(製塩地整理ニ関スル法律)
法令番号: 法律第四十八號
公布年月日: 明治43年4月7日
法令の形式: 法律
朕帝國議會ノ協贊ヲ經タル製鹽地整理ニ關スル法律ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治四十三年四月六日
內閣總理大臣兼大藏大臣 侯爵 桂太郞
法律第四十八號
第一條 鹽專賣法第六條及第四十條ノ二ニ依リ鹽又ハ鹹水ノ製造區域ヲ制限スル場合ニ於テハ政府ハ鹽又ハ鹹水ノ種類、製造方法ヲ區別シテ之ヲ制限スルコトヲ得
鹽又ハ鹹水製造區域ノ制限ニ依リ鹽又ハ鹹水ノ製造ヲ禁止シタルトキハ政府ハ禁止ノ際ニ於ケル鹽又ハ鹹水ノ製造者、製鹽地ノ所有者、現ニ鹽又ハ鹹水ノ製造ニ專用スル建物設備器具器械ノ所有者ニ對シ其ノ請求ニ依リ命令ノ定ムル所ニ從ヒ交付金ヲ下付ス
前項ノ鹽又ハ鹹水ノ製造者ハ明治四十二年十二月以前ニ於テ鹽又ハ鹹水製造ノ許可ヲ受ケ製造禁止ノ際現ニ其ノ製造ヲ爲ス者ニ限ル但シ相續ニ因リ鹽又ハ鹹水ノ製造ヲ承繼シタル場合ニ於テハ被相續人ノ受ケタル製造ノ許可ハ相續人ニ於テ之ヲ受ケタルモノト看做ス
明治四十二年十二月ニ於ケル現狀ニ依リ鹽又ハ鹹水ノ製造ヲ廢止シタルモノト認ムヘキ製鹽地及之ニ附屬スル建物設備器具器械ニ付テハ第二項ノ交付金ヲ下付セス
明治四十二年十二月以前ニ於テ鹽又ハ鹹水ノ製造ニ著手セサル製鹽地及之ニ附屬スル建物設備器具器械ニ付亦前項ニ同シ但シ明治四十二年十二月以前ニ於テ工事ニ著手シタル製鹽地又ハ製鹽地ニ附屬シタル建物設備器具器械ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
交付金ヲ下付スヘキ建物設備器具器械ノ種類數量ハ政府之ヲ決定ス
第二條 交付金ハ左ノ各號ニ依リ之ヲ定ム
一 鹽製造者ニ對シテハ其ノ一年間納付鹽賠償金額ノ二割ニ相當スル金額
二 鹹水製造者ニ對シテハ其ノ一年間鹹水賣渡代金ノ二割ニ相當スル金額
三 製鹽地所有者ニ對シテハ製鹽地ノ價額ヨリ鹽又ハ鹹水製造禁止後ニ於ケル其ノ見込價額ヲ控除シタル金額
四 鹽又ハ鹹水製造專用ノ建物設備器具器械ノ所有者ニ對シテハ其ノ建物設備器具器械ノ價額ヨリ鹽又ハ鹹水製造禁止後ニ於ケル其ノ見込價額ヲ控除シタル金額
第三條 前條製鹽地ノ價額ハ其ノ製鹽地納付鹽賠償金額ノ百分ノ十一ノ二十倍ニ相當スル金額トス
第四條 前二條ノ納付鹽賠償金額ハ明治四十一年及明治四十二年ノ納付鹽賠償金額ノ平均ニ依リ之ヲ定ム但シ明治四十一年二月以後鹽ノ製造ニ著手シタル場合ニ於テハ明治四十二年ノ納付鹽賠償金額ニ依ル
明治四十一年中又ハ明治四十二年中鹽ノ製造ヲ繼續セサルトキハ前條ノ納付鹽賠償金額ハ兩年ノ中鹽ノ製造ヲ繼續シタル年ノ納付鹽賠償金額ニ依ル
製鹽地所有者又ハ鹽ノ製造者ニ異動ヲ生シ製鹽地ニ對スル明治四十一年分又ハ明治四十二年分納付鹽ノ數量ヲ區分シ難キトキハ前條ノ納付鹽賠償金額ハ兩年ノ中納付鹽ノ數量ヲ區分シ得ヘキ年ノ納付鹽賠償金額ニ依ル
鹹水賣渡代金ハ第一項ノ規定ニ準シ之ヲ定ム
第五條 左ノ場合ニ於テハ製鹽地ノ價額ハ前二條ノ規定ニ拘ラス鑑定人ノ意見ヲ徵シ政府之ヲ決定ス
