市町村会議員選挙罰則
法令番号: 法律第三十九號
公布年月日: 明治23年5月30日
法令の形式: 法律
朕市町村會議員選擧罰則ニ關スル件ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十三年五月二十九日
內閣總理大臣 伯爵 山縣有朋
內務大臣 伯爵 西鄕從道
司法大臣 伯爵 山田顯義
法律第三十九號
市町村會議員選擧罰則
第一條 凡テ選擧資格ニ必要ナル事項ヲ詐稱シテ選擧人名簿ニ記載セラレタル者ハ二圓以上二十圓以下ノ罰金ニ處ス
議員タルコトヲ得サルノ實ヲ吿ケスシテ議員トナリタル者ハ三圓以上三十圓以下ノ罰金ニ處ス
第二條 投票ヲ得又ハ他人ニ投票ヲ得セシメ若クハ他人ノ爲ニ投票ヲ爲スコトヲ抑止スルノ目的ヲ以テ直接又ハ間接ニ金錢物品手形若クハ公私ノ職務ヲ選擧人ニ授與シ又ハ授與スルコトヲ約束シタル者ハ三圓以上三十圓以下ノ罰金ニ處ス
其授與又ハ約束ヲ受ケタル者亦同シ
第三條 第二條ニ記載シタル目的ヲ以テ選擧會場ノ近傍若クハ選擧人往來ノ途中ニ於テ選擧人ニ酒食ヲ供シ又ハ選擧會場ニ往復スル爲車馬ノ類ヲ給シタル者ハ第二條物品授與ノ例ニ依リ處斷ス
其供給ヲ受ケタル者亦同シ
第四條 第二條ニ記載シタル目的ヲ以テ選擧人ノ爲ニ選擧會場ニ往復スル車馬賃又ハ路費若クハ休泊料ノ類ヲ代辨シ又ハ代辨スルコトヲ約束シタル者ハ第二條金錢授與ノ例ニ依リ處斷ス
其代辨又ハ約束ヲ受ケタル者亦同シ
第五條 第二條第三條及第四條ニ記載シタル所業ヲ爲シテ第二條ニ記載シタル目的ヲ達シタル者ハ刑法第二百三十四條ノ例ヲ以テ論ス
第六條 第二條ニ記載シタル目的ヲ以テ選擧人ニ暴行ヲ加ヘタル者ハ十五日以上三月以下ノ輕禁錮ニ處シ二圓以上二十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
第七條 第二條ニ記載シタル目的ヲ以テ選擧人ヲ脅逼シ拐引シ若クハ其往來ノ便ヲ妨ケ若クハ詐僞ノ手段ヲ以テ其選擧權ノ施行ヲ妨害シタル者ハ第六條暴行ノ例ニ依リ處斷ス
第八條 第六條及第七條ニ記載シタル所業ヲ爲シテ第二條ニ記載シタル目的ヲ達シタル者ハ二月以上二年以下ノ輕禁錮ニ處シ五圓以上五十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
第九條 選擧人ヲ脅逼シ若クハ選擧會場ヲ騷擾シ又ハ投票函ヲ抑留毀壞若クハ劫奪スルノ目的ヲ以テ多衆ヲ嘯聚シタル者ハ二月以上二年以下ノ輕禁錮ニ處シ五圓以上五十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
其情ヲ知リ嘯聚ニ應シタル者ハ十五日以上二月以下ノ輕禁錮又ハ二圓以上二十圓以下ノ罰金ニ處ス
第十條 選擧ノ際選擧ニ關スル吏員若クハ選擧掛ニ暴行ヲ加ヘ又ハ暴行ヲ以テ選擧會場ヲ騷擾シ又ハ投票函ヲ抑留毀壞若クハ劫奪シタル者ハ三月以上三年以下ノ輕禁錮ニ處シ十圓以上百圓以下ノ罰金ヲ附加ス
