債權擔保編
總則
第一條 債務者ノ總財產ハ動產ト不動產ト現在ノモノト將來ノモノトヲ問ハス其債權者ノ共同ノ擔保ナリ但法律ノ規定又ハ人ノ處分ニテ差押ヲ禁シタル物ハ此限ニ在ラス
債務者ノ財產カ總テノ義務ヲ辨濟スルニ足ラサル塲合ニ於テハ其價額ハ債權ノ目的、原因、體様ノ如何ト日附ノ前後トニ拘ハラス其債權額ノ割合ニ應シテ之ヲ各債權者ニ分與ス但其債權者ノ間ニ優先ノ正當ナル原因アルトキハ此限ニ在ラス
財產ノ差押、賣却及ヒ其代價ノ順序配當又ハ共分配當ノ方式ハ民事訴訟法ヲ以テ之ヲ規定ス
第二條 義務履行ノ特別ノ擔保ハ對人ノモノ有リ物上ノモノ有リ
對人擔保ハ左ノ如シ
第一 保證
第二 債務者間又ハ債權者間ノ連帶
第三 任意ノ不可分
物上擔保ハ左ノ如シ
第一 留置權
第二 動產質權
第三 不動產質權
第四 先取特權
第五 抵當權
第一部 對人擔保
第一章 保證
第三條 保證ハ任意ノモノ有リ法律上ノモノ有リ又裁判上ノモノ有リ
下ノ第一節乃至第三節ノ規定ハ右三種ノ保證ニ共通ナリ
第一節 保證ノ目的及ヒ性質
第四條 保證ハ或人カ債務者ノ其義務ヲ履行セサルニ於テハ之ヲ履行スルコトヲ諾約スル契約ナリ此約務ハ債務者ノ過失ニ歸ス可キ履行不能ノ塲合ニ於テハ債權者ニ賠償スルノ約務ヲ暗ニ包含ス
第五條 保證ハ主タル義務ノ目的ト異ナルモノヲ目的ト爲ストキハ保證トシテハ無効ナリ
然レトモ保證人ハ主タル債務者ノ諾約シタル物又ハ所爲ノ對價トシテ不履行ヲ豫見シタル過怠金額ヲ有効ニ諾約スルコトヲ得
第六條 保證人ノ義務ハ主タル義務ヨリ一層大ナルコトヲ得ス又一層重キ體樣ニ服スルコトヲ得ス若シ保證人ノ義務カ一層大ナルトキ又ハ一層重キトキハ主タル義務ノ限度及ヒ體様ニ之ヲ減ス
第七條 前條ノ禁止ノ規定ハ債務者ヨリ其主タル義務ノ爲メ物上擔保ヲ供セサルトキ保證人ヨリ其從タル義務ノ物上擔保ヲ供スルコトヲ妨ケス又保證人カ主タル債務者ヨリ一層嚴ナル執行方法ニ服スルコトヲモ妨ケス
保證人ハ亦第三者ヲ引受人トシテ己レヲ保證セシムルコトヲ得此引受人ニ對シテハ保證人ハ主タル債務者ノ地位ヲ有ス
第八條 金額又ハ定マリタル物ニ制限シタル保證ハ其利息ニモ果實ニモ其他ノ附從物ニモ及フコト無シ
然レトモ主タル義務ノ無限ノ保證ハ要約シタル利息、遲延ノ利息其他此債務ノ天然上、法律上又ハ合意上ノ附從物ニ及ヒ又主タル債務者ニ對シテ爲シタル最初ノ訴ノ費用及ヒ其訴ヲ保證人ニ告知シタル以後ノ費用ニモ及フ
第九條 總テ有効ナル義務ハ之ヲ保證スルコトヲ得
無能力者ノ取消スコトヲ得ヘキ義務ト雖モ亦有効ニ之ヲ保證スルコトヲ得其義務カ裁判上ニテ取消サレタル後ト雖モ保證ハ其効力ヲ存ス但保證人カ其保證ノ際債務者ノ無能力ヲ知リタルトキニ限ル
第十條 何人ニテモ將來ノ債務ヲ保證スルコトヲ得又債權者又ハ債務者ノ方ニ於テ隨意ノ條件ニ繫カル債務ヲモ保證スルコトヲ得但保證人ニ於テ其債務ノ性質及ヒ廣狹ヲ查定スルコトヲ得ルトキニ限ル
第十一條 何人ニテモ債務者ノ委任ヲ受ケ又ハ其不知ニ於テ又其意ニ反シテモ其保證人ト爲ルコトヲ得
辨濟シタル保證人ノ其債務者ニ對スル求償ノ塲合ハ第二節第二款ニ於テ之ヲ規定ス
第十二條 有効ニ保證人ト爲ルニハ無償名義ニテ義務ヲ負擔スルノ能力ヲ有スルコトヲ要ス
然レトモ主タル契約カ有償名義ナルトキハ保證人ノ債務者ニ對スル無能力ハ債權者カ之ヲ知リタルトキニ非サレハ保證人ヨリ債權者ニ其無能力ヲ以テ對抗スルコトヲ得ス
第十三條 債務ヲ保證スルノ意思ハ之ヲ明示セサルトキハ明カニ事情ヨリ生スルコトヲ要ス然レトモ其意思ハ契約者ノ一方ヲ他ノ一方ニ勸メ又ハ其一方ノ現在若クハ將來ノ有資力ヲ確言シタル事實ノミヨリ之ヲ推測スルコトヲ得ス
若シ證書ノ署名者中ノ一人カ共同債務者ナルヤ又ハ保證人ナルヤニ付キ疑アルトキハ之ヲ保證人ト看做ス
第十四條 保證人ノ義務ハ其相續人ノ負擔ニ歸シ又債權者ノ相續人ノ利益ニ歸ス但反對ノ要約アルトキハ此限ニ在ラス
第十五條 債務者カ保證人ヲ立ツ可キ合意ヲ以テ義務ヲ負ヒタルトキハ其債務者ハ債務ノ性質及ヒ大小ニ應シ有資力ノ人ニ非サレハ保證人トシテ之ヲ立ツルコトヲ得ス
若シ右ノ保證人カ無資力ト爲リタルトキハ債務者ハ前項ト同一ノ條件ヲ具備スル他ノ者ヲ立ツルコトヲ要ス
此他保證人ハ辨濟ノ有ル可キ控訴院ノ管轄地内ニ於テ住所ヲ有シ又ハ之ヲ選定スルコトヲ要ス
債權者ヨリ人ヲ指定シテ保證人ヲ要約シタルトキハ本條ノ條件ヲ要セス
第十六條 債務者カ前條ノ條件ヲ具備スル保證人ヲ立ツルコト能ハサルトキハ十分ナル物上擔保ヲ與フルコトヲ得
第十七條 商證券ノ保證及ヒ仲買人カ委託者ニ對シテ諾約シタル擔保ノ特例ハ商法ニ於テ之ヲ規定ス
第二節 保證ノ効力
第一款 保證人債權者間ノ保證ノ効力
第十八條 債權者ハ債務者ニ義務履行ノ催告ヲ爲シタルモ其効果アラサリシコトノ證據ヲ保證人ニ示サスシテ之ヲ訴追スルコトヲ得ス
然レトモ債務者カ行方知レス又ハ破產ノ宣告ヲ受ケ若クハ顯然タル無資力ノ形狀ニ在ルトキハ右ノ催告ヲ必要トセス
第十九條 保證人ハ右ノ外下ノ制限及ヒ條件ニ從ヒ債權者カ豫メ債務者ノ財產ヲ撿索シテ之ヲ賣ラシムルコトヲ債權者ニ要求スルコトヲ得
第二十條 保證人ハ明示又ハ默示ニテ財產撿索ノ利益ヲ抛棄シ又ハ主タル債務者ト連帶シテ義務ヲ負擔シタルトキハ撿索ノ利益ヲ享ケス
總テノ塲合ニ於テ保證人ハ主タル債務ノ基本ヲ爭フノ前ニ撿索ノ利益ヲ以テ債權者ニ對抗セサリシトキハ其利益ヲ失フ
第二十一條 撿索ヲ要求スル保證人ハ債務者ノ不動產ニシテ辨濟ノ有ル可キ控訴院ノ管轄地内ニ在ルモノヲ債權者ニ指示スルコトヲ要ス
保證人ハ爭ニ係ル不動產ヲモ他ノ債權者ニ優先ニテ抵當ト爲リタル不動產ヲモ訴追シタル債權者ニ抵當ト爲リタル不動產ニシテ第三所持者ノ手ニ存スルモノヲモ指示スルコトヲ得ス
債務者ニ屬スル動產ニ付テハ債務者之ヲ物上擔保トシテ既ニ債權者ニ供シタルトキニ非サレハ保證人其撿索ヲ要求スルコトヲ得ス
第二十二條 債權者撿索ノ有効ナル對抗ヲ受ケ其撿索ヲ爲スコトヲ怠リテ債務者其後無資力ト爲リタルトキハ保證人ハ債權者ノ撿索ニ因リ得タルコト有ル可キ金額ニ滿ツルマテ其義務ヲ免カル
第二十三條 一人ノ債務者ノ爲メ數人ノ保證人アルトキハ債務ハ均一ニテ當然其間ニ分タル但不均一ニテ分別スルコトヲ定メ又ハ其保證人カ或ハ債務者ト共ニ或ハ各自ノ間ニ連帶シテ義務ヲ負擔シ若クハ其他ノ方法ニテ分別ヲ抛棄シタトキハ此限ニ在ラス
保證ノ義務カ各別ノ證書ヨリ生スルトキト雖モ分別ノ利益ハ存在ス
第二十四條 保證人ハ撿索ノ利益ヲ用井タルト否ト分別ノ利益ヲ享クルト否トヲ問ハス訴追ヲ受ケタルトキハ第二十九條ニ明示シタル目的ヲ以テ債務者ヲ訴訟ニ參加セシムル爲メ基本ニ付テノ答辯前ニ民事訴訟法ニ定メタル方式及ヒ條件ニ從ヒ延期抗辯ヲ以テ債權者ニ對抗スルコトヲ得
第二十五條 保證人カ基本ニ付テ答辯スルトキハ主タル債務ノ組成又ハ其消滅ヨリ生スル抗辯ヲ以テ債權者ニ對抗スルコトヲ得
保證人ハ債務ヲ保證スルニ當リ債務者ノ無能力又ハ其承諾ノ瑕疵ヲ知ラサリシトキハ此等ノ事項ヨリ生スル無効ノ理由ヲ以テモ對抗スルコトヲ得
第二十六條 右ノ抗辯ニ付キ債權者ト保證人トノ間ニ有リタル判决ハ債務者ヲ害スルコトヲ得ス然レトモ之ヲ利スルコトヲ得但其判决ノ牽連シタル箇條ハ債務者ニ利ナルモノト不利ナルモノトヲ分ツコトヲ得ス
第二十七條 債務者ニ對シテ時効ヲ中斷シ又ハ債務者ヲ遲滯ニ付スル行爲ハ保證人ニ對シテ同一ノ効力ヲ生ス
保證人ニ對シタル右同一ノ行爲ハ保證人カ債務者ノ委任ヲ受ケ又ハ債務者ト連帶シ義務ヲ負擔シタルトキニ非サレハ債務者ニ對シテ効力ヲ生セス
第二十八條 主タル債務者ノ爲シタル債務ノ自白ハ保證人ヲ利シ又ハ之ヲ害ス
保證人ト債權者トノ間ニ爲シタル右同一ノ行爲ハ債務者ヲ利ス然レトモ委任又ハ連帶アル塲合ニ非サレハ之ヲ害セス
第二款 保證人債務者間ノ保證ノ効力
第二十九條 債權者ヨリ訴追ヲ受ケタル保證人ハ第二十四條及ヒ財產編第三百九十九條ニ揭ケタル如ク主タル請求ニ對シテ債務者ノ答辯ヲ要ス可キ塲合ニ於テハ其答辯ヲ爲サシムル爲メ又債務者ノ敗訴ノ言渡ヲ受クル塲合ニ於テハ債務者ニ對シテ次條ニ定メタル賠償ノ言渡ヲ得ル爲メ擔保附帶ノ請求ヲ以テ債務者ヲ訴訟ニ召喚スルコトヲ得
右擔保ノ附帶ノ請求ハ債務者ノ委任ヲ受ケテ義務ヲ負擔シタル保證人ノミニ屬ス
第三十條 主タル債務ヲ辨濟シ其他自己ノ出捐ヲ以テ債務者ニ義務ヲ免カレシメタル保證人ハ債務者ヨリ賠償ヲ受クル爲メ之ニ對シテ擔保訴權ヲ有ス但左ノ區別ニ從フ
第一 保證人カ債務者ノ委任ヲ受ケテ義務ヲ負擔シタルトキハ其債務者ニ義務ヲ免カレシメ又ハ債務者ノ名ニテ辨濟シタル元利、其擔當シタル費用、立替ヲ爲シタル時ヨリ其利息其他損害アルトキハ其賠償ノ金額ヲ債務者ヨリ償還セシムルコトヲ得又此委任ノ塲合ニ於テ保證人ハ其分限ヲ以テ言渡ヲ受ケタルトキハ直チニ其賠償ヲ受クル爲メ訴ヲ爲スコトヲモ得
第二 保證人カ債務者ノ不知ニテ義務ヲ負擔シタルトキハ債務者ノ義務ヲ免カレシメタル日ニ於テ之ニ得セシメタル有益ノ限度ニ從ヒ右ノ賠償ヲ受ク
若シ保證人カ債務者ノ意ニ反シテ義務ヲ負擔シタルトキハ保證人ノ求償ノ日ニ於テ債務者ノ爲メ存在スル有益ノ限度ニ非サレハ右ノ賠償ヲ受クルコトヲ得ス
第三十一條 連帶又ハ不可分ニテ責ニ任スル數人ノ債務者ヨリ保證人ニ委任ヲ爲シタル塲合ニ於テハ其債務者ハ財產取得編第二百五十五條ニ從ヒ保證人ニ對シテ連帶ノ擔保人タリ
第三十二條 債務者ヲ訴訟ニ參加セシムルコトヲ怠リタル保證人ハ其債務者カ債權者ニ對抗ス可キ排訴抗辯ヲ有シタルコトヲ證スルトキハ第三十條ニ定メタル求償權ヲ有セス
若シ債務者カ債權者ニ對抗ス可キ延期抗辯ノミヲ有シタルトキハ懈怠ナル保證人ノ求償ニ對シ之ヲ以テ對抗スルコトヲ得
第三十三條 保證人ハ有効ニ辨濟シタルモ債務者ニ有益ニ其旨ヲ通知スルコトヲ怠リ爲メニ債務者カ善意ニテ再ヒ辨濟シ其他有償名義ニテ自己ノ免責ヲ得タルトキモ亦其求償權ヲ失フ
右ニ反シテ債務者カ自ラ債務ヲ消滅セシメタルコトヲ保證人ニ通知スルヲ怠リタルトキハ債務者ハ塲合ニ從ヒ其債務ノ消滅後保證人ノ爲シタル辨濟ニ付キ責任アリトノ宣告ヲ受クルコト有リ
孰レノ塲合ニ於テモ利害ノ關係アル當事者ハ受取ルコトヲ得サルモノヲ受取リタル債權者ニ對シテ求償權ヲ有ス
第三十四條 委任ヲ受ケテ義務ヲ負擔シタル保證人ハ辨濟ヲ爲ス前又訴追ヲ受クル前ニテモ債務者ヨリ豫メ賠償ヲ受クル爲メ又ハ未定ノ損失ヲ擔保セシムル爲メ左ノ三箇ノ塲合ニ於テ之ニ對シ訴ヲ爲スコトヲ得
第一 債務者カ破產シ又ハ無資力ト爲リ且債權者カ淸算ノ配當ニ加入セサルトキ
第二 債務ノ滿期ノ到リタルトキ
第三 滿期ノ不定ナル債務カ其日附ヨリ十个年ヲ過キタルトキ
第三十五條 債權者カ完全ノ辨濟ヲ受ケサル間ハ前條及ヒ第三十條ニ依リ債務者ヨリ豫メ保證人ニ供ス可キ賠償ハ債務者其債權者ニ對スル自己ノ免責ヲ保スル爲メ債權者ノ名ヲ以テ之ヲ供託シ又ハ其他ノ方法ニテ之ヲ留存スルコトヲ得
第三十六條 主タル債務ヲ辨濟シタル總テノ保證人ハ第三十二條及ヒ第三十三條ニ定メタル制限ニ從フニ於テハ己レノ權利ニ基キテ有スル訴權ノ外債務者又ハ第三者ニ對シ債權者ノ有シタル總テノ權利ニ付キ財產編第四百八十二條第一號ニ從ヒテ代位ス
債權者カ債務者ノ不動產ニ付キ先取特權又ハ抵當權ヲ有シ其記入ヲ爲シタルトキハ保證人ハ代位ヲ目的トシテ自己ノ條件附ノ債權ヲ此記入ノ緣邊ニ附記スルコトヲ得又讓渡ノ塲合ニ於テハ其不動產ヲ所持スル第三者ハ滌除ノ爲メ債權者ノ外保證人ニ對シテモ亦提供ヲ爲スコトヲ要ス
債權者カ有益ナル時期ニ於テ右ノ記入ヲ爲サヽリシトキハ保證人ハ第四十五條及ヒ財產編第五百十二條ニ從ヒ債權者ニ對シテ自己ノ免責ヲ請求スルコトヲ得
第三十七條 連帶又ハ不可分ナル義務ノ數人ノ債務者アルトキハ保證人ハ其中ノ或ル者ヲ保證シ他ノ者ヲ保證セサルトキト雖モ右ノ代位ニ依リ債務者ノ各自ニ對シテ全部ニ付キ求償スルコトヲ得
第三款 共同保證人間ノ保證ノ効力
第三十八條 一箇ノ債務ニ付キ數人ノ保證人アリテ其中ノ一人カ任意ナルト否トヲ問ハス債務ノ全部ヲ辨濟シタルトキハ其保證人ハ主タル債務者ニ對スル求償ニ關シ上ニ記載シタル條件、制限及ヒ區別ニ從ヒ或ハ事務管理ノ訴權ニ因リ或ハ債權者ノ訴權ニ因リ他ノ保證人ノ各自ニ對シテ均一部分ニ付キ求償スルコトヲ得
右ノ保證人カ債務ノ全部ヲ辨濟セスシテ自己ノ部分ヨリ多ク辨濟シタルトキハ其超過額ノ爲メノ求償ハ他ノ共同保證人ノ間ニ均一ニ之ヲ分ツ
第三十九條 共同保證人中ニ無資力ト爲リタル者アルトキハ辨濟シタル者ハ其無資力者ノ引受人ニ對シテ求償權ヲ有ス若シ引受人アラサルトキハ無資力者ノ部分ハ債務ヲ辨濟シタル者ヲ加ヘ他ノ有資力ナル共同保證人ノ間ニ之ヲ分ツ
第四十條 前條ニ依リ訴ヲ受ケタル共同保證人ハ未タ主タル債務者ノ財產ノ撿索アラサルトキハ第二十條以下ニ定メタル規則及ヒ條件ニ從ヒテ豫メ主タル債務者ノ財產ノ撿索ヲ請求スルコトヲ得
右同一ノ權利ハ保證人ノ引受人ニモ屬ス
第四十一條 連帶又ハ不可分ナル債務ノ爲メ義務ヲ負擔シタル數人ノ保證人中全部履行ニ付キ訴ヲ受ケタル者ハ本訴ニ附帶シテ共同保證人ヲ擔保ノ爲メニ召喚シ之ニ對シ同一ノ判决ヲ以テ前數條ニ許サレタル言渡ヲ受シムルコトヲ得
第四十二條 保證人ノ一人ニ對スル時効中斷又ハ付遲滯ノ行爲ハ他ノ保證人ニ對シテ其効ナシ但其義務カ連帶ナルトキハ此限ニ在ラス
債權者ト保證人ノ一人トノ間ニ主タル債務ニ關シ爲サレタル判决及ヒ自白ハ他ノ保證人ヲ利スルコトヲ得然レトモ之ヲ害スルコトヲ得ス
第四十三條 相互ニ連帶シ又ハ債務者ト連帶シタル保證人中ニ無資力ト爲リタル者アルトキハ各保證人ノ間ニ第六十八條、第六十九條及ヒ第七十條ヲ其各條ニ記載シタル區別ニ從ヒテ適用ス
第三節 保證ノ消滅
第四十四條 保證ハ義務消滅ノ通常ノ原因ニ由リ直接ニ消滅ス
保證ノ更改、免除、相殺及ヒ混同ハ財產編第五百二條、第五百十一條、第五百二十條及ヒ第五百三十七條ニ於テ之ヲ規定ス
第四十五條 債權者カ故意又ハ懈怠ニテ保證人ノ其代位ニ因リテ取得スルコトヲ得ヘキ擔保ヲ減シ又ハ危クシタルトキハ保證人ハ債權者ニ對シテ自己ノ免責ヲ請求スルコトヲ得
總テ保證人ハ區別ナク又保證人ノ引受人ハ保證人ノ權利ニ基キ右ノ權利ヲ援用スルコトヲ得
第四十六條 保證ハ主タル義務消滅ノ總テノ原因ニ由リテ間接ニ消滅ス
債權者ト主タル債務者トノ間ニ爲シタル代物辨濟、更改、免除、相殺及ヒ混同ノ保證人ニ對スル効力ハ財產編第四百六十二條、第五百一條、第五百六條、第五百二十條及ヒ第五百三十七條ニ於テ之ヲ規定ス
第四節 法律上及ヒ裁判上ノ保證ニ特別ナル規則
第四十七條 法律ノ規定又ハ判决ニ從ヒテ保證人ヲ立ツルノ責アル者ハ自ラ保證人ヲ立テント約シタルトキト同一ニシテ第十五條及ヒ第十六條ニ定メタル如キ條件ヲ具備スル保證人ヲ立ツルコトヲ要ス
法律上及ヒ裁判上ノ保證人ヲ承認スルノ手續ハ民事訴訟法ニ於テ之ヲ規定ス
第四十八條 裁判所ハ法律カ裁判執行ノ爲メ保證人ヲ立テシムルノ權能ヲ付與シタル塲合ニ非サレハ此カ爲メ保證人ヲ立ツ可キヲ命スルコトヲ得ス
第四十九條 裁判上ノ保證人及ヒ其引受人ハ財產撿索ノ利益ヲ有スルコトヲ得ス
第五十條 法律上及ヒ裁判上ノ保證人ハ其債務者ニ對スル擔保ノ求償ニ關シテハ常ニ之ヲ債務者ノ代理人ト看做ス
第二章 債務者間及ヒ債權者間ノ連帶
總則
第五十一條 義務ノ目的單數ナルモ主タル當事者トシテ之ニ關係スル人複數ナルトキハ其義務ハ財產編第四百三十八條ニ指示シ且下ノ二節ニ記載スル如ク受方又ハ働方ニテ連帶タルコト有リ
第一節 債務者間ノ連帶
第一款 債務者間ノ連帶ノ性質及ヒ原因
第五十二條 債務者間ノ連帶即チ受方連帶ハ共同債務者ヲシテ其共通ノ利益ニ於テモ債權者ノ利益ニ於テモ相互ニ代人タラシム
此連帶ハ合意、遺言又ハ法律ノ規定ヨリ生スルコトヲ得
連帶ハ之ヲ推定セス如何ナル塲合ニ於テモ明示ニテ之ヲ定ムルコトヲ要ス但不可分ニ關シ第九十條ニ記載シタルモノハ此限ニ在ラス
第五十三條 數人ノ債務者ノ連帶義務ハ同一ノ行爲ヲ以テ又同時、同所ニ於テ之ヲ契約スルコトヲ要セス但其義務ノ目的及ヒ原因ハ同一ナルコトヲ要ス
又連帶債務者ハ別異及ヒ不均一ノ體樣又ハ負擔ヲ以テ責ニ任スルコトヲ得
第二款 債務者間ノ連帶ノ効力
第五十四條 數人ノ連帶債務者ヲ有スル債權者ハ其訴追セント擇ミタル債務者ニ對シ唯一人ノ債務者ニ於ケル如ク且其債務者ヨリ撿索又ハ分別ノ利益ノ抗辯ヲ受クルコト無ク義務全部ノ履行ヲ要求スルコトヲ得
又債權者ハ皆濟ヲ受クルニ至ルマテ同時又ハ順次ニ總債務者ヲ訴追スルコトヲ得
第五十五條 各債務者ハ訴ヲ受ケタルト否トヲ問ハス連帶債務全部ノ辨濟ヲ受クルコトヲ債權者ニ强要スルコトヲ得
第五十六條 連帶債務者ニシテ債務ニ於ケル全部又ハ自己ノ部分ヨリ多額ニ付キ訴ヘラレタル者ハ共同債務者ヲ訴訟ニ召喚シ附帶ノ擔保方法ヲ以テ其債務者ヲシテ答辯又ハ辨濟ヲ擔任セシムル爲メ必要ナル期間ヲ請求スルコトヲ得但債權者ニ對シテハ訴追ヲ受ケタル債務者ノミ其責ニ任ス
共同債務者ハ亦其利益保護ノ爲メ任意ニ自費ヲ以テ訴訟ニ參加スルコトヲ得
第五十七條 連帶債務ノ履行ノ爲メ訴ヲ受ケタル各債務者ハ自己ノ權利ニ基クト共同債務者ノ權利ニ基クトヲ問ハス義務ノ組成又ハ消滅ヨリ生スル答辯方法ヲ以テ債務ノ全部ニ付キ債權者ニ對抗スルコトヲ得
右ノ外更改、免除、相殺及ヒ混同ニ關シテハ財產編第五百一條第五百六條、第五百九條、第五百二十條及ヒ第五百三十四條ノ規定ニ從フ
第五十八條 債務者ノ一人ノ無能力又ハ承諾ノ瑕疵ニ基キタル答辯方法ハ其人自身ニ非サレハ之ヲ援用スルコトヲ得ス然レトモ此答辯方法カ一旦許サレタル上ハ債務ニ於ケル其者ノ部分ニ付キ他ノ債務者ヲ利ス但他ノ債務者カ契約ノ際義務履行ニ付キ其者ノ分擔ヲ豫期スルコト有リタルトキニ限ル
第五十九條 前二條ニ規定シタル種種ノ事項ニ付キ債權者ト債務者ノ一人トノ間ニ爲サレタル判决及ヒ自白ハ他ノ債務者ノ利害ニ於テ前二條ニ同シキ限度及ヒ區別ヲ以テ其効力ヲ生ス
第六十條 一人ノ債務者ト他ノ債務者トノ間ニ於ケル連帶ノ成立ノミニ關シテ其一人ト債權者トノ間ニ爲サレタル判决及ヒ自白ハ他ノ債務者ヲ害セス又之ヲ利セス
第六十一條 連帶債務者ノ一人ニ對シ債權者ノ利益ニ於テ時効ヲ中斷シ又ハ付遲滯ヲ成ス原因ハ他ノ債務者ニ對シテ同一ノ効力ヲ有ス
債務者ノ一人ニ對シ債權者ノ利益ニ於テ存スル時効停止ノ原因ハ他ノ債務者ノ利益ニ於テ其部分ノ爲メ時効ノ進行スルコトヲ妨ケス
第六十二條 若シ連帶債務者ノ一人カ數名ノ相續人ヲ遺シテ死亡シタルトキハ他ノ債務者ノ一人ニ關スル訴追ノ行爲、判决及ヒ自白ハ其各相續人ニ對シ債務ノ全部ニ於ケル其相續部分ノ割合ニ非サレハ効力ヲ生セス
各相續人ハ亦其相續部分ノ割合ニ非サレハ訴追セラレス又前記ノ行爲ノ効力ヲ受ケス此塲合ニ於テ前記ノ行爲ハ亦從來ノ債務者ノ各自ニ對シ同一ノ限度ヲ以テ其効力ヲ生ス
債權者ト右相續人ノ一人トノ間ニ爲サレタル右同一ノ行爲ハ他ノ相續人ニ對シテ効力ナシ
第六十三條 義務ノ目的物ノ滅失其他總テ義務履行ノ不能カ連帶債務者ノ一人ヲ過失ニ因リ又ハ其付遲滯後ニ生スルトキハ他ノ債務者ハ債權者ニ對シ連帶シテ損害賠償又ハ過怠約款ノ責ニ任ス但過失アリ又ハ遲滯ニ在リシ債務者ニ對スル他ノ債務者ノ求償權ヲ妨ケス
債務者ノ一人カ死亡シタルトキハ他ノ債務者及ヒ死者ノ相續人ノ相互ノ責任ハ前條ノ規定ニ從フ
第六十四條 連帶債務者中ニテ債務ヲ辨濟シ其他自己ノ出捐ヲ以テ共同ノ免責ヲ得セシメタル者ハ他ノ債務者ニ對シ辨濟又ハ免責ノ限度ニ於テ其各自ノ負擔部分ニ付キ自己ノ權利ニ基キテ求償權ヲ有ス
右ノ求償中ニハ會社及ヒ代理ノ規則ニ從ヒ辨償金及ヒ必要ナル出捐ノ賠償ノ外辨償以後ノ法律上ノ利息及ヒ避クルコトヲ得サリシ費用ヲ包含ス
第六十五條 債務ヲ辨濟シタル債務者ハ債權者ノ實際受取リタルモノヽ限度ニ於テノミ財產編第四百八十二條第一號ニ從ヒ法律上ノ代位ニ因リテ其債權者ノ權利及ヒ訴權ヲ行フコトヲ得
然レトモ其債務者ハ前條ニ記載シタル如ク其共同債務者ノ各自ノ間ニ於テ自己ノ訴ヲ分ツコトヲ要ス
第六十六條 不注意ニテ辨濟シタル保證人ニ對シ第三十二條及ヒ第三十三條ニ規定シタル求償ノ失權ハ訴追又ハ辨濟ヲ共同債務者ニ告知スルコトヲ怠リタル連帶債務者ニ對シテ之ヲ適用ス
第六十七條 共同債務者ノ一人カ上ニ指示シタル方法ノ一ニ因リ求償ノ行ハレタル當時ニ於テ無資力ナルトキハ無資力者ノ部分ハ辨濟シタル者ヲモ加ヘテ他ノ資力アル者ノ間ニ割合ニ應シテ之ヲ分ツ伹要求者ノ責ニ歸ス可キ懈怠アリシトキハ此限ニ在ラス
第六十八條 何等ノ辨濟モ有ラサル前ニ連帶債務者ノ一人ノ無資力ト爲リタルトキハ債權者ハ其債權ノ全額ニ付キ淸算ニ加ハルコトヲ得
此塲合ニ於テ辨濟ノ殘額ハ他ノ債務者之ヲ負擔ス但其債務者ノ自己ノ部分外ニ負擔シタルモノニ對スル求償ハ其淸算ニ加ハリタル他ノ債權者ヲ害スルコトヲ得ス
第六十九條 債務者ノ一人ノ無資力ト爲リタル前ニ一分ノ辨濟アリタルトキハ債權者ハ辨濟殘額ノ爲メニ非サレハ其淸算ニ加ハルコトヲ得ス又一分ノ辨濟ヲ爲シタル他ノ債務者ハ第六十四條ニ從ヒ自己ノ受取ル可キモノヲ辨償セシムル爲メ淸算ニ加ハルコトヲ得
第七十條 何等ノ辨濟モ有ラサル前ニ總テノ連帶債務者又ハ其中ノ數人ノ無資力ト爲リタル塲合ニ於テ債權者ハ其債權ノ全額ニ付キ各淸算ニ加ハルコトヲ得
然レトモ債權者カ淸算ノ一ニ於テ配當金ヲ受取リタルトキハ他ノ淸算ニ於テ其債權ノ全額ニ從ヒ債權者ニ充テタル新配當金ハ以前ノ配當ニ於テ未タ受取ラサルモノヽ割合ニ應スルニ非サレハ之ヲ債權者ニ拂渡スコトヲ得ス
右拂渡ノ殘額ハ各淸算ニ返還ス但各淸算ノ辨濟シタルモノヽ割合ニ從フ
第三款 債務者間ノ連帶ノ終了
第七十一條 債權者カ總債務者ニ對シテ連帶ヲ抛棄スルトキハ財產編第四百三十八條第一項ニ規定シタル如ク其債務者ノ義務ハ單ニ連合ノモノト爲リテ存シ其他ノ性質ヲ變スルコト無シ
第七十二條 財產編第五百十條ニ從ヒ明示又ハ默示ニテ債務者ノ一人又ハ數人ニ對シテノミ連帶ノ抛棄アリタルトキハ他ノ債務者ハ連帶ノ免除ヲ得タル者ノ部分ニ於テノミ其義務ヲ免カル
連帶ノ免除ヲ得サル債務者中ニ無資力者アルトキハ債權者ハ其無資力ニ付キ連帶ノ免除ヲ得タル者ノ部分ヲ負擔ス
第七十三條 債權者カ連帶債務者ノ一人ヨリ供シタル擔保ニシテ他ノ債務者ノ辨濟シテ代位スルコトヲ得ヘキモノヽ全部又ハ一分ヲ毁損シ又ハ滅失セシメタルトキハ他ノ債務者ハ其擔保ヲ供シタル者ノ部分ニ付キ連帶ノ義務ヲ免カレント請求スルコトヲ得
右ノ請求ニ因リテ宣告シタル免責ハ連帶ノ任意免除ト同一ノ効力ヲ有ス
第四款 全部義務
第七十四條 財產編第三百七十八條、第四百九十七條第二項及ヒ其他法律カ數人ノ債務者ノ義務ヲ其各自ニ對シ全部ノモノト定メタル塲合ニ於テハ相互代理ニ付シタル連帶ノ効力ヲ適用スルコトヲ得ス但其總債務者又ハ其中ノ一人カ債務ノ全部ヲ辨濟スルノ言渡ヲ受ケタルトキモ亦同シ
然レトモ一人ノ債務者ノ爲シタル辨濟ハ債權者ニ對シ他ノ債務者ヲ免カレシム又辨濟シタル者ハ事務管理ノ訴權ニ依リ又ハ債權者ノ代位訴權ニ依リテ他ノ債務者ニ對シ其部分ニ付キ求償權ヲ有ス
第二節 債權者間ノ連帶
第一款 債權者間ノ連帶ノ性質及ヒ原因
第七十五條 債權者間ノ連帶即チ働方連帶ハ權利ノ保存及ヒ行使ニ付キ其債權者ヲシテ互ニ代人タラシム
此連帶ハ合意又ハ遺言ヨリ生スルコトヲ得
