屯田兵司令部条例
法令番号: 勅令第百八十二號
公布年月日: 明治23年8月30日
法令の形式: 勅令
朕屯田兵司令部條例ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十三年八月二十九日
陸軍大臣 伯爵 大山巖
勅令第百八十二號
屯田兵司令部條例
第一條 屯田兵司令官ハ少將ヲ以テ之ニ補シ直ニ
天皇陛下ニ隸シ屯田兵ヲ統率シ軍事ニ係ル諸件ヲ總理ス
第二條 司令官ハ屯田兵ノ出師準備ヲ整理シ部下軍隊ノ練成ニ就テハ其責ニ任ス
第三條 司令官ハ屯田兵ノ徵募補充竝ニ開墾耕稼ノ事ヲ掌ル
第四條 司令官ハ不虞ノ侵襲ニ際シ北海道ノ防禦及陸軍諸官廨諸建築物ノ保護ニ任ス
北海道廳長官地方ノ靜謐ヲ維持スル爲メ兵力ヲ請求スル時事急ナレハ司令官直ニ之ニ應シテ後陸軍大臣及參謀總長ニ報吿ス可シ若シ其事變危險ニシテ北海道廳長官ノ請求シ能ハサル例外ノ場合ニ在テハ司令官兵力ヲ以テ便宜事ニ從フコトヲ得
第五條 疾疫其他例外ノ場合ニ方リ司令官一時其部下軍隊ヲ移轉セシメントスル時至急ヲ要スレハ之ヲ實行シテ後陸軍大臣及參謀總長ニ報吿ス可シ
第六條 司令官ハ北海道ニ在ル軍隊及陸軍官廨ニ於ケル風紀軍紀ヲ統監シ軍法會議及監獄ヲ管轄ス
第七條 司令官ハ軍政及人事ニ係ル事ニ就テハ陸軍大臣國防及出師計畫ニ係ル事ニ就テハ參謀總長ノ區處ヲ受ク司令官ハ此兩官ニ對シ各其主任ノ事ニ就キ定期又ハ臨時報吿ヲ爲ス可キモノトス
軍隊及移住給與上ニ關スル事ニ就テハ屯田兵監督部長タル監督ヲ指揮ス
第八條 司令官ハ隨時屯田兵隊ヲ檢閱シ每年一囘其景況ヲ陸軍大臣ニ報吿ス可シ
第九條 司令官赴任ノ節司令部所在地ノ地方長官始審裁判所長及檢事上席ノ者トハ三日以內互ニ訪問シ北海道ニ在ル控訴院長檢事長始審裁判所長檢事上席ノ者トハ三十日以內互ニ移文訪問ス可シ但官等卑キ者ヨリ先ンス可シ
第十條 屯田兵副司令官ハ大佐ヲ以テ之ニ補シ其職務司令官ニ亞キ司令官ヨリ委任ノ事項ハ之ヲ專行ス
第十一條 屯田兵司令部ハ左ノ諸部ヨリ成ル
一 參謀部
二 副官部
三 法官部
四 軍醫部
第十二條 參謀部及副官部ノ將校ハ各自擔任ノ事務ヲ司リ其司令官ニ具申ス可キ事ニ就テハ先ツ副司令官ニ開陳ス可シ
第十三條 法官部理事軍醫長及屯田兵監督部長タル監督ヨリ司令官ニ具申ス可キ事ニ就テハ先ツ副司令官ニ開陳ス可シ
第十四條 本條例ハ明治二十四年四月一日ヨリ施行ス
【表】
朕屯田兵司令部条例ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十三年八月二十九日
陸軍大臣 伯爵 大山巌
勅令第百八十二号
屯田兵司令部条例
第一条 屯田兵司令官ハ少将ヲ以テ之ニ補シ直ニ
天皇陛下ニ隷シ屯田兵ヲ統率シ軍事ニ係ル諸件ヲ総理ス
第二条 司令官ハ屯田兵ノ出師準備ヲ整理シ部下軍隊ノ練成ニ就テハ其責ニ任ス
第三条 司令官ハ屯田兵ノ徴募補充並ニ開墾耕稼ノ事ヲ掌ル
第四条 司令官ハ不虞ノ侵襲ニ際シ北海道ノ防禦及陸軍諸官廨諸建築物ノ保護ニ任ス
北海道庁長官地方ノ静謐ヲ維持スル為メ兵力ヲ請求スル時事急ナレハ司令官直ニ之ニ応シテ後陸軍大臣及参謀総長ニ報告ス可シ若シ其事変危険ニシテ北海道庁長官ノ請求シ能ハサル例外ノ場合ニ在テハ司令官兵力ヲ以テ便宜事ニ従フコトヲ得
第五条 疾疫其他例外ノ場合ニ方リ司令官一時其部下軍隊ヲ移転セシメントスル時至急ヲ要スレハ之ヲ実行シテ後陸軍大臣及参謀総長ニ報告ス可シ
第六条 司令官ハ北海道ニ在ル軍隊及陸軍官廨ニ於ケル風紀軍紀ヲ統監シ軍法会議及監獄ヲ管轄ス
第七条 司令官ハ軍政及人事ニ係ル事ニ就テハ陸軍大臣国防及出師計画ニ係ル事ニ就テハ参謀総長ノ区処ヲ受ク司令官ハ此両官ニ対シ各其主任ノ事ニ就キ定期又ハ臨時報告ヲ為ス可キモノトス
軍隊及移住給与上ニ関スル事ニ就テハ屯田兵監督部長タル監督ヲ指揮ス
第八条 司令官ハ随時屯田兵隊ヲ検閲シ毎年一回其景況ヲ陸軍大臣ニ報告ス可シ
第九条 司令官赴任ノ節司令部所在地ノ地方長官始審裁判所長及検事上席ノ者トハ三日以内互ニ訪問シ北海道ニ在ル控訴院長検事長始審裁判所長検事上席ノ者トハ三十日以内互ニ移文訪問ス可シ但官等卑キ者ヨリ先ンス可シ
第十条 屯田兵副司令官ハ大佐ヲ以テ之ニ補シ其職務司令官ニ亜キ司令官ヨリ委任ノ事項ハ之ヲ専行ス
第十一条 屯田兵司令部ハ左ノ諸部ヨリ成ル
一 参謀部
二 副官部
三 法官部
四 軍医部
第十二条 参謀部及副官部ノ将校ハ各自担任ノ事務ヲ司リ其司令官ニ具申ス可キ事ニ就テハ先ツ副司令官ニ開陳ス可シ
第十三条 法官部理事軍医長及屯田兵監督部長タル監督ヨリ司令官ニ具申ス可キ事ニ就テハ先ツ副司令官ニ開陳ス可シ
第十四条 本条例ハ明治二十四年四月一日ヨリ施行ス
【表】