第十一條 多衆ヲ嘯聚シテ第十條ノ罪ヲ犯シタル者ハ二年以上五年以下ノ輕禁錮ニ處シ二十圓以上二百圓以下ノ罰金ヲ附加ス
其情ヲ知リ嘯聚ニ應シタル者ハ十五日以上六月以下ノ輕禁錮又ハ四圓以上四十圓以下ノ罰金ニ處ス
第十二條 第九條第十條第十一條ノ場合ニ於テ犯罪者戎器又ハ兇器ヲ携帶シタルトキハ各本刑ニ一等ヲ加フ
第十三條 選擧會場所在ノ郡市內ニ於テ選擧ノ氣勢ヲ張ル爲多衆集合シ若クハ隊伍ヲ組ミテ往來シ又ハ篝火松明ヲ焚キ若クハ鐘皷法螺喇叭ノ類ヲ鳴ラシ旗幟其他ノ標章ヲ用井ル等ノ所業ヲ爲シ警察官ノ制止ヲ受ルモ仍其命ニ從ハサル者ハ十五日以上二月以下ノ輕禁錮ニ處シ三圓以上三十圓以下ノ罰金ヲ附加ス
第十四條 被選人タルコトヲ得ル者ヲ指シテ被選人タルコトヲ得ス又ハ當選ヲ承諾スルノ意ナシトノ虛報ヲ流傳セシメタル者ハ三圓以上三十圓以下ノ罰金ニ處ス
第十五條 戎器又ハ兇器ヲ携帶シテ選擧會場ニ入リタル者ハ三圓以上三十圓以下ノ罰金ニ處ス
第十六條 第二條ニ記載シタル目的ヲ以テ張札ノ類ヲ公然揭示シタル者ハ二圓以上二十圓以下ノ罰金ニ處ス
第十七條 他人ノ姓名ヲ詐稱シテ投票ヲ爲シ又ハ選擧人タルコトヲ得スシテ投票ヲ爲シタル者ハ三圓以上三十圓以下ノ罰金ニ處ス
第十八條 當選人第二條乃至第十六條ニ依リ刑ニ處セラレタルトキハ其當選ハ無効トス
第十九條 本法ニ規定シタルモノノ外刑法ニ正條アルモノハ各〻其條ニ依リ重キニ從テ處斷ス
第二十條 本法ニ關スル犯罪ハ六箇月ヲ以テ期滿免除トス
第二十一條 本法ハ市町村會ノ外市制町村制竝ニ明治二十二年法律第十一號ニ據リテ開設スル各種ノ議會ノ議員選擧ニモ適用ス
朕市町村会議員選挙罰則ニ関スル件ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十三年五月二十九日
内閣総理大臣 伯爵 山県有朋
内務大臣 伯爵 西郷従道
司法大臣 伯爵 山田顕義
法律第三十九号
市町村会議員選挙罰則
第一条 凡テ選挙資格ニ必要ナル事項ヲ詐称シテ選挙人名簿ニ記載セラレタル者ハ二円以上二十円以下ノ罰金ニ処ス
議員タルコトヲ得サルノ実ヲ告ケスシテ議員トナリタル者ハ三円以上三十円以下ノ罰金ニ処ス
第二条 投票ヲ得又ハ他人ニ投票ヲ得セシメ若クハ他人ノ為ニ投票ヲ為スコトヲ抑止スルノ目的ヲ以テ直接又ハ間接ニ金銭物品手形若クハ公私ノ職務ヲ選挙人ニ授与シ又ハ授与スルコトヲ約束シタル者ハ三円以上三十円以下ノ罰金ニ処ス
其授与又ハ約束ヲ受ケタル者亦同シ
第三条 第二条ニ記載シタル目的ヲ以テ選挙会場ノ近傍若クハ選挙人往来ノ途中ニ於テ選挙人ニ酒食ヲ供シ又ハ選挙会場ニ往復スル為車馬ノ類ヲ給シタル者ハ第二条物品授与ノ例ニ依リ処断ス
其供給ヲ受ケタル者亦同シ
第四条 第二条ニ記載シタル目的ヲ以テ選挙人ノ為ニ選挙会場ニ往復スル車馬賃又ハ路費若クハ休泊料ノ類ヲ代弁シ又ハ代弁スルコトヲ約束シタル者ハ第二条金銭授与ノ例ニ依リ処断ス