第七十六條 數人ノ連帶債權者ニ對スル債務者ノ約務ハ同一ノ行爲ヲ以テ又同時、同所ニ於テ之ヲ契約スルコトヲ要セス但其義務ノ目的及ヒ原因ハ同一ナルコトヲ要ス
又債務者ハ數人ノ債權者ニ對シ別異及ヒ不均一ノ體樣又ハ負擔ヲ以テ責ニ任スルコトヲ得
第二款 債權者間ノ連帶ノ効力
第七十七條 各連帶債權者ハ唯一人ノ債權者ナル如ク義務全部ノ履行ヲ債務者ニ要求スルコトヲ得
債權者ノ一人カ訴ヲ起シタルトキハ他ノ各債權者ハ共通ノ利益及ヒ自己ノ利益ノ保護ノ爲メ訴訟ニ參加スルコトヲ得
第七十八條 債務者ハ債權者ノ一人ヨリ訴追又ハ合式ノ要求ヲ受ケサル間ハ債務ノ全額ノ辨濟ヲ受クルコトヲ債權者ノ各自ニ强要スルコトヲ得之ニ反スル塲合ニ於テハ訴追者又ハ要求者ニ對スルニ非サレハ辨濟ヲ爲スコトヲ得ス
若シ同時ニ數人ノ訴追者又ハ要求者アルトキハ債務者ハ總要求者ニ對スルニ非サレハ辨濟ヲ爲スコトヲ得ス
第七十九條 義務組成ノ瑕疵ニ基キタル抗辯ニ付キ有リタル判决ハ債務ノ全部ニ對シ總債權者ノ利害ニ於テ其効力ヲ生ス但訴訟ニ其名ヲ出タサヽリシ者ニ對シテモ亦同シ
第八十條 義務消滅ノ原因ニ基キタル抗辯ニ付キ有リタル判决ハ左ノ區別ニ從フニ非サレハ訴訟ニ與カラサリシ債權者ニ對シテ其効ナシ
第一 第七十八條ニ定メタル條件ニ從ヒ債權者ノ一人ニ爲シタル辨濟ハ全部ニ付キ總債權者ニ之ヲ以テ對抗スルコトヲ得又財產編第五百二十條第三項ニ記載シタル如ク債權者ノ一人ニ對シ債務者ノ取得シタル相殺ニ付テモ亦同シ但相殺ノ原因カ第七十八條ニ從ヒ債務者ヨリ其債權者ニ有効ニ辨濟スルコトヲ得ヘキ時期ニ於テ生シタルトキニ限ル
第二 債權者ノ一人ノ行爲ヨリ生スル更改、免除及ヒ混同ハ財產編第五百一條第三項、第五百十四條第一項及ヒ第五百三十四條第二項ニ從ヒ其債權者ノ部分ニ非サレハ債務ヲ消滅セシメス但此行爲ハ他ノ債權者ノ訴追又ハ要求ノ前ニ在リシコトヲ要ス
又右同一ノ行爲ニ關シ及ヒ辨濟又ハ相殺ニ關スル和解ニ付テモ亦同シ
第八十一條 債權者中ノ一人ノ一身ニ限ル債務者ノ抗辯ニ付キ有リタル判决ハ他ノ債權者ヲ害セス又之ヲ利セス又債權者ノ一人カ其連帶ニ於ケル權利ニ付キ債務者ト爲シタル和解ニ付テモ亦同シ
第八十二條 債權者ノ一人カ債務者ニ對シテ時効ヲ中斷シ又ハ其債務者ヲ遲滯ニ付スルノ行爲ハ全部ニ付キ他ノ債權者ヲ利ス
債權者ノ一人ノ利益ニ於テ法律ノ設定シタル時効ノ停止ハ債權ニ於ケル其部分ニ限リ其一人ノミヲ利ス
第八十三條 若シ連帶債權者ノ一人カ數人ノ相續人ヲ遺シテ死亡シタルトキハ債權ノ分別及ヒ前ニ指示シタル行爲ノ効力ハ第六十二條ニ記載シタル如ク受方連帶ニ於ケルト同一ノ方法ヲ以テ働方ニテ成ル
第八十四條 義務ノ全部又ハ一分ノ履行ヲ得タル連帶債權者ハ他ノ債權者ノ特別ノ關係及ヒ其相互ノ部分ニ從ヒ之ニ其利益ヲ分ツコトヲ要ス
第三款 債權者間ノ連帶ノ終了
第八十五條 債權者間ノ連帶ハ抛棄ニ因リテ止ム其抛棄ハ明示ニ非サレハ之ヲ爲スコトヲ得ス
第八十六條 連帶ノ抛棄ハ債權者ノ一人若クハ數人又ハ其總員ヨリ之ヲ爲スコトヲ得
總債權者ノ働方連帶ノ抛棄ハ第七十一條ニ規定シタル如ク受方連帶ノ抛棄カ共同債務者ニ對シテ生セシムルト同一ノ効力ヲ其債權者間ニ生セシム
若シ債權者ノ一人又ハ數人ノミカ抛棄ヲ爲シタルトキハ他ノ債權者ハ此抛棄ヲ爲シタル者ノ部分ニ付テノミ訴ヲ爲シ又ハ辨濟ヲ受クルノ權利ヲ失フ
第八十七條 連帶ノ抛棄ハ債務者ノ承諾ナクシテ有効ナリ
然レトモ其抛棄ハ之ヲ債務者ニ告知セシカ又ハ債務者明確ニ之ヲ知リタルトキニ非サレハ前記ノ規定ヲ以テ債務者ニ許シタル辨濟其他ノ行爲ニ對シテ債權者ヨリ之ヲ援用スルコトヲ得ス
債務者ハ抛棄ヲ利唱スルノ利益アルトキハ之ヲ利唱スルコトヲ得又抛棄カ其權利ノ詐害ニ於テ爲サレタルトキハ之ヲ駁擊スルコトヲ得
第三章 任意ノ不可分
第八十八條 債務ハ財產編第四百四十二條及ヒ第四百四十三條ニ規定シタル不可分ノ外尚ホ數人ノ債務者ノ負擔又ハ數人ノ債權者ノ利益ニ於テ不可分タルコトヲ得但財產編第四百四十四條ニ指示シタル如ク債務履行ノ擔保トシテ受方又ハ働方ノ連帶ニ併合シ又ハ併合セサルコト有リ
此不可分ハ合意又ハ遺言ヲ以テ之ヲ設定スルコトヲ得之ヲ任意ノ不可分ト謂フ
任意ノ不可分ハ明示タルコトヲ要ス
第八十九條 債務者ノ負擔又ハ債權者ノ利益ニ於テ任意ノ不可分ヲ設定シタルトキハ之ト同一ナル性質ノ連帶ヲ暗ニ設定シタルモノト看做ス但反對ノ合意アルトキハ此限ニ在ラス
第九十條 債務者ノ負擔ニ於テ設定シタル不可分ハ同時ニ働方タル可キコトノ明示アルニ非サレハ債權者ノ利益ニ於テ存立セス
又債權者ノ利益ニ於テ設定シタル不可分ハ同時ニ受方タル可キコトノ明示アルニ非サレハ債務者ノ負擔ニ於テ存立セス
第九十一條 受方ナルト働方ナルトヲ問ハス任意ノ不可分ヲ設定シタルトキハ受方又ハ働方ノ連帶ヲ明示ニテ阻却セサル塲合ニ限リ債務者又ハ債權者ノ間ニ此連帶ノ効力ヲ生セシム
此他債務者又ハ債權者ノ一人カ數人ノ相續人ヲ遺シテ死亡シタルトキハ債務者ノ各相續人ハ全部履行ノ要求ヲ受ケ又債權者ノ各相續人ハ全部履行ノ要求ヲ爲スコトヲ得但其各自ノ間ニ於テ連帶ナシ
第九十二條 債務者ノ一人又ハ債務者ノ相續人ノ一人ニ對シテ時効ヲ中斷スル原因ハ總債務ニ付キ他ノ債務者又ハ相續人ニ對シテ中斷ヲ生ス
又債權者ノ一人又ハ債權者ノ相續人ノ一人ノ權利ヨリ生スル時効ノ中斷又ハ其停止ノ原因ハ他ノ債權者又ハ相續人ヲ利ス
第九十三條 相續人ノ一人ノ付遲滯及ヒ過失ハ他ノ相續人ヲ害セス
相續人ノ一人ニ不利ナル既判力及ヒ自白ニ付テモ亦同シ
第九十四條 債權カ受方又ハ働方ニテ同時ニ連帶及ヒ不可分ナルトキハ第八十五條及ヒ財產編第五百十條ニ記載シタル區別ニ從ヒ明示ナルト默示ナルトヲ問ハス連帶ノ抛棄ハ亦任意ノ不可分ノ抛棄ヲ惹起ス
右二箇ノ擔保ノ共ニ存スル塲合ニ於テ不可分ノ抛棄ハ連帶ヲ存立セシム
第九十五條 財產編第四百四十五條乃至第四百五十條、第五百一條第四項、第五百六條第三項、第五百九條第一項、第五百十三條、第五百十四條第二項、第五百二十條第四項、第五百三十五條及ヒ第五百三十六條第二項ノ規定ハ任意ノ不可分ニ適用スルコトヲ得ヘキトキハ之ヲ適用ス
債權者カ不可分ニテ義務ヲ負ヒタル債務者ノ代位ニ因リテ得ルコト有ル可キ擔保ヲ滅失セシメ又ハ減少セシメタルトキハ其債務者ハ債權者ニ對シテ第七十三條ノ免責ヲ援用スルコトヲ得
第二部 物上擔保
第一章 留置權
第九十六條 留置權ハ財產編及ヒ財產取得編ニ於テ特別ニ之ヲ規定シタル塲合ノ外債權者カ既ニ正當ノ原因ニ由リテ其債務者ノ動產又ハ不動產ヲ占有シ及ヒ其債權カ其物ノ讓渡ニ因リ或ハ其物ノ保存ノ費用ニ因リ或ハ其物ヨリ生シタル損害賠債ニ因リテ其物ニ關シ且其占有ニ連繫シテ生シタルトキハ其占有シタル物ニ付キ債權者ニ屬ス
委任ナクシテ他人ノ事務ヲ管理シタル者ハ必要ノ費用及ヒ保持ノ費用ノ爲メニ非サレハ其管理シタル物ニ付キ留置權ヲ有セス
第九十七條 債權者カ留置スルノ權利ヲ有シタル物ノ一分ノミヲ留置シタルトキ其部分ハ總債務ヲ擔保スルニ足ルニ於テハ之ヲ擔保ス
右ニ反シテ債權者又ハ其相續人ハ債務者又ハ其相續人ヨリ一分ノ辨濟ヲ受ケタリト雖モ全部ノ辨濟ヲ受クルニ至ルマテ留置權ニ服シタル總テノ物ヲ留置スルコトヲ得
第九十八條 留置權ハ留置物ノ價額ニ付キ債權者ニ先取特權ヲ付與セス
然レトモ留置物ヨリ天然又ハ法定ノ果實又ハ產出物ノ生スルトキハ留置權者ハ他ノ債權者ニ先タチテ之ヲ收取スルコトヲ得但其果實又ハ產出物ハ其債權ノ利息ニ充當シ猶ホ餘分アルトキハ元本ニ充當スルコトヲ要ス
留置權者ハ其收取スルコトヲ怠リタル果實及ヒ產出物ニ付キ其責ニ任ス
第九十九條 留置權ハ債務者カ留置物ヲ讓渡シ又他ノ債權者カ之ヲ差押ヘ及ヒ賣却セシムルノ妨ト爲ラス
然レトモ孰レノ塲合ニ於テモ取得者ハ留置權者ニ全ク辨濟セスシテ其物ヲ占有スルコトヲ得ス
第百條 右ノ外動產又ハ不動產ノ留置權者ハ次ノ二章ニ規定シタル如ク動產又ハ不動產ノ質取債權者ト同一ノ責任ニ從フ
其他動產質及ヒ不動產質ニ關スル規定ハ此章ノ規定ニ觸レサル限リハ留置權ニ之ヲ適用ス特ニ債權者カ有意ニテ留置權ヲ行フコトヲ怠リ又ハ實際之ヲ行フコトヲ止メタルトキハ其留置權ヲ失フ
第二章 動產質
第一節 動產質契約ノ性質及ヒ組成
第百一條 動產質ハ債務者カ一箇又ハ數箇ノ動產ヲ特ニ其義務ノ擔保ニ充ツル契約ナリ
第百二條 動產質契約ハ債務者ノ委任ヲ受ケ又ハ好意ニテ債務者ノ爲メ擔保ヲ供スル第三者ト債權者トノ間ニモ亦之ヲ爲スコトヲ得
孰レノ塲合ニ於テモ動產質ヲ供シタル第三者ハ第三十條及ヒ第三十一條ニ從ヒ保證人ノ如ク債務者ニ對シテ求償權ヲ有ス
第百三條 動產質ハ其物ヲ處分スルノ能力ヲ有スル者ニ非サレハ有効ニ之ヲ供スルコトヲ得ス
合意上、法律上及ヒ裁判上ノ管理者ニ付テモ亦同シ此等ノ者ハ其權限ヲ踰エサルコトヲ要ス
若シ債務ニ關係ナキ第三者ヨリ動產質ヲ供シタルトキハ其第三者ハ第十二條ニ記載シタル如ク無償名義ニテ物ヲ處分スルノ能力ヲ有スルコトヲ要ス
第百四條 動產質ハ債權及ヒ質物ヲ明カニ指定セル證書ヲ以テスルニ非サレハ之ヲ設定スルコトヲ得ス
右質物ハ之ヲ他物ニ易フルコトヲ得サル様詳細ニ記載シ且要用アルトキハ之ヲ評價スルコトヲ要ス
若シ質物カ定量物ナルトキハ其種類、數量、尺度ヲ以テ之ヲ指定スルコトヲ要ス
第百五條 法律ニ從ヒ證人ニ依リテ債權ヲ證スルコトヲ得ル塲合ニ於テハ證書ノ錄製ヲ要セス此塲合ニ於テハ債權ノ額及ヒ質物ノ相違ナキコト其性質、價額ヲ或ハ併合シ或ハ各別ニ人證ヲ以テ證スルコトヲ得
第百六條 動產質ハ質取債權者カ有體ナル質物ヲ現實ニ且繼續シテ占有スルニ非サレハ之ヲ以テ第三者ニモ他ノ債權者ニモ對抗スルコトヲ得ス
然レトモ質物ハ當事者雙方カ選定シ又ハ債權者カ自己ノ責任ヲ以テ選定シタル第三者ノ手ニ之ヲ寄託スルコトヲ得
此規定ハ債權ノ無記名證券ニモ之ヲ適用ス
第百七條 質物カ債權ノ記名證券ナルトキハ質取債權者ハ其證券ヲ占有スルコトヲ要ス
此他記名證券ノ質ノ設定ハ債權ノ讓渡ヲ告知スル通常ノ方式ヲ以テ第三債務者ニ其設定ヲ告知シ又ハ其第三債務者カ任意ニテ之ニ參加スルコトヲ要ス
此他財產編第三百四十七條ノ規定ハ右ノ塲合ニ之ヲ適用ス
右ハ總テ裏書ヲ以テ取引ス可キ商證券又ハ商品ノ質ニ關シ商法ニ記載シタルモノヲ妨ケス
第百八條 會社ノ記名ノ株券又ハ債券ヲ質ト爲ストキハ證券ノ交付ノ外會社定款又ハ法律ニ於テ株券又ハ債券ノ讓渡ノ爲メニ定メタル方式ヲ以テ之ヲ會社ニ告知シ其帳簿ニ之ヲ記入スルコトヲ要ス
第百九條 動產質ハ當事者ノ意思ニ從ヒ働方及ヒ受方ニテ不可分タリ但反對ナル明示ノ合意アルトキハ此限ニ在ラス
動產質ハ債務者又ハ其相續人ノ一人ヨリ債務ノ一分ヲ辨濟シタルトキト雖モ元利及ヒ費用ノ皆濟ニ至ルマテ質物ノ全部及ヒ各箇ニ於テ存立ス
債權者ノ相續人ノ一人カ自己ノ部分ノ辨濟ヲ受ケタルトキト雖モ動產質ハ債權ニ於ケル他ノ相續人ノ部分ノ爲メ其相續人ノ擔保トシテ全部ニ於テ存立ス
第二節 動產質契約ノ効力
第百十條 質取債權者ハ質物ヲ返還スルマテ其看守及ヒ保存ニ付キ善良ナル管理者ノ注意ヲ加フルノ責アリ
質取債權者ハ債務者ノ許諾ヲ受ケスシテ質物ヲ賃貸スルコトヲ得ス又債務者ノ許諾ヲ受ケタルトキ又ハ物ノ使用カ其保存ニ必要ナルトキニ非サレハ自ラ之ヲ使用スルコトヲモ得ス
若シ質取債權者カ質物ヲ濫用スルトキハ其失權ノ宣告ヲ受クルコト有リ
第百十一條 質取債權者ハ自己ノ責任ヲ以テ質物ヲ自己ノ債權者ニ轉質ト爲スコトヲ得此塲合ニ於テハ轉質ヲ爲サヽレハ生セサル可キ意外又ハ不可抗ノ危險ニ付テモ亦其責ニ任ス
第百十二條 質物カ果實又ハ產出物ヲ生スルトキハ質取債權者ハ之ニ關シ留置權者ノ爲メ第九十八條第二項ニ定メタル權利及ヒ義務アリ
質ト爲シタル債權ニ關シテハ質取債權者ハ其利息ヲ收取シ之ヲ自己ノ債權ニ充當ス然レトモ債務者ノ特別ナル委任ヲ受ケスシテ其元本ヲ受取ルコトヲ得ス但裏書ヲ以テ取引ス可キ證券ニ關スルトキハ此限ニ在ラス
第百十三條 質取債權者カ質物保存ノ爲メ必要ノ出費ヲ爲シタルトキハ其辨償ハ此債權者ノ爲メ其債權ニ先タチ動產質ヲ以テ之ヲ擔保ス
質物ノ隱レタル瑕疵ニ因リテ債權者ノ受ケタル損害ノ賠償ニ付テモ亦同シ
第百十四條 質取債權者ハ動產質ノ附キタル主從ノ債務及ヒ前條ニ従ヒ受取ル可キ金額ノ皆濟ニ至ルマテ債務者及ヒ其讓受人ニ對シテ質物ノ占有ヲ留置スルコトヲ得
債權者ハ其債權ノ滿期ニ至ラサル間ハ債務者ノ他ノ債權者ヨリ爲ス質物ノ差押及ヒ其競賣ニ對抗スルコトヲ得
第百十五條 動產質ノ附キタル債務カ滿期ト爲リタルトキ債務者履行ヲ爲サヽルニ於テハ質取債權者又ハ其他ノ債權者ヨリ質物ノ競賣ヲ求ムルコトヲ得質取債權者ハ他ノ債權者ニ先タチ元利、費用及ヒ第百十三條ニ揭ケタル賠償金ノ辨濟ヲ受ク
第百十六條 他ノ債權者ヨリ競賣ヲ求メス又ハ之ヲ實行スルコトヲ得サルトキ質取債權者ハ質物ヲ己レノ有ト爲サントスルコトニ付キ債務者ト一致セサルニ於テハ鑑定人ノ評價シタル價額ニ滿ツルマテ質物ヲ辨濟ニ充ツ可キコトヲ裁判所ニ請求スルコトヲ得但其請求書ヲ債務者ニ豫メ提示スルコトヲ要ス
質物ノ價額カ債務ヲ超ユル塲合ニ於テハ質取債權者ハ債務者ニ其超過額ヲ辨償スルコトヲ要ス
第百十七條 總テ動產質契約ノ約款又ハ債務滿期前ノ合意ニシテ債權者ニ其債權ノ全部又ハ一分ニ付キ辨濟ノ爲メ裁判上ノ評價ナクシテ流質ヲ許スモノハ當然無効タリ
本條ノ禁止ヲ犯ス爲メ債務者カ債權者ニ爲シタル受戾約款附ノ賣買其他ノ合意ハ之ヲ無効ト宣告スルコトヲ得
本條ニ定メタル無効ハ質取債權者ヨリ之ヲ援用スルコトヲ得スシテ債務者又ハ其承繼人ノミ之ヲ援用スルコトヲ得
第百十八條 質物カ質取債權者ノ方ニ存スル間ハ其債務ノ免責時効ノ成就ヲ停止ス
第百十九條 質物ノ占有ハ常ニ容假ノ占有ニシテ其占有ノ繼續期ノ如何ニ拘ハラス又債務カ辨濟其他ノ方法ニテ消滅シタル後ト雖モ質取債權者ハ得取時効ヲ援用スルコトヲ得
然レトモ財產編第百八十六條ニ定メタル二箇ノ塲合ニ於テハ容假タルコトハ止ム
第三章 不動產質
第一節 不動產質ノ目的、性質及ヒ組成
第百二十條 不動產質契約ハ不動產質債權者ニ他ノ總債權者ヨリ先ニ其不動產ノ果實及ヒ入額ヲ收取スルノ權利ヲ付與ス
債務ノ期限ニ至レハ債權者ハ抵當權アル債權者ノ權利ヲ行フ
此期限ハ三十个年ヲ超過スルコトヲ得ス之ニ超ユルトキハ當然三十个年ニ減縮ス
此期限ハ縱令之ヲ延フルモ前後通算シテ三十个年ヲ超過スルコトヲ得ス
第百二十一條 不動產質ハ債務者ノ爲メ第三者ヨリ之ヲ設定スルコトヲ得其不動產質ハ債務者ト設定者トノ間ニ於テハ動產質ノ爲メ第百二條ニ定メタル効力ヲ生ス
第百二十二條 不動產質ハ第二百三條及ヒ第二百四條ニ從ヒ抵當ト爲スコトヲ得ヘキ權利ノ上ニ非サレハ之ヲ設定スルコトヲ得ス
此他設定者ハ質ト爲ス物又ハ權利ノ收益權ヲ自ラ有スルコトヲ要ス其質ハ如何ナル塲合ニ於テモ其收益權ノ繼續期間ヲ超過スルコトヲ得ス
不動產質設定ノ爲メニ要スル能力ハ第二百十五條及ヒ第二百十六條ニ定メタル抵當設定ノ能力ト同一ナリ
第百二十三條 不動產質カ合意上ノモノナルトキハ其質ハ公正證書又ハ私署證書ヲ以テスルニ非サレハ當事者ノ間ニ之ヲ設定スルコトヲ得ス
又不動產質ハ第二百十八條ニ從ヒ遺言上ノ抵當ノ許サルヽ塲合ニ於テハ遺言ヲ以テ之ヲ設定スルコトヲ得
不動產質ハ之ヲ設定スル證書又ハ遺言書ヲ財產編第三百四十八條第一號及ヒ第三號ニ從ヒテ登記シタル後ニ非サレハ之ヲ以テ第三者ニ對抗スルコトヲ得ス
右ノ登記ハ抵當ノ順位ヲ保存スル爲メ記入ニ同シキ効力ヲ有ス
第百二十四條 登記ス可キ證書又ハ遺言書ニハ質ト爲シタル不動產ノ精確ナル指示ノ外元利ノ債權額ヲ記載スルコトヲ要ス
右ノ指示カ不十分ナル塲合ニ於テハ既ニ爲シタル登記ノ緣邊ニ補足ノ合意ヲ附記シテ之ヲ補フ然レトモ此附記ハ其日附後ニ非サレハ効力ヲ生セス
第百二十五條 質ト爲シタル物權カ用益權、賃借權又ハ永借權ナルトキハ此權利ノ設定證書ノ登記ノ緣邊ニ其質權ヲ附記スルヲ以テ足レリトス
第百二十六條 質取債權者ハ右ノ外動產質ニ關シ第百六條ニ記載シタル如ク其債權ヲ擔保スル不動產ヲ現實ニ占有スルコトヲ要ス
第百二十七條 不動產質ハ動產質ニ關シ第百九條ニ記載シタル如ク働方及ヒ受方ニテ不可分タリ
第二節 不動產質ノ効力
第百二十八條 質取債權者ハ其債權ノ擔保ノ爲メ受取リタル不動產ヲ財產編第百十九條乃至第百二十二條ニ規定シタル制限ニ從ヒ且質契約ノ期間ニ限リ賃貸スルコトヲ得伹反對ノ合意アルトキハ此限ニ在ラス
又質取債權者ハ自己ノ權利ノ繼續期間ニ限リ動產質ニ關シ第百十一條ニ記載シタル如ク自己ノ責任ヲ以テ其不動產質ヲ讓渡スコトヲ得
第百二十九條 質取債權者ハ租稅其他每年ノ公課ヲ負擔ス
質取債權者ハ小修繕及ヒ必要且急迫ナル大修繕ヲ爲スノ責ニ任ス若シ此ニ違フトキハ損害賠償ヲ負擔ス但此大修繕ノ費用ハ債務者之ヲ償還ス
第百三十條 質カ建物、宅地ニ存スルトキハ債權者ハ自ラ之ヲ領スルト之ヲ賃貸スルトヲ問ハス其借賃ヲ自己ノ債權ノ利息ニ充當シ又超過額アルトキハ附隨ニテ又ハ債權カ利息ヲ生セサルトキハ全部ニテ元本ニ充當ス
質カ田畑山林ニ存スルトキハ當事者ノ間ニ於テ果實ト利息トハ計算セスシテ相殺シタリト看做ス但反對ノ合意アルトキ又他ノ債權者ニ對シ又ハ利息ノ法律上ノ制限ニ付キ顯著ナル詐害アルトキハ此限ニ在ラス
借賃又ハ果實ヲ利息ニ充當スルニハ每年ノ公課及ヒ保持、管理、栽培ノ費用ヲ扣除シタル純益價額ニ付キ之ヲ爲ス
第百三十一條 建物、宅地ノ質取債權者ハ如何ナル反對ノ合意アルニ拘ハラス常ニ己レノ爲メ負擔重キニ過クルト見ユル收益權ヲ將來ニ向ヒテ抛棄シ抵當權ノミヲ存スルコトヲ得然レトモ適當ノ時期ニ非サレハ之ヲ爲スコトヲ得ス
田畑山林ノ質取債權者ハ其抵當權ヲ併セ失フニ非サレハ收益權ヲ抛棄スルコトヲ得ス
第百三十二條 債權者ハ債務ノ皆濟ニ至ルマテ質ニ取リタル不動產ノ占有ヲ留置スルコトヲ得
然レトモ質取債權者ハ債務ノ滿期前又ハ滿期後ニ熟議ヲ以テスルト競賣ヲ以テスルトヲ問ハス債務者又ハ他ノ債權者ヨリ求メタル賣却ニ故障ヲ申立ツルコトヲ得ス
又質取債權者ハ滿期後自ラ賣却ヲ申立ツルコトヲ得右ハ下ニ指示シタル異別ノ効力ヲ生ス
第百三十三條 他ノ債權者又ハ債務者ヨリ求メタル賣却ノ塲合ニ於テハ質取債權者ハ其順位ニ於テ其抵當權ヲ行ヒ且其債權者カ如何ナル先取特權又ハ抵當權アル他ノ債權者ニモ先ンセラレサルトキ又ハ先ンセラルヽモ他ノ債權者カ總テノ代價ヲ取盡サスシテ殘餘アルトキハ取得者ハ質取債權者ノ尚ホ受ク可キモノヽ爲メ第百二十條ニ從ヒ質ノ終了ス可キ時期ニ至ルマテ留置權ニ遵フノ責アリ
先取特權若クハ抵當權アル他ノ債權者又ハ質取債權者ノ請求ニ因リテ增加競賣ノ有リタル塲合ニ於テモ亦同シ
第百三十四條 第百十條、第百十三條、第百十四條及ヒ第百十七條乃至第百十九條ハ不動產質ニモ之ヲ適用ス
第四章 先取特權
總則
第百三十五條 先取特權ハ或ル債權ノ原因ニ附着シタル優先權ナリ但動產質及ヒ不動產質ニ關シ合意ヨリ生スル先取特權ハ此限ニ在ラス
先取特權ハ法律ノ制限シテ定メタル原因、條件及ヒ目的物ニ於ケルニ非サレハ存立セス
先取特權カ第三所持者ニ對シテ追及權ヲ付與スル塲合及ヒ其權利行使ノ條件モ亦法律ヲ以テ之ヲ定ム
第百三十六條 先取特權ハ動產質及ヒ不動產質ニ關シ第百九條及ヒ第百二十七條ニ記載シタル如ク働方及ヒ受方ニテ不可分タリ
第百三十七條 先取特權ノ負擔アル物カ第三者ノ方ニテ滅失シ又ハ毁損シ第三者此カ爲メ債務者ニ賠償ヲ負擔シタルトキハ先取特權アル債權者ハ他ノ債權者ニ先タチ此賠償ニ於ケル債務者ノ權利ヲ行フコトヲ得但其先取特權アル債權者ハ辨濟前ニ合式ニ拂渡差押ヲ爲スコトヲ要ス
先取特權ノ負擔アル物ヲ賣却シ又ハ賃貸シタル塲合及ヒ其物ニ關シ債務者ニ金額又ハ有價物ヲ辨濟ス可キ總テノ塲合ニ於テモ亦同シ但災害ノ場合ニ於テ保險者ノ負擔スル賠償ニ關シ財產編第九十一條ニ記載シタルモノヲ妨ケス
第百三十八條 先取特權ノ種類ハ左ノ如シ
第一 債務者ノ總動產及ヒ附隨ニテ其總不動產ニ係ル一般ノ先取特權
第二 或ル動產ニ係ル特別ノ先取特權
第三 或ル不動產ニ係ル特別ノ先取特權
第百三十九條 一般又ハ特別ノ先取特權ヲ有スル債權者ノ相互ノ順位ハ本章ノ各節ニ於テ之ヲ規定ス
不動產ニ付キ先取特權ヲ有スル債權者ハ其同一ノ不動產ニ付キ抵當權ヲ有スル債權者ニ先タツ但法律ニ於テ特別ニ規定シタル塲合ハ此限ニ在ラス
同名義又ハ同順位ノ先取特權アル債權者ハ其債權額ノ割合ニ應シテ辨濟ヲ受ク
第百四十條 本法ニ定メタル先取特權ハ各人又ハ國庫ノ爲メ商法又ハ特別法ヲ以テ規定シ又ハ規定ス可キ先取特權ノ妨ト爲ラス
商法又ハ特別法ノ先取特權ハ別段ノ規定ナキ塲合ニ於テハ下ニ定メタル一般ノ規則ニ從フ
第一節 動產及ヒ不動產ニ係ル一般ノ先取特權
第一款 一般ノ先取特權ノ原因
第百四十一條 動產及ヒ不動產ニ係ル先取特權アル債權ハ左ノ如シ但下ニ定メタル制限及ヒ條件ニ從フ
第一 訴訟費用
第二 葬式費用
第三 最後疾病費用
第四 雇人給料
第五 飮食品供給
第一則 訴訟費用ノ先取特權
第百四十二條 訴訟費用ノ先取特權ハ或ハ債務者ノ財產ヲ保存スル爲メ或ハ其財產ヲ淸算シ之ヲ換價シ及ヒ有權者間ニ其代價ヲ配當スル爲メ各債權者ノ共同利益ニ於テ正當ニ爲セル裁判上若クハ裁判外ノ總テノ行爲ニ付キ金錢ノ立替ヲ爲シタル債權者又ハ給料若クハ謝金ヲ受取ル可キ債權者ニ屬ス
債權者ニ有益ナラサリシ費用ニ付テハ先取特權ハ特別ノモノニシテ其費用ノ爲メ利益ヲ得タル債權者ニ對スルニ非サレハ之ヲ以テ對抗スルコトヲ得ス
第二則 葬式費用ノ先取特權
第百四十三條 債務者ノ身分ニ應シ且慣習ニ從ヒテ爲シタル葬式費用ハ先取特權アルモノトス
先取特權ハ債務者ノ擔當タル其同居ノ親屬ノ葬式費用ニモ亦之ヲ適用ス
其先取特權ハ葬式ニ連續シタル出費ニ及ハス縱令其出費カ慣習上ノモノタルモ亦同シ
第三則 最後疾病費用ノ先取特權
第百四十四條 最後疾病費用ノ先取特權ハ債務者又ハ前條ニ指定シタル親屬ノ死亡前ノ疾病ニ關スル醫師、藥商、看病人其他ノ費用ヲ包含ス但債務者ノ破產前又ハ無資力前ノ疾病及ヒ其親屬ノ疾病ニ關スルモノモ亦同シ
長病ノ塲合ニ於テハ右ノ費用ノ先取特權ハ最後ノ一个年ノ費用ニ之ヲ制限ス
債務者又ハ其親屬カ右ノ費用ヲ生セシメタル疾病ノ外ナル原因ノ爲メ死亡シタルトキト雖モ先取特權ハ猶ホ存ス
第四則 雇人給料ノ先取特權
第百四十五條 雇人ノ先取特權ハ債務者又ハ其同居ノ親屬ノ一身ニ附屬シ或ハ債務者ノ家屋其他ノ所有物ニ附屬シタル雇人ニ屬ス
右ノ先取特權ハ最後ノ一个年ノ給料ノミヲ擔保ス
第五則 飮食品供給ノ先取特權
第百四十六條 飮食供給ノ先取特權ハ債務者又ハ其同居ノ親屬及ヒ雇人ニ供給シタル生活ニ必要ナル飮食品ノミニ之ヲ適用ス
右ノ先取特權ハ最後ノ六个月間ノ供給ノミヲ包含ス
第二款 一般ノ先取特權ノ効力及ヒ順位
第百四十七條 一般ノ先取特權ハ先取特權アル各債權者カ動產ニ付キ配當ヲ受ケ尚ホ不足アルニ非サレハ不動產ニ付キ之ヲ行フコトヲ得ス
然レトモ動產代價ノ配當ニ先タチ不動產代價ノ配當アルトキハ債權者ハ條件附ニテ不動產代價配當ニ加入スルコトヲ得但此配當加入ニ於テハ日後動產代價ノ配當加入ニ於テ辨濟ヲ受ケサルモノヽミヲ受ク
動產代價ノ配當ニ有益ナル時期ニ出席スルコトヲ怠リタル債權者ハ動產ニ付キ受ク可カリシモノヽ限度ニ於テ不動產ニ付キ其優先權ヲ失フ
第百四十八條 一般ノ先取特權ノ互ニ競合スル塲合ニ於テハ第百四十二條乃至第百四十六條ニ列記シタル相互ノ順序ニ從ヒテ配當加入ヲ定ム
