第十四條 私署證書ハ之ヲ以テ對抗セラルヽ者ニ不利ナル事實ノ陳述又ハ追認ヲ記載シ且其署名及ヒ印章又ハ其一アルトキハ署名、捺印者ノ裁判外ノ自白即チ證言ヲ成スモノトス
右同一ノ條件ヲ有スル書狀ハ私署證書ト同一ノ證據力ヲ有ス
第十五條 自己ノ利益ニ於テ私署證書ヲ有スル者ハ爭ノ生スル前ト雖モ其署名者ナリト主張シ又ハ思考スル者ニ對シテ手跡、署名及ヒ印章ノ追認ヲ請求スルコトヲ得
署名者ナリト主張セラレタル者ハ或ハ合併シテ或ハ各別ニ其手跡、署名又ハ印章ノ眞正ナルコトヲ明確ニ追認シ又ハ否認スルコトヲ得ルノミ
裁判所ヨリ本條ノ規定ノ口諭ヲ受ケタル者否認ヲ爲サヽルトキハ裁判所ハ其否認セサルモノニ付テハ之ヲ追認シタリト認定スルコトヲ得
第十六條 印章ニ關シテハ其印章ヲ提示セラレタル者ハ其印章ノ自己ノ印章ニ相違ナキコトヲ追認スルモ押捺ハ自身又ハ自己ノ許諾ニテ之ヲ爲シタルヲ否認スルコトヲ得伹總テノ方法ヲ以テ其證據ヲ供スルコトヲ要ス
其追認證書ヲ與フル前ニ右ノ異議ヲ留メサリシトキハ其後ニ至リ右ノ抗辯ヲ利唱スルコトヲ得ス
又其署名又ハ印章ヲ追認シタルトキハ其署名又ハ印章ノ得ラレシ手段タル强暴、錯誤又ハ詐欺ヲ最早主張スルコトヲ得ス伹强暴カ既ニ止ミ又ハ錯誤若クハ詐欺ヲ既ニ發見シ且此事ニ付キ何等ノ異議ヲモ留メサリシトキニ限ル
第十七條 署名者ナリト主張セラレタル者ノ相續人、承繼人又ハ代人ニ對シテ追認ノ請求アリタルトキハ被告ハ或ハ自己ノ代表スル者ノ署名若クハ印章ヲ知ラサル旨或ハ其使用ノ不確實ナル旨ヲ陳述スルニ止マルコトヲ得
右ノ相續人、承繼人又ハ代人ハ印章ノ不正當ナル押捺又ハ承諾ノ瑕疵ヨリ生スル無効ノ方法ヲ利唱スルノ權利ヲ失ハス伹此事ニ關シ異議ヲ留ムルコトヲ怠リタルトキト雖モ亦同シ
第十八條 被告ハ異議ヲ留メスシテ署名又ハ印章ヲ追認シタリト雖モ後ニ捺印白紙ノ濫用又ハ署名若クハ印章ノ僞造アリタルコトヲ證スルノ權利ヲ失ハス
然レトモ捺印白紙ノ濫用ニ付キ異議ヲ留メスシテ追認アリタルトキハ之ヲ知リ其證書ニ依リ善意ニテ約定シタル第三者ニ證書無効ノ方法トシテ此濫用ヲ以テ對抗スルコトヲ得ス
第十九條 一人又ハ數人ノ證人カ私署證書ニ加署シ又ハ加印シタルトキハ其證人ヲ手跡驗眞ニ召喚スルヲ得ルニ於テハ之ヲ召喚ス可シ
第二十條 手跡、印章又ハ署名ノ驗眞ノ請求ニ關スル方式幷ニ期間及ヒ被告又ハ其代人ノ出席セサルニ因リ此等ノ者ニ於テ印章又ハ署名ヲ追認シタリト爲スコトヲ得ヘキ塲合ハ民事訴訟法ニ於テ之ヲ定ム
署名者ナリト主張セラレタル者ノ明確ニ否認シ又ハ其相續人若クハ承繼人ノ追認ヲ爲サヽル塲合ニ於ケル手跡驗眞手續ノ規則ニ付テモ亦同シ
第二十一條 雙務契約ヲ證スル私署證書ハ反對ノ利益ヲ有スル主タル當事者ノ員數ニ應スル正本ヲ作リ且之ニ署名又ハ捺印スルコトヲ要ス
又各正本ニハ其作リタル正本ノ數ヲ附記スルコトヲ要ス
然レトモ當事者ハ一通ノミノ證書ヲ作ルコトヲ得伹其證書中指定シタル第三者ノ方ニ之ヲ寄託スルコトヲ合意シタルトキニ限ル
右ノ塲合ニ於テ第三者ハ各當事者ノ求ニ應シテ其證書ヲ示サヽル可カラス伹總當事者ノ承諾ナクシテ之ヲ交付スルコトヲ得ス
第二十二條 正本數通ノ證書ノ錄製及ヒ其數ノ附記又ハ證書ノ寄託ハ當事者カ合意ノ組成ヲ繫カラシメタル條件ト看做ス