其代弁又ハ約束ヲ受ケタル者亦同シ
第五条 第二条第三条及第四条ニ記載シタル所業ヲ為シテ第二条ニ記載シタル目的ヲ達シタル者ハ刑法第二百三十四条ノ例ヲ以テ論ス
第六条 第二条ニ記載シタル目的ヲ以テ選挙人ニ暴行ヲ加ヘタル者ハ十五日以上三月以下ノ軽禁錮ニ処シ二円以上二十円以下ノ罰金ヲ附加ス
第七条 第二条ニ記載シタル目的ヲ以テ選挙人ヲ脅逼シ拐引シ若クハ其往来ノ便ヲ妨ケ若クハ詐偽ノ手段ヲ以テ其選挙権ノ施行ヲ妨害シタル者ハ第六条暴行ノ例ニ依リ処断ス
第八条 第六条及第七条ニ記載シタル所業ヲ為シテ第二条ニ記載シタル目的ヲ達シタル者ハ二月以上二年以下ノ軽禁錮ニ処シ五円以上五十円以下ノ罰金ヲ附加ス
第九条 選挙人ヲ脅逼シ若クハ選挙会場ヲ騒擾シ又ハ投票函ヲ抑留毀壊若クハ劫奪スルノ目的ヲ以テ多衆ヲ嘯聚シタル者ハ二月以上二年以下ノ軽禁錮ニ処シ五円以上五十円以下ノ罰金ヲ附加ス
其情ヲ知リ嘯聚ニ応シタル者ハ十五日以上二月以下ノ軽禁錮又ハ二円以上二十円以下ノ罰金ニ処ス
第十条 選挙ノ際選挙ニ関スル吏員若クハ選挙掛ニ暴行ヲ加ヘ又ハ暴行ヲ以テ選挙会場ヲ騒擾シ又ハ投票函ヲ抑留毀壊若クハ劫奪シタル者ハ三月以上三年以下ノ軽禁錮ニ処シ十円以上百円以下ノ罰金ヲ附加ス
第十一条 多衆ヲ嘯聚シテ第十条ノ罪ヲ犯シタル者ハ二年以上五年以下ノ軽禁錮ニ処シ二十円以上二百円以下ノ罰金ヲ附加ス
其情ヲ知リ嘯聚ニ応シタル者ハ十五日以上六月以下ノ軽禁錮又ハ四円以上四十円以下ノ罰金ニ処ス
第十二条 第九条第十条第十一条ノ場合ニ於テ犯罪者戎器又ハ兇器ヲ携帯シタルトキハ各本刑ニ一等ヲ加フ
第十三条 選挙会場所在ノ郡市内ニ於テ選挙ノ気勢ヲ張ル為多衆集合シ若クハ隊伍ヲ組ミテ往来シ又ハ篝火松明ヲ焚キ若クハ鐘鼓法螺喇叭ノ類ヲ鳴ラシ旗幟其他ノ標章ヲ用井ル等ノ所業ヲ為シ警察官ノ制止ヲ受ルモ仍其命ニ従ハサル者ハ十五日以上二月以下ノ軽禁錮ニ処シ三円以上三十円以下ノ罰金ヲ附加ス
第十四条 被選人タルコトヲ得ル者ヲ指シテ被選人タルコトヲ得ス又ハ当選ヲ承諾スルノ意ナシトノ虚報ヲ流伝セシメタル者ハ三円以上三十円以下ノ罰金ニ処ス
第十五条 戎器又ハ兇器ヲ携帯シテ選挙会場ニ入リタル者ハ三円以上三十円以下ノ罰金ニ処ス
第十六条 第二条ニ記載シタル目的ヲ以テ張札ノ類ヲ公然掲示シタル者ハ二円以上二十円以下ノ罰金ニ処ス
第十七条 他人ノ姓名ヲ詐称シテ投票ヲ為シ又ハ選挙人タルコトヲ得スシテ投票ヲ為シタル者ハ三円以上三十円以下ノ罰金ニ処ス
第十八条 当選人第二条乃至第十六条ニ依リ刑ニ処セラレタルトキハ其当選ハ無効トス
第十九条 本法ニ規定シタルモノノ外刑法ニ正条アルモノハ各々其条ニ依リ重キニ従テ処断ス
第二十条 本法ニ関スル犯罪ハ六箇月ヲ以テ期満免除トス
第二十一条 本法ハ市町村会ノ外市制町村制並ニ明治二十二年法律第十一号ニ拠リテ開設スル各種ノ議会ノ議員選挙ニモ適用ス