右ノ數條ニ揭ケタル同名義ノ債權ハ同順位ニテ配當ニ加入ス
若シ一般ノ先取特權カ動產ニ係ル特別ノ先取特權ト競合スルトキハ其順位ハ下ノ第二節ニ於テ之ヲ規定ス
不動產ニ係ル特別ノ先取特權ハ一般ノ先取特權ニ先タチ又特別ノ抵當ハ後ノ設定ニ係ルト雖モ詐害ナキニ於テハ一般ノ先取特權ニ先タツ
然レトモ一般ノ先取特權ハ其發生前ノ取得ニ係ル一般ノ抵當ニモ先タツ
一般ノ抵當ノ負擔アル總不動產ヲ同時ニ賣却シタル塲合ニ於テハ一般ノ先取特權ハ各不動產ノ賣却代價ノ割合ニ應シテ其總不動產ニ付キ配當ニ加入ス
若シ順次ニ右ノ不動產ヲ賣却スルトキハ一般ノ先取特權ハ初ノ賣却ニ付キ全部之ヲ充當シ尚ホ附隨ニテ次ノ賣却ニ付キ之ヲ充當ス且此先取特權ヲ負擔セシ不動產ニ付キ一般ノ抵當ヲ有スル債權者ハ他ノ不動產ノ賣却代價ニ付キ求償權ヲ有ス
第百四十九條 一般ノ先取特權ハ不動產カ債務者ニ屬スル間ハ他ノ債權者ニ對抗スル爲メ其不動產ニ付テノ記入ヲ要セス
第二節 動產ニ係ル特別ノ先取特權
第一款 動產ニ係ル特別ノ先取特權ノ原因及ヒ目的
第百五十條 上ノ第二章ニ規定シタル先取特權ヲ有スル動產質取債權者ノ外下ニ指定シタル動產物ニ付キ先取特權ヲ有スル債權者ハ左ノ如シ
第一 不動產ノ賃貸人
第二 種子及ヒ肥料ノ供給者
第三 農業ノ稼人及ヒ工業ノ職工
第四 動產物ノ保存者
第五 動產物ノ賣主
第六 旅店主人
第七 舟車運送營業人
第八 保證金ヲ供スルノ義務アル公吏ノ職務上ノ所爲ニ對スル債權者
第九 右保證金ノ貸主
第一則 不動產賃貸人ノ先取特權
第百五十一條 居宅、倉庫其他ノ建物ノ賃貸人ハ賃借人ノ使用又ハ商工業ノ爲メ此建物内ニ備ヘタル動產物ニ付キ先取特權ヲ有ス
右ノ動產物カ賃借人ニ屬セスト雖モ先取特權ハ猶ホ存ス但賃貸人カ賃貸塲所ニ此動產物ノ持込ヲ知リタル當時其物ノ賃借人ニ屬セサル事實ヲ知ラス且其事實ヲ豫見スルニ足ル可キ理由アラサリシトキニ限ル
賃貸人ノ先取特權ハ現金ニ付キ又賃借人及ヒ其家屬ノ一身ノ使用ニ供シタル金玉寳石ニ付キ又無記名ナルモ證券ニ付キ之ヲ行フコトヲ得ス
第百五十二條 賃貸人ハ家賃ノ當期分及ヒ後ノ一期分ノ辨濟ヲ擔保スルニ足ル可キ動產ヲ賃貸シタル塲所ニ備フルコトヲ賃借人ニ要求スルコトヲ得賃借人之ヲ爲サス且此家賃ノ前拂又ハ之ニ相當スル其他ノ擔保ヲ供セサルトキハ賃貸人ハ賃貸借ヲ銷除スルコトヲ得
尚ホ損害アルトキハ其賠償ヲ求ムルコトヲ得
賃貸塲所ニ備ヘタル動產ヲ賃貸人ノ許諾ナクシテ取去リタルモ別ニ詐害ナキニ於テハ賃貸人ハ其擔保カ不足ト爲リタルトキ且賃借人ニ屬スル權利ノ限度内ニ非サレハ此動產ヲ其塲所ニ復セシムルコトヲ得ス
然レトモ賃貸人ノ權利ヲ詐害シテ爲シタル行爲ニ付テハ賃貸人ハ財產編第三百四十一條以下ニ記載シタル條件及ヒ區別ニ從ヒ第三者ニ對シテ其行爲ヲ廢罷セシムルコトヲ得
右ハ總テ第百三十七條ニ依リテ賃貸人ノ有スル權利ヲ妨ケス
第百五十三條 賃貸借ト永貸借トヲ問ハス田畑山林ノ賃貸人ハ賃借人カ居宅幷ニ土地利用ノ建物内ニ備ヘタル動產ニ付キ及ヒ土地ノ利用ニ供シタル動物、農具其他ノ器具ニ付キ上ト同一ノ限度ニ於テ先取特權ヲ有ス
右ノ賃貸人ハ賃貸シタル土地ノ收穫物其他ノ產出物カ猶ホ土地ニ附着スルト土地ニ保存シ有ルトヲ問ハス其收穫物及ヒ產出物ニ付キ先取特權ヲ有ス
分果賃貸人ハ賃貸シタル土地ノ收穫物其他ノ產出物ノ中ニテ自己ノ權利ヲ有スル部分カ猶ホ分果小作人ノ方ニ存スル間ハ他ノ債權者ニ先タチ直接ニ其收穫物其他ノ產出物ヲ己レノ有トシテ先取特權ヲ行フ
第百五十四條 永貸借ト賃貸借ト分果小作トヲ問ハス賃借人ハ賃貸人ノ求アルニ於テハ其擔保ノ爲メ其年ノ收穫物其他ノ產出物ヲ保存スルノ責アリ
第百五十二條ヲ以テ賃貸人ノ利益ニ於テ定メタル隱匿物ノ取戾權及ヒ賃貸借ノ銷除權ハ田畑山林ノ利用ニ供シタル物ノ賃貸借ニ之ヲ適用ス
第百五十五條 賃借權ノ讓渡又ハ轉貸ノ塲合ニ於テハ賃貸人カ賃貸塲所ニ備ヘ有ル動產ノ讓受人又ハ轉借人ニ屬スルコトヲ知ルト雖モ其先取特權ハ此等ノ物ニ及フ
此塲合ニ於テ先取特權ハ第百三十七條ニ從ヒ讓渡又ハ轉貸ノ代價トシテ主タル賃借人ノ受取ル可キ金額ニ及フ但前拂ヲ以テ賃貸人ニ對抗スルコトヲ得ス
第百五十六條 賃借人ノ財產ノ總淸算ノ塲合ニ於テハ賃貸人ハ土地、建物ノ借賃其他每年ノ負擔ニ付キ前年、本年及ヒ翌年ノ分ニ非サレハ前數條ニ定メタル先取特權ヲ有セス
此他先取特權ハ賃貸借ヨリ生スル他ノ合意上ノ義務、前年及ヒ本年ニ於テノ賃借人ノ過失又ハ懈怠ノ爲メ賃貸人ノ受ク可キ賠償及ヒ賃貸人カ將來ニ向ヒテ請求スルコト有ル可キ銷除ニ添ヒタル損害賠償ヲ擔保ス
第百五十七條 右淸算ノ塲合ニ於テ他ノ債權者ハ自己ノ利益ノ爲メ賃貸借ノ銷除ヲ防止シ及ヒ初ヨリ轉貸又ハ讓渡ノ禁止アルニ拘ハラス其賃借權ヲ轉貸シ又ハ讓渡スルコトヲ得但賃貸借殘期ノ爲メ賃貸人ニ土地、建物ノ借賃其他ノ納額ヲ擔保スルコトヲ要ス
第二則 種子及ヒ肥料ノ供給者ノ先取特權
第百五十八條 所有者、用益者、賃借人又ハ占有者ニ種子及ヒ肥料ヲ供給シタル者ハ之ヲ用井タル年ノ果實ニ付キ先取特權ヲ有ス
蠶種及ヒ蠶ノ飼養ニ供スル桑葉ヲ供給シタル者ニ付テモ亦同シ
第三則 農業稼人及ヒ工業職工ノ先取特權
第百五十九條 雇人ノ外其年ノ收穫ノ爲メ勞動シタル稼人ハ一个年間ノ給料ノ爲メ其收穫物ニ付キ先取特權ヲ有ス
又工業ノ職工ハ產出物又ハ製造品ニ付キ先取特權ヲ有ス但其年ノ給料中最後ノ三个月間ノ爲メノミニ限ル
第四則 動產物保存者ノ先取特權
第百六十條 動產物ノ修繕又ハ保存ノ費用ニ付テノ債權者ハ第九十六條ニ從ヒ己レニ屬スル留置權ヲ行ハサルトキト雖モ其修繕又ハ保存シタル物ニ付キ先取特權ヲ有ス
右ノ先取特權ハ金額、有價物其他動產物ニ關スル人權又ハ物權ヲ債務者ノ爲メニ追認シ保存シ又ハ實行セシメタル裁判上又ハ裁判外ノ行爲ノ費用ニ之ヲ適用ス
第五則 動產物賣主ノ先取特權
第百六十一條 動產物ノ賣主ハ代價辨濟ノ爲メ期限ヲ許與シタルト否トヲ問ハス其代價及ヒ利息ノ爲メ賣却物ニ付キ先取特權ヲ有ス
若シ補足額ヲ以テスル交換アリテ其補足額カ讓渡シタル物ノ價額ノ半ヲ超ユルトキハ先取特權ハ其補足額ノ爲メ交換物ニ付キ存立ス
第百六十二條 先取特權ハ賣却物カ用方ニ因リ又ハ不動產ニ合體スルニ因リテ不動產ト爲リタルトキト雖モ猶ホ買主ノ占有ニ在リ且變形セサル間ハ存續ス但合體ノ塲合ニ於テハ不動產ヲ毁損セスシテ其物ヲ分離スルヲ得ルコトヲ要ス
第百六十三條 賣主ノ先取特權ハ財產取得編第五十三條及ヒ第八十八條ニ規定シタル留置及ヒ解除ノ權利ヲ妨ケス
第六則 旅店主人ノ先取特權
第百六十四條 旅店ノ主人ハ旅客其從者及ヒ牛馬ノ宿泊料、食料ノ爲メ其旅客ノ携帶シテ尚ホ旅店ニ存スル手荷物ニ付キ先取特權ヲ有ス
第七則 舟車運送營業人ノ先取特權
第百六十五條 舟車運送營業人ハ荷物又ハ旅客ノ運送賃ノ爲メ及ヒ關稅其他正當ナル附從ノ費用ノ爲メ自己ノ手ニ存スル運送物ニ付キ先取特權ヲ有ス
運送營業人カ運送物ノ引渡ヨリ四十八時間内ニ債務者又ハ其名ヲ以テ其物ヲ受取リタル者ニ對シ其物ヲ返還スルヤ運送賃其他ノ費用ヲ辨濟スルヤノ催告ヲ爲シ且其効果ヲ生セシムル爲メ短キ時間内ニ裁判上ノ請求ヲ爲シタルトキハ其先取特權ハ物ノ引渡後ト雖モ存續ス
如何ナル塲合ニ於テモ第三取得者ニ對シテ物ヲ回復スルコトヲ得ス但第百五十二條ニ規定シタル如ク詐害アル塲合ハ此限ニ在ラス且第百三十七條ノ適用ヲ妨ケス
第八則 職務上ノ所爲ニ對スル債權者ノ先取特權
第百六十六條 保證ヲ供スルノ義務アル公吏ノ職務上ノ過失又ハ濫妄ヨリ生スル債權ハ其保證金ニ付キ先取特權アリ
第九則 保證金貸主ノ先取特權
第百六十七條 前條ノ保證金ヲ貸付タル第三者ハ職務上ノ所爲ヨリ害ヲ受ケタル者ニ辨濟アリシ後第二位ニテ此保證金ニ付キ先取特權ヲ有ス但第三者カ貸付ノ當時又ハ他ノ債權者ヨリ何等ノ故障ヲモ述ヘサル前規則ニ從ヒテ其權利ヲ證シタルトキニ限ル
第二款 動產ニ係ル特別ノ先取特權ノ順位
第百六十八條 動產ニ係ル特別ノ先取特權ト一般ノ先取特權ト競合スルトキハ優先ノ順序ヲ左ノ如ク規定ス
第一 訴訟費用ハ其費用ノ有益タリシ總債權者ニ先タツ但有益ノ限度又ハ割合ニ從フ
第二 此他四箇ノ一般ノ先取特權ハ第百四十一條ニ定メタル順序ヲ以テ總テノ特別ノ先取特權ニ先タツ但特別ノ先取特權ニ服セサル他ノ動產ノ不足ナル塲合ニ限ル
第百六十九條 一箇ノ動產ニ付キ特別ノ先取特權ヲ有スル諸種ノ債權競合スルトキハ其相互ノ優先權ハ下ノ順序及ヒ區別ニ從ヒテ之ヲ定ム
第一ノ順位ハ先取特權ノ目的物ヲ保存シタル者ニ屬ス
若シ數人ノ債權者漸次ニ保存ヲ爲シタルトキハ優先權ハ其間ニテ最後ノ保存者ニ屬ス
第二ノ順位ハ合意上ノ動產質ニ因リ或ハ不動產ノ賃貸人、旅店主人又ハ運送營業人ノ如ク默示ノ動產質ニ因リテ物ヲ質ニ取リタル債權者ニ屬ス
第三ノ順位ハ物ノ賣主ニ屬ス
然レトモ質取債權者ハ動產質設定ノ時其物ノ保存費用ノ未タ支拂アラサルコトヲ知ラサリシトキハ第一ノ順位ヲ得
之ニ反シテ質取債權者カ賣却代價ノ未タ支拂アラサルコトヲ知リタルトキハ賣主之ニ先タツ
收穫物ニ關シテハ第一ノ順位ハ農業ノ稼人ニ第二ノ順位ハ種子及ヒ肥料ノ供給者ニ第三ノ順位ハ土地ノ賃貸人ニ屬ス
工業ノ職工ハ工業ヨリ生スル產出物又ハ製造品ニ付キ賃貸人ニ先タツ
公吏ノ保證金ニ關シテハ職務上ノ所爲ニ對スル各債權者ハ相共ニ債權ノ割合ニ應シ其債權ノ日附ニ關セス他ノ債權者ニ先タチ又保證金ヲ貸付タル債權者ニモ先タツ其保證金ヲ貸付タル債權者ハ保證金ノ殘額ニ付キ第二位ニテ先取特權ヲ有ス
第三節 不動產ニ係ル特別ノ先取特權
第一款 不動產ニ係ル特別ノ先取特權ノ原因及ヒ目的物
第百七十條 左ノ債權者ハ下ニ定メタル債權ノ爲メ其條件ニ從ヒ不動產ニ付キ先取特權ヲ有ス
第一 賣買、交換其他有償ノ行爲ニ因リ又無償ナルモ負擔ヲ帶フル行爲ニ因リテ不動產ヲ讓渡シタル者ハ其讓渡シタル不動產ニ付キ先取特權ヲ有ス
第二 共同分割者ハ分割中ニ包含シタル不動產ニ付キ先取特權ヲ有ス
第三 工匠、技師及ヒ工事請負人ハ工事ニ因リテ不動產ニ生シタル增價ニ付キ先取特權ヲ有ス
第四 先取特權ヲ生セシムル行爲ノ當時讓渡人、共同分割者、工事請負人ニ支拂ヒタル金錢ノ貸主ハ右同一ノ不動產ニ付キ先取特權ヲ有ス
第五 死亡者ノ遺產ト相續人ノ資產トノ分離ヲ請求スル相續ノ債權者及ヒ受遺者ハ相續ノ不動產ニ付キ先取特權ヲ有ス
第一則 讓渡人ノ先取特權
第百七十一條 讓渡人ノ先取特權ハ左ノ各人ニ屬ス
第一 賣買ノ代價及ヒ利息其他ノ負擔ニ付テハ賣主
第二 交換ノ補足額、負擔及ヒ交換物ノ追奪擔保ニ付テハ交換者
第三 贈與ノ負擔ニ付テハ贈與者又ハ其承繼人
此他有償又ハ無償名義ノ不動產讓渡人ハ一般ニ其對價及ヒ負擔ニ付キ先取特權ヲ有ス
第百七十二條 賣買代價、交換補足額ノ外賣買、交換、贈與ノ負擔及ヒ交換其他有償名義ノ合意ニ於ケル追奪擔保ノ未定ノ賠償ハ讓渡ノ證書又ハ日後ノ證書ヲ以テ金錢ニテ之ヲ定ムルコトヲ要ス
此他右ノ證書ハ次款ニ記載スル如ク之ヲ公示スルコトヲ要ス
第百七十三條 交換其他不動產ノ讓渡ノ對價トシテ受取リタル不動產ノ追奪ノ擔保ノ爲メノ先取特權ハ其追奪カ讓渡ノ時ヨリ十个年内ニ生シ且廢罷ス可カラサル判决ヨリ一个年内ニ擔保ノ請求ヲ爲シ之ヲ公示シタルトキニ非サレハ存立セス
對價トシテ受取リタル動產ニ關シテハ擔保ノ爲メノ先取特權ハ追奪カ一个年内ニ生シ且廢罷ス可カラサル判决ヨリ一个月内ニ請求ヲ爲シ之ヲ公示シタルトキニ非サレハ存立セス
第二則 共同分割者ノ先取特權
第百七十四條 相續人、社員其他ノ共有者ハ或ハ抽籤ノ方法或ハ合意上ノ指定或ハ不分物競賣ニ因レル分割ヨリ生スル左ノ債權ノ爲メ其分割ニ於テ各自ノ得タル不動產ニ付キ互ニ先取特權ヲ有ス
第一 補足額ノ爲メ又ハ配當ノ過分ノ爲メニハ之ヲ負擔セル分割者ニ歸シタル不動產ニ付キ先取特權アリ
第二 不分物競賣ノ代價ノ爲メニハ其競賣シタル不動產ニ付キ先取特權アリ
第三 分割者ノ一人カ其配當部分ノ動產又ハ不動產ニ於テ受ケタル追奪ノ擔保ノ爲メニハ他ノ分割者ニ歸シタル總不動產ニ付キ先取特權アリ但債務ニ於ケル各分割者ノ部分ニ限ル
第百七十五條 右ノ擔保ハ左ノ諸件ニ之ヲ適用ス
第一 相續人又ハ社員ニシテ他ノ相續人又ハ社員ニ對シ補足額又ハ不分物競賣ノ代價ヲ負擔シタル者ノ無資力
第二 分割者ノ一人ノ配當部分ニ債權ヲ充テタルトキ其債務者ノ無資力但其債務者ハ分割者タルト外人タルトヲ問ハス分割ノ當時無資力タリシコトヲ要ス
第百七十六條 第百七十三條ハ分割者間ノ追奪擔保ノ先取特權ニ之ヲ適用ス
分割者タルト否トヲ問ハス債務者ノ無資力ニ關シテハ其擔保ハ元本ニ於ケル債務ノ滿期ヨリ一个年内ニ請求ヲ爲シ之ヲ公示シタルトキニ非サレハ當事者ノ間ニテモ第三者ニ對シテモ之ヲ負擔セシムルコトヲ得ス
債務カ無期又ハ終身ノ年金權タルトキ債務者ノ無資力カ分割ノ日ヨリ十个年後ニ生スルニ於テハ其擔保ノ負擔ハ止ム
債務カ利息ヲ生スル元本ニシテ其滿期カ十个年以上ニ及フトキモ亦同シ
第三則 工匠、技師及ヒ工事請負人ノ先取特權
第百七十七條 工匠、技師及ヒ工事請負人ハ建物、堤塘若クハ堀割ノ築造若クハ修繕又ハ地上ニ爲シタル排泄、灌漑、開墾、置土其他之ニ類似スル工事ヨリ生スル債權ノ爲メ先取特權ヲ有ス
右ノ先取特權ハ鑛坑及ヒ石坑ノ開掘、利用、閉鎖又ハ廢止ニ闢スル地下又ハ外部ノ工事ノ爲メ工匠、技師及ヒ工事請負人ニ屬ス
第百七十八條 右ノ工事ヨリ生スル先取特權ハ其工事ニ因リ土地又ハ建物ニ加ヘタル增價ニシテ先取特權行使ノ當時猶ホ存在スルモノヽミニ付キ存立ス
右ノ增價ハ裁判所ノ選定シタル鑑定人ノ作レル三箇ノ調書ヲ以テ之ヲ證スルコトヲ要ス
此第一調書ハ工事ヲ始ムル前ニ之ヲ作リテ塲所ノ現狀ヲ明定シ且目論見タル工事ノ槪略ヲ指示スルコトヲ要ス
此第二調書ハ工事ノ竣成ヨリ又ハ原因ノ如何ヲ問ハス其工事ノ絕止ヨリ三个月内ニ之ヲ作リ且其工事ヨリ現ニ生スル增價ヲ證スルコトヲ要ス
此第三調書ハ配當加入ノ請求ノ當時之ヲ作リ且右增價ノ存在スルモノヲ證スルコトヲ要ス
第四則 金錢貸主ノ先取特權
第百七十九條 前數條ニ揭ケタル先取特權ハ讓渡若クハ分割ノ當時又ハ工匠、技師若クハ工事請負人トノ契約ノ當時ニ於テ賣買若クハ不分物競賣ノ代價、交換若クハ分割ノ補足額又ハ工事ノ代金ノ辨濟ノ爲メ金錢ヲ貸付タル者ニ法律ニ依リテ直接ニ屬ス但其金錢ノ貸付及ヒ使用ヲ此等ノ行爲ノ證書中ニ記載シタルトキニ限ル
若シ讓渡人、分割者又ハ工事ノ爲メノ債權者ノ利益ニ於テ先取特權ノ生セシ後ニ金錢ヲ貸付タルトキハ貸主ハ財產編第四百八十條及ヒ第四百八十一條ニ定メタル條件及ヒ方式ニ從ヒ債權者又ハ債務者ヨリ合意上ノ代位ヲ得タルトキニ非サレハ先取特權ヲ取得セス
孰レノ塲合ニ於テモ金錢ノ貸主カ債務ノ一分ノミヲ拂ヒタルトキハ貸主ハ其拂ヒタルモノヽ割合ニ應シ財產編第四百八十六條ニ從ヒ原債權者ト共ニ先取特權ヲ行フ
第五則 資產分離ノ先取特權
第百八十條 相續ノ債權者及ヒ受遺者カ死亡者ノ遺產ト相續人ノ資產トノ分離ヲ請求スルノ權利ヲ行フニ付キ服從ス可キ條件ハ相續ノ事項ニ於テ之ヲ規定ス
第百八十一條 資產分離ヲ請求シタル債權者並ニ受遺者ノ先取特權ハ債務者ノ所爲ニ因リ又ハ其權利ニ基キ且其費用ヲ以テ不動產ニ加ヘタル增加及ヒ攺良ニ及ハス
右ノ規定ハ不動產ノ讓渡人又ハ分割者ノ先取特權ニ之ヲ適用ス
第二款 不動產ニ係ル特別ノ先取特權ノ債權者間ノ効力及ヒ順位
第百八十二條 前款ニ揭ケタル先取特權ハ下ニ定メタル方法、條件及ヒ期間ヲ以テ公示シ且保存シタルトキニ非サレハ之ヲ以テ他ノ債權者ニ對抗スルコトヲ得ス
第百八十三條 賣買代價ノ爲メノ賣主ノ先取特權及ヒ補足額ノ爲メノ交換者ノ先取特權ハ代價又ハ補足額ノ全部又ハ一分ヲ未タ辨濟セサル旨ヲ記シタル所有權移轉證書ノ登記ヲ以テ之ヲ保存ス
又交換ニ於ケル追奪擔保ノ爲メ及ヒ賣買、交換其他所有權移轉契約ノ附從負擔ノ爲メノ先取特權ハ證書ノ登記ヲ以テ之ヲ保存ス但擔保及ヒ負擔ノ評價ヲ證書中ニ記載シタルトキニ限ル
第百八十四條 分割者ノ先取特權ハ分割ノ證書ヲ登記スルニ因リテ之ヲ保存ス但其證書ニ不分物競賣代價又ハ補足額若クハ配當ノ過分及ヒ追奪擔保ノ評價其他各配當部分ノ負擔ノ評價ヲ記載シタルトキニ限ル
第百八十五條 右讓渡又ハ分割ノ證書ノ登記ナキ間ハ取得者又ハ分割者ノ承諾シ又ハ其權利ニ基キテ生シタル物上擔保ハ公示シタルトキト雖モ之ヲ以テ先取特權アル債權者又ハ其承繼人ニ對抗スルコトヲ得ス但工事ヨリ生スル先取特權アル債權ハ此限ニ在ラス
然レトモ利害關係人ハ原契約者ノ承諾ヲ得スト雖モ常ニ右ノ登記ヲ爲サシムルコトヲ得
第百八十六條 讓渡又ハ分割ノ證書ニ其對價物ノ全部若クハ一分ノ未タ辨濟アラサルコト又ハ負擔ノ付シ有ルコトヲ記載セサルトキハ日後ノ證書ヲ以テ此脫漏ヲ補フコトヲ得且其證書ハ債權者ノ注意ヲ以テ讓渡又ハ分割ノ證書ト共ニ之ヲ公示スルコトヲ得
右ノ日後ノ證書ヲ讓渡又ハ分割ノ證書ノ登記ト共ニ公示セサルトキハ債權者ハ何時ニテモ抵當ノ章ニ定ムル方式ニ從ヒ要旨ノ記入ヲ以テ其證書ヲ公示スルコトヲ得但此塲合ニ於テハ先取特權ハ單純ナル法律上ノ抵當ニ變性ス
右ノ抵當ハ二箇ノ公示ノ間ニ於テ債務者ノ權利ニ基キ物上擔保ヲ取得シ且合式ニ之ヲ公示シタル債權者ニ之ヲ以テ對抗スルコトヲ得ス
讓渡若クハ分割ノ證書ニ記シタル負擔又ハ擔保ノ評價ヲ日後ノ證書ニ記載シタルトキモ亦同シ但其證書ノ抵當記入ハ其記入ヲ爲シタル日附ニ從ヒテ債權者ノ順位ヲ定ム
第百八十七條 賣主其他讓渡人又ハ分割者ノ先取特權カ法律上ノ抵當ニ變性シタルトキハ此抵當ノ記入前ニ讓渡又ハ分割ノ目的タル不動產ニ付テノ物上擔保ヲ債務者ノ權利ニ基キテ取得シ且合式ニ保存シタル債權者ヲ害シテ義務不履行ノ爲メノ解除訴權ヲ行フコトヲ得ス
第百八十八條 工匠、技師又ハ工事請負人ノ先取特權ハ第百七十八條ニ定メタル第一第二ノ調書ノ記入ヲ以テ之ヲ保存ス
此第一調書ハ工事ヲ始ムル前ニ之ヲ記入スルコトヲ要ス
第二調書ハ其録製ヨリ一个月内ニ於テ之ヲ記入スルコトヲ要ス
第二調書ノ記入ノ効力ハ第一調書ノ日附ニ遡及シ且工事ノ前又ハ後ニ債務者ト契約シタル各人ニ對シ其增價ニ付テノ優先權ヲ先取特權アル債權者ニ保有セシム
利害關係人中ノ一人ノ爲シタル右調書ノ記入ハ委任ナキトキト雖モ他ノ關係人ヲ利シ且總關係人ニ其債權ノ割合ニ應シテ辨濟ヲ受クル爲メノ同一ノ順位ヲ保有セシム但總テノ者カ有益ノ時期ニ於テ必要ナル疏明ヲ爲スコトヲ要ス
第百八十九條 前條ニ指定シタル期間ニ二箇ノ調書中其一ノ記入ヲ爲サヽリシトキハ先取特權ハ法律上ノ抵當ニ變性シ其順位ハ左ノ日附ヲ以テ之ヲ定ム
第一 工事ノ竣成又ハ絕止ノ時ヨリ三个月内ニ第二調書ヲ錄製シ且次月内ニ之ヲ記入シタルトキハ第一調書ノ遲延記入ノ日附
第二 右ノ三个月内ニ第二調書ヲ錄製セス又ハ三个月内ニ之ヲ錄製シタルモ次月内ニ之ヲ記入セサルトキハ其第二調書記入ノ日附
第百九十條 取得、分割又ハ工事ノ爲メ初メニ金錢ヲ貸付タル者ノ第百七十九條第一項ニ從ヒテ有スル先取特權ハ賣主、分割者又ハ工事請負人ニ於ケルト同一ノ方法ヲ以テ之ヲ保存ス
右貸主カ後日代位ニ因リテ賣主、分割者又ハ工事請負人ニ承繼シタルトキ未タ先取特權ノ公示アラサルニ於テハ其貸主ハ主タル證書及ヒ代位證書ノ登記又ハ記入ニ因リテ其公示ヲ爲サシム
若シ代位前ニ公示アリタルトキハ貸主ハ登記シタル證書ノ緣邊ニ代位證書ノ附記ヲ請求ス可シ
又先取特權アル債權ヲ讓受ケタル者ハ讓渡證書ノ附記ヲ請求ス可シ
此末ノ二箇ノ塲合ニ於テ附記ヲ爲サシムルコトヲ遲延シタル代位者又ハ讓受人ハ其以前善意ニテ債務者又ハ其承繼人ト原債權者トノ間ニ爲シタル辨濟其他ノ免責ノ行爲ヲ駁擊スルコトヲ得ス
第百九十一條 上ニ記載シタル如クニ保存シタル先取特權又ハ抵當アル債權ニシテ利息又ハ年金ノ附キタルモノハ利息又ハ年金ノ滿期ト爲リタル最終ノ二个年分ニ非サレハ元本ト同一ノ順位ニテ配當ニ加入スルコトヲ得ス但滿期ノ利息又ハ年金ノ中ニテ二个年以外ノモノヽ爲メ漸次ニ特別ノ抵當記入ヲ爲ス可キ債權者ノ權利ヲ妨ケス
第百九十二條 資產分離ヲ請求スル債權者及ヒ受遺者ハ擔保ノ爲メ留置セント欲スル財產ニ付キ相續ノ發開ヨリ六个月内ニ其債權又ハ遺贈ヲ記入スルコトヲ要ス
其記入ニハ債權又ハ遺贈ノ額ト其記入ヲ爲ス主旨トヲ附記スルコトヲ要ス
相續人ノ權利ニ基キ右ノ期間ニ爲シタル記入又ハ登記ハ分離請求者ニ之ヲ以テ對抗スルコトヲ得ス但工事請負人ノ先取特權ニ關シ次條ニ記載スルモノハ此限ニ在ラス
第百九十三條 不動產ニ付キ先取特權アル債權者間ノ相互ノ優先權ハ左ノ順序ニ從フ
第一 工匠、技師及ヒ工事請負人但其債權カ後ニ生シタルトキモ亦優先權ヲ有ス
此工事ヨリ生スル增價額カ右ノ各人ニ全ク辨濟スルニ足ラサル塲合ニ於テハ債權ノ割合ニ應シ同一ノ順位ニテ其配當加入ヲ定ム
第二 讓渡人又ハ分割者
逐次ノ讓渡又ハ分割ノ塲合ニ於テハ優先權ハ債權者間最モ舊キ者ニ屬ス
金錢ノ貸主ハ或ハ初ヨリ或ハ合意上ノ代位ニ因リ其金錢ニテ全部又ハ一分ノ辨濟ヲ受ケタル債權者ト同一ノ順位ヲ有ス
資產ノ分離ヲ請求スル債權者及ヒ受遺者ハ死亡者ノ遺產ニ付キ其遺產カ相續人ニ歸シタル後之ニ贈價ヲ與ヘタル工匠、技師及ヒ工事請負人ノミニ先ンセラル
資產ノ分離ハ死亡者ノ債權者間及ヒ受遺者間ノ相互ノ權利ヲ變更セス
第百九十四條 先取特權ノ記入及ヒ其更新、抹殺、減少ニ關スル規則ハ先取特權及ヒ抵當權ニ共通ニシテ之ヲ次章ニ規定ス
第三款 第三所持者ニ對スル不動產先取特權ノ効力
第百九十五條 合式ニ公示シタル先取特權ハ其負擔アル不動產ニ付キ第三所持者ノ方ニマテ追及ス
第三所持者カ下ニ定ムル方法ノ一ニ依リテ先取特權アル債權者ニ辨濟セサルトキハ其債權者ハ第三所持者ニ對シ其不動產ヲ差押ヘ之ヲ競賣ニ付スルコトヲ得
第百九十六條 一般ノ先取特權ハ第三所持者ノ取得證書ノ登記前ニ之ヲ記入シタルトキニ非サレハ其第三所持者ニ移轉シタル不動產ニ付キ追及權ヲ與ヘス
第百九十七條 轉得者ノ證書ノ登記前ニ登記セサル讓渡又ハ分割ニ因リテ先取特權ヲ有スル債權者ハ其先取特權ノ生シタル證書ヲ登記スルコトニ付キ轉得者ヨリ催告ヲ受ケタレトモ一个月内ニ其登記ヲ爲サヽリシトキニ非サレハ追及權ヲ失ハス但此一个月ニハ距離ニ應シテ法律上ノ期間ヲ加フ
然レトモ轉得者ハ其讓渡人カ十个年以上不動產ニ付キ法定ノ占有ヲ爲シタルトキハ右ノ催告ヲ爲スノ責ナク且舊所有者ノ總テノ先取特權ヲ免カル
第百九十八條 工事ニ因リ先取特權ヲ有スル債權者ハ工事ノ竣成又ハ其絕止ノ前ニ讓渡アリテ其證書ノ登記アリタルモ第一調書ノ記入ニ依リテ追及權ヲ行フコトヲ得
工事ノ竣成シ又ハ絕止シタルトキ第二調書ノ錄製及ヒ記入ノ二箇ノ期間カ未タ經過セサルニ於テハ右ノ債權者ハ此期間ノ滿了後又ハ第二調書ヲ錄製シ且記入ス可キ催告ヲ受ケタルモ一个月ノ期間ニ之ニ應セサリシ後ニ非サレハ先取特權ヲ失ハス
第百九十九條 追及權ヲ保存シ及ヒ之ヲ行フ爲メニ必要ナル公示ヲ爲サヽル先取特權アル債權者ハ第三所持者ノ負擔シタル讓受代價ニ付キ優先權ヲ失ハス但代價ノ辨濟前又ハ順序配當手續ノ閉鎖前ニ自ラ債權者タルコトヲ知ラシメ且其債權ヲ證シタルトキニ限ル
第二百條 先取特權ニ關スル追及權、其條件、効力幷ニ第三所持者カ所有權徵收ヲ避クルノ方法及ヒ先取特權消滅ノ原因ハ次章ノ第三節第五節乃至第七節ノ規定ニ從フ但先取特權ノ固有ノ規則ニ反スルモノハ此限ニ在ラス
第五章 抵當