然レトモ前條ニ從ヒテ證書ノ錄製アラサリシ契約ノ全部又ハ一分ヲ履行シタル當事者ハ最早條件ノ不履行ヲ利唱スルコトヲ得ス
第二十三條 片務契約ヲ證スル私署證書ニ金錢其他ノ定量物ヲ與ヘ辨濟シ又ハ返還スルノ諾約ヲ包有スル塲合ニ於テ債務者又ハ其代人カ證書ノ本文ヲ自書セサルトキハ債務者ハ其署名若クハ捺印ノ外ニ自筆ニテ金額若クハ數量ヲ記載シ又ハ金額若クハ數量ノ文字ニ捺印スルコトヲ要ス
若シ連帶ナルト否トヲ問ハス數人ノ債務者アルトキハ其中ノ一人右ノ方式ニ從フヲ以テ足レリトス
第二十四條 數通ノ正本及ヒ第二十三條ノ方式ハ商人ニ付テハ之ヲ要セス
第二十五條 前數條ノ方式ニ從ヒ錄製シタル私署證書ニシテ其對抗ヲ受クル者ノ追認シ又ハ裁判上ニテ其者カ追認シタリト爲シタルモノハ其主文及ヒ之ト直接ノ關係ヲ有シ又ハ之ヲ補完スル文言ニ付テハ其者ニ對シテ完全ナル證據トス
此他ノ文言ハ書面ニ因ル證據端緖ノミニ之ヲ用ユルコトヲ得
第四十五條ニ記載シタル自白不可分ナル原則ハ同條ノ區別ヲ以テ證書ノ各部分ニ之ヲ適用ス
第二十六條 證書カ第十八條ニ規定シタル如ク捺印白紙ノ濫用又ハ僞造ノ攻擊ヲ受ケタルトキハ其證據力ハ刑事裁判所ニ被告ノ送致アルニ因リテ停止セラレ其裁判所ノ判决ノ確定ト爲ルマテ民事ノ判决ヲ中止ス
嫌疑アル人ノ死亡其他ノ原因ニ由リテ刑事審問ノ開カレサリシトキハ民事裁判所ハ主張セラレタル犯罪ヨリ生スル不受理ノ理由ニ付キ裁判アルマテ本案ノ判决ヲ中止ス
又刑事審問中ナルトキハ民事裁判所ハ當事者ノ要求ニ因リ又ハ職權ヲ以テ其判决ヲ中止スルコトヲ得
第二十七條 私署證書ハ其證書ヨリ後ニ當事者ト約定シタル特定承權人ノ利害ニ於テ當事者間ニ於ケルト同一ノ證據ヲ爲スモノトス然レトモ其日附ハ確定ナルトキニ非サレハ之ヲ援用スルコトヲ得ス
第二十八條 私署證書ハ左ノ諸件ニ因リテ確定日附ヲ取得ス
第二 財產ノ封印若クハ目錄ノ調書其他ノ公正證書又ハ確定日附ヲ有スル他ノ私署證書ニ於ケル記載
第三 手署シタル當事者中一人又ハ加署若クハ加印シタル證人ノ死亡又ハ此等ノ者ノ失踪ニ關スル裁判上ノ宣告
右ノ塲合ニ於テ證書ハ登錄、記載、死亡又ハ最後ノ音信ノ日ヨリ確定日附ヲ有スルモノトス
第二十九條 一箇ノ證書ヲ他ノ證書ニ附記シタル塲合ニ於テ二箇ノ證書ヲ以テ設定シタル權利カ幷存ス可カラサルモノナルトキハ優先ハ先キニ成立シタルモノトシテ記載セラレタル權利ニ屬ス
二箇ノ證書カ同時ニ確定日附ヲ有スル其他ノ塲合ニ於テハ優先ハ物ノ占有ニ因リテ維持セラレタル證書ニ屬シ又占有アラサルトキハ最初ニ裁判上ノ請求ノ用ニ供セラレタル證書ニ屬ス
二箇ノ證書何レニモ確定日附ヲ有セサルトキハ優先ハ同一ノ區別ヲ以テ之ヲ規定ス
然レトモ如何ナル塲合ニ於テモ當事者ニシテ其自白ニ因リ約定シタル當時ニ於テ確定日附ヲ有セサルモ自己ノ證書ト幷存セサル證書タルコトノ證セラレタル者ハ優先權ヲ失フ
第三十條 受取證書又ハ免責若クハ相殺ノ證書ハ確定日附ヲ有セスト雖モ其日附ヲ以前ノ日附ニ爲サレタリト思考ス可カラサルニ於テハ之ヲ以テ債權ノ讓受人、被代位人及ヒ差押債權者ニ對抗スルコトヲ得
商事ニ於テハ私署證書ノ日附ハ眞誠ノモノト推定ス伹錯誤又ハ詐欺ヲ證スルハ此限ニ在ラス