一 鹽田ニ依ラスシテ鹽ヲ製造スルトキ
二 明治四十一年中及明治四十二年中共ニ鹽ノ製造ヲ繼續セス又ハ前條第一項但書ノ場合ニ於テ明治四十二年中鹽ノ製造ヲ繼續セサルトキ
三 明治四十二年二月以後ニ於テ鹽ノ製造ニ著手シタルトキ
四 製鹽地ノ所有者又ハ鹽ノ製造者ニ異動ヲ生シ製鹽地ニ對スル明治四十一年分及明治四十二年分納付鹽ノ數量ヲ共ニ區分シ難キトキ
五 所有者ヲ異ニスル製鹽地ノ間又ハ前四號ノ一ニ該當スル製鹽地ト他ノ製鹽地トノ間ニ納付鹽ノ數量ヲ區分シ難キトキ
六 第一條第五項但書ノ規定ニ該當スルトキ
第六條 鹽又ハ鹹水製造禁止後ニ於ケル製鹽地ノ見込價額ハ鑑定人ノ意見ヲ徵シ政府之ヲ決定ス
鹽又ハ鹹水製造專用ノ建物設備器具器械ノ價額ヨリ鹽又ハ鹹水製造禁止後ニ於ケル其ノ見込價額ヲ控除シタル金額ハ協議ニ依リ之ヲ定ム協議調ハサルトキハ鑑定人ノ意見ヲ徵シ政府之ヲ決定ス
第七條 前二條ノ決定ニ對シ不服アル者ハ十日以內ニ其ノ申立ヲ爲スコトヲ得此ノ場合ニ於テハ政府ハ更ニ鑑定人ヲ選定シ其ノ意見ヲ徵シ之ヲ裁定ス其ノ裁定ニ不服アルトキハ行政訴訟ヲ爲スコトヲ得
第八條 交付金ノ總額ハ三百二十萬圓以內トス
交付金ハ額面金額ニ依リ五分利付國債證券ヲ以テ之ヲ給付ス但シ國債證券ノ最小額面金額ニ滿タサル端數ハ現金ヲ以テ之ヲ給付ス
第九條 政府ハ前條ノ給付ニ必要ナル國債證券ヲ發行スルコトヲ得
第十條 鹽又ハ鹹水ノ製造ヲ禁止シタル區域內ニ於ケル鹽又ハ鹹水製造專用ノ建物設備器具器械ニ對シテハ政府ハ監督上必要ナル處分ヲ爲スコトヲ得
朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル製塩地整理ニ関スル法律ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治四十三年四月六日
内閣総理大臣兼大蔵大臣 侯爵 桂太郎
法律第四十八号
第一条 塩専売法第六条及第四十条ノ二ニ依リ塩又ハ鹹水ノ製造区域ヲ制限スル場合ニ於テハ政府ハ塩又ハ鹹水ノ種類、製造方法ヲ区別シテ之ヲ制限スルコトヲ得
塩又ハ鹹水製造区域ノ制限ニ依リ塩又ハ鹹水ノ製造ヲ禁止シタルトキハ政府ハ禁止ノ際ニ於ケル塩又ハ鹹水ノ製造者、製塩地ノ所有者、現ニ塩又ハ鹹水ノ製造ニ専用スル建物設備器具器械ノ所有者ニ対シ其ノ請求ニ依リ命令ノ定ムル所ニ従ヒ交付金ヲ下付ス
前項ノ塩又ハ鹹水ノ製造者ハ明治四十二年十二月以前ニ於テ塩又ハ鹹水製造ノ許可ヲ受ケ製造禁止ノ際現ニ其ノ製造ヲ為ス者ニ限ル但シ相続ニ因リ塩又ハ鹹水ノ製造ヲ承継シタル場合ニ於テハ被相続人ノ受ケタル製造ノ許可ハ相続人ニ於テ之ヲ受ケタルモノト看做ス
明治四十二年十二月ニ於ケル現状ニ依リ塩又ハ鹹水ノ製造ヲ廃止シタルモノト認ムヘキ製塩地及之ニ附属スル建物設備器具器械ニ付テハ第二項ノ交付金ヲ下付セス
明治四十二年十二月以前ニ於テ塩又ハ鹹水ノ製造ニ著手セサル製塩地及之ニ附属スル建物設備器具器械ニ付亦前項ニ同シ但シ明治四十二年十二月以前ニ於テ工事ニ著手シタル製塩地又ハ製塩地ニ附属シタル建物設備器具器械ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