第一節 抵當ノ性質及ヒ目的物
第二百一條 抵當ハ法律又ハ人意ニ因リテ或ル義務ヲ他ノ義務ニ先タチテ辨償スル爲メニ充テタル不動產ノ上ノ物權ナリ
第二百二條 抵當ハ動產質及ヒ不動產質ニ付キ記載シタル如ク働方及ヒ受方ニテ不可分タリ但反對ノ合意アルトキハ此限ニ在ラス
第二百三條 抵當ハ不動產ノ完全所有權ノ上ノミナラス父母ノ法律上ノ用益權ヲ除クノ外ノ用益權、賃借權、永借權及ヒ地上權ノ上ニモ此等ノ權利ヲ支分シタル所有權ノ上ニモ之ヲ設定スルコトヲ得
然レトモ完全ノ所有權ヲ有スル者ハ虛有權又ハ用益權ノミヲ分離シテ之ヲ抵當ト爲スコトヲ得ス
之ニ反シテ所有者ハ其不動產ノ限界ニ因リテ定マリタル部分又ハ其不分ノ幾部分ヲ抵當ト爲スコトヲ得
地役ハ要役地ヨリ分離シテ之ヲ抵當ト爲スコトヲ得ス又用方ニ因ル不動產ハ其附着スル不動產ヨリ分離シテ之ヲ抵當ト爲スコトヲ得ス
第二百四條 左ニ揭クルモノハ之ヲ抵當ト爲スコトヲ得ス
使用權、住居權其他讓渡スコトヲ得ス又ハ差押フルコトヲ得サル財產
財產編第十條第二號及ヒ第三號ニ揭ケタル如キ不動產債權
同條第四號ニ揭ケタル如キ不動產ト爲シタル債權但之ヲ不動產ト爲スコトヲ許可スル法律カ其抵當ヲ許サヽルトキニ限ル
船舶ノ抵當ニ付テハ商法ノ規定ニ從フ
第二百五條 此章ノ規定ハ商法其他特別法ニ於テ異例ヲ設ケサル限リハ此等ノ法律ヲ以テ設定シタル抵當ニ之ヲ適用ス
第二百六條 抵當ハ漸積地ノ如キ意外及ヒ無償ノ原因ニ由リ或ハ築造、栽植其他ノ工作ノ如キ債務者ノ所爲及ヒ費用ニ因リテ不動產ニ生スルコト有ル可キ增加又ハ攺良ニ當然及フモノトス但他ノ債權者ニ對シテ詐害ナキコトヲ要シ且前章ニ規定シタル如キ工匠、技師及ヒ工事請負人ノ先取特權ヲ妨ケス
抵當ハ債務者カ縱令無償ニテ取得シタルモノナルモ其隣接地ニ及ハサルモノトス但新圍障ノ設立又ハ舊圍障ノ廢棄ニ因リテ隣接地ヲ抵當不動產ニ合體シタルトキモ亦同シ
第二百七條 意外若クハ不可抗ノ原因又ハ第三者ノ所爲ニ出テタル抵當財產ノ滅失、減少又ハ毁損ハ債權者ノ損失タリ但先取特權ニ關シ第百三十七條ニ記載シタル如ク債權者ノ賠償ヲ受ク可キ塲合ニ於テハ其權利ヲ妨ケス
若シ抵當財產カ債務者ノ所爲ニ因リ又ハ保持ヲ爲サヽルニ因リテ減少又ハ毁損ヲ受ケ此カ爲メ債權者ノ擔保カ不十分ト爲リタルトキハ債務者ハ抵當ノ補充ヲ與フルノ責ニ任ス
此補充ヲ與フルコト能ハサル塲合ニ於テハ債務者ハ擔保ノ不十分ト爲リタル限度ニ應シ滿期前ト雖モ債務ヲ辨濟スルノ責ニ任ス
第二百八條 抵當財產ノ差押ナキ間ハ債務者ハ財產編第百十九條及ヒ第百二十條ニ定メタル期間中其不動產ヲ賃貸スルコトヲ得又其果實及ヒ產出物ヲ讓渡シ及ヒ管理ノ總テノ行爲ヲ爲スコトヲ得
第二節 抵當ノ種類
第二百九條 抵當ハ法律上、合意上又ハ遺言上ノモノタリ
第一款 法律上ノ抵當
第二百十條 左ノ抵當ハ總テノ要約ニ關セス當然成立ス
第一 婦カ其夫ニ對シテ有スルコト有ル可キ總債權ノ爲メ婚姻ノ日現ニ夫ニ屬スルト後日之ニ屬ス可キトヲ問ハス其夫ノ總不動產ニ付キ婦ノ有スル抵當但夫ノ未成年タルトキモ亦同シ
第二 未成年者及ヒ禁治產者カ其後見人ニ對シテ有スル總債權ノ爲メ現在ニ屬スルト將來ニ得ルトヲ問ハス後見人ノ總不動產ニ付キ有スル抵當
第三 國、府、縣、市、町、村及ヒ公設所カ行政法ノ定メタル限度ト條件トニ從ヒ會計吏員ノ管理ノ爲メ其不動產ニ付キ有スル抵當
又第百八十六條及ヒ第百八十九條ニ從ヒテ變性シタル先取特權ヨリ生スル抵當ハ之ヲ法律上ノ抵當ト看做ス
第二款 合意上ノ抵當
第二百十一條 合意上ノ抵當ハ公正證書又ハ私署證書ヲ以テスルニ非サレハ之ヲ設クルコトヲ得ス
代理人ヲ以テ抵當ヲ設定スルトキハ委任ノ要旨ヲ抵當ノ合意中ニ示スコトヲ要ス
第二百十二條 本邦ニ存在スル財產ニ付キ外國ニ於テ爲シタル抵當ノ合意ハ此種類ノ行爲ノ爲メ外國ニ於テ用ユル方式ニ從ヒ之ヲ爲シタルトキハ其効ヲ生スルコトヲ得然レトモ第二百十九條及ヒ第二百二十五條以下ニ規定シタル條件ニ從フニ非サレハ此合意ニ依リ本邦ニ於テ記入ヲ爲スコトヲ得ス
第二百十三條 抵當設定ノ證書ニハ義務ノ擔保ニ充テタル不動產ヲ其性質及ヒ所在ヲ以テ特ニ指示スルコトヲ要ス
若シ抵當ノ設定カ債務者ノ現在ノ各不動產ヲ特ニ指示セスシテ其全部又ハ一分ヲ包含スルトキハ債務者ノ請求ニ因リ債權ノ擔保ニ必要ナルモノニ其抵當ヲ減少スルコトヲ得
債務者ノ將來ノ財產ニ付テノ一般又ハ特別ノ抵當ノ設定ハ無効タリ
第二百十四條 抵當ノ設定證書ニハ右ノ外義務ノ原因、體樣及ヒ其主從ノ目的ヲ明カニ指示スルコトヲ要ス
義務ノ目的カ金錢タラサルトキハ之ヲ評價ス可シ然レトモ其評價ハ第二百二十六條ニ記載スル如ク記入ニ於テモ尚ホ之ヲ爲スコトヲ得
第二百十五條 抵當ハ抵當ニ充テント欲スル物ノ所有權又ハ收益權ヲ有シ且有償又ハ無償ニテ其物ヲ處分スルノ能力ヲ有スル者ニ非サレハ之ヲ承諾スルコトヲ得ス但第三者ノ抵當設定ニ關スル第二百十七條ノ規定ヲ妨ケス
若シ有期ノ權利ヲ抵當ト爲シタルトキハ其抵當ハ右ノ權利ノ時期外ニ効力ヲ生スルコトヲ得ス然レトモ抵當ト爲リタル權利カ此時期ノ滿了前或ル出來事ニ因リ物ノ價額ヲ代表スル償金ニ移リタルトキハ債權者此償金ニ付キ其權利ヲ行フ
第二百十六條 未成年者、禁治產者及ヒ失踪者ノ財產ハ法律ニ定メタル原因及ヒ方式ニ依ルニ非サレハ其代人ニ於テ之ヲ抵當ト爲スコトヲ得ス
第二百十七條 合意上ノ抵當ハ第百二條及ヒ第百二十一條ニ於テ動產質及ヒ不動產質ニ付キ記載シタル如ク債務者ノ債務ヲ擔保スル爲メ第三者ヨリ之ヲ與フルコトヲ得
右ノ抵當ハ常ニ債務者ニ對シテハ恩惠ナリトス
又抵當ハ債權カ無償ナルトキ又ハ有償ナルモ諾約ナクシテ主タル合意以後ニ之ヲ設定シタルトキハ債權者ニ對シテモ恩惠ナリトス
第三款 遺言上ノ抵當
第二百十八條 抵當ハ遺贈ノ全部若クハ一分ノ擔保ノ爲メニ非サレハ遺言ヲ以テ之ヲ與フルコトヲ得ス
第三節 抵當ノ公示
第一款 記入ノ條件、方式及ヒ期間
第二百十九條 凡ソ法律上、合意上又ハ遺言上ノ抵當ハ下ニ定メタル條件及ヒ方式ニ從ヒ其不動產所在地ノ登記所ニ於テ記入ヲ爲シタルニ非サレハ之ヲ以テ第三者ニ對抗スルコトヲ得ス
數箇ノ登記所ノ管轄ニ跨カル不動產ノ全部ヲ抵當ト爲シタルトキハ其主タル部分ノ所在地ヲ管轄スル登記所ニ於テ記入ヲ爲シ他ノ登記所ニ於テハ其記入及ヒ日附ノ記載ノミヲ爲ス
第二百二十條 抵當ハ左ノ二箇ノ塲合ニ於テハ有効ニ之ヲ記入スルコトヲ得ス
第一 抵當設定ノ後債務者ノ無資力カ正當ニ宣告セラレ又ハ其財產ノ全部若クハ過半ノ差押ニ因リ顯然ト爲リタルトキ但破產ノ塲合ニ於ケル記入ノ權利ニ付テノ商法ノ制限ヲ妨ケス
第二 債務者カ死亡シテ法律ニ因リ相續ヲ受ク可キ總テノ相續人カ單純ニ其相續ヲ受諾セサルトキ
抵當財產ノ讓渡アリタルトキ其讓受人ニ對シテ債權者ノ記入スル權利ノ制限ハ第五節ニ於テ之ヲ規定ス
第二百二十一條 債權者カ財產ノ管理權ヲ有セサルトキハ抵當ノ記入ハ法律上又ハ裁判上ノ代人之ヲ爲ス
抵當ノ記入ハ總理代人及ヒ法律上又ハ合意上ノ抵當ノ附着シタル行爲ヲ爲スノ委任ヲ受ケタル部理代人ノ權利及ヒ義務ニ屬ス
又記入ハ債權者ノ委任ナクシテ事務管理人之ヲ爲スコトヲ得
第二百二十二條 婦ノ法律上ノ抵當ハ夫カ婦ニ對シ契約其他ノ方法ニテ條件附ナルト否トヲ問ハス債務者ト爲リタル時ヨリ夫又ハ裁判所ノ許可ヲ要セス婦ノ請求ニ因リテ之ヲ記入スルコトヲ得又其記入ハ婦ノ適當ト思考スル不動產ノ全部又ハ一分ニ付キ之ヲ爲スコトヲ得但第二百四十條ニ記載スル如ク夫ノ有スル抵當減少ノ權利ヲ妨ケス
婦カ記入ヲ爲サヽルトキハ夫ハ婦ノ擔保ノ爲メ十分ナル不動產ニ付キ其記入ヲ爲スコトヲ要ス
婦又ハ夫カ記入ヲ爲サヽルトキハ縱令委任ナキモ婦ノ親屬又ハ姻屬ニテ之ヲ爲スコトヲ得但婦ノ故障又ハ抛棄ナキコトヲ要ス
第二百二十三條 未成年者ノ法律上ノ抵當ハ夫カ婦ノ法律上ノ抵當ヲ記入スルト同一ノ塲合ニ於テ同一ノ條件ニ從ヒ後見人之ヲ記入スルコトヲ要ス
後見人記入ヲ爲サヽルトキハ後見監督人又ハ親屬會議員其記入ヲ爲スコトヲ要ス若シ之ヲ爲サヽルトキハ未成年者ニ對シ連帶シテ損害賠償ヲ負擔ス
未成年者モ亦後見ヲ脫シタル後ハ其記入ヲ求ムルコトヲ得
第二百二十四條 前條第一項及ヒ第二項ノ規定ハ禁治產者ノ法律上ノ抵當ニ之ヲ適用ス
處刑言渡ニ因レル禁治產ノ塲合ニ於テハ禁治產者ノ特別ノ代理人ニテモ記入ヲ求ムルコトヲ得
第二百二十五條 抵當ノ記入ヲ求ムル者ハ下ニ記スル如ク己レノ利益ノ爲メ又ハ己レノ代表スル債權者ノ利益ノ爲メ抵當ノ成立ヲ登記官吏ニ疏明スルコトヲ要ス
婦、未成年者又ハ禁治產者ノ法律上ノ抵當ニ關スルトキハ抵當ノ原因タル婚姻又ハ後見ノ證據ニ依リテ其疏明ヲ爲スコトヲ要ス
合意上ノ抵當ニ關スルトキハ抵當ヲ設定シタル證書ノ正本ニ依リテ其疏明ヲ爲スコトヲ要ス
遺言上ノ抵當ニ關スルトキハ遺言書ノ正本又ハ其公正ナル寫書ニ依リテ其疏明ヲ爲スコトヲ要ス
總テノ塲合ニ於テ登記官吏カ抵當成立ノ證據ヲ不十分ナリトスルトキ又ハ債務者ト帳簿ニ記載アル不動產所有者ト同人ナルコトノ十分ナル疏明ナキトキハ登記官吏ハ自己ノ責任ニテ記入ヲ拒絕スルコトヲ得但第三百七條ニ記載スル如ク裁判ヲ受クル爲メ同條ノ規定ニ從フコトヲ要ス
第二百二十六條 記入ノ要求者ハ右ノ外左ノ諸件ヲ精確ニ指示スル明細書ノ正本二通ヲ差出タスモノトス
第一 債權者ノ氏名、職業及ヒ住所若クハ居所
第二 債務者ノ氏名及ヒ成ル可ク職業、住所若クハ居所
第三 抵當ノ原因及ヒ法律上ノ抵當外ノ抵當ニ關スルトキハ設定證書ノ性質及ヒ日附
第四 債權ノ性質、其證書ノ日附、之ニ記載シタル金額又ハ其價額ノ不確定ナルトキハ現ニ評價シタル金額及ヒ債務ノ要求期限
第五 抵當ト爲シタル不動產ノ性質及ヒ其所在地
從來ノ記入ノ緣邊ニ附記ス可キ讓渡又ハ代位ノ塲合ニ於テハ明細書ニ新債權者及ヒ其證書ノ指示ヲ記載スルヲ以テ足レリトス
第二百二十七條 婦、未成年者又ハ禁治產者ノ法律上ノ抵當ニ因リテ擔保セラレタル債權カ不當ノ利得又ハ不正ノ損害等ノ事實ヨリ生セシトキハ要求者ノ申立テタル事實ノ要旨及ヒ其主張シタル債權ノ評價ヲ明細書ニ指示ス可シ
第二百二十八條 登記官吏ハ上ニ指定シタル書類ヲ受取リタルトキハ要求者ニ受取證ヲ付與ス但其受取證ニハ第二百五十三條ノ適用ヲ保スル爲メ受取ノ日附ト共ニ其日ノ受取番號ヲ記載ス可シ
第二百二十九條 債權者ノ相續人又ハ讓受人ハ原債權者ノミノ名ヲ以テ或ハ自己ト原債權者トノ連名ヲ以テ記入ヲ求ムルコトヲ得
債權者ノ代理人又ハ事務管理人ヨリ記入ヲ求ムルトキハ其名及ヒ分限ヲ本人ノ名及ヒ分限ト共ニ記載ス可シ
第二百三十條 債務者カ死亡シタルトキハ記入ハ債權者ノ選擇ニ因リテ其債務者ニ對シ又ハ其總テノ相續人ニ對シテ之ヲ爲スコトヲ得
抵當ノ負擔アル不動產カ相續ノ分割ニ因リテ一人ノ相續人ニ歸シタル塲合ニ於テハ其一人ノミニ對シテ記入ヲ爲スコトヲ得
第三者ノ設定シタル抵當ニ關シテハ設定者ニ對シテ記入ヲ爲スモノトス
第二百三十一條 登記官吏カ記入簿ニ明細書ノ箇條ヲ記載シタルトキハ其二通ノ明細書ノ各葉ニ同一ノ割印ヲ押捺シ其一通ハ抵當ノ疏明書ト共ニ之ヲ要求者ニ還付シ他ノ一通ハ登記官吏之ヲ保存ス
此他ノ細則ハ別ニ之ヲ定ム
第二百三十二條 明細書ノ箇條ノ脫漏不足又ハ訛誤ニ因リテ不完全ナル記入ノ爲メ第三者カ抵當ノ或ル要點ヲ知リ得サリシヨリ生シタル損害ヲ證スルトキハ其請求ニ因リテ記入ノ無効ヲ宣告スルコトヲ得
第二百三十三條 法律上、合意上又ハ遺言上ノ抵當ノ記入ハ三十个年間其効力ヲ有ス三十个年後ハ債權ノ時効カ中斷又ハ停止ニ係リタルトキト雖モ其記入ノ効力ヲ失フ
右抵當ノ時効ハ無能力者ニ對シテ停止セス但其代人ニ對スル求償ヲ妨ケス
然レトモ三十个年ノ期間滿了前ニ記入ヲ更新シ舊記入ノ日附ヲ精確ニ記載シタルトキハ抵當ノ順位ハ舊記入ト同一ノ日附ニテ存ス
記入ノ効力ヲ失ヒシ後ノ更新ハ新記入ニ同シク其更新ノ日附ニ於テノミ効力ヲ生ス
第二百三十四條 三十个年ノ期間内ニ於ケル記入ノ更新ハ舊記入後ニ起リタル債務者ノ破產、無資力又ハ死亡ニ拘ハラス之ヲ爲スコトヲ得
第二百三十五條 登記官吏ハ更新ノ要求書ノ正本二通ヲ受取リタル上ニテ記入ノ更新ヲ爲シ其一通ニハ割印ヲ捺シテ之ヲ要求者ニ還付ス
第二百三十六條 記入ノ費用ハ債權ヲ有償名義ニテ取得シタルトキハ債務者及ヒ債權者各其半額ヲ負擔ス
更新ノ費用ハ債權者ノミ之ヲ負擔ス
第二百三十七條 記入ニ關スル爭ハ抵當財產所在地ノ裁判所ニ之ヲ訴フ可シ
第二款 記入ノ抹殺、減少及ヒ正誤
第二百三十八條 記入ノ抹殺ハ左ノ塲合ニ於テ之ヲ爲ス
第一 債權カ無効タリ若クハ銷除ス可キモノタルトキ又ハ其全部ノ消滅シタルトキ
第二 抵當カ有効ニ設定セラレス若クハ法律ニ從ヒテ成立セサルトキ
第三 記入カ第二百三十二條ニ依リテ銷除ス可キモノナルトキ
右ハ第二百四十四條ニ記載シタル如ク或ル不動產ニ付テノ記入ヲ抹殺スルコトヲ妨ケス
第二百三十九條 記入ノ抹殺ハ債務者又ハ其承繼人ノ請求ニ因リテ之ヲ宣告スルコトヲ要ス但下ニ規定シタル方式ニ於テ債權者ヨリ之ヲ許シタルトキハ此限ニ在ラス
第二百四十條 婦ノ法律上ノ抵當カ其債權ノ擔保ニ必要ナルヨリ多キ不動產ニ付キ記入アリ又ハ其債權ノ正當ナル評價ヨリ更ニ多キ金額ノ爲メニ記入アリタルトキハ夫又ハ其承繼人ハ不動產又ハ金額ニ關シ裁判上ニテ此記入ノ減少ヲ請求スルコトヲ得但抵當ヲ或ル不動產ニ制限セス又ハ婚姻契約若クハ配偶者間ノ特別合意ニ因リテ債權額ヲ評價セサルトキニ限ル
第二百四十一條 右ニ同シク後見人又ハ其承繼人ハ未成年者又ハ禁治產者ノ擔保ニ必要ナルモノヽ外ニ爲シタル記入ノ減少ヲ請求スルコトヲ得但親屬會議ノ决議ニ因リテ抵當ヲ或ル不動產ニ制限セス又ハ債權額ヲ評價セサルトキニ限ル
第二百四十二條 合意上ノ抵當ハ債務者ノ現在ノ總財產ニ關シ第二百十三條ニ記載シタル如ク過度ナルトキニ非サレハ債務者其減少ヲ請求スルコトヲ得ス
債務者ハ常ニ債權者ノ記入シタル債權ノ評價ノ減少ヲ請求スルコトヲ得但設定證書又ハ別證書ヲ以テ評價ヲ爲サヽルトキニ限ル
第二百四十三條 遺言上ノ抵當ハ相續ノ不動產ニ付キ遺言者其制限ヲ爲サス又ハ債權ヲ評價セスシテ之ヲ設定シタルトキハ相續人其減少ヲ請求スルコトヲ得
第二百四十四條 債務カ半額以上消滅シタルトキハ債權者ハ債務者ノ要求ニ因リ三種ノ抵當ニ付キ金額ノミノ記入ヲ減少ス可シ
債務者ハ一分ノ辨濟ヲ爲シタルトキハ常ニ自費ニテ記入ノ緣邊ニ之ヲ附記スルコトヲ得
第二百四十五條 債務者ノ請求ヲ正當トスル判决ニハ抵當ヲ免カレタル不動產又ハ評價ヲ攺メタル金額ヲ指示ス
右第一ノ塲合ニ於テハ抵當ノ記入ヲ抹殺シ第二ノ塲合ニ於テハ之ヲ減少ス
第二百四十六條 前數條ニ從ヒ記入ヲ或ル不動產ニ減少シタル塲合ニ於テ其不動產カ債權者ノ擔保ニ不十分ト爲リタルトキハ意外ノ事又ハ不可抗力ニ因ルト雖モ債權者ハ抵當ノ補充ヲ請求スルコトヲ得
第二百四十七條 記入ノ抹殺又ハ減少ハ確定判决ニ依ルニ非サレハ之ヲ爲スコトヲ得ス又證書ヲ以テスルニ非サレハ債權者之ヲ承諾スルコトヲ得ス
第二百四十八條 任意ノ抹殺又ハ減少カ債務ノ消滅ニ基クトキハ其抹殺又ハ減少ヲ承諾スルニハ債權者其債務ノ辨濟ヲ受ケ又ハ之ヲ追認スルノ能力ヲ有スルヲ以テ足レリトス
抹殺カ右ノ外第二百三十八條ニ記載シタル原因ノ一ニ基クトキハ債權者和解スルノ能力ヲ有スルコトヲ要ス
又抹殺又ハ減少カ抵當ヲ無償ニテ抛棄スルノ性質ヲ有スルトキハ債權者無償ニテ債權ヲ處分スルノ能力ヲ有スルコトヲ要ス
第二百四十九條 記入ノ抹殺又ハ減少ヲ承諾スル爲メノ委任ハ證書ヲ以テ之ヲ與フルコトヲ要ス
然レトモ抹殺又ハ減少カ債務ノ消滅ニ基クトキハ債務者ノ免責ヲ承諾スルノ權限ヲ有シタル代理人ニ於テ其抹殺又ハ減少ヲ承諾スルコトヲ得
和解又ハ無償ノ抛棄ニ付テハ委任ハ明示タルコトヲ要ス
第二百五十條 抹殺又ハ減少ヲ爲スニハ其合意又ハ判决ヲ記入ノ緣邊ニ附記スルコトヲ要ス
登記官吏ハ證書ノ正本又ハ判决書ノ公正ナル謄本ヲ受取リタル上ニ非サレハ右ノ附記ヲ爲スコトヲ得ス但判决書ノ謄本ヲ差出ス塲合ニ於テハ其判决ノ確定ト爲リタル旨ヲ裁判所書記ノ證記シタルコトヲ要ス
第二百二十五條末項及ヒ第三百七條ハ登記官吏ノ拒絕及ヒ其責任ニ之ヲ適用ス
第二百五十一條 抹殺若クハ減少ヲ後日ノ判决又ハ債務者トノ合意ニテ銷除若クハ解除シタルトキハ其判决又ハ合意ヲ更ニ記入シ又ハ前記入ノ緣邊ニ附記ス此塲合ニ於テハ前記入ハ前債權者ノ爲メ其効力ヲ回復ス然レトモ抹殺若クハ減少ノ後ニ於テ不動產ニ付キ權利ヲ取得シ抵當ノ復舊ノ公示前ニ其權利ヲ記入シタル第三者ニハ此記入ヲ以テ對抗スルコトヲ得ス
第二百五十二條 記入、更新、抹殺又ハ減少ニ訛誤又ハ脫漏アルモ此カ爲メ銷除ヲ爲スニ足ラサルトキハ當事者ノ協議又ハ判决ヲ以テ正誤ヲ爲ス
第四節 債權者間ノ抵當ノ効力及ヒ順位
第二百五十三條 凡ソ不動產ニ付キ記入シタル抵當債權者ハ無特權債權者ニ先タチ其不動產ノ代價ノ配當ニ有益ニ加入スルコトヲ得
法律上、合意上又ハ遺言上ノ抵當ヲ有スル數人ノ債權者間ニ於テハ其配當加入ノ順位ハ數箇ノ記入ヲ同日ニ爲シタルトキト雖モ其記入ノ前後ニ因リテ之ヲ定ム但登記官吏ノ第二百二十八條ノ規定ヲ遵守セサル塲合ニ於テハ之ニ對スル責任ノ訴權ヲ妨ケス
第二百五十四條 記入ハ揭載シタル利息及ヒ定期ノ附從物ニ其經過シタル最後ノ二个年分ニ限リ主タル債權ト同一ノ順位ヲ得セシム但二个年以外ノ利息及ヒ附從物ノ爲メ債權者ノ日後記入ヲ爲スノ權利ヲ妨ケス然レトモ此記入ハ其日附ニ於テノミ効力ヲ生スルモノトス
第二百五十五條 抵當ノ順位ハ債權カ條件附ナルトキ又ハ信用ヲ開キテ爲ス貸付ノ如ク漸次ノ支拂ヨリ生スルトキト雖モ亦記入ニ因リテ之ヲ定ム
第二百五十六條 債權者カ數箇ノ不動產ニ付キ抵當ヲ有シ其各箇ノ代價カ同時ニ淸算アリシトキハ其債權ハ總不動產ノ價額ノ割合ニ應シテ之ヲ分配ス可シ
漸次ノ淸算ノ塲合ニ於テ右ノ債權者カ不動產中ノ一箇ノ代價ニ因リテ全ク辨濟ヲ受ケ此一箇ノ不動產ニ付キ其債權者ノ次ニ抵當ヲ有スル一人又ハ數人ノ債權者ノ爲メニ損失ノ生スルトキハ其一人又ハ數人ノ債權者ハ他ノ各不動產ニ付テハ其己レニ先タチタル債權ニ於ケル其各不動產ノ分擔部分ニ限リ自己ノ債權ノ爲メ其相互ノ順位ヲ以テ右辨濟ヲ受ケタル債權者ノ抵當ニ當然代位ス
第二百五十七條 前條ノ代位ハ原債權者ニ次テ右各不動產ニ付キ記入ヲ爲シタル債權者ニ對シテ其効ヲ生ス
右ノ代位者カ記入ノ緣邊ニ其代位ヲ附記シタルトキハ其代位者ヲ順序配當手續中ニ加ハラシムルコトヲ要シ且其承諾アルニ非サレハ何等ノ抹殺又ハ減少ヲモ爲スコトヲ得ス
若シ右ノ不動產ニ付キ原債權者ノ抵當ノ記入ナキトキハ代位者其記入ヲ爲シ且右ト同一ノ目的ニテ其緣邊附記ヲ爲スコトヲ得
第二百五十八條 凡ソ債權ヲ處分スルノ能力アル抵當債權者ハ同一債務者ノ他ノ債權者ノ利益ニ於テ自己ノ抵當又ハ其順位ノミヲ抛棄スルコトヲ得但財產編第五百條及ヒ第五百三條ニ於テ更攺ニ關シ規定シタルモノヲ妨ケス
若シ抵當債權ヲ數次ニ數人ニ對シ讓渡、抛棄又ハ代位ノ目的ト爲セシトキハ優先權ハ承權人中記入ノ緣邊ニ自己ノ權利ノ設定證書ヲ附記シ又ハ記入ノ有ラサリシトキハ之ヲ爲シテ其取得ヲ第一ニ公示シタル者ニ屬ス
第二百五十九條 右ノ外第百九十條ノ規定ハ前二條ノ塲合ニ之ヲ適用ス
第二百六十條 抵當債權者又ハ無特權債權者ハ記入ナキ抵當ヲ知リテ之ヲ自認シタリト雖モ記入ノ欠缺ヲ利唱スルノ權利ヲ失ハス
第二百六十一條 不動產ノ賣却代價ヲ以テ全部ノ辨濟ヲ受ケサル抵當債權者ハ其殘額ニ付テハ無特權債權者タリ
若シ不動產ノ賣却ニ先タチテ動產有價物ノ配當ヲ爲ストキハ抵當債權者ハ其債權全額ノ爲メ無特權債權者トシテ假ニ其配當ニ加入ス
其後ニ至リ抵當不動產ノ代價ノ配當アルトキハ抵當債權者ハ動產有價物ニ付キ何等ノ辨濟ヲモ受ケサリシカ如ク其配當ニ加入ス然レトモ此配當ニ於テ全ク辨濟ヲ受ク可キ者ハ動產ノ配當ニテ受取リタル金額ヲ扣除スルニ非サレハ其抵當ノ配當額ヲ受取ルコトヲ得ス其扣除シタル金額ハ動產財團中ニ之ヲ返還ス
不動產ノ代價ノ配當ニ於テ一分ノミノ辨濟ヲ受クルコトヲ得ヘキ者ニ付テハ配當ニ加ハルコトヲ得サリシ殘額ニ從ヒ其動產財團ニ對スル權利ヲ定ム但此割合外ニ受取リタルモノハ其抵當ノ配當額中ヨリ扣除シ之ヲ動產財團中ニ返還ス
右ノ返還金額ハ純粹ノ無特權債權者ト有益ニ配當ニ加入スルヲ得サルカ又ハ債權ノ一分ノミニ付キ之ニ加入シタル抵當債權者トノ間ニ於テ更ニ之ヲ配當ス
第五節 第三所持者ニ對スル抵當ノ効力
總則
第二百六十二條 抵當不動產カ讓渡サレ又ハ用益權其他ノ物權ヲ負擔シタルトキハ其證書ノ登記前ニ記入ヲ爲シタル抵當債權者ハ第三取得者ニ對シ債務ノ辨濟ヲ請求スルノ權利ヲ保有シ又此不動產ノ賣却代價ヲ以テ辨濟ヲ受クル爲メ其不動產ノ徵收ヲ訴追スルノ權利ヲ附從ニテ保有ス
然レトモ財產編第百十九條及ヒ第百二十條ニ規定シタル期間ヲ以テ爲シ又ハ更新シタル賃貸借ハ抵當債權者之ヲ遵守スルコトヲ要ス
第二百六十三條 抵當カ所有權ノ支分ニ存シ債務者其權利ヲ抛棄シタルトキハ其抛棄ノ登記前ニ記入ヲ爲シタル債權者ハ其抛棄ニ拘ハラス追及權ヲ保有ス
第二百六十四條 公正證書ヲ以テ設定シタル抵當ハ其不動產ヲ差押ヘ之ヲ賣却セシメタル無特權債權者ニハ競落ノ登記前ニ其記入ヲ爲シタルトキハ之ヲ以テ對抗スルコトヲ得但第二百二十條ニ揭ケタル二箇ノ塲合ニ於テ爲セル記入ノ無効タルコトヲ妨ケス
第二百六十五條 第三所持者ノ破產、無資力又ハ死亡ハ其取得證書ノ登記アルマテハ抵當記入ノ妨碍ト爲ラス
第二百六十六條 第三所持者ハ塲合ニ從ヒテ左ノ方法ニ依ルコトヲ得
第一 抵當債務ヲ辨濟スルコト
第二 滌除スルコト
第三 財產撿索ノ抗辯ヲ以テ對抗スルコト
第四 不動產ヲ委棄スルコト
第五 所有權徵收ヲ受クルコト
第一款 抵當債務ノ辨濟
第二百六十七條 第三所持者ハ抵當債務ノ滿期ト爲ルニ從ヒ之ヲ辨濟スルニ於テハ所有權徵收又ハ妨碍ヲ受クルコト無シ
第二百六十八條 第三所持者ハ債務ノ全部又ハ一分ヲ辨濟シタルトキハ財產編第四百八十二條第一號第四百八十三條第四號及ヒ第五號ニ從ヒ其辨濟ヲ得タル債權者ニ屬スル他ノ抵當、擔保及ヒ利益ニ代位ス
又第三所持者ハ其辨濟ヲ得サリシ債權者ヨリ所有權徵收ノ訴追ヲ受クルコト有ル可キ塲合ノ爲メ自己ノ所持セル不動產ノ負擔スル抵當ニ付キ辨濟ヲ得タル債權者ニ未定ニテ代位ス
第二款 滌除
第二百六十九條 第三所持者ハ記入シタル總テノ抵當債務ヲ辨濟セサルモ債權者ニ其記入ノ順序ニ從ヒ不動產ノ取得代價、其評價若クハ之ニ超ユル金額ヲ辨濟シ又ハ債權者ノ爲メニ之ヲ供託シテ不動產ノ負擔ヲ免カレシムルコトヲ得但下ニ規定セル如キ提供及ヒ滌除ノ手續ヲ爲シタル後債權者ノ明示又ハ默示ノ承諾アリタルコトヲ要ス
第二百七十條 停止條件附ニテ不動產ヲ取得シタル者ハ條件ノ成就ニ因リテ其權利ノ定マラサル間ハ滌除スルコトヲ得ス
解除條件附ニテ取得シタル者ハ條件ノ到來セサルニ因リテ其權利ノ定マル前ト雖モ滌除スルコトヲ得
此塲合ニ於テ第三所持者ノ提供カ承諾ヲ得タルモ其金額ハ抵當債務ヲ全ク辨濟スルニ足ラスシテ其抵當ヲ抹殺シタル後第三所持者ノ取得カ條件ノ到來ニ因リテ解除スルニ於テハ辨濟ヲ得スシテ抹殺ヲ受ケタル抵當債權者ノ記入ハ第二百五十一條ニ從ヒテ之ヲ回復ス
又右ノ塲合ニ於テ提供カ承諾ヲ得スシテ下ニ規定セル如ク不動產ヲ競賣ニ付シタルトキハ競落ハ第三所持者ノ爲メ宣告アリタルト其他ノ者ノ爲メ宣告アリタルトヲ問ハス以後解除條件ヲ免カルヽモノトス
