國通貨又は外國爲替証書の引渡をしなかつた者は、三年以下の懲役若しくは禁錮又は一万円以下の罰金に処する。
前項の場合において、その違反行爲に係る外國通貨又は外國爲替証書は、これを沒收する。
第五條 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の從業者が、その法人又は人の業務又は財產に関して、前條第一項の違反行爲をしたときは、行爲者を罰する外、その法人又は人に対し、同條第一項の罰金刑を科する。