交付金ヲ下付スヘキ建物設備器具器械ノ種類数量ハ政府之ヲ決定ス
第二条 交付金ハ左ノ各号ニ依リ之ヲ定ム
一 塩製造者ニ対シテハ其ノ一年間納付塩賠償金額ノ二割ニ相当スル金額
二 鹹水製造者ニ対シテハ其ノ一年間鹹水売渡代金ノ二割ニ相当スル金額
三 製塩地所有者ニ対シテハ製塩地ノ価額ヨリ塩又ハ鹹水製造禁止後ニ於ケル其ノ見込価額ヲ控除シタル金額
四 塩又ハ鹹水製造専用ノ建物設備器具器械ノ所有者ニ対シテハ其ノ建物設備器具器械ノ価額ヨリ塩又ハ鹹水製造禁止後ニ於ケル其ノ見込価額ヲ控除シタル金額
第三条 前条製塩地ノ価額ハ其ノ製塩地納付塩賠償金額ノ百分ノ十一ノ二十倍ニ相当スル金額トス
第四条 前二条ノ納付塩賠償金額ハ明治四十一年及明治四十二年ノ納付塩賠償金額ノ平均ニ依リ之ヲ定ム但シ明治四十一年二月以後塩ノ製造ニ著手シタル場合ニ於テハ明治四十二年ノ納付塩賠償金額ニ依ル
明治四十一年中又ハ明治四十二年中塩ノ製造ヲ継続セサルトキハ前条ノ納付塩賠償金額ハ両年ノ中塩ノ製造ヲ継続シタル年ノ納付塩賠償金額ニ依ル
製塩地所有者又ハ塩ノ製造者ニ異動ヲ生シ製塩地ニ対スル明治四十一年分又ハ明治四十二年分納付塩ノ数量ヲ区分シ難キトキハ前条ノ納付塩賠償金額ハ両年ノ中納付塩ノ数量ヲ区分シ得ヘキ年ノ納付塩賠償金額ニ依ル
鹹水売渡代金ハ第一項ノ規定ニ準シ之ヲ定ム
第五条 左ノ場合ニ於テハ製塩地ノ価額ハ前二条ノ規定ニ拘ラス鑑定人ノ意見ヲ徴シ政府之ヲ決定ス
一 塩田ニ依ラスシテ塩ヲ製造スルトキ
二 明治四十一年中及明治四十二年中共ニ塩ノ製造ヲ継続セス又ハ前条第一項但書ノ場合ニ於テ明治四十二年中塩ノ製造ヲ継続セサルトキ
三 明治四十二年二月以後ニ於テ塩ノ製造ニ著手シタルトキ
四 製塩地ノ所有者又ハ塩ノ製造者ニ異動ヲ生シ製塩地ニ対スル明治四十一年分及明治四十二年分納付塩ノ数量ヲ共ニ区分シ難キトキ
五 所有者ヲ異ニスル製塩地ノ間又ハ前四号ノ一ニ該当スル製塩地ト他ノ製塩地トノ間ニ納付塩ノ数量ヲ区分シ難キトキ
六 第一条第五項但書ノ規定ニ該当スルトキ
第六条 塩又ハ鹹水製造禁止後ニ於ケル製塩地ノ見込価額ハ鑑定人ノ意見ヲ徴シ政府之ヲ決定ス
塩又ハ鹹水製造専用ノ建物設備器具器械ノ価額ヨリ塩又ハ鹹水製造禁止後ニ於ケル其ノ見込価額ヲ控除シタル金額ハ協議ニ依リ之ヲ定ム協議調ハサルトキハ鑑定人ノ意見ヲ徴シ政府之ヲ決定ス
第七条 前二条ノ決定ニ対シ不服アル者ハ十日以内ニ其ノ申立ヲ為スコトヲ得此ノ場合ニ於テハ政府ハ更ニ鑑定人ヲ選定シ其ノ意見ヲ徴シ之ヲ裁定ス其ノ裁定ニ不服アルトキハ行政訴訟ヲ為スコトヲ得
第八条 交付金ノ総額ハ三百二十万円以内トス
交付金ハ額面金額ニ依リ五分利付国債証券ヲ以テ之ヲ給付ス但シ国債証券ノ最小額面金額ニ満タサル端数ハ現金ヲ以テ之ヲ給付ス
第九条 政府ハ前条ノ給付ニ必要ナル国債証券ヲ発行スルコトヲ得
第十条 塩又ハ鹹水ノ製造ヲ禁止シタル区域内ニ於ケル塩又ハ鹹水製造専用ノ建物設備器具器械ニ対シテハ政府ハ監督上必要ナル処分ヲ為スコトヲ得