第二百七十一條 抵當ヲ滌除スルノ權利ハ第三所持者ニシテ主タル債務者ト爲リ又ハ保證人ト爲リテ自身ニテ抵當債務ノ責ニ任スル者ニ屬セス
右ノ權利ハ債務者ノ相續人ニシテ其債務ノ自己ノ部分ノミヲ辨濟シタル者ニ屬セス
又右ノ權利ハ他人ノ債務ノ爲メ自己ノ財產ヲ抵當ト爲シタル者又ハ其相續人ニ屬セス
第二百七十二條 抵當債權者ヲ參加セシメタル總テノ公賣ニ付テハ滌除ヲ爲スノ限ニ在ラス
公用徵收ニ付テモ亦同シ
右ハ抵當債權者ノ其順位ヲ以テ競落代價又ハ徵收償金ノ配當ニ加入スルノ權利ヲ妨ケス
第二百七十三條 使用權、住居權及ヒ地役權ハ滌除ヲ爲スノ限ニ在ラス債務者抵當不動產ニ此等ノ權利ヲ負擔セシメタルトキハ抵當債權者ハ其權利ヲ斟酌セスシテ債務者ニ對シ不動產ノ賣却ヲ訴追スルコトヲ得
債務者ノ第二百六十二條第二項ニ記載シタル制限ヲ超エテ爲シタル賃貸借ニ付テモ亦同シ
第二百七十四條 第三所持者ハ債權者ヨリ訴追ヲ受ケサル間ハ何時ニテモ滌除スルコトヲ得又辨濟スルヤ不動產ヲ委棄スルヤノ催告ヲ受ケタル後一个月内ニ滌除スルコトヲ得但此ニ違フトキハ其權ヲ失フ
然レトモ右ノ失權ハ當然生セス裁判所ニ之ヲ請求スルコトヲ要ス但裁判所ハ第三所持者カ正當ノ障碍アリシコトヲ證シ且債權者ノ其遲延ノ爲メニ現實ノ損害ヲ受ケサル可キニ於テハ失權ヲ宣告セサルコトヲ得
又債權者ヨリ第二百七十九條第二號ニ規定シタル一个月ノ期間ニ失權ヲ請求セサルニ於テハ失權ヲ宣告スルコトヲ得ス
第二百七十五條 第三所持者ハ滌除ノ凖備トシテ自己ノ權利ヲ公示シ且第百八十四條及ヒ第百八十五條ニ從ヒ讓渡人ノ先取特權ヲ公示スル爲メ自己ノ取得證書ヲ登記スルコトヲ要ス
右ノ後第三所持者ハ其不動產ノ負擔セル先取特權又ハ抵當ノ目錄ヲ登記官吏ニ要求ス
第二百七十六條 上ニ記載シタル一个月ノ期間ニ第三所持者ハ記入シタル各債權者ト第百二十三條、第百八十三條及ヒ第百八十四條ニ從ヒ登記カ記入ニ同シキ効力ヲ有スル債權者トニ左ノ諸件ヲ告知スルコトヲ要ス
第一 取得證書ノ旨趣、其日附及ヒ登記ノ日附、讓渡人及ヒ取得者ノ氏名、職業、住所、讓受ケタル不動產ノ性質、其所在地、讓渡ノ代價及ヒ其負擔ヲ指示スル要領書但交換、贈與若クハ遺贈ニ因リテ權利ヲ取得シタルトキハ其評價ヲ指示ス可シ
第二 各記入ノ日附、其帳簿ノ葉數、其債權者ノ氏名、住所及ヒ主タル債權トシテ記入シタル金額ヲ明示スル記入表
第三 第三所持者ハ右ノ債權者カ法律ニ從ヒ且一个月ノ期間ニ增價競賣ヲ求メサルニ於テハ滿期、未滿期又ハ條件附ノ債權ヲ區別セスシテ各債權者ノ記入ノ順序ニ從ヒ之ニ不動產ノ代價、其評價若クハ之ニ超ユル金額ノ辨濟又ハ其債權者ノ爲メニ金額ノ供託ヲ爲サントスルノ提供
第二百七十七條 記入シタル債權者ノ中ニ先取特權ヲ有スル讓渡人又ハ分割者アルトキハ前條第三號ニ定メタル提供ニハ此債權者ヲシテ同一ノ期間ニ其解除訴權ヲ行ハント欲スル旨ヲ述ヘシムル爲メノ催告ヲ添フルコトヲ要ス但第百八十六條及ヒ第百八十七條ノ明文ニ因リ法律上ノ抵當ニ變性シタル先取特權ヲ有スル者ニ付テモ亦同シ
第二百七十八條 讓渡證書中ニ抵當ト爲シ又ハ爲サヽル財產アルトキハ取得者ハ抵當財產ノ爲メニノミ提供ヲ爲スコトヲ得又增價競賣ハ此提供ニ基キ之ヲ爲スコトヲ要ス
第二百七十九條 凡ソ記入シタル債權者ニシテ上ニ定メタル提供ヲ受諾セサル者ハ左ノ方式、期間及ヒ條件ヲ以テ抵當財產ノ競賣ヲ要求スルコトヲ要ス
第一 其要求ニハ提供金額ノ上少ナクトモ十分一ノ增價ニテ買受クルコトト其增額シタル代價ノ全部及ヒ費用ノ爲メ十分ナル保證人又ハ擔保ヲ供スル旨ノ陳述トヲ添フルコトヲ要ス若シ此ニ違フトキハ其要求ハ無効タリ但此塲合ニ於テハ總テノ正本ニ要求者又ハ其特別代理人ノ署名アルコトヲ要ス
第二 右ノ要求ハ提供告知ヨリ一个月内ニ第三所持者ニ之ヲ送逹スルコトヲ要ス若シ此ニ違フトキハ其要求ハ亦無効タリ
第三 右ノ期間ニ於テ債務者タルト否トヲ問ハス前所有者ニ右ニ同シキ送逹ヲ爲スコトヲ要ス
第四 主タル債務者ニ非サル者カ抵當ヲ設定シタルトキモ亦同一ノ期間ニ於テ其債務者ニ送逹ヲ爲スコトヲ要ス
第二百八十條 讓渡人又ハ分割者ニシテ其解除訴權ノ行使ヲ留保セスシテ前條ニ規定シタル如ク增價競賣ヲ要求シタル者ハ其訴權ヲ抛棄シタルモノト看做ス
若シ讓渡人又ハ分割者カ右ノ訴權ヲ保存セント欲スルトキハ增價競賣ノ爲メ許與セラレタル期間ト同一ノ期間ニ第三所持者ニ其旨ヲ告知スルコトヲ要ス若シ此ニ違フトキハ無効タリ但主タル債務者ナル前所有者ニ對シテ此ニ同シキ告知ヲ爲スコトヲ妨ケス
第二百八十一條 定マリタル方式及ヒ期間ヲ以テ增價競賣ノ告知アリタルトキハ其競賣ノ要求者ハ他ノ記入シタル債權者ノ承諾ナクシテ競賣ヲ言消スコトヲ得ス其債權者ハ此增價競賣ノ實行ヲ要求スルコトヲ得
若シ競賣ノ實行アリタルトキハ第二百九十二條以下ヲ適用ス
第二百八十二條 債權者ノ何人ヨリモ有効ニ競賣ヲ求メサリシトキハ不動產ノ滌除ハ債權者間ノ熟議上若クハ裁判上ノ順序ヲ以テスル辨濟ニ因リ又ハ債權者ノ名ヲ以テスル供託ニ因リテ成ル但此供託ニ付テハ豫メ實物提供ヲ爲スコトヲ要セス
此塲合ニ於テ總テノ抵當ハ之ヲ抹殺ス其元資ノ不足シタルモノト雖モ亦同シ
第二百八十三條 右ノ如ク滌除ヲ實行シタル後第三所持者ハ左ノ區別ニ從ヒ其讓渡人ニ對シテ擔保ノ求償權ヲ有ス
第一 賣買ノ塲合ニ於テハ其賣買代價外ニ提供シ及ヒ辨濟シタルモノヽ爲メ
第二 交換其他ノ有償契約ノ塲合ニ於テハ讓渡人ニ對スル自己ノ義務外ニ辨濟シタルモノヽ爲メ但自己ノ供給シタル對價物ノ返還ヲ受ケサルトキニ限ル
第三 贈與又ハ遺贈ノ塲合ニ於テハ贈與者又ハ遺言者ノ免責ニ付キ辨濟シタルモノヽ爲メ
第四 總テノ塲合ニ於テ自己ノ負擔シタル滌除手續ノ費用ノ爲メ
第三款 財產撿索ノ抗辯
第二百八十四條 自身ニテ且主トシテ抵當債務ノ責ニ任セサル第三所持者ハ訴追債權者ニ對シ同一債務ノ爲メニ抵當ト爲リタル他ノ不動產ヲ豫メ撿索シテ之ヲ賣却セシメント求ムルコトヲ得但此カ爲メニハ左ノ諸件ヲ具備スルコトヲ要ス
第一 其不動產カ辨濟ノ有ル可キ塲所ノ控訴院ノ管轄内ニ在ルコト
第二 其不動產カ猶ホ主タル債務者ニ屬スルコト
第三 其不動產カ爭ニ係ラサルコト
第四 其不動產カ債權者ノ記入ノ順位ト其價額トヲ斟酌シテ之ニ全部ノ辨濟ヲ得セシムルニ不十分ナルノ明白ナラサルコト
右ノ抗辯ハ訴追ノ起初ニ之ヲ提出スルコトヲ要ス
第二百八十五條 第三所持者ハ第二十條乃至第二十三條ニ從ヒ保證人ノ分限ヲ以テ己レニ屬スル撿索ノ利益ヲ抛棄シタルトキト雖モ抵當財產撿索ノ抗辯ノ利益ヲ失ハス
第二百八十六條 他人ノ債務ノ爲メ自己ノ不動產ヲ抵當ト爲シタル者及ヒ其相續人ハ撿索ノ抗辯ヲ以テ對抗スルコトヲ得
主タル債務者ノ連合債務者又ハ相續人ノ中ニテ訴追前ニ債務ニ於ケル自己ノ部分ヲ辨濟シタル者ニ付テモ亦同シ
第四款 委棄
第二百八十七條 第三所持者ハ所有權徵收ノ手續中何時ニテモ訴追ノ目的タル不動產ヲ委棄スルコトヲ得其委棄ニ因リ第三所持者ハ訴追債權者ニ所持ノミヲ委付シ不動產ノ所有權ト其法定ノ占有トヲ保存シテ其危險ヲ擔任ス
第二百八十八條 主タル債務者又ハ保證人トシテ自身ニ債務ヲ負擔シタルモノニ非サル第三所持者ノミ委棄ヲ爲スコトヲ得
債務者ノ連合債務者又ハ相續人ノ中ニテ債務ニ於ケル自己ノ部分ヲ辨濟シタル者及ヒ供物保證人ハ訴追中ト雖モ委棄ヲ爲スコトヲ得
第二百八十九條 有効ニ委棄ヲ爲スニハ自身ナルト代人ノ資格ナルトヲ問ハス所有權徵收ノ訴追ニ被告トシテ出頭スルノ能力ヲ有スルヲ以テ足レリトス
第二百九十條 委棄ハ委棄者又ハ其部理代人抵當財產所在地ノ裁判所ノ書記局ニ於テ之ヲ陳述シ其陳述書ニ署名シテ訴追債權者ニ告知スルコトヲ要ス
裁判所ハ訴追債權者又ハ第三所持者其他ノ利害關係人ノ求ニ因リテ委棄ニ付テノ管財人ヲ選任ス但所有權徵收ノ訴追ハ此管財人ニ對シテ繼續ス
第二百九十一條 第三所持者又ハ其代人ハ競落アルマテハ何時ニテモ委棄ヲ爲シタルト同一ノ方式ヲ以テ其委棄ヲ言消スコトヲ得此塲合ニ於テハ訴追債權者ニ對スル總債務ト其時マテノ費用トヲ一个月内ニ辨濟シ又ハ供託スルコトヲ要ス但他ノ債權者ノ訴追ノ權利ヲ妨ケス又滌除ノ期間カ經過セサルニ於テハ其債權者ニ對スル滌除ノ權利ヲモ妨ケス
第五款 競賣及ヒ所有權徵收
第二百九十二條 第三所持者カ辨濟ヲ爲サス委棄ヲ爲サス又滌除ヲ提出セサルトキ又ハ滌除ノ目的ニテ爲シタル提供ノ受諾ヲ得サルニ因リテ增價競賣ノ求アリタルトキハ民事訴訟法ニ規定シタル方式ト公示トヲ以テ不動產ヲ競賣ニ付ス
第二百九十三條 讓渡人又ハ分割者カ第二百八十條ノ明文ニ從ヒ其先取特權又ハ法律上ノ抵當權ヲ閣キテ其解除訴權ヲ行ハント欲スル旨ヲ陳述シタルトキハ競賣前ニ其訴ヲ爲スコトヲ要ス但第三所持者ノ要求ニ因リテ裁判所カ此事ニ付キ定メタル期間ヲ超ユルコトヲ得ス
第二百九十四條 總テノ塲合ニ於テ解除ノ請求ナク又ハ其認許ナキトキハ第三所持者ハ競賣ノ際競買人ト爲ルコトヲ得
第三所持者ノ利益ニ於テ競落ヲ宣告シタルトキハ其判决ハ原證書確認ノ證書トシテ其原證書ノ登記ノ緣邊ニ之ヲ附記スルノミ
第二百九十五條 第三所持者ニ非サル者ノ利益ニ於テ競落ヲ宣告シタルトキハ其判决ハ所有權移轉ノ證書トシテ特ニ之ヲ登記シ且前登記ノ緣邊ニ之ヲ附記ス
第二百九十六條 前條ノ塲合ニ於テハ競落ノ不動產ト第三所持者ニ屬スル他ノ不動產トノ間ニ成立セシ地役權ハ一旦混同シタルモ働方及ヒ受方ニテ再生シ其混同ハ解除セラル
第三所持者ニ其取得前ヨリ屬セシ用益權、賃借權其他ノ所有權ノ支分ニ付テモ亦同シ
第二百九十七條 競落ノ孰レノ塲合ニ於テモ第三所持者カ競落ノ不動產ニ付キ記入シタル抵當ヲ有セシトキハ其順位ニテ配當ニ加入ス
第二百九十八條 各債權者ニ其記入ノ順序ニ從ヒテ競落代價ヲ辨濟シ尚ホ剩餘アルトキハ其剩餘ハ競落人タルト否トヲ問ハス第三所持者ニ屬ス
若シ競落前ニ第三所持者ノ債權者カ右ノ不動產ニ付キ抵當ノ記入ヲ爲シタルトキハ其債權者ハ前所有者ニ對シテ記入シタル債權者ニ次キ配當ニ加入ス
第二百九十九條 第三所持者カ抵當不動產ノ占有中其所爲ニ因リテ之ヲ毁損シ又ハ之ニ必要若クハ有益ノ出費ヲ爲シタルトキハ第三所持者ト抵當債權者トノ間ニ於テ其計算ヲ爲ス
第三百條 第三所持者ハ委棄スルヤ辨濟スルヤノ催告ヲ受ケタル後ニ非サレハ債權者ニ對シテ果實ノ計算ヲ爲スコトヲ要セス
第三百一條 如何ナル塲合ニ於テモ競落代價ノ辨濟又ハ其供託ノ後ハ記入シタル總抵當ハ之ヲ抹殺シ不動產ハ滌除セラル其元資ノ不足シタル抵當モ亦同シ
第三百二條 競落ノ後第三所持者ハ左ノ如ク讓渡人ニ對シテ擔保ノ求償權ヲ有ス
第三所持者カ競落人ト爲リタルトキハ第二百八十三條ニ記載シタル如ク賠償ヲ受ク
外人ノ利益ニ於テ競落ノ宣告アリタルトキハ第三所持者ハ普通法ニ依リテ追奪擔保ニ付テノ權利ヲ有ス但左ノ區別ニ從フ
第一 賣買其他ノ有償名義ノ取得ノ塲合ニ於テ競落代價カ取得ノ原代價又ハ對價ヲ超過シタルトキハ此差額ハ第三所持者カ權利ヲ有スル損害賠償中ニ增價トシテ之ヲ加フ
第二 贈與又ハ遺贈ノ塲合ニ於テハ第三所持者ハ競落カ贈與者若クハ遺言者又ハ其相續人ヲシテ抵當債務ヲ免カレシメタル限度ニ非サレハ贈與者若クハ遺言者又ハ其相續人ヨリ賠償ヲ受ケス
手續ノ費用ハ競落人ヨリ之ヲ第三所持者ニ辨償ス
第六節 登記官吏ノ責任
第三百三條 第二百二十八條ニ定メタル受取證ニ付キ記載シタルモノヽ外登記幷ニ記入ノ帳簿ノ數、性質、記載ノ方法及ヒ登記官吏ノ職務ニ違ヒタル塲合ニ於テ言渡サル可キ罰金ハ特別ノ規則ヲ以テ之ヲ定ム
第三百四條 登記官吏ノ民事上ノ責任ニ關スル財產編第三百五十五條ハ抵當記入ノ脫漏又ハ訛誤ニ之ヲ適用ス
第三百五條 登記官吏カ第三所持者ノ證書登記ノ後之ニ交付シタル認證書中一箇又ハ數箇ノ記入ヲ脫漏シ此脫漏ノ爲メ記入債權者カ滌除ノ提供又ハ競落ノ手續ニ加ハラサリシトキト雖モ猶ホ不動產ノ抵當ハ滌除セラル
第三百六條 滌除ノ提供ニ對スル增價競賣ノ爲メ第二百八十條ニ定メタル時期ノ滿了セサル間ハ脫漏セラレタル債權者ハ其脫漏ヲ第三所持者ニ告知シ之ニ提供ノ通示ヲ求メ增價競賣ヲ要求シ又所有權徵收ノ手續カ終了セサルトキハ之ニ加ハルコトヲ得然レトモ此カ爲メ其手續ヲ遲延スルコトヲ得ス
如何ナル塲合ニ於テモ右ノ債權者ハ熟議上又ハ裁判上ニテ發開シタル順序配當手續ノ閉鎖セサル間ハ之ニ加ハルコトヲ得
右ハ前記ノ債權者カ脫漏ニ因リテ損害ヲ受ケタルコトヲ疏明スルニ於テハ登記官吏ニ對スル求償權ヲ妨ケス
登記官吏ハ主タル債務者又ハ其保證人ノ免責ノ爲メ右ノ求償ニ因リテ辨濟シタルモノニ付キ之ニ對シテ求償權ヲ有ス
第三百七條 登記官吏ハ登記、記入又ハ緣邊附記ノ要求ヲ拒ムコトヲ得ス但其要求カ合法ナラサルトキ又ハ法律ノ要スル疏明書類ニ錄製費用其他登記官吏ノ收受ス可キ費用ヲ添ヘテ差出サヽルトキハ此限ニ在ラス
拒絕ノ塲合ニ於テ登記官吏ハ要求ヲ受ケタルコトヲ認ムル書面ニ之ヲ拒絕シタル理由ヲ記載シテ交付ス可シ
右書類ノ交付アリタル上ハ利害關係人ハ其地ノ裁判所ニ抗告スルコトヲ得
第七節 抵當ノ消滅
第三百八條 抵當ハ左ノ諸件ニ因リテ消滅ス
第一 主タル義務全部ノ確定ノ消滅但更攺ノ塲合ニ付キ財產編第五百三條ニ記載シタルモノヲ妨ケス
第二 債權者ノ抵當ノ抛棄
第三 時効
第四 滌除但債權者提供ヲ受諾シ且第二百八十二條ニ從ヒテ提供金額ノ辨濟又ハ供託アリタルトキ
第五 競落但第二百七十二條及ヒ第三百一條ニ從ヒテ競落代價ノ辨濟又ハ供託アリタルトキ
第六 抵當不動產ノ全部ノ滅失伹第二百七條ニ從ヒテ債權者ノ權利カ其滅失ヨリ生ス可キ賠償ニ移轉スルコトヲ妨ケス
第七 公用徵收但抵當債權者ニ其償金ヲ辨濟スルコトヲ妨ケス
第三百九條 義務ノ消滅カ裁判上ニテ認メラレタル原因ニ由リテ取消サレタルトキハ記入ヲ抹殺シタリト雖モ抵當ハ其原順位ニ復ス
然レトモ其抵當ハ抹殺ノ後新記入ヲ爲ス前又ハ記入ヲ復シタル判决ヲ原記入ノ緣邊ニ附記スル前ニ記入ヲ爲シタル債權者ヲ害スルコトヲ得ス
第三百十條 抵當ノ抛棄ハ塲合ニ從ヒ有償又ハ無償ノ名義ニテ債權ヲ處分スルノ能力ヲ有スル債權者ニ非サレハ之ヲ爲スコトヲ得ス
債權者其抵當順位ノミノ抛棄ヲ爲ストキモ亦同シ
抵當又ハ順位ノ抛棄ハ默示タルコトヲ得
債權者カ讓渡人ト共ニ抵當不動產ノ讓渡ニ參加シタルトキハ其參加カ法律上或ル特別ノ名義ニテ要セラレサル塲合ニ限リ追及權ノミニ關シテ其抵當ヲ抛棄シタリト看做サル
第三百十一條 抵當ノ時効ハ不動產カ債務者ノ資產中ニ存スル塲合ニ於テハ債權ノ時効ト同時ニ非サレハ成就セス
右ノ塲合ニ於テ債權ニ關シ時効ノ進行ヲ中斷スル行爲及ヒ之ヲ停止スル原因ハ抵當ニ關シテ同一ノ効力ヲ生ス
第三百十二條 抵當不動產ノ所有者タル債務者カ其不動產ヲ讓渡シテ取得者又ハ其承繼人カ之ヲ占有スルトキハ記入シタル抵當ハ抵當上ノ訴訟ヨリ生スル妨碍ナキニ於テハ取得者カ其證書ヲ登記シタル日ヨリ起算シ三十个年ノ時効ニ因リテノミ消滅ス但債權カ免責時効ニ因リテ其前ニ消滅ス可キ塲合ヲ妨ケス
第三百十三條 眞ノ所有者ニ非サル者カ不動產ヲ讓渡シタルトキハ占有者ハ其善意ナルト惡意ナルトニ從ヒ所有者ニ對シテ時効ヲ得ル爲メニ必要ナル時間ノ經過ニ因リ記入シタル抵當債權者ニ對シテ時効ヲ取得ス
無名義ニテ不動產ヲ占有スル者ニ付テモ亦同シ
第三百十四條 第三所持者ノ爲メノ抵當消滅ノ時効ハ記入ノ更新ニ因リテ中斷セラレス然レトモ其時効ハ占有者ノ任意ノ追認及ヒ第二百七十四條ニ規定シタル如ク其占有者ニ爲シタル催告其他總テ抵當權ニ効力ヲ與フル行爲ニ因リテノミ中斷セラル
右ノ時効ハ債權ニ附着スル期限又ハ條件ニ因リテ停止セラレス
債権担保編
総則
第一条 債務者ノ総財産ハ動産ト不動産ト現在ノモノト将来ノモノトヲ問ハス其債権者ノ共同ノ担保ナリ但法律ノ規定又ハ人ノ処分ニテ差押ヲ禁シタル物ハ此限ニ在ラス
債務者ノ財産カ総テノ義務ヲ弁済スルニ足ラサル場合ニ於テハ其価額ハ債権ノ目的、原因、体様ノ如何ト日附ノ前後トニ拘ハラス其債権額ノ割合ニ応シテ之ヲ各債権者ニ分与ス但其債権者ノ間ニ優先ノ正当ナル原因アルトキハ此限ニ在ラス
財産ノ差押、売却及ヒ其代価ノ順序配当又ハ共分配当ノ方式ハ民事訴訟法ヲ以テ之ヲ規定ス
第二条 義務履行ノ特別ノ担保ハ対人ノモノ有リ物上ノモノ有リ
対人担保ハ左ノ如シ
第一 保証
第二 債務者間又ハ債権者間ノ連帯
第三 任意ノ不可分
物上担保ハ左ノ如シ
第一 留置権
第二 動産質権
第三 不動産質権
第四 先取特権
第五 抵当権
第一部 対人担保
第一章 保証
第三条 保証ハ任意ノモノ有リ法律上ノモノ有リ又裁判上ノモノ有リ
下ノ第一節乃至第三節ノ規定ハ右三種ノ保証ニ共通ナリ
第一節 保証ノ目的及ヒ性質
第四条 保証ハ或人カ債務者ノ其義務ヲ履行セサルニ於テハ之ヲ履行スルコトヲ諾約スル契約ナリ此約務ハ債務者ノ過失ニ帰ス可キ履行不能ノ場合ニ於テハ債権者ニ賠償スルノ約務ヲ暗ニ包含ス
第五条 保証ハ主タル義務ノ目的ト異ナルモノヲ目的ト為ストキハ保証トシテハ無効ナリ
然レトモ保証人ハ主タル債務者ノ諾約シタル物又ハ所為ノ対価トシテ不履行ヲ予見シタル過怠金額ヲ有効ニ諾約スルコトヲ得
第六条 保証人ノ義務ハ主タル義務ヨリ一層大ナルコトヲ得ス又一層重キ体様ニ服スルコトヲ得ス若シ保証人ノ義務カ一層大ナルトキ又ハ一層重キトキハ主タル義務ノ限度及ヒ体様ニ之ヲ減ス
第七条 前条ノ禁止ノ規定ハ債務者ヨリ其主タル義務ノ為メ物上担保ヲ供セサルトキ保証人ヨリ其従タル義務ノ物上担保ヲ供スルコトヲ妨ケス又保証人カ主タル債務者ヨリ一層厳ナル執行方法ニ服スルコトヲモ妨ケス
保証人ハ亦第三者ヲ引受人トシテ己レヲ保証セシムルコトヲ得此引受人ニ対シテハ保証人ハ主タル債務者ノ地位ヲ有ス
第八条 金額又ハ定マリタル物ニ制限シタル保証ハ其利息ニモ果実ニモ其他ノ附従物ニモ及フコト無シ
然レトモ主タル義務ノ無限ノ保証ハ要約シタル利息、遅延ノ利息其他此債務ノ天然上、法律上又ハ合意上ノ附従物ニ及ヒ又主タル債務者ニ対シテ為シタル最初ノ訴ノ費用及ヒ其訴ヲ保証人ニ告知シタル以後ノ費用ニモ及フ
第九条 総テ有効ナル義務ハ之ヲ保証スルコトヲ得
無能力者ノ取消スコトヲ得ヘキ義務ト雖モ亦有効ニ之ヲ保証スルコトヲ得其義務カ裁判上ニテ取消サレタル後ト雖モ保証ハ其効力ヲ存ス但保証人カ其保証ノ際債務者ノ無能力ヲ知リタルトキニ限ル
第十条 何人ニテモ将来ノ債務ヲ保証スルコトヲ得又債権者又ハ債務者ノ方ニ於テ随意ノ条件ニ繋カル債務ヲモ保証スルコトヲ得但保証人ニ於テ其債務ノ性質及ヒ広狭ヲ査定スルコトヲ得ルトキニ限ル
第十一条 何人ニテモ債務者ノ委任ヲ受ケ又ハ其不知ニ於テ又其意ニ反シテモ其保証人ト為ルコトヲ得
弁済シタル保証人ノ其債務者ニ対スル求償ノ場合ハ第二節第二款ニ於テ之ヲ規定ス
第十二条 有効ニ保証人ト為ルニハ無償名義ニテ義務ヲ負担スルノ能力ヲ有スルコトヲ要ス
然レトモ主タル契約カ有償名義ナルトキハ保証人ノ債務者ニ対スル無能力ハ債権者カ之ヲ知リタルトキニ非サレハ保証人ヨリ債権者ニ其無能力ヲ以テ対抗スルコトヲ得ス
第十三条 債務ヲ保証スルノ意思ハ之ヲ明示セサルトキハ明カニ事情ヨリ生スルコトヲ要ス然レトモ其意思ハ契約者ノ一方ヲ他ノ一方ニ勧メ又ハ其一方ノ現在若クハ将来ノ有資力ヲ確言シタル事実ノミヨリ之ヲ推測スルコトヲ得ス
若シ証書ノ署名者中ノ一人カ共同債務者ナルヤ又ハ保証人ナルヤニ付キ疑アルトキハ之ヲ保証人ト看做ス
第十四条 保証人ノ義務ハ其相続人ノ負担ニ帰シ又債権者ノ相続人ノ利益ニ帰ス但反対ノ要約アルトキハ此限ニ在ラス
第十五条 債務者カ保証人ヲ立ツ可キ合意ヲ以テ義務ヲ負ヒタルトキハ其債務者ハ債務ノ性質及ヒ大小ニ応シ有資力ノ人ニ非サレハ保証人トシテ之ヲ立ツルコトヲ得ス
若シ右ノ保証人カ無資力ト為リタルトキハ債務者ハ前項ト同一ノ条件ヲ具備スル他ノ者ヲ立ツルコトヲ要ス
此他保証人ハ弁済ノ有ル可キ控訴院ノ管轄地内ニ於テ住所ヲ有シ又ハ之ヲ選定スルコトヲ要ス
債権者ヨリ人ヲ指定シテ保証人ヲ要約シタルトキハ本条ノ条件ヲ要セス
第十六条 債務者カ前条ノ条件ヲ具備スル保証人ヲ立ツルコト能ハサルトキハ十分ナル物上担保ヲ与フルコトヲ得
第十七条 商証券ノ保証及ヒ仲買人カ委託者ニ対シテ諾約シタル担保ノ特例ハ商法ニ於テ之ヲ規定ス
第二節 保証ノ効力
第一款 保証人債権者間ノ保証ノ効力
第十八条 債権者ハ債務者ニ義務履行ノ催告ヲ為シタルモ其効果アラサリシコトノ証拠ヲ保証人ニ示サスシテ之ヲ訴追スルコトヲ得ス
然レトモ債務者カ行方知レス又ハ破産ノ宣告ヲ受ケ若クハ顕然タル無資力ノ形状ニ在ルトキハ右ノ催告ヲ必要トセス
第十九条 保証人ハ右ノ外下ノ制限及ヒ条件ニ従ヒ債権者カ予メ債務者ノ財産ヲ検索シテ之ヲ売ラシムルコトヲ債権者ニ要求スルコトヲ得
第二十条 保証人ハ明示又ハ黙示ニテ財産検索ノ利益ヲ抛棄シ又ハ主タル債務者ト連帯シテ義務ヲ負担シタルトキハ検索ノ利益ヲ享ケス
総テノ場合ニ於テ保証人ハ主タル債務ノ基本ヲ争フノ前ニ検索ノ利益ヲ以テ債権者ニ対抗セサリシトキハ其利益ヲ失フ
第二十一条 検索ヲ要求スル保証人ハ債務者ノ不動産ニシテ弁済ノ有ル可キ控訴院ノ管轄地内ニ在ルモノヲ債権者ニ指示スルコトヲ要ス
保証人ハ争ニ係ル不動産ヲモ他ノ債権者ニ優先ニテ抵当ト為リタル不動産ヲモ訴追シタル債権者ニ抵当ト為リタル不動産ニシテ第三所持者ノ手ニ存スルモノヲモ指示スルコトヲ得ス
債務者ニ属スル動産ニ付テハ債務者之ヲ物上担保トシテ既ニ債権者ニ供シタルトキニ非サレハ保証人其検索ヲ要求スルコトヲ得ス
第二十二条 債権者検索ノ有効ナル対抗ヲ受ケ其検索ヲ為スコトヲ怠リテ債務者其後無資力ト為リタルトキハ保証人ハ債権者ノ検索ニ因リ得タルコト有ル可キ金額ニ満ツルマテ其義務ヲ免カル
第二十三条 一人ノ債務者ノ為メ数人ノ保証人アルトキハ債務ハ均一ニテ当然其間ニ分タル但不均一ニテ分別スルコトヲ定メ又ハ其保証人カ或ハ債務者ト共ニ或ハ各自ノ間ニ連帯シテ義務ヲ負担シ若クハ其他ノ方法ニテ分別ヲ抛棄シタトキハ此限ニ在ラス
保証ノ義務カ各別ノ証書ヨリ生スルトキト雖モ分別ノ利益ハ存在ス
第二十四条 保証人ハ検索ノ利益ヲ用井タルト否ト分別ノ利益ヲ享クルト否トヲ問ハス訴追ヲ受ケタルトキハ第二十九条ニ明示シタル目的ヲ以テ債務者ヲ訴訟ニ参加セシムル為メ基本ニ付テノ答弁前ニ民事訴訟法ニ定メタル方式及ヒ条件ニ従ヒ延期抗弁ヲ以テ債権者ニ対抗スルコトヲ得
第二十五条 保証人カ基本ニ付テ答弁スルトキハ主タル債務ノ組成又ハ其消滅ヨリ生スル抗弁ヲ以テ債権者ニ対抗スルコトヲ得
保証人ハ債務ヲ保証スルニ当リ債務者ノ無能力又ハ其承諾ノ瑕疵ヲ知ラサリシトキハ此等ノ事項ヨリ生スル無効ノ理由ヲ以テモ対抗スルコトヲ得
第二十六条 右ノ抗弁ニ付キ債権者ト保証人トノ間ニ有リタル判決ハ債務者ヲ害スルコトヲ得ス然レトモ之ヲ利スルコトヲ得但其判決ノ牽連シタル箇条ハ債務者ニ利ナルモノト不利ナルモノトヲ分ツコトヲ得ス
第二十七条 債務者ニ対シテ時効ヲ中断シ又ハ債務者ヲ遅滞ニ付スル行為ハ保証人ニ対シテ同一ノ効力ヲ生ス
保証人ニ対シタル右同一ノ行為ハ保証人カ債務者ノ委任ヲ受ケ又ハ債務者ト連帯シ義務ヲ負担シタルトキニ非サレハ債務者ニ対シテ効力ヲ生セス
第二十八条 主タル債務者ノ為シタル債務ノ自白ハ保証人ヲ利シ又ハ之ヲ害ス
保証人ト債権者トノ間ニ為シタル右同一ノ行為ハ債務者ヲ利ス然レトモ委任又ハ連帯アル場合ニ非サレハ之ヲ害セス
第二款 保証人債務者間ノ保証ノ効力
第二十九条 債権者ヨリ訴追ヲ受ケタル保証人ハ第二十四条及ヒ財産編第三百九十九条ニ掲ケタル如ク主タル請求ニ対シテ債務者ノ答弁ヲ要ス可キ場合ニ於テハ其答弁ヲ為サシムル為メ又債務者ノ敗訴ノ言渡ヲ受クル場合ニ於テハ債務者ニ対シテ次条ニ定メタル賠償ノ言渡ヲ得ル為メ担保附帯ノ請求ヲ以テ債務者ヲ訴訟ニ召喚スルコトヲ得
右担保ノ附帯ノ請求ハ債務者ノ委任ヲ受ケテ義務ヲ負担シタル保証人ノミニ属ス
第三十条 主タル債務ヲ弁済シ其他自己ノ出捐ヲ以テ債務者ニ義務ヲ免カレシメタル保証人ハ債務者ヨリ賠償ヲ受クル為メ之ニ対シテ担保訴権ヲ有ス但左ノ区別ニ従フ
第一 保証人カ債務者ノ委任ヲ受ケテ義務ヲ負担シタルトキハ其債務者ニ義務ヲ免カレシメ又ハ債務者ノ名ニテ弁済シタル元利、其担当シタル費用、立替ヲ為シタル時ヨリ其利息其他損害アルトキハ其賠償ノ金額ヲ債務者ヨリ償還セシムルコトヲ得又此委任ノ場合ニ於テ保証人ハ其分限ヲ以テ言渡ヲ受ケタルトキハ直チニ其賠償ヲ受クル為メ訴ヲ為スコトヲモ得
第二 保証人カ債務者ノ不知ニテ義務ヲ負担シタルトキハ債務者ノ義務ヲ免カレシメタル日ニ於テ之ニ得セシメタル有益ノ限度ニ従ヒ右ノ賠償ヲ受ク
若シ保証人カ債務者ノ意ニ反シテ義務ヲ負担シタルトキハ保証人ノ求償ノ日ニ於テ債務者ノ為メ存在スル有益ノ限度ニ非サレハ右ノ賠償ヲ受クルコトヲ得ス
第三十一条 連帯又ハ不可分ニテ責ニ任スル数人ノ債務者ヨリ保証人ニ委任ヲ為シタル場合ニ於テハ其債務者ハ財産取得編第二百五十五条ニ従ヒ保証人ニ対シテ連帯ノ担保人タリ
第三十二条 債務者ヲ訴訟ニ参加セシムルコトヲ怠リタル保証人ハ其債務者カ債権者ニ対抗ス可キ排訴抗弁ヲ有シタルコトヲ証スルトキハ第三十条ニ定メタル求償権ヲ有セス
若シ債務者カ債権者ニ対抗ス可キ延期抗弁ノミヲ有シタルトキハ懈怠ナル保証人ノ求償ニ対シ之ヲ以テ対抗スルコトヲ得
第三十三条 保証人ハ有効ニ弁済シタルモ債務者ニ有益ニ其旨ヲ通知スルコトヲ怠リ為メニ債務者カ善意ニテ再ヒ弁済シ其他有償名義ニテ自己ノ免責ヲ得タルトキモ亦其求償権ヲ失フ
右ニ反シテ債務者カ自ラ債務ヲ消滅セシメタルコトヲ保証人ニ通知スルヲ怠リタルトキハ債務者ハ場合ニ従ヒ其債務ノ消滅後保証人ノ為シタル弁済ニ付キ責任アリトノ宣告ヲ受クルコト有リ
孰レノ場合ニ於テモ利害ノ関係アル当事者ハ受取ルコトヲ得サルモノヲ受取リタル債権者ニ対シテ求償権ヲ有ス
第三十四条 委任ヲ受ケテ義務ヲ負担シタル保証人ハ弁済ヲ為ス前又訴追ヲ受クル前ニテモ債務者ヨリ予メ賠償ヲ受クル為メ又ハ未定ノ損失ヲ担保セシムル為メ左ノ三箇ノ場合ニ於テ之ニ対シ訴ヲ為スコトヲ得
第一 債務者カ破産シ又ハ無資力ト為リ且債権者カ清算ノ配当ニ加入セサルトキ
第二 債務ノ満期ノ到リタルトキ
第三 満期ノ不定ナル債務カ其日附ヨリ十个年ヲ過キタルトキ
第三十五条 債権者カ完全ノ弁済ヲ受ケサル間ハ前条及ヒ第三十条ニ依リ債務者ヨリ予メ保証人ニ供ス可キ賠償ハ債務者其債権者ニ対スル自己ノ免責ヲ保スル為メ債権者ノ名ヲ以テ之ヲ供託シ又ハ其他ノ方法ニテ之ヲ留存スルコトヲ得
第三十六条 主タル債務ヲ弁済シタル総テノ保証人ハ第三十二条及ヒ第三十三条ニ定メタル制限ニ従フニ於テハ己レノ権利ニ基キテ有スル訴権ノ外債務者又ハ第三者ニ対シ債権者ノ有シタル総テノ権利ニ付キ財産編第四百八十二条第一号ニ従ヒテ代位ス
債権者カ債務者ノ不動産ニ付キ先取特権又ハ抵当権ヲ有シ其記入ヲ為シタルトキハ保証人ハ代位ヲ目的トシテ自己ノ条件附ノ債権ヲ此記入ノ縁辺ニ附記スルコトヲ得又譲渡ノ場合ニ於テハ其不動産ヲ所持スル第三者ハ滌除ノ為メ債権者ノ外保証人ニ対シテモ亦提供ヲ為スコトヲ要ス
債権者カ有益ナル時期ニ於テ右ノ記入ヲ為サヽリシトキハ保証人ハ第四十五条及ヒ財産編第五百十二条ニ従ヒ債権者ニ対シテ自己ノ免責ヲ請求スルコトヲ得
第三十七条 連帯又ハ不可分ナル義務ノ数人ノ債務者アルトキハ保証人ハ其中ノ或ル者ヲ保証シ他ノ者ヲ保証セサルトキト雖モ右ノ代位ニ依リ債務者ノ各自ニ対シテ全部ニ付キ求償スルコトヲ得
第三款 共同保証人間ノ保証ノ効力
第三十八条 一箇ノ債務ニ付キ数人ノ保証人アリテ其中ノ一人カ任意ナルト否トヲ問ハス債務ノ全部ヲ弁済シタルトキハ其保証人ハ主タル債務者ニ対スル求償ニ関シ上ニ記載シタル条件、制限及ヒ区別ニ従ヒ或ハ事務管理ノ訴権ニ因リ或ハ債権者ノ訴権ニ因リ他ノ保証人ノ各自ニ対シテ均一部分ニ付キ求償スルコトヲ得
右ノ保証人カ債務ノ全部ヲ弁済セスシテ自己ノ部分ヨリ多ク弁済シタルトキハ其超過額ノ為メノ求償ハ他ノ共同保証人ノ間ニ均一ニ之ヲ分ツ
第三十九条 共同保証人中ニ無資力ト為リタル者アルトキハ弁済シタル者ハ其無資力者ノ引受人ニ対シテ求償権ヲ有ス若シ引受人アラサルトキハ無資力者ノ部分ハ債務ヲ弁済シタル者ヲ加ヘ他ノ有資力ナル共同保証人ノ間ニ之ヲ分ツ
第四十条 前条ニ依リ訴ヲ受ケタル共同保証人ハ未タ主タル債務者ノ財産ノ検索アラサルトキハ第二十条以下ニ定メタル規則及ヒ条件ニ従ヒテ予メ主タル債務者ノ財産ノ検索ヲ請求スルコトヲ得
右同一ノ権利ハ保証人ノ引受人ニモ属ス
第四十一条 連帯又ハ不可分ナル債務ノ為メ義務ヲ負担シタル数人ノ保証人中全部履行ニ付キ訴ヲ受ケタル者ハ本訴ニ附帯シテ共同保証人ヲ担保ノ為メニ召喚シ之ニ対シ同一ノ判決ヲ以テ前数条ニ許サレタル言渡ヲ受シムルコトヲ得
第四十二条 保証人ノ一人ニ対スル時効中断又ハ付遅滞ノ行為ハ他ノ保証人ニ対シテ其効ナシ但其義務カ連帯ナルトキハ此限ニ在ラス
債権者ト保証人ノ一人トノ間ニ主タル債務ニ関シ為サレタル判決及ヒ自白ハ他ノ保証人ヲ利スルコトヲ得然レトモ之ヲ害スルコトヲ得ス
第四十三条 相互ニ連帯シ又ハ債務者ト連帯シタル保証人中ニ無資力ト為リタル者アルトキハ各保証人ノ間ニ第六十八条、第六十九条及ヒ第七十条ヲ其各条ニ記載シタル区別ニ従ヒテ適用ス
第三節 保証ノ消滅
第四十四条 保証ハ義務消滅ノ通常ノ原因ニ由リ直接ニ消滅ス
保証ノ更改、免除、相殺及ヒ混同ハ財産編第五百二条、第五百十一条、第五百二十条及ヒ第五百三十七条ニ於テ之ヲ規定ス
第四十五条 債権者カ故意又ハ懈怠ニテ保証人ノ其代位ニ因リテ取得スルコトヲ得ヘキ担保ヲ減シ又ハ危クシタルトキハ保証人ハ債権者ニ対シテ自己ノ免責ヲ請求スルコトヲ得
総テ保証人ハ区別ナク又保証人ノ引受人ハ保証人ノ権利ニ基キ右ノ権利ヲ援用スルコトヲ得
第四十六条 保証ハ主タル義務消滅ノ総テノ原因ニ由リテ間接ニ消滅ス
債権者ト主タル債務者トノ間ニ為シタル代物弁済、更改、免除、相殺及ヒ混同ノ保証人ニ対スル効力ハ財産編第四百六十二条、第五百一条、第五百六条、第五百二十条及ヒ第五百三十七条ニ於テ之ヲ規定ス
第四節 法律上及ヒ裁判上ノ保証ニ特別ナル規則
第四十七条 法律ノ規定又ハ判決ニ従ヒテ保証人ヲ立ツルノ責アル者ハ自ラ保証人ヲ立テント約シタルトキト同一ニシテ第十五条及ヒ第十六条ニ定メタル如キ条件ヲ具備スル保証人ヲ立ツルコトヲ要ス
法律上及ヒ裁判上ノ保証人ヲ承認スルノ手続ハ民事訴訟法ニ於テ之ヲ規定ス
第四十八条 裁判所ハ法律カ裁判執行ノ為メ保証人ヲ立テシムルノ権能ヲ付与シタル場合ニ非サレハ此カ為メ保証人ヲ立ツ可キヲ命スルコトヲ得ス
第四十九条 裁判上ノ保証人及ヒ其引受人ハ財産検索ノ利益ヲ有スルコトヲ得ス
第五十条 法律上及ヒ裁判上ノ保証人ハ其債務者ニ対スル担保ノ求償ニ関シテハ常ニ之ヲ債務者ノ代理人ト看做ス
第二章 債務者間及ヒ債権者間ノ連帯
総則
第五十一条 義務ノ目的単数ナルモ主タル当事者トシテ之ニ関係スル人複数ナルトキハ其義務ハ財産編第四百三十八条ニ指示シ且下ノ二節ニ記載スル如ク受方又ハ働方ニテ連帯タルコト有リ
第一節 債務者間ノ連帯
第一款 債務者間ノ連帯ノ性質及ヒ原因
第五十二条 債務者間ノ連帯即チ受方連帯ハ共同債務者ヲシテ其共通ノ利益ニ於テモ債権者ノ利益ニ於テモ相互ニ代人タラシム
此連帯ハ合意、遺言又ハ法律ノ規定ヨリ生スルコトヲ得
連帯ハ之ヲ推定セス如何ナル場合ニ於テモ明示ニテ之ヲ定ムルコトヲ要ス但不可分ニ関シ第九十条ニ記載シタルモノハ此限ニ在ラス
第五十三条 数人ノ債務者ノ連帯義務ハ同一ノ行為ヲ以テ又同時、同所ニ於テ之ヲ契約スルコトヲ要セス但其義務ノ目的及ヒ原因ハ同一ナルコトヲ要ス
又連帯債務者ハ別異及ヒ不均一ノ体様又ハ負担ヲ以テ責ニ任スルコトヲ得
第二款 債務者間ノ連帯ノ効力
第五十四条 数人ノ連帯債務者ヲ有スル債権者ハ其訴追セント択ミタル債務者ニ対シ唯一人ノ債務者ニ於ケル如ク且其債務者ヨリ検索又ハ分別ノ利益ノ抗弁ヲ受クルコト無ク義務全部ノ履行ヲ要求スルコトヲ得
又債権者ハ皆済ヲ受クルニ至ルマテ同時又ハ順次ニ総債務者ヲ訴追スルコトヲ得
第五十五条 各債務者ハ訴ヲ受ケタルト否トヲ問ハス連帯債務全部ノ弁済ヲ受クルコトヲ債権者ニ強要スルコトヲ得
第五十六条 連帯債務者ニシテ債務ニ於ケル全部又ハ自己ノ部分ヨリ多額ニ付キ訴ヘラレタル者ハ共同債務者ヲ訴訟ニ召喚シ附帯ノ担保方法ヲ以テ其債務者ヲシテ答弁又ハ弁済ヲ担任セシムル為メ必要ナル期間ヲ請求スルコトヲ得但債権者ニ対シテハ訴追ヲ受ケタル債務者ノミ其責ニ任ス
共同債務者ハ亦其利益保護ノ為メ任意ニ自費ヲ以テ訴訟ニ参加スルコトヲ得
第五十七条 連帯債務ノ履行ノ為メ訴ヲ受ケタル各債務者ハ自己ノ権利ニ基クト共同債務者ノ権利ニ基クトヲ問ハス義務ノ組成又ハ消滅ヨリ生スル答弁方法ヲ以テ債務ノ全部ニ付キ債権者ニ対抗スルコトヲ得
右ノ外更改、免除、相殺及ヒ混同ニ関シテハ財産編第五百一条第五百六条、第五百九条、第五百二十条及ヒ第五百三十四条ノ規定ニ従フ
第五十八条 債務者ノ一人ノ無能力又ハ承諾ノ瑕疵ニ基キタル答弁方法ハ其人自身ニ非サレハ之ヲ援用スルコトヲ得ス然レトモ此答弁方法カ一旦許サレタル上ハ債務ニ於ケル其者ノ部分ニ付キ他ノ債務者ヲ利ス但他ノ債務者カ契約ノ際義務履行ニ付キ其者ノ分担ヲ予期スルコト有リタルトキニ限ル
第五十九条 前二条ニ規定シタル種種ノ事項ニ付キ債権者ト債務者ノ一人トノ間ニ為サレタル判決及ヒ自白ハ他ノ債務者ノ利害ニ於テ前二条ニ同シキ限度及ヒ区別ヲ以テ其効力ヲ生ス
第六十条 一人ノ債務者ト他ノ債務者トノ間ニ於ケル連帯ノ成立ノミニ関シテ其一人ト債権者トノ間ニ為サレタル判決及ヒ自白ハ他ノ債務者ヲ害セス又之ヲ利セス
第六十一条 連帯債務者ノ一人ニ対シ債権者ノ利益ニ於テ時効ヲ中断シ又ハ付遅滞ヲ成ス原因ハ他ノ債務者ニ対シテ同一ノ効力ヲ有ス
債務者ノ一人ニ対シ債権者ノ利益ニ於テ存スル時効停止ノ原因ハ他ノ債務者ノ利益ニ於テ其部分ノ為メ時効ノ進行スルコトヲ妨ケス
第六十二条 若シ連帯債務者ノ一人カ数名ノ相続人ヲ遺シテ死亡シタルトキハ他ノ債務者ノ一人ニ関スル訴追ノ行為、判決及ヒ自白ハ其各相続人ニ対シ債務ノ全部ニ於ケル其相続部分ノ割合ニ非サレハ効力ヲ生セス
各相続人ハ亦其相続部分ノ割合ニ非サレハ訴追セラレス又前記ノ行為ノ効力ヲ受ケス此場合ニ於テ前記ノ行為ハ亦従来ノ債務者ノ各自ニ対シ同一ノ限度ヲ以テ其効力ヲ生ス
債権者ト右相続人ノ一人トノ間ニ為サレタル右同一ノ行為ハ他ノ相続人ニ対シテ効力ナシ
第六十三条 義務ノ目的物ノ滅失其他総テ義務履行ノ不能カ連帯債務者ノ一人ヲ過失ニ因リ又ハ其付遅滞後ニ生スルトキハ他ノ債務者ハ債権者ニ対シ連帯シテ損害賠償又ハ過怠約款ノ責ニ任ス但過失アリ又ハ遅滞ニ在リシ債務者ニ対スル他ノ債務者ノ求償権ヲ妨ケス
債務者ノ一人カ死亡シタルトキハ他ノ債務者及ヒ死者ノ相続人ノ相互ノ責任ハ前条ノ規定ニ従フ
第六十四条 連帯債務者中ニテ債務ヲ弁済シ其他自己ノ出捐ヲ以テ共同ノ免責ヲ得セシメタル者ハ他ノ債務者ニ対シ弁済又ハ免責ノ限度ニ於テ其各自ノ負担部分ニ付キ自己ノ権利ニ基キテ求償権ヲ有ス
右ノ求償中ニハ会社及ヒ代理ノ規則ニ従ヒ弁償金及ヒ必要ナル出捐ノ賠償ノ外弁償以後ノ法律上ノ利息及ヒ避クルコトヲ得サリシ費用ヲ包含ス
第六十五条 債務ヲ弁済シタル債務者ハ債権者ノ実際受取リタルモノヽ限度ニ於テノミ財産編第四百八十二条第一号ニ従ヒ法律上ノ代位ニ因リテ其債権者ノ権利及ヒ訴権ヲ行フコトヲ得
然レトモ其債務者ハ前条ニ記載シタル如ク其共同債務者ノ各自ノ間ニ於テ自己ノ訴ヲ分ツコトヲ要ス
第六十六条 不注意ニテ弁済シタル保証人ニ対シ第三十二条及ヒ第三十三条ニ規定シタル求償ノ失権ハ訴追又ハ弁済ヲ共同債務者ニ告知スルコトヲ怠リタル連帯債務者ニ対シテ之ヲ適用ス
第六十七条 共同債務者ノ一人カ上ニ指示シタル方法ノ一ニ因リ求償ノ行ハレタル当時ニ於テ無資力ナルトキハ無資力者ノ部分ハ弁済シタル者ヲモ加ヘテ他ノ資力アル者ノ間ニ割合ニ応シテ之ヲ分ツ但要求者ノ責ニ帰ス可キ懈怠アリシトキハ此限ニ在ラス
第六十八条 何等ノ弁済モ有ラサル前ニ連帯債務者ノ一人ノ無資力ト為リタルトキハ債権者ハ其債権ノ全額ニ付キ清算ニ加ハルコトヲ得
此場合ニ於テ弁済ノ残額ハ他ノ債務者之ヲ負担ス但其債務者ノ自己ノ部分外ニ負担シタルモノニ対スル求償ハ其清算ニ加ハリタル他ノ債権者ヲ害スルコトヲ得ス
第六十九条 債務者ノ一人ノ無資力ト為リタル前ニ一分ノ弁済アリタルトキハ債権者ハ弁済残額ノ為メニ非サレハ其清算ニ加ハルコトヲ得ス又一分ノ弁済ヲ為シタル他ノ債務者ハ第六十四条ニ従ヒ自己ノ受取ル可キモノヲ弁償セシムル為メ清算ニ加ハルコトヲ得
第七十条 何等ノ弁済モ有ラサル前ニ総テノ連帯債務者又ハ其中ノ数人ノ無資力ト為リタル場合ニ於テ債権者ハ其債権ノ全額ニ付キ各清算ニ加ハルコトヲ得
然レトモ債権者カ清算ノ一ニ於テ配当金ヲ受取リタルトキハ他ノ清算ニ於テ其債権ノ全額ニ従ヒ債権者ニ充テタル新配当金ハ以前ノ配当ニ於テ未タ受取ラサルモノヽ割合ニ応スルニ非サレハ之ヲ債権者ニ払渡スコトヲ得ス
右払渡ノ残額ハ各清算ニ返還ス但各清算ノ弁済シタルモノヽ割合ニ従フ
第三款 債務者間ノ連帯ノ終了
第七十一条 債権者カ総債務者ニ対シテ連帯ヲ抛棄スルトキハ財産編第四百三十八条第一項ニ規定シタル如ク其債務者ノ義務ハ単ニ連合ノモノト為リテ存シ其他ノ性質ヲ変スルコト無シ
第七十二条 財産編第五百十条ニ従ヒ明示又ハ黙示ニテ債務者ノ一人又ハ数人ニ対シテノミ連帯ノ抛棄アリタルトキハ他ノ債務者ハ連帯ノ免除ヲ得タル者ノ部分ニ於テノミ其義務ヲ免カル
連帯ノ免除ヲ得サル債務者中ニ無資力者アルトキハ債権者ハ其無資力ニ付キ連帯ノ免除ヲ得タル者ノ部分ヲ負担ス
第七十三条 債権者カ連帯債務者ノ一人ヨリ供シタル担保ニシテ他ノ債務者ノ弁済シテ代位スルコトヲ得ヘキモノヽ全部又ハ一分ヲ毀損シ又ハ滅失セシメタルトキハ他ノ債務者ハ其担保ヲ供シタル者ノ部分ニ付キ連帯ノ義務ヲ免カレント請求スルコトヲ得
右ノ請求ニ因リテ宣告シタル免責ハ連帯ノ任意免除ト同一ノ効力ヲ有ス
第四款 全部義務
第七十四条 財産編第三百七十八条、第四百九十七条第二項及ヒ其他法律カ数人ノ債務者ノ義務ヲ其各自ニ対シ全部ノモノト定メタル場合ニ於テハ相互代理ニ付シタル連帯ノ効力ヲ適用スルコトヲ得ス但其総債務者又ハ其中ノ一人カ債務ノ全部ヲ弁済スルノ言渡ヲ受ケタルトキモ亦同シ
然レトモ一人ノ債務者ノ為シタル弁済ハ債権者ニ対シ他ノ債務者ヲ免カレシム又弁済シタル者ハ事務管理ノ訴権ニ依リ又ハ債権者ノ代位訴権ニ依リテ他ノ債務者ニ対シ其部分ニ付キ求償権ヲ有ス
第二節 債権者間ノ連帯
第一款 債権者間ノ連帯ノ性質及ヒ原因
第七十五条 債権者間ノ連帯即チ働方連帯ハ権利ノ保存及ヒ行使ニ付キ其債権者ヲシテ互ニ代人タラシム
此連帯ハ合意又ハ遺言ヨリ生スルコトヲ得
第七十六条 数人ノ連帯債権者ニ対スル債務者ノ約務ハ同一ノ行為ヲ以テ又同時、同所ニ於テ之ヲ契約スルコトヲ要セス但其義務ノ目的及ヒ原因ハ同一ナルコトヲ要ス
又債務者ハ数人ノ債権者ニ対シ別異及ヒ不均一ノ体様又ハ負担ヲ以テ責ニ任スルコトヲ得
第二款 債権者間ノ連帯ノ効力
第七十七条 各連帯債権者ハ唯一人ノ債権者ナル如ク義務全部ノ履行ヲ債務者ニ要求スルコトヲ得
債権者ノ一人カ訴ヲ起シタルトキハ他ノ各債権者ハ共通ノ利益及ヒ自己ノ利益ノ保護ノ為メ訴訟ニ参加スルコトヲ得
第七十八条 債務者ハ債権者ノ一人ヨリ訴追又ハ合式ノ要求ヲ受ケサル間ハ債務ノ全額ノ弁済ヲ受クルコトヲ債権者ノ各自ニ強要スルコトヲ得之ニ反スル場合ニ於テハ訴追者又ハ要求者ニ対スルニ非サレハ弁済ヲ為スコトヲ得ス
若シ同時ニ数人ノ訴追者又ハ要求者アルトキハ債務者ハ総要求者ニ対スルニ非サレハ弁済ヲ為スコトヲ得ス
第七十九条 義務組成ノ瑕疵ニ基キタル抗弁ニ付キ有リタル判決ハ債務ノ全部ニ対シ総債権者ノ利害ニ於テ其効力ヲ生ス但訴訟ニ其名ヲ出タサヽリシ者ニ対シテモ亦同シ
第八十条 義務消滅ノ原因ニ基キタル抗弁ニ付キ有リタル判決ハ左ノ区別ニ従フニ非サレハ訴訟ニ与カラサリシ債権者ニ対シテ其効ナシ
第一 第七十八条ニ定メタル条件ニ従ヒ債権者ノ一人ニ為シタル弁済ハ全部ニ付キ総債権者ニ之ヲ以テ対抗スルコトヲ得又財産編第五百二十条第三項ニ記載シタル如ク債権者ノ一人ニ対シ債務者ノ取得シタル相殺ニ付テモ亦同シ但相殺ノ原因カ第七十八条ニ従ヒ債務者ヨリ其債権者ニ有効ニ弁済スルコトヲ得ヘキ時期ニ於テ生シタルトキニ限ル
第二 債権者ノ一人ノ行為ヨリ生スル更改、免除及ヒ混同ハ財産編第五百一条第三項、第五百十四条第一項及ヒ第五百三十四条第二項ニ従ヒ其債権者ノ部分ニ非サレハ債務ヲ消滅セシメス但此行為ハ他ノ債権者ノ訴追又ハ要求ノ前ニ在リシコトヲ要ス
又右同一ノ行為ニ関シ及ヒ弁済又ハ相殺ニ関スル和解ニ付テモ亦同シ
第八十一条 債権者中ノ一人ノ一身ニ限ル債務者ノ抗弁ニ付キ有リタル判決ハ他ノ債権者ヲ害セス又之ヲ利セス又債権者ノ一人カ其連帯ニ於ケル権利ニ付キ債務者ト為シタル和解ニ付テモ亦同シ
第八十二条 債権者ノ一人カ債務者ニ対シテ時効ヲ中断シ又ハ其債務者ヲ遅滞ニ付スルノ行為ハ全部ニ付キ他ノ債権者ヲ利ス
債権者ノ一人ノ利益ニ於テ法律ノ設定シタル時効ノ停止ハ債権ニ於ケル其部分ニ限リ其一人ノミヲ利ス
第八十三条 若シ連帯債権者ノ一人カ数人ノ相続人ヲ遺シテ死亡シタルトキハ債権ノ分別及ヒ前ニ指示シタル行為ノ効力ハ第六十二条ニ記載シタル如ク受方連帯ニ於ケルト同一ノ方法ヲ以テ働方ニテ成ル
第八十四条 義務ノ全部又ハ一分ノ履行ヲ得タル連帯債権者ハ他ノ債権者ノ特別ノ関係及ヒ其相互ノ部分ニ従ヒ之ニ其利益ヲ分ツコトヲ要ス
第三款 債権者間ノ連帯ノ終了
第八十五条 債権者間ノ連帯ハ抛棄ニ因リテ止ム其抛棄ハ明示ニ非サレハ之ヲ為スコトヲ得ス
第八十六条 連帯ノ抛棄ハ債権者ノ一人若クハ数人又ハ其総員ヨリ之ヲ為スコトヲ得
総債権者ノ働方連帯ノ抛棄ハ第七十一条ニ規定シタル如ク受方連帯ノ抛棄カ共同債務者ニ対シテ生セシムルト同一ノ効力ヲ其債権者間ニ生セシム
若シ債権者ノ一人又ハ数人ノミカ抛棄ヲ為シタルトキハ他ノ債権者ハ此抛棄ヲ為シタル者ノ部分ニ付テノミ訴ヲ為シ又ハ弁済ヲ受クルノ権利ヲ失フ
第八十七条 連帯ノ抛棄ハ債務者ノ承諾ナクシテ有効ナリ
然レトモ其抛棄ハ之ヲ債務者ニ告知セシカ又ハ債務者明確ニ之ヲ知リタルトキニ非サレハ前記ノ規定ヲ以テ債務者ニ許シタル弁済其他ノ行為ニ対シテ債権者ヨリ之ヲ援用スルコトヲ得ス
債務者ハ抛棄ヲ利唱スルノ利益アルトキハ之ヲ利唱スルコトヲ得又抛棄カ其権利ノ詐害ニ於テ為サレタルトキハ之ヲ駁撃スルコトヲ得
第三章 任意ノ不可分
第八十八条 債務ハ財産編第四百四十二条及ヒ第四百四十三条ニ規定シタル不可分ノ外尚ホ数人ノ債務者ノ負担又ハ数人ノ債権者ノ利益ニ於テ不可分タルコトヲ得但財産編第四百四十四条ニ指示シタル如ク債務履行ノ担保トシテ受方又ハ働方ノ連帯ニ併合シ又ハ併合セサルコト有リ
此不可分ハ合意又ハ遺言ヲ以テ之ヲ設定スルコトヲ得之ヲ任意ノ不可分ト謂フ
任意ノ不可分ハ明示タルコトヲ要ス
第八十九条 債務者ノ負担又ハ債権者ノ利益ニ於テ任意ノ不可分ヲ設定シタルトキハ之ト同一ナル性質ノ連帯ヲ暗ニ設定シタルモノト看做ス但反対ノ合意アルトキハ此限ニ在ラス
第九十条 債務者ノ負担ニ於テ設定シタル不可分ハ同時ニ働方タル可キコトノ明示アルニ非サレハ債権者ノ利益ニ於テ存立セス
又債権者ノ利益ニ於テ設定シタル不可分ハ同時ニ受方タル可キコトノ明示アルニ非サレハ債務者ノ負担ニ於テ存立セス
第九十一条 受方ナルト働方ナルトヲ問ハス任意ノ不可分ヲ設定シタルトキハ受方又ハ働方ノ連帯ヲ明示ニテ阻却セサル場合ニ限リ債務者又ハ債権者ノ間ニ此連帯ノ効力ヲ生セシム
此他債務者又ハ債権者ノ一人カ数人ノ相続人ヲ遺シテ死亡シタルトキハ債務者ノ各相続人ハ全部履行ノ要求ヲ受ケ又債権者ノ各相続人ハ全部履行ノ要求ヲ為スコトヲ得但其各自ノ間ニ於テ連帯ナシ
第九十二条 債務者ノ一人又ハ債務者ノ相続人ノ一人ニ対シテ時効ヲ中断スル原因ハ総債務ニ付キ他ノ債務者又ハ相続人ニ対シテ中断ヲ生ス
又債権者ノ一人又ハ債権者ノ相続人ノ一人ノ権利ヨリ生スル時効ノ中断又ハ其停止ノ原因ハ他ノ債権者又ハ相続人ヲ利ス
第九十三条 相続人ノ一人ノ付遅滞及ヒ過失ハ他ノ相続人ヲ害セス
相続人ノ一人ニ不利ナル既判力及ヒ自白ニ付テモ亦同シ
第九十四条 債権カ受方又ハ働方ニテ同時ニ連帯及ヒ不可分ナルトキハ第八十五条及ヒ財産編第五百十条ニ記載シタル区別ニ従ヒ明示ナルト黙示ナルトヲ問ハス連帯ノ抛棄ハ亦任意ノ不可分ノ抛棄ヲ惹起ス
右二箇ノ担保ノ共ニ存スル場合ニ於テ不可分ノ抛棄ハ連帯ヲ存立セシム
第九十五条 財産編第四百四十五条乃至第四百五十条、第五百一条第四項、第五百六条第三項、第五百九条第一項、第五百十三条、第五百十四条第二項、第五百二十条第四項、第五百三十五条及ヒ第五百三十六条第二項ノ規定ハ任意ノ不可分ニ適用スルコトヲ得ヘキトキハ之ヲ適用ス
債権者カ不可分ニテ義務ヲ負ヒタル債務者ノ代位ニ因リテ得ルコト有ル可キ担保ヲ滅失セシメ又ハ減少セシメタルトキハ其債務者ハ債権者ニ対シテ第七十三条ノ免責ヲ援用スルコトヲ得
第二部 物上担保
第一章 留置権
第九十六条 留置権ハ財産編及ヒ財産取得編ニ於テ特別ニ之ヲ規定シタル場合ノ外債権者カ既ニ正当ノ原因ニ由リテ其債務者ノ動産又ハ不動産ヲ占有シ及ヒ其債権カ其物ノ譲渡ニ因リ或ハ其物ノ保存ノ費用ニ因リ或ハ其物ヨリ生シタル損害賠債ニ因リテ其物ニ関シ且其占有ニ連繋シテ生シタルトキハ其占有シタル物ニ付キ債権者ニ属ス
委任ナクシテ他人ノ事務ヲ管理シタル者ハ必要ノ費用及ヒ保持ノ費用ノ為メニ非サレハ其管理シタル物ニ付キ留置権ヲ有セス
第九十七条 債権者カ留置スルノ権利ヲ有シタル物ノ一分ノミヲ留置シタルトキ其部分ハ総債務ヲ担保スルニ足ルニ於テハ之ヲ担保ス
右ニ反シテ債権者又ハ其相続人ハ債務者又ハ其相続人ヨリ一分ノ弁済ヲ受ケタリト雖モ全部ノ弁済ヲ受クルニ至ルマテ留置権ニ服シタル総テノ物ヲ留置スルコトヲ得
第九十八条 留置権ハ留置物ノ価額ニ付キ債権者ニ先取特権ヲ付与セス
然レトモ留置物ヨリ天然又ハ法定ノ果実又ハ産出物ノ生スルトキハ留置権者ハ他ノ債権者ニ先タチテ之ヲ収取スルコトヲ得但其果実又ハ産出物ハ其債権ノ利息ニ充当シ猶ホ余分アルトキハ元本ニ充当スルコトヲ要ス
留置権者ハ其収取スルコトヲ怠リタル果実及ヒ産出物ニ付キ其責ニ任ス
第九十九条 留置権ハ債務者カ留置物ヲ譲渡シ又他ノ債権者カ之ヲ差押ヘ及ヒ売却セシムルノ妨ト為ラス
然レトモ孰レノ場合ニ於テモ取得者ハ留置権者ニ全ク弁済セスシテ其物ヲ占有スルコトヲ得ス
第百条 右ノ外動産又ハ不動産ノ留置権者ハ次ノ二章ニ規定シタル如ク動産又ハ不動産ノ質取債権者ト同一ノ責任ニ従フ
其他動産質及ヒ不動産質ニ関スル規定ハ此章ノ規定ニ触レサル限リハ留置権ニ之ヲ適用ス特ニ債権者カ有意ニテ留置権ヲ行フコトヲ怠リ又ハ実際之ヲ行フコトヲ止メタルトキハ其留置権ヲ失フ
第二章 動産質
第一節 動産質契約ノ性質及ヒ組成
第百一条 動産質ハ債務者カ一箇又ハ数箇ノ動産ヲ特ニ其義務ノ担保ニ充ツル契約ナリ
第百二条 動産質契約ハ債務者ノ委任ヲ受ケ又ハ好意ニテ債務者ノ為メ担保ヲ供スル第三者ト債権者トノ間ニモ亦之ヲ為スコトヲ得
孰レノ場合ニ於テモ動産質ヲ供シタル第三者ハ第三十条及ヒ第三十一条ニ従ヒ保証人ノ如ク債務者ニ対シテ求償権ヲ有ス
第百三条 動産質ハ其物ヲ処分スルノ能力ヲ有スル者ニ非サレハ有効ニ之ヲ供スルコトヲ得ス
合意上、法律上及ヒ裁判上ノ管理者ニ付テモ亦同シ此等ノ者ハ其権限ヲ踰エサルコトヲ要ス
若シ債務ニ関係ナキ第三者ヨリ動産質ヲ供シタルトキハ其第三者ハ第十二条ニ記載シタル如ク無償名義ニテ物ヲ処分スルノ能力ヲ有スルコトヲ要ス
第百四条 動産質ハ債権及ヒ質物ヲ明カニ指定セル証書ヲ以テスルニ非サレハ之ヲ設定スルコトヲ得ス
右質物ハ之ヲ他物ニ易フルコトヲ得サル様詳細ニ記載シ且要用アルトキハ之ヲ評価スルコトヲ要ス
若シ質物カ定量物ナルトキハ其種類、数量、尺度ヲ以テ之ヲ指定スルコトヲ要ス
第百五条 法律ニ従ヒ証人ニ依リテ債権ヲ証スルコトヲ得ル場合ニ於テハ証書ノ録製ヲ要セス此場合ニ於テハ債権ノ額及ヒ質物ノ相違ナキコト其性質、価額ヲ或ハ併合シ或ハ各別ニ人証ヲ以テ証スルコトヲ得
第百六条 動産質ハ質取債権者カ有体ナル質物ヲ現実ニ且継続シテ占有スルニ非サレハ之ヲ以テ第三者ニモ他ノ債権者ニモ対抗スルコトヲ得ス
然レトモ質物ハ当事者双方カ選定シ又ハ債権者カ自己ノ責任ヲ以テ選定シタル第三者ノ手ニ之ヲ寄託スルコトヲ得
此規定ハ債権ノ無記名証券ニモ之ヲ適用ス
第百七条 質物カ債権ノ記名証券ナルトキハ質取債権者ハ其証券ヲ占有スルコトヲ要ス
此他記名証券ノ質ノ設定ハ債権ノ譲渡ヲ告知スル通常ノ方式ヲ以テ第三債務者ニ其設定ヲ告知シ又ハ其第三債務者カ任意ニテ之ニ参加スルコトヲ要ス
此他財産編第三百四十七条ノ規定ハ右ノ場合ニ之ヲ適用ス
右ハ総テ裏書ヲ以テ取引ス可キ商証券又ハ商品ノ質ニ関シ商法ニ記載シタルモノヲ妨ケス
第百八条 会社ノ記名ノ株券又ハ債券ヲ質ト為ストキハ証券ノ交付ノ外会社定款又ハ法律ニ於テ株券又ハ債券ノ譲渡ノ為メニ定メタル方式ヲ以テ之ヲ会社ニ告知シ其帳簿ニ之ヲ記入スルコトヲ要ス
第百九条 動産質ハ当事者ノ意思ニ従ヒ働方及ヒ受方ニテ不可分タリ但反対ナル明示ノ合意アルトキハ此限ニ在ラス
動産質ハ債務者又ハ其相続人ノ一人ヨリ債務ノ一分ヲ弁済シタルトキト雖モ元利及ヒ費用ノ皆済ニ至ルマテ質物ノ全部及ヒ各箇ニ於テ存立ス
債権者ノ相続人ノ一人カ自己ノ部分ノ弁済ヲ受ケタルトキト雖モ動産質ハ債権ニ於ケル他ノ相続人ノ部分ノ為メ其相続人ノ担保トシテ全部ニ於テ存立ス
第二節 動産質契約ノ効力
第百十条 質取債権者ハ質物ヲ返還スルマテ其看守及ヒ保存ニ付キ善良ナル管理者ノ注意ヲ加フルノ責アリ
質取債権者ハ債務者ノ許諾ヲ受ケスシテ質物ヲ賃貸スルコトヲ得ス又債務者ノ許諾ヲ受ケタルトキ又ハ物ノ使用カ其保存ニ必要ナルトキニ非サレハ自ラ之ヲ使用スルコトヲモ得ス
若シ質取債権者カ質物ヲ濫用スルトキハ其失権ノ宣告ヲ受クルコト有リ
第百十一条 質取債権者ハ自己ノ責任ヲ以テ質物ヲ自己ノ債権者ニ転質ト為スコトヲ得此場合ニ於テハ転質ヲ為サヽレハ生セサル可キ意外又ハ不可抗ノ危険ニ付テモ亦其責ニ任ス
第百十二条 質物カ果実又ハ産出物ヲ生スルトキハ質取債権者ハ之ニ関シ留置権者ノ為メ第九十八条第二項ニ定メタル権利及ヒ義務アリ
質ト為シタル債権ニ関シテハ質取債権者ハ其利息ヲ収取シ之ヲ自己ノ債権ニ充当ス然レトモ債務者ノ特別ナル委任ヲ受ケスシテ其元本ヲ受取ルコトヲ得ス但裏書ヲ以テ取引ス可キ証券ニ関スルトキハ此限ニ在ラス
第百十三条 質取債権者カ質物保存ノ為メ必要ノ出費ヲ為シタルトキハ其弁償ハ此債権者ノ為メ其債権ニ先タチ動産質ヲ以テ之ヲ担保ス
質物ノ隠レタル瑕疵ニ因リテ債権者ノ受ケタル損害ノ賠償ニ付テモ亦同シ
第百十四条 質取債権者ハ動産質ノ附キタル主従ノ債務及ヒ前条ニ従ヒ受取ル可キ金額ノ皆済ニ至ルマテ債務者及ヒ其譲受人ニ対シテ質物ノ占有ヲ留置スルコトヲ得
債権者ハ其債権ノ満期ニ至ラサル間ハ債務者ノ他ノ債権者ヨリ為ス質物ノ差押及ヒ其競売ニ対抗スルコトヲ得
第百十五条 動産質ノ附キタル債務カ満期ト為リタルトキ債務者履行ヲ為サヽルニ於テハ質取債権者又ハ其他ノ債権者ヨリ質物ノ競売ヲ求ムルコトヲ得質取債権者ハ他ノ債権者ニ先タチ元利、費用及ヒ第百十三条ニ掲ケタル賠償金ノ弁済ヲ受ク
第百十六条 他ノ債権者ヨリ競売ヲ求メス又ハ之ヲ実行スルコトヲ得サルトキ質取債権者ハ質物ヲ己レノ有ト為サントスルコトニ付キ債務者ト一致セサルニ於テハ鑑定人ノ評価シタル価額ニ満ツルマテ質物ヲ弁済ニ充ツ可キコトヲ裁判所ニ請求スルコトヲ得但其請求書ヲ債務者ニ予メ提示スルコトヲ要ス
質物ノ価額カ債務ヲ超ユル場合ニ於テハ質取債権者ハ債務者ニ其超過額ヲ弁償スルコトヲ要ス
第百十七条 総テ動産質契約ノ約款又ハ債務満期前ノ合意ニシテ債権者ニ其債権ノ全部又ハ一分ニ付キ弁済ノ為メ裁判上ノ評価ナクシテ流質ヲ許スモノハ当然無効タリ
本条ノ禁止ヲ犯ス為メ債務者カ債権者ニ為シタル受戻約款附ノ売買其他ノ合意ハ之ヲ無効ト宣告スルコトヲ得
本条ニ定メタル無効ハ質取債権者ヨリ之ヲ援用スルコトヲ得スシテ債務者又ハ其承継人ノミ之ヲ援用スルコトヲ得
第百十八条 質物カ質取債権者ノ方ニ存スル間ハ其債務ノ免責時効ノ成就ヲ停止ス
第百十九条 質物ノ占有ハ常ニ容仮ノ占有ニシテ其占有ノ継続期ノ如何ニ拘ハラス又債務カ弁済其他ノ方法ニテ消滅シタル後ト雖モ質取債権者ハ得取時効ヲ援用スルコトヲ得
然レトモ財産編第百八十六条ニ定メタル二箇ノ場合ニ於テハ容仮タルコトハ止ム
第三章 不動産質
第一節 不動産質ノ目的、性質及ヒ組成
第百二十条 不動産質契約ハ不動産質債権者ニ他ノ総債権者ヨリ先ニ其不動産ノ果実及ヒ入額ヲ収取スルノ権利ヲ付与ス
債務ノ期限ニ至レハ債権者ハ抵当権アル債権者ノ権利ヲ行フ
此期限ハ三十个年ヲ超過スルコトヲ得ス之ニ超ユルトキハ当然三十个年ニ減縮ス
此期限ハ縦令之ヲ延フルモ前後通算シテ三十个年ヲ超過スルコトヲ得ス
第百二十一条 不動産質ハ債務者ノ為メ第三者ヨリ之ヲ設定スルコトヲ得其不動産質ハ債務者ト設定者トノ間ニ於テハ動産質ノ為メ第百二条ニ定メタル効力ヲ生ス
第百二十二条 不動産質ハ第二百三条及ヒ第二百四条ニ従ヒ抵当ト為スコトヲ得ヘキ権利ノ上ニ非サレハ之ヲ設定スルコトヲ得ス
此他設定者ハ質ト為ス物又ハ権利ノ収益権ヲ自ラ有スルコトヲ要ス其質ハ如何ナル場合ニ於テモ其収益権ノ継続期間ヲ超過スルコトヲ得ス
不動産質設定ノ為メニ要スル能力ハ第二百十五条及ヒ第二百十六条ニ定メタル抵当設定ノ能力ト同一ナリ
第百二十三条 不動産質カ合意上ノモノナルトキハ其質ハ公正証書又ハ私署証書ヲ以テスルニ非サレハ当事者ノ間ニ之ヲ設定スルコトヲ得ス
又不動産質ハ第二百十八条ニ従ヒ遺言上ノ抵当ノ許サルヽ場合ニ於テハ遺言ヲ以テ之ヲ設定スルコトヲ得
不動産質ハ之ヲ設定スル証書又ハ遺言書ヲ財産編第三百四十八条第一号及ヒ第三号ニ従ヒテ登記シタル後ニ非サレハ之ヲ以テ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス
右ノ登記ハ抵当ノ順位ヲ保存スル為メ記入ニ同シキ効力ヲ有ス
第百二十四条 登記ス可キ証書又ハ遺言書ニハ質ト為シタル不動産ノ精確ナル指示ノ外元利ノ債権額ヲ記載スルコトヲ要ス
右ノ指示カ不十分ナル場合ニ於テハ既ニ為シタル登記ノ縁辺ニ補足ノ合意ヲ附記シテ之ヲ補フ然レトモ此附記ハ其日附後ニ非サレハ効力ヲ生セス
第百二十五条 質ト為シタル物権カ用益権、賃借権又ハ永借権ナルトキハ此権利ノ設定証書ノ登記ノ縁辺ニ其質権ヲ附記スルヲ以テ足レリトス
第百二十六条 質取債権者ハ右ノ外動産質ニ関シ第百六条ニ記載シタル如ク其債権ヲ担保スル不動産ヲ現実ニ占有スルコトヲ要ス
第百二十七条 不動産質ハ動産質ニ関シ第百九条ニ記載シタル如ク働方及ヒ受方ニテ不可分タリ
第二節 不動産質ノ効力
第百二十八条 質取債権者ハ其債権ノ担保ノ為メ受取リタル不動産ヲ財産編第百十九条乃至第百二十二条ニ規定シタル制限ニ従ヒ且質契約ノ期間ニ限リ賃貸スルコトヲ得但反対ノ合意アルトキハ此限ニ在ラス
又質取債権者ハ自己ノ権利ノ継続期間ニ限リ動産質ニ関シ第百十一条ニ記載シタル如ク自己ノ責任ヲ以テ其不動産質ヲ譲渡スコトヲ得
第百二十九条 質取債権者ハ租税其他毎年ノ公課ヲ負担ス
質取債権者ハ小修繕及ヒ必要且急迫ナル大修繕ヲ為スノ責ニ任ス若シ此ニ違フトキハ損害賠償ヲ負担ス但此大修繕ノ費用ハ債務者之ヲ償還ス
第百三十条 質カ建物、宅地ニ存スルトキハ債権者ハ自ラ之ヲ領スルト之ヲ賃貸スルトヲ問ハス其借賃ヲ自己ノ債権ノ利息ニ充当シ又超過額アルトキハ附随ニテ又ハ債権カ利息ヲ生セサルトキハ全部ニテ元本ニ充当ス
質カ田畑山林ニ存スルトキハ当事者ノ間ニ於テ果実ト利息トハ計算セスシテ相殺シタリト看做ス但反対ノ合意アルトキ又他ノ債権者ニ対シ又ハ利息ノ法律上ノ制限ニ付キ顕著ナル詐害アルトキハ此限ニ在ラス
借賃又ハ果実ヲ利息ニ充当スルニハ毎年ノ公課及ヒ保持、管理、栽培ノ費用ヲ扣除シタル純益価額ニ付キ之ヲ為ス
第百三十一条 建物、宅地ノ質取債権者ハ如何ナル反対ノ合意アルニ拘ハラス常ニ己レノ為メ負担重キニ過クルト見ユル収益権ヲ将来ニ向ヒテ抛棄シ抵当権ノミヲ存スルコトヲ得然レトモ適当ノ時期ニ非サレハ之ヲ為スコトヲ得ス
田畑山林ノ質取債権者ハ其抵当権ヲ併セ失フニ非サレハ収益権ヲ抛棄スルコトヲ得ス
第百三十二条 債権者ハ債務ノ皆済ニ至ルマテ質ニ取リタル不動産ノ占有ヲ留置スルコトヲ得
然レトモ質取債権者ハ債務ノ満期前又ハ満期後ニ熟議ヲ以テスルト競売ヲ以テスルトヲ問ハス債務者又ハ他ノ債権者ヨリ求メタル売却ニ故障ヲ申立ツルコトヲ得ス
又質取債権者ハ満期後自ラ売却ヲ申立ツルコトヲ得右ハ下ニ指示シタル異別ノ効力ヲ生ス
第百三十三条 他ノ債権者又ハ債務者ヨリ求メタル売却ノ場合ニ於テハ質取債権者ハ其順位ニ於テ其抵当権ヲ行ヒ且其債権者カ如何ナル先取特権又ハ抵当権アル他ノ債権者ニモ先ンセラレサルトキ又ハ先ンセラルヽモ他ノ債権者カ総テノ代価ヲ取尽サスシテ残余アルトキハ取得者ハ質取債権者ノ尚ホ受ク可キモノヽ為メ第百二十条ニ従ヒ質ノ終了ス可キ時期ニ至ルマテ留置権ニ遵フノ責アリ
先取特権若クハ抵当権アル他ノ債権者又ハ質取債権者ノ請求ニ因リテ増加競売ノ有リタル場合ニ於テモ亦同シ
第百三十四条 第百十条、第百十三条、第百十四条及ヒ第百十七条乃至第百十九条ハ不動産質ニモ之ヲ適用ス
第四章 先取特権
総則
第百三十五条 先取特権ハ或ル債権ノ原因ニ附着シタル優先権ナリ但動産質及ヒ不動産質ニ関シ合意ヨリ生スル先取特権ハ此限ニ在ラス
先取特権ハ法律ノ制限シテ定メタル原因、条件及ヒ目的物ニ於ケルニ非サレハ存立セス
先取特権カ第三所持者ニ対シテ追及権ヲ付与スル場合及ヒ其権利行使ノ条件モ亦法律ヲ以テ之ヲ定ム
第百三十六条 先取特権ハ動産質及ヒ不動産質ニ関シ第百九条及ヒ第百二十七条ニ記載シタル如ク働方及ヒ受方ニテ不可分タリ
第百三十七条 先取特権ノ負担アル物カ第三者ノ方ニテ滅失シ又ハ毀損シ第三者此カ為メ債務者ニ賠償ヲ負担シタルトキハ先取特権アル債権者ハ他ノ債権者ニ先タチ此賠償ニ於ケル債務者ノ権利ヲ行フコトヲ得但其先取特権アル債権者ハ弁済前ニ合式ニ払渡差押ヲ為スコトヲ要ス
先取特権ノ負担アル物ヲ売却シ又ハ賃貸シタル場合及ヒ其物ニ関シ債務者ニ金額又ハ有価物ヲ弁済ス可キ総テノ場合ニ於テモ亦同シ但災害ノ場合ニ於テ保険者ノ負担スル賠償ニ関シ財産編第九十一条ニ記載シタルモノヲ妨ケス
第百三十八条 先取特権ノ種類ハ左ノ如シ
第一 債務者ノ総動産及ヒ附随ニテ其総不動産ニ係ル一般ノ先取特権
第二 或ル動産ニ係ル特別ノ先取特権
第三 或ル不動産ニ係ル特別ノ先取特権
第百三十九条 一般又ハ特別ノ先取特権ヲ有スル債権者ノ相互ノ順位ハ本章ノ各節ニ於テ之ヲ規定ス
不動産ニ付キ先取特権ヲ有スル債権者ハ其同一ノ不動産ニ付キ抵当権ヲ有スル債権者ニ先タツ但法律ニ於テ特別ニ規定シタル場合ハ此限ニ在ラス
同名義又ハ同順位ノ先取特権アル債権者ハ其債権額ノ割合ニ応シテ弁済ヲ受ク
第百四十条 本法ニ定メタル先取特権ハ各人又ハ国庫ノ為メ商法又ハ特別法ヲ以テ規定シ又ハ規定ス可キ先取特権ノ妨ト為ラス
商法又ハ特別法ノ先取特権ハ別段ノ規定ナキ場合ニ於テハ下ニ定メタル一般ノ規則ニ従フ
第一節 動産及ヒ不動産ニ係ル一般ノ先取特権
第一款 一般ノ先取特権ノ原因
第百四十一条 動産及ヒ不動産ニ係ル先取特権アル債権ハ左ノ如シ但下ニ定メタル制限及ヒ条件ニ従フ
第一 訴訟費用
第二 葬式費用
第三 最後疾病費用
第四 雇人給料
第五 飲食品供給
第一則 訴訟費用ノ先取特権
第百四十二条 訴訟費用ノ先取特権ハ或ハ債務者ノ財産ヲ保存スル為メ或ハ其財産ヲ清算シ之ヲ換価シ及ヒ有権者間ニ其代価ヲ配当スル為メ各債権者ノ共同利益ニ於テ正当ニ為セル裁判上若クハ裁判外ノ総テノ行為ニ付キ金銭ノ立替ヲ為シタル債権者又ハ給料若クハ謝金ヲ受取ル可キ債権者ニ属ス
債権者ニ有益ナラサリシ費用ニ付テハ先取特権ハ特別ノモノニシテ其費用ノ為メ利益ヲ得タル債権者ニ対スルニ非サレハ之ヲ以テ対抗スルコトヲ得ス
第二則 葬式費用ノ先取特権
第百四十三条 債務者ノ身分ニ応シ且慣習ニ従ヒテ為シタル葬式費用ハ先取特権アルモノトス
先取特権ハ債務者ノ担当タル其同居ノ親属ノ葬式費用ニモ亦之ヲ適用ス
其先取特権ハ葬式ニ連続シタル出費ニ及ハス縦令其出費カ慣習上ノモノタルモ亦同シ
第三則 最後疾病費用ノ先取特権
第百四十四条 最後疾病費用ノ先取特権ハ債務者又ハ前条ニ指定シタル親属ノ死亡前ノ疾病ニ関スル医師、薬商、看病人其他ノ費用ヲ包含ス但債務者ノ破産前又ハ無資力前ノ疾病及ヒ其親属ノ疾病ニ関スルモノモ亦同シ
長病ノ場合ニ於テハ右ノ費用ノ先取特権ハ最後ノ一个年ノ費用ニ之ヲ制限ス
債務者又ハ其親属カ右ノ費用ヲ生セシメタル疾病ノ外ナル原因ノ為メ死亡シタルトキト雖モ先取特権ハ猶ホ存ス
第四則 雇人給料ノ先取特権
第百四十五条 雇人ノ先取特権ハ債務者又ハ其同居ノ親属ノ一身ニ附属シ或ハ債務者ノ家屋其他ノ所有物ニ附属シタル雇人ニ属ス
右ノ先取特権ハ最後ノ一个年ノ給料ノミヲ担保ス
第五則 飲食品供給ノ先取特権
第百四十六条 飲食供給ノ先取特権ハ債務者又ハ其同居ノ親属及ヒ雇人ニ供給シタル生活ニ必要ナル飲食品ノミニ之ヲ適用ス
右ノ先取特権ハ最後ノ六个月間ノ供給ノミヲ包含ス
第二款 一般ノ先取特権ノ効力及ヒ順位
第百四十七条 一般ノ先取特権ハ先取特権アル各債権者カ動産ニ付キ配当ヲ受ケ尚ホ不足アルニ非サレハ不動産ニ付キ之ヲ行フコトヲ得ス
然レトモ動産代価ノ配当ニ先タチ不動産代価ノ配当アルトキハ債権者ハ条件附ニテ不動産代価配当ニ加入スルコトヲ得但此配当加入ニ於テハ日後動産代価ノ配当加入ニ於テ弁済ヲ受ケサルモノヽミヲ受ク
動産代価ノ配当ニ有益ナル時期ニ出席スルコトヲ怠リタル債権者ハ動産ニ付キ受ク可カリシモノヽ限度ニ於テ不動産ニ付キ其優先権ヲ失フ
第百四十八条 一般ノ先取特権ノ互ニ競合スル場合ニ於テハ第百四十二条乃至第百四十六条ニ列記シタル相互ノ順序ニ従ヒテ配当加入ヲ定ム
右ノ数条ニ掲ケタル同名義ノ債権ハ同順位ニテ配当ニ加入ス
若シ一般ノ先取特権カ動産ニ係ル特別ノ先取特権ト競合スルトキハ其順位ハ下ノ第二節ニ於テ之ヲ規定ス
不動産ニ係ル特別ノ先取特権ハ一般ノ先取特権ニ先タチ又特別ノ抵当ハ後ノ設定ニ係ルト雖モ詐害ナキニ於テハ一般ノ先取特権ニ先タツ
然レトモ一般ノ先取特権ハ其発生前ノ取得ニ係ル一般ノ抵当ニモ先タツ
一般ノ抵当ノ負担アル総不動産ヲ同時ニ売却シタル場合ニ於テハ一般ノ先取特権ハ各不動産ノ売却代価ノ割合ニ応シテ其総不動産ニ付キ配当ニ加入ス
若シ順次ニ右ノ不動産ヲ売却スルトキハ一般ノ先取特権ハ初ノ売却ニ付キ全部之ヲ充当シ尚ホ附随ニテ次ノ売却ニ付キ之ヲ充当ス且此先取特権ヲ負担セシ不動産ニ付キ一般ノ抵当ヲ有スル債権者ハ他ノ不動産ノ売却代価ニ付キ求償権ヲ有ス
第百四十九条 一般ノ先取特権ハ不動産カ債務者ニ属スル間ハ他ノ債権者ニ対抗スル為メ其不動産ニ付テノ記入ヲ要セス
第二節 動産ニ係ル特別ノ先取特権
第一款 動産ニ係ル特別ノ先取特権ノ原因及ヒ目的
第百五十条 上ノ第二章ニ規定シタル先取特権ヲ有スル動産質取債権者ノ外下ニ指定シタル動産物ニ付キ先取特権ヲ有スル債権者ハ左ノ如シ
第一 不動産ノ賃貸人
第二 種子及ヒ肥料ノ供給者
第三 農業ノ稼人及ヒ工業ノ職工
第四 動産物ノ保存者
第五 動産物ノ売主
第六 旅店主人
第七 舟車運送営業人
第八 保証金ヲ供スルノ義務アル公吏ノ職務上ノ所為ニ対スル債権者
第九 右保証金ノ貸主
第一則 不動産賃貸人ノ先取特権
第百五十一条 居宅、倉庫其他ノ建物ノ賃貸人ハ賃借人ノ使用又ハ商工業ノ為メ此建物内ニ備ヘタル動産物ニ付キ先取特権ヲ有ス
右ノ動産物カ賃借人ニ属セスト雖モ先取特権ハ猶ホ存ス但賃貸人カ賃貸場所ニ此動産物ノ持込ヲ知リタル当時其物ノ賃借人ニ属セサル事実ヲ知ラス且其事実ヲ予見スルニ足ル可キ理由アラサリシトキニ限ル
賃貸人ノ先取特権ハ現金ニ付キ又賃借人及ヒ其家属ノ一身ノ使用ニ供シタル金玉宝石ニ付キ又無記名ナルモ証券ニ付キ之ヲ行フコトヲ得ス
第百五十二条 賃貸人ハ家賃ノ当期分及ヒ後ノ一期分ノ弁済ヲ担保スルニ足ル可キ動産ヲ賃貸シタル場所ニ備フルコトヲ賃借人ニ要求スルコトヲ得賃借人之ヲ為サス且此家賃ノ前払又ハ之ニ相当スル其他ノ担保ヲ供セサルトキハ賃貸人ハ賃貸借ヲ銷除スルコトヲ得
尚ホ損害アルトキハ其賠償ヲ求ムルコトヲ得
賃貸場所ニ備ヘタル動産ヲ賃貸人ノ許諾ナクシテ取去リタルモ別ニ詐害ナキニ於テハ賃貸人ハ其担保カ不足ト為リタルトキ且賃借人ニ属スル権利ノ限度内ニ非サレハ此動産ヲ其場所ニ復セシムルコトヲ得ス
然レトモ賃貸人ノ権利ヲ詐害シテ為シタル行為ニ付テハ賃貸人ハ財産編第三百四十一条以下ニ記載シタル条件及ヒ区別ニ従ヒ第三者ニ対シテ其行為ヲ廃罷セシムルコトヲ得
右ハ総テ第百三十七条ニ依リテ賃貸人ノ有スル権利ヲ妨ケス
第百五十三条 賃貸借ト永貸借トヲ問ハス田畑山林ノ賃貸人ハ賃借人カ居宅並ニ土地利用ノ建物内ニ備ヘタル動産ニ付キ及ヒ土地ノ利用ニ供シタル動物、農具其他ノ器具ニ付キ上ト同一ノ限度ニ於テ先取特権ヲ有ス
右ノ賃貸人ハ賃貸シタル土地ノ収穫物其他ノ産出物カ猶ホ土地ニ附着スルト土地ニ保存シ有ルトヲ問ハス其収穫物及ヒ産出物ニ付キ先取特権ヲ有ス
分果賃貸人ハ賃貸シタル土地ノ収穫物其他ノ産出物ノ中ニテ自己ノ権利ヲ有スル部分カ猶ホ分果小作人ノ方ニ存スル間ハ他ノ債権者ニ先タチ直接ニ其収穫物其他ノ産出物ヲ己レノ有トシテ先取特権ヲ行フ
第百五十四条 永貸借ト賃貸借ト分果小作トヲ問ハス賃借人ハ賃貸人ノ求アルニ於テハ其担保ノ為メ其年ノ収穫物其他ノ産出物ヲ保存スルノ責アリ
第百五十二条ヲ以テ賃貸人ノ利益ニ於テ定メタル隠匿物ノ取戻権及ヒ賃貸借ノ銷除権ハ田畑山林ノ利用ニ供シタル物ノ賃貸借ニ之ヲ適用ス
第百五十五条 賃借権ノ譲渡又ハ転貸ノ場合ニ於テハ賃貸人カ賃貸場所ニ備ヘ有ル動産ノ譲受人又ハ転借人ニ属スルコトヲ知ルト雖モ其先取特権ハ此等ノ物ニ及フ
此場合ニ於テ先取特権ハ第百三十七条ニ従ヒ譲渡又ハ転貸ノ代価トシテ主タル賃借人ノ受取ル可キ金額ニ及フ但前払ヲ以テ賃貸人ニ対抗スルコトヲ得ス
第百五十六条 賃借人ノ財産ノ総清算ノ場合ニ於テハ賃貸人ハ土地、建物ノ借賃其他毎年ノ負担ニ付キ前年、本年及ヒ翌年ノ分ニ非サレハ前数条ニ定メタル先取特権ヲ有セス
此他先取特権ハ賃貸借ヨリ生スル他ノ合意上ノ義務、前年及ヒ本年ニ於テノ賃借人ノ過失又ハ懈怠ノ為メ賃貸人ノ受ク可キ賠償及ヒ賃貸人カ将来ニ向ヒテ請求スルコト有ル可キ銷除ニ添ヒタル損害賠償ヲ担保ス
第百五十七条 右清算ノ場合ニ於テ他ノ債権者ハ自己ノ利益ノ為メ賃貸借ノ銷除ヲ防止シ及ヒ初ヨリ転貸又ハ譲渡ノ禁止アルニ拘ハラス其賃借権ヲ転貸シ又ハ譲渡スルコトヲ得但賃貸借残期ノ為メ賃貸人ニ土地、建物ノ借賃其他ノ納額ヲ担保スルコトヲ要ス
第二則 種子及ヒ肥料ノ供給者ノ先取特権
第百五十八条 所有者、用益者、賃借人又ハ占有者ニ種子及ヒ肥料ヲ供給シタル者ハ之ヲ用井タル年ノ果実ニ付キ先取特権ヲ有ス
蚕種及ヒ蚕ノ飼養ニ供スル桑葉ヲ供給シタル者ニ付テモ亦同シ
第三則 農業稼人及ヒ工業職工ノ先取特権
第百五十九条 雇人ノ外其年ノ収穫ノ為メ労動シタル稼人ハ一个年間ノ給料ノ為メ其収穫物ニ付キ先取特権ヲ有ス
又工業ノ職工ハ産出物又ハ製造品ニ付キ先取特権ヲ有ス但其年ノ給料中最後ノ三个月間ノ為メノミニ限ル
第四則 動産物保存者ノ先取特権
第百六十条 動産物ノ修繕又ハ保存ノ費用ニ付テノ債権者ハ第九十六条ニ従ヒ己レニ属スル留置権ヲ行ハサルトキト雖モ其修繕又ハ保存シタル物ニ付キ先取特権ヲ有ス
右ノ先取特権ハ金額、有価物其他動産物ニ関スル人権又ハ物権ヲ債務者ノ為メニ追認シ保存シ又ハ実行セシメタル裁判上又ハ裁判外ノ行為ノ費用ニ之ヲ適用ス
第五則 動産物売主ノ先取特権
第百六十一条 動産物ノ売主ハ代価弁済ノ為メ期限ヲ許与シタルト否トヲ問ハス其代価及ヒ利息ノ為メ売却物ニ付キ先取特権ヲ有ス
若シ補足額ヲ以テスル交換アリテ其補足額カ譲渡シタル物ノ価額ノ半ヲ超ユルトキハ先取特権ハ其補足額ノ為メ交換物ニ付キ存立ス
第百六十二条 先取特権ハ売却物カ用方ニ因リ又ハ不動産ニ合体スルニ因リテ不動産ト為リタルトキト雖モ猶ホ買主ノ占有ニ在リ且変形セサル間ハ存続ス但合体ノ場合ニ於テハ不動産ヲ毀損セスシテ其物ヲ分離スルヲ得ルコトヲ要ス
第百六十三条 売主ノ先取特権ハ財産取得編第五十三条及ヒ第八十八条ニ規定シタル留置及ヒ解除ノ権利ヲ妨ケス
第六則 旅店主人ノ先取特権
第百六十四条 旅店ノ主人ハ旅客其従者及ヒ牛馬ノ宿泊料、食料ノ為メ其旅客ノ携帯シテ尚ホ旅店ニ存スル手荷物ニ付キ先取特権ヲ有ス
第七則 舟車運送営業人ノ先取特権
第百六十五条 舟車運送営業人ハ荷物又ハ旅客ノ運送賃ノ為メ及ヒ関税其他正当ナル附従ノ費用ノ為メ自己ノ手ニ存スル運送物ニ付キ先取特権ヲ有ス
運送営業人カ運送物ノ引渡ヨリ四十八時間内ニ債務者又ハ其名ヲ以テ其物ヲ受取リタル者ニ対シ其物ヲ返還スルヤ運送賃其他ノ費用ヲ弁済スルヤノ催告ヲ為シ且其効果ヲ生セシムル為メ短キ時間内ニ裁判上ノ請求ヲ為シタルトキハ其先取特権ハ物ノ引渡後ト雖モ存続ス
如何ナル場合ニ於テモ第三取得者ニ対シテ物ヲ回復スルコトヲ得ス但第百五十二条ニ規定シタル如ク詐害アル場合ハ此限ニ在ラス且第百三十七条ノ適用ヲ妨ケス
第八則 職務上ノ所為ニ対スル債権者ノ先取特権
第百六十六条 保証ヲ供スルノ義務アル公吏ノ職務上ノ過失又ハ濫妄ヨリ生スル債権ハ其保証金ニ付キ先取特権アリ
第九則 保証金貸主ノ先取特権
第百六十七条 前条ノ保証金ヲ貸付タル第三者ハ職務上ノ所為ヨリ害ヲ受ケタル者ニ弁済アリシ後第二位ニテ此保証金ニ付キ先取特権ヲ有ス但第三者カ貸付ノ当時又ハ他ノ債権者ヨリ何等ノ故障ヲモ述ヘサル前規則ニ従ヒテ其権利ヲ証シタルトキニ限ル
第二款 動産ニ係ル特別ノ先取特権ノ順位
第百六十八条 動産ニ係ル特別ノ先取特権ト一般ノ先取特権ト競合スルトキハ優先ノ順序ヲ左ノ如ク規定ス
第一 訴訟費用ハ其費用ノ有益タリシ総債権者ニ先タツ但有益ノ限度又ハ割合ニ従フ
第二 此他四箇ノ一般ノ先取特権ハ第百四十一条ニ定メタル順序ヲ以テ総テノ特別ノ先取特権ニ先タツ但特別ノ先取特権ニ服セサル他ノ動産ノ不足ナル場合ニ限ル
第百六十九条 一箇ノ動産ニ付キ特別ノ先取特権ヲ有スル諸種ノ債権競合スルトキハ其相互ノ優先権ハ下ノ順序及ヒ区別ニ従ヒテ之ヲ定ム
第一ノ順位ハ先取特権ノ目的物ヲ保存シタル者ニ属ス
若シ数人ノ債権者漸次ニ保存ヲ為シタルトキハ優先権ハ其間ニテ最後ノ保存者ニ属ス
第二ノ順位ハ合意上ノ動産質ニ因リ或ハ不動産ノ賃貸人、旅店主人又ハ運送営業人ノ如ク黙示ノ動産質ニ因リテ物ヲ質ニ取リタル債権者ニ属ス
第三ノ順位ハ物ノ売主ニ属ス
然レトモ質取債権者ハ動産質設定ノ時其物ノ保存費用ノ未タ支払アラサルコトヲ知ラサリシトキハ第一ノ順位ヲ得
之ニ反シテ質取債権者カ売却代価ノ未タ支払アラサルコトヲ知リタルトキハ売主之ニ先タツ
収穫物ニ関シテハ第一ノ順位ハ農業ノ稼人ニ第二ノ順位ハ種子及ヒ肥料ノ供給者ニ第三ノ順位ハ土地ノ賃貸人ニ属ス
工業ノ職工ハ工業ヨリ生スル産出物又ハ製造品ニ付キ賃貸人ニ先タツ
公吏ノ保証金ニ関シテハ職務上ノ所為ニ対スル各債権者ハ相共ニ債権ノ割合ニ応シ其債権ノ日附ニ関セス他ノ債権者ニ先タチ又保証金ヲ貸付タル債権者ニモ先タツ其保証金ヲ貸付タル債権者ハ保証金ノ残額ニ付キ第二位ニテ先取特権ヲ有ス
第三節 不動産ニ係ル特別ノ先取特権
第一款 不動産ニ係ル特別ノ先取特権ノ原因及ヒ目的物
第百七十条 左ノ債権者ハ下ニ定メタル債権ノ為メ其条件ニ従ヒ不動産ニ付キ先取特権ヲ有ス
第一 売買、交換其他有償ノ行為ニ因リ又無償ナルモ負担ヲ帯フル行為ニ因リテ不動産ヲ譲渡シタル者ハ其譲渡シタル不動産ニ付キ先取特権ヲ有ス
第二 共同分割者ハ分割中ニ包含シタル不動産ニ付キ先取特権ヲ有ス
第三 工匠、技師及ヒ工事請負人ハ工事ニ因リテ不動産ニ生シタル増価ニ付キ先取特権ヲ有ス
第四 先取特権ヲ生セシムル行為ノ当時譲渡人、共同分割者、工事請負人ニ支払ヒタル金銭ノ貸主ハ右同一ノ不動産ニ付キ先取特権ヲ有ス
第五 死亡者ノ遺産ト相続人ノ資産トノ分離ヲ請求スル相続ノ債権者及ヒ受遺者ハ相続ノ不動産ニ付キ先取特権ヲ有ス
第一則 譲渡人ノ先取特権
第百七十一条 譲渡人ノ先取特権ハ左ノ各人ニ属ス
第一 売買ノ代価及ヒ利息其他ノ負担ニ付テハ売主
第二 交換ノ補足額、負担及ヒ交換物ノ追奪担保ニ付テハ交換者
第三 贈与ノ負担ニ付テハ贈与者又ハ其承継人
此他有償又ハ無償名義ノ不動産譲渡人ハ一般ニ其対価及ヒ負担ニ付キ先取特権ヲ有ス
第百七十二条 売買代価、交換補足額ノ外売買、交換、贈与ノ負担及ヒ交換其他有償名義ノ合意ニ於ケル追奪担保ノ未定ノ賠償ハ譲渡ノ証書又ハ日後ノ証書ヲ以テ金銭ニテ之ヲ定ムルコトヲ要ス
此他右ノ証書ハ次款ニ記載スル如ク之ヲ公示スルコトヲ要ス
第百七十三条 交換其他不動産ノ譲渡ノ対価トシテ受取リタル不動産ノ追奪ノ担保ノ為メノ先取特権ハ其追奪カ譲渡ノ時ヨリ十个年内ニ生シ且廃罷ス可カラサル判決ヨリ一个年内ニ担保ノ請求ヲ為シ之ヲ公示シタルトキニ非サレハ存立セス
対価トシテ受取リタル動産ニ関シテハ担保ノ為メノ先取特権ハ追奪カ一个年内ニ生シ且廃罷ス可カラサル判決ヨリ一个月内ニ請求ヲ為シ之ヲ公示シタルトキニ非サレハ存立セス
第二則 共同分割者ノ先取特権
第百七十四条 相続人、社員其他ノ共有者ハ或ハ抽籤ノ方法或ハ合意上ノ指定或ハ不分物競売ニ因レル分割ヨリ生スル左ノ債権ノ為メ其分割ニ於テ各自ノ得タル不動産ニ付キ互ニ先取特権ヲ有ス
第一 補足額ノ為メ又ハ配当ノ過分ノ為メニハ之ヲ負担セル分割者ニ帰シタル不動産ニ付キ先取特権アリ
第二 不分物競売ノ代価ノ為メニハ其競売シタル不動産ニ付キ先取特権アリ
第三 分割者ノ一人カ其配当部分ノ動産又ハ不動産ニ於テ受ケタル追奪ノ担保ノ為メニハ他ノ分割者ニ帰シタル総不動産ニ付キ先取特権アリ但債務ニ於ケル各分割者ノ部分ニ限ル
第百七十五条 右ノ担保ハ左ノ諸件ニ之ヲ適用ス
第一 相続人又ハ社員ニシテ他ノ相続人又ハ社員ニ対シ補足額又ハ不分物競売ノ代価ヲ負担シタル者ノ無資力
第二 分割者ノ一人ノ配当部分ニ債権ヲ充テタルトキ其債務者ノ無資力但其債務者ハ分割者タルト外人タルトヲ問ハス分割ノ当時無資力タリシコトヲ要ス
第百七十六条 第百七十三条ハ分割者間ノ追奪担保ノ先取特権ニ之ヲ適用ス
分割者タルト否トヲ問ハス債務者ノ無資力ニ関シテハ其担保ハ元本ニ於ケル債務ノ満期ヨリ一个年内ニ請求ヲ為シ之ヲ公示シタルトキニ非サレハ当事者ノ間ニテモ第三者ニ対シテモ之ヲ負担セシムルコトヲ得ス
債務カ無期又ハ終身ノ年金権タルトキ債務者ノ無資力カ分割ノ日ヨリ十个年後ニ生スルニ於テハ其担保ノ負担ハ止ム
債務カ利息ヲ生スル元本ニシテ其満期カ十个年以上ニ及フトキモ亦同シ
第三則 工匠、技師及ヒ工事請負人ノ先取特権
第百七十七条 工匠、技師及ヒ工事請負人ハ建物、堤塘若クハ堀割ノ築造若クハ修繕又ハ地上ニ為シタル排泄、潅漑、開墾、置土其他之ニ類似スル工事ヨリ生スル債権ノ為メ先取特権ヲ有ス
右ノ先取特権ハ鉱坑及ヒ石坑ノ開掘、利用、閉鎖又ハ廃止ニ闢スル地下又ハ外部ノ工事ノ為メ工匠、技師及ヒ工事請負人ニ属ス
第百七十八条 右ノ工事ヨリ生スル先取特権ハ其工事ニ因リ土地又ハ建物ニ加ヘタル増価ニシテ先取特権行使ノ当時猶ホ存在スルモノヽミニ付キ存立ス
右ノ増価ハ裁判所ノ選定シタル鑑定人ノ作レル三箇ノ調書ヲ以テ之ヲ証スルコトヲ要ス
此第一調書ハ工事ヲ始ムル前ニ之ヲ作リテ場所ノ現状ヲ明定シ且目論見タル工事ノ概略ヲ指示スルコトヲ要ス
此第二調書ハ工事ノ竣成ヨリ又ハ原因ノ如何ヲ問ハス其工事ノ絶止ヨリ三个月内ニ之ヲ作リ且其工事ヨリ現ニ生スル増価ヲ証スルコトヲ要ス
此第三調書ハ配当加入ノ請求ノ当時之ヲ作リ且右増価ノ存在スルモノヲ証スルコトヲ要ス
第四則 金銭貸主ノ先取特権
第百七十九条 前数条ニ掲ケタル先取特権ハ譲渡若クハ分割ノ当時又ハ工匠、技師若クハ工事請負人トノ契約ノ当時ニ於テ売買若クハ不分物競売ノ代価、交換若クハ分割ノ補足額又ハ工事ノ代金ノ弁済ノ為メ金銭ヲ貸付タル者ニ法律ニ依リテ直接ニ属ス但其金銭ノ貸付及ヒ使用ヲ此等ノ行為ノ証書中ニ記載シタルトキニ限ル
若シ譲渡人、分割者又ハ工事ノ為メノ債権者ノ利益ニ於テ先取特権ノ生セシ後ニ金銭ヲ貸付タルトキハ貸主ハ財産編第四百八十条及ヒ第四百八十一条ニ定メタル条件及ヒ方式ニ従ヒ債権者又ハ債務者ヨリ合意上ノ代位ヲ得タルトキニ非サレハ先取特権ヲ取得セス
孰レノ場合ニ於テモ金銭ノ貸主カ債務ノ一分ノミヲ払ヒタルトキハ貸主ハ其払ヒタルモノヽ割合ニ応シ財産編第四百八十六条ニ従ヒ原債権者ト共ニ先取特権ヲ行フ
第五則 資産分離ノ先取特権
第百八十条 相続ノ債権者及ヒ受遺者カ死亡者ノ遺産ト相続人ノ資産トノ分離ヲ請求スルノ権利ヲ行フニ付キ服従ス可キ条件ハ相続ノ事項ニ於テ之ヲ規定ス
第百八十一条 資産分離ヲ請求シタル債権者並ニ受遺者ノ先取特権ハ債務者ノ所為ニ因リ又ハ其権利ニ基キ且其費用ヲ以テ不動産ニ加ヘタル増加及ヒ改良ニ及ハス
右ノ規定ハ不動産ノ譲渡人又ハ分割者ノ先取特権ニ之ヲ適用ス
第二款 不動産ニ係ル特別ノ先取特権ノ債権者間ノ効力及ヒ順位
第百八十二条 前款ニ掲ケタル先取特権ハ下ニ定メタル方法、条件及ヒ期間ヲ以テ公示シ且保存シタルトキニ非サレハ之ヲ以テ他ノ債権者ニ対抗スルコトヲ得ス
第百八十三条 売買代価ノ為メノ売主ノ先取特権及ヒ補足額ノ為メノ交換者ノ先取特権ハ代価又ハ補足額ノ全部又ハ一分ヲ未タ弁済セサル旨ヲ記シタル所有権移転証書ノ登記ヲ以テ之ヲ保存ス
又交換ニ於ケル追奪担保ノ為メ及ヒ売買、交換其他所有権移転契約ノ附従負担ノ為メノ先取特権ハ証書ノ登記ヲ以テ之ヲ保存ス但担保及ヒ負担ノ評価ヲ証書中ニ記載シタルトキニ限ル
第百八十四条 分割者ノ先取特権ハ分割ノ証書ヲ登記スルニ因リテ之ヲ保存ス但其証書ニ不分物競売代価又ハ補足額若クハ配当ノ過分及ヒ追奪担保ノ評価其他各配当部分ノ負担ノ評価ヲ記載シタルトキニ限ル
第百八十五条 右譲渡又ハ分割ノ証書ノ登記ナキ間ハ取得者又ハ分割者ノ承諾シ又ハ其権利ニ基キテ生シタル物上担保ハ公示シタルトキト雖モ之ヲ以テ先取特権アル債権者又ハ其承継人ニ対抗スルコトヲ得ス但工事ヨリ生スル先取特権アル債権ハ此限ニ在ラス
然レトモ利害関係人ハ原契約者ノ承諾ヲ得スト雖モ常ニ右ノ登記ヲ為サシムルコトヲ得
第百八十六条 譲渡又ハ分割ノ証書ニ其対価物ノ全部若クハ一分ノ未タ弁済アラサルコト又ハ負担ノ付シ有ルコトヲ記載セサルトキハ日後ノ証書ヲ以テ此脱漏ヲ補フコトヲ得且其証書ハ債権者ノ注意ヲ以テ譲渡又ハ分割ノ証書ト共ニ之ヲ公示スルコトヲ得
右ノ日後ノ証書ヲ譲渡又ハ分割ノ証書ノ登記ト共ニ公示セサルトキハ債権者ハ何時ニテモ抵当ノ章ニ定ムル方式ニ従ヒ要旨ノ記入ヲ以テ其証書ヲ公示スルコトヲ得但此場合ニ於テハ先取特権ハ単純ナル法律上ノ抵当ニ変性ス
右ノ抵当ハ二箇ノ公示ノ間ニ於テ債務者ノ権利ニ基キ物上担保ヲ取得シ且合式ニ之ヲ公示シタル債権者ニ之ヲ以テ対抗スルコトヲ得ス
譲渡若クハ分割ノ証書ニ記シタル負担又ハ担保ノ評価ヲ日後ノ証書ニ記載シタルトキモ亦同シ但其証書ノ抵当記入ハ其記入ヲ為シタル日附ニ従ヒテ債権者ノ順位ヲ定ム
第百八十七条 売主其他譲渡人又ハ分割者ノ先取特権カ法律上ノ抵当ニ変性シタルトキハ此抵当ノ記入前ニ譲渡又ハ分割ノ目的タル不動産ニ付テノ物上担保ヲ債務者ノ権利ニ基キテ取得シ且合式ニ保存シタル債権者ヲ害シテ義務不履行ノ為メノ解除訴権ヲ行フコトヲ得ス
第百八十八条 工匠、技師又ハ工事請負人ノ先取特権ハ第百七十八条ニ定メタル第一第二ノ調書ノ記入ヲ以テ之ヲ保存ス
此第一調書ハ工事ヲ始ムル前ニ之ヲ記入スルコトヲ要ス
第二調書ハ其録製ヨリ一个月内ニ於テ之ヲ記入スルコトヲ要ス
第二調書ノ記入ノ効力ハ第一調書ノ日附ニ遡及シ且工事ノ前又ハ後ニ債務者ト契約シタル各人ニ対シ其増価ニ付テノ優先権ヲ先取特権アル債権者ニ保有セシム
利害関係人中ノ一人ノ為シタル右調書ノ記入ハ委任ナキトキト雖モ他ノ関係人ヲ利シ且総関係人ニ其債権ノ割合ニ応シテ弁済ヲ受クル為メノ同一ノ順位ヲ保有セシム但総テノ者カ有益ノ時期ニ於テ必要ナル疏明ヲ為スコトヲ要ス
第百八十九条 前条ニ指定シタル期間ニ二箇ノ調書中其一ノ記入ヲ為サヽリシトキハ先取特権ハ法律上ノ抵当ニ変性シ其順位ハ左ノ日附ヲ以テ之ヲ定ム
第一 工事ノ竣成又ハ絶止ノ時ヨリ三个月内ニ第二調書ヲ録製シ且次月内ニ之ヲ記入シタルトキハ第一調書ノ遅延記入ノ日附
第二 右ノ三个月内ニ第二調書ヲ録製セス又ハ三个月内ニ之ヲ録製シタルモ次月内ニ之ヲ記入セサルトキハ其第二調書記入ノ日附
第百九十条 取得、分割又ハ工事ノ為メ初メニ金銭ヲ貸付タル者ノ第百七十九条第一項ニ従ヒテ有スル先取特権ハ売主、分割者又ハ工事請負人ニ於ケルト同一ノ方法ヲ以テ之ヲ保存ス
右貸主カ後日代位ニ因リテ売主、分割者又ハ工事請負人ニ承継シタルトキ未タ先取特権ノ公示アラサルニ於テハ其貸主ハ主タル証書及ヒ代位証書ノ登記又ハ記入ニ因リテ其公示ヲ為サシム
若シ代位前ニ公示アリタルトキハ貸主ハ登記シタル証書ノ縁辺ニ代位証書ノ附記ヲ請求ス可シ
又先取特権アル債権ヲ譲受ケタル者ハ譲渡証書ノ附記ヲ請求ス可シ
此末ノ二箇ノ場合ニ於テ附記ヲ為サシムルコトヲ遅延シタル代位者又ハ譲受人ハ其以前善意ニテ債務者又ハ其承継人ト原債権者トノ間ニ為シタル弁済其他ノ免責ノ行為ヲ駁撃スルコトヲ得ス
第百九十一条 上ニ記載シタル如クニ保存シタル先取特権又ハ抵当アル債権ニシテ利息又ハ年金ノ附キタルモノハ利息又ハ年金ノ満期ト為リタル最終ノ二个年分ニ非サレハ元本ト同一ノ順位ニテ配当ニ加入スルコトヲ得ス但満期ノ利息又ハ年金ノ中ニテ二个年以外ノモノヽ為メ漸次ニ特別ノ抵当記入ヲ為ス可キ債権者ノ権利ヲ妨ケス
第百九十二条 資産分離ヲ請求スル債権者及ヒ受遺者ハ担保ノ為メ留置セント欲スル財産ニ付キ相続ノ発開ヨリ六个月内ニ其債権又ハ遺贈ヲ記入スルコトヲ要ス
其記入ニハ債権又ハ遺贈ノ額ト其記入ヲ為ス主旨トヲ附記スルコトヲ要ス
相続人ノ権利ニ基キ右ノ期間ニ為シタル記入又ハ登記ハ分離請求者ニ之ヲ以テ対抗スルコトヲ得ス但工事請負人ノ先取特権ニ関シ次条ニ記載スルモノハ此限ニ在ラス
第百九十三条 不動産ニ付キ先取特権アル債権者間ノ相互ノ優先権ハ左ノ順序ニ従フ
第一 工匠、技師及ヒ工事請負人但其債権カ後ニ生シタルトキモ亦優先権ヲ有ス
此工事ヨリ生スル増価額カ右ノ各人ニ全ク弁済スルニ足ラサル場合ニ於テハ債権ノ割合ニ応シ同一ノ順位ニテ其配当加入ヲ定ム
第二 譲渡人又ハ分割者
逐次ノ譲渡又ハ分割ノ場合ニ於テハ優先権ハ債権者間最モ旧キ者ニ属ス
金銭ノ貸主ハ或ハ初ヨリ或ハ合意上ノ代位ニ因リ其金銭ニテ全部又ハ一分ノ弁済ヲ受ケタル債権者ト同一ノ順位ヲ有ス
資産ノ分離ヲ請求スル債権者及ヒ受遺者ハ死亡者ノ遺産ニ付キ其遺産カ相続人ニ帰シタル後之ニ贈価ヲ与ヘタル工匠、技師及ヒ工事請負人ノミニ先ンセラル
資産ノ分離ハ死亡者ノ債権者間及ヒ受遺者間ノ相互ノ権利ヲ変更セス
第百九十四条 先取特権ノ記入及ヒ其更新、抹殺、減少ニ関スル規則ハ先取特権及ヒ抵当権ニ共通ニシテ之ヲ次章ニ規定ス
第三款 第三所持者ニ対スル不動産先取特権ノ効力
第百九十五条 合式ニ公示シタル先取特権ハ其負担アル不動産ニ付キ第三所持者ノ方ニマテ追及ス
第三所持者カ下ニ定ムル方法ノ一ニ依リテ先取特権アル債権者ニ弁済セサルトキハ其債権者ハ第三所持者ニ対シ其不動産ヲ差押ヘ之ヲ競売ニ付スルコトヲ得
第百九十六条 一般ノ先取特権ハ第三所持者ノ取得証書ノ登記前ニ之ヲ記入シタルトキニ非サレハ其第三所持者ニ移転シタル不動産ニ付キ追及権ヲ与ヘス
第百九十七条 転得者ノ証書ノ登記前ニ登記セサル譲渡又ハ分割ニ因リテ先取特権ヲ有スル債権者ハ其先取特権ノ生シタル証書ヲ登記スルコトニ付キ転得者ヨリ催告ヲ受ケタレトモ一个月内ニ其登記ヲ為サヽリシトキニ非サレハ追及権ヲ失ハス但此一个月ニハ距離ニ応シテ法律上ノ期間ヲ加フ
然レトモ転得者ハ其譲渡人カ十个年以上不動産ニ付キ法定ノ占有ヲ為シタルトキハ右ノ催告ヲ為スノ責ナク且旧所有者ノ総テノ先取特権ヲ免カル
第百九十八条 工事ニ因リ先取特権ヲ有スル債権者ハ工事ノ竣成又ハ其絶止ノ前ニ譲渡アリテ其証書ノ登記アリタルモ第一調書ノ記入ニ依リテ追及権ヲ行フコトヲ得
工事ノ竣成シ又ハ絶止シタルトキ第二調書ノ録製及ヒ記入ノ二箇ノ期間カ未タ経過セサルニ於テハ右ノ債権者ハ此期間ノ満了後又ハ第二調書ヲ録製シ且記入ス可キ催告ヲ受ケタルモ一个月ノ期間ニ之ニ応セサリシ後ニ非サレハ先取特権ヲ失ハス
第百九十九条 追及権ヲ保存シ及ヒ之ヲ行フ為メニ必要ナル公示ヲ為サヽル先取特権アル債権者ハ第三所持者ノ負担シタル譲受代価ニ付キ優先権ヲ失ハス但代価ノ弁済前又ハ順序配当手続ノ閉鎖前ニ自ラ債権者タルコトヲ知ラシメ且其債権ヲ証シタルトキニ限ル
第二百条 先取特権ニ関スル追及権、其条件、効力並ニ第三所持者カ所有権徴収ヲ避クルノ方法及ヒ先取特権消滅ノ原因ハ次章ノ第三節第五節乃至第七節ノ規定ニ従フ但先取特権ノ固有ノ規則ニ反スルモノハ此限ニ在ラス
第五章 抵当
第一節 抵当ノ性質及ヒ目的物
第二百一条 抵当ハ法律又ハ人意ニ因リテ或ル義務ヲ他ノ義務ニ先タチテ弁償スル為メニ充テタル不動産ノ上ノ物権ナリ
第二百二条 抵当ハ動産質及ヒ不動産質ニ付キ記載シタル如ク働方及ヒ受方ニテ不可分タリ但反対ノ合意アルトキハ此限ニ在ラス
第二百三条 抵当ハ不動産ノ完全所有権ノ上ノミナラス父母ノ法律上ノ用益権ヲ除クノ外ノ用益権、賃借権、永借権及ヒ地上権ノ上ニモ此等ノ権利ヲ支分シタル所有権ノ上ニモ之ヲ設定スルコトヲ得
然レトモ完全ノ所有権ヲ有スル者ハ虚有権又ハ用益権ノミヲ分離シテ之ヲ抵当ト為スコトヲ得ス
之ニ反シテ所有者ハ其不動産ノ限界ニ因リテ定マリタル部分又ハ其不分ノ幾部分ヲ抵当ト為スコトヲ得
地役ハ要役地ヨリ分離シテ之ヲ抵当ト為スコトヲ得ス又用方ニ因ル不動産ハ其附着スル不動産ヨリ分離シテ之ヲ抵当ト為スコトヲ得ス
第二百四条 左ニ掲クルモノハ之ヲ抵当ト為スコトヲ得ス
使用権、住居権其他譲渡スコトヲ得ス又ハ差押フルコトヲ得サル財産
財産編第十条第二号及ヒ第三号ニ掲ケタル如キ不動産債権
同条第四号ニ掲ケタル如キ不動産ト為シタル債権但之ヲ不動産ト為スコトヲ許可スル法律カ其抵当ヲ許サヽルトキニ限ル
船舶ノ抵当ニ付テハ商法ノ規定ニ従フ
第二百五条 此章ノ規定ハ商法其他特別法ニ於テ異例ヲ設ケサル限リハ此等ノ法律ヲ以テ設定シタル抵当ニ之ヲ適用ス
第二百六条 抵当ハ漸積地ノ如キ意外及ヒ無償ノ原因ニ由リ或ハ築造、栽植其他ノ工作ノ如キ債務者ノ所為及ヒ費用ニ因リテ不動産ニ生スルコト有ル可キ増加又ハ改良ニ当然及フモノトス但他ノ債権者ニ対シテ詐害ナキコトヲ要シ且前章ニ規定シタル如キ工匠、技師及ヒ工事請負人ノ先取特権ヲ妨ケス
抵当ハ債務者カ縦令無償ニテ取得シタルモノナルモ其隣接地ニ及ハサルモノトス但新囲障ノ設立又ハ旧囲障ノ廃棄ニ因リテ隣接地ヲ抵当不動産ニ合体シタルトキモ亦同シ
第二百七条 意外若クハ不可抗ノ原因又ハ第三者ノ所為ニ出テタル抵当財産ノ滅失、減少又ハ毀損ハ債権者ノ損失タリ但先取特権ニ関シ第百三十七条ニ記載シタル如ク債権者ノ賠償ヲ受ク可キ場合ニ於テハ其権利ヲ妨ケス
若シ抵当財産カ債務者ノ所為ニ因リ又ハ保持ヲ為サヽルニ因リテ減少又ハ毀損ヲ受ケ此カ為メ債権者ノ担保カ不十分ト為リタルトキハ債務者ハ抵当ノ補充ヲ与フルノ責ニ任ス
此補充ヲ与フルコト能ハサル場合ニ於テハ債務者ハ担保ノ不十分ト為リタル限度ニ応シ満期前ト雖モ債務ヲ弁済スルノ責ニ任ス
第二百八条 抵当財産ノ差押ナキ間ハ債務者ハ財産編第百十九条及ヒ第百二十条ニ定メタル期間中其不動産ヲ賃貸スルコトヲ得又其果実及ヒ産出物ヲ譲渡シ及ヒ管理ノ総テノ行為ヲ為スコトヲ得
第二節 抵当ノ種類
第二百九条 抵当ハ法律上、合意上又ハ遺言上ノモノタリ
第一款 法律上ノ抵当
第二百十条 左ノ抵当ハ総テノ要約ニ関セス当然成立ス
第一 婦カ其夫ニ対シテ有スルコト有ル可キ総債権ノ為メ婚姻ノ日現ニ夫ニ属スルト後日之ニ属ス可キトヲ問ハス其夫ノ総不動産ニ付キ婦ノ有スル抵当但夫ノ未成年タルトキモ亦同シ
第二 未成年者及ヒ禁治産者カ其後見人ニ対シテ有スル総債権ノ為メ現在ニ属スルト将来ニ得ルトヲ問ハス後見人ノ総不動産ニ付キ有スル抵当
第三 国、府、県、市、町、村及ヒ公設所カ行政法ノ定メタル限度ト条件トニ従ヒ会計吏員ノ管理ノ為メ其不動産ニ付キ有スル抵当
又第百八十六条及ヒ第百八十九条ニ従ヒテ変性シタル先取特権ヨリ生スル抵当ハ之ヲ法律上ノ抵当ト看做ス
第二款 合意上ノ抵当
第二百十一条 合意上ノ抵当ハ公正証書又ハ私署証書ヲ以テスルニ非サレハ之ヲ設クルコトヲ得ス
代理人ヲ以テ抵当ヲ設定スルトキハ委任ノ要旨ヲ抵当ノ合意中ニ示スコトヲ要ス
第二百十二条 本邦ニ存在スル財産ニ付キ外国ニ於テ為シタル抵当ノ合意ハ此種類ノ行為ノ為メ外国ニ於テ用ユル方式ニ従ヒ之ヲ為シタルトキハ其効ヲ生スルコトヲ得然レトモ第二百十九条及ヒ第二百二十五条以下ニ規定シタル条件ニ従フニ非サレハ此合意ニ依リ本邦ニ於テ記入ヲ為スコトヲ得ス
第二百十三条 抵当設定ノ証書ニハ義務ノ担保ニ充テタル不動産ヲ其性質及ヒ所在ヲ以テ特ニ指示スルコトヲ要ス
若シ抵当ノ設定カ債務者ノ現在ノ各不動産ヲ特ニ指示セスシテ其全部又ハ一分ヲ包含スルトキハ債務者ノ請求ニ因リ債権ノ担保ニ必要ナルモノニ其抵当ヲ減少スルコトヲ得
債務者ノ将来ノ財産ニ付テノ一般又ハ特別ノ抵当ノ設定ハ無効タリ
第二百十四条 抵当ノ設定証書ニハ右ノ外義務ノ原因、体様及ヒ其主従ノ目的ヲ明カニ指示スルコトヲ要ス
義務ノ目的カ金銭タラサルトキハ之ヲ評価ス可シ然レトモ其評価ハ第二百二十六条ニ記載スル如ク記入ニ於テモ尚ホ之ヲ為スコトヲ得
第二百十五条 抵当ハ抵当ニ充テント欲スル物ノ所有権又ハ収益権ヲ有シ且有償又ハ無償ニテ其物ヲ処分スルノ能力ヲ有スル者ニ非サレハ之ヲ承諾スルコトヲ得ス但第三者ノ抵当設定ニ関スル第二百十七条ノ規定ヲ妨ケス
若シ有期ノ権利ヲ抵当ト為シタルトキハ其抵当ハ右ノ権利ノ時期外ニ効力ヲ生スルコトヲ得ス然レトモ抵当ト為リタル権利カ此時期ノ満了前或ル出来事ニ因リ物ノ価額ヲ代表スル償金ニ移リタルトキハ債権者此償金ニ付キ其権利ヲ行フ
第二百十六条 未成年者、禁治産者及ヒ失踪者ノ財産ハ法律ニ定メタル原因及ヒ方式ニ依ルニ非サレハ其代人ニ於テ之ヲ抵当ト為スコトヲ得ス
第二百十七条 合意上ノ抵当ハ第百二条及ヒ第百二十一条ニ於テ動産質及ヒ不動産質ニ付キ記載シタル如ク債務者ノ債務ヲ担保スル為メ第三者ヨリ之ヲ与フルコトヲ得
右ノ抵当ハ常ニ債務者ニ対シテハ恩恵ナリトス
又抵当ハ債権カ無償ナルトキ又ハ有償ナルモ諾約ナクシテ主タル合意以後ニ之ヲ設定シタルトキハ債権者ニ対シテモ恩恵ナリトス
第三款 遺言上ノ抵当
第二百十八条 抵当ハ遺贈ノ全部若クハ一分ノ担保ノ為メニ非サレハ遺言ヲ以テ之ヲ与フルコトヲ得ス
第三節 抵当ノ公示
第一款 記入ノ条件、方式及ヒ期間
第二百十九条 凡ソ法律上、合意上又ハ遺言上ノ抵当ハ下ニ定メタル条件及ヒ方式ニ従ヒ其不動産所在地ノ登記所ニ於テ記入ヲ為シタルニ非サレハ之ヲ以テ第三者ニ対抗スルコトヲ得ス
数箇ノ登記所ノ管轄ニ跨カル不動産ノ全部ヲ抵当ト為シタルトキハ其主タル部分ノ所在地ヲ管轄スル登記所ニ於テ記入ヲ為シ他ノ登記所ニ於テハ其記入及ヒ日附ノ記載ノミヲ為ス
第二百二十条 抵当ハ左ノ二箇ノ場合ニ於テハ有効ニ之ヲ記入スルコトヲ得ス
第一 抵当設定ノ後債務者ノ無資力カ正当ニ宣告セラレ又ハ其財産ノ全部若クハ過半ノ差押ニ因リ顕然ト為リタルトキ但破産ノ場合ニ於ケル記入ノ権利ニ付テノ商法ノ制限ヲ妨ケス
第二 債務者カ死亡シテ法律ニ因リ相続ヲ受ク可キ総テノ相続人カ単純ニ其相続ヲ受諾セサルトキ
抵当財産ノ譲渡アリタルトキ其譲受人ニ対シテ債権者ノ記入スル権利ノ制限ハ第五節ニ於テ之ヲ規定ス
第二百二十一条 債権者カ財産ノ管理権ヲ有セサルトキハ抵当ノ記入ハ法律上又ハ裁判上ノ代人之ヲ為ス
抵当ノ記入ハ総理代人及ヒ法律上又ハ合意上ノ抵当ノ附着シタル行為ヲ為スノ委任ヲ受ケタル部理代人ノ権利及ヒ義務ニ属ス
又記入ハ債権者ノ委任ナクシテ事務管理人之ヲ為スコトヲ得
第二百二十二条 婦ノ法律上ノ抵当ハ夫カ婦ニ対シ契約其他ノ方法ニテ条件附ナルト否トヲ問ハス債務者ト為リタル時ヨリ夫又ハ裁判所ノ許可ヲ要セス婦ノ請求ニ因リテ之ヲ記入スルコトヲ得又其記入ハ婦ノ適当ト思考スル不動産ノ全部又ハ一分ニ付キ之ヲ為スコトヲ得但第二百四十条ニ記載スル如ク夫ノ有スル抵当減少ノ権利ヲ妨ケス
婦カ記入ヲ為サヽルトキハ夫ハ婦ノ担保ノ為メ十分ナル不動産ニ付キ其記入ヲ為スコトヲ要ス
婦又ハ夫カ記入ヲ為サヽルトキハ縦令委任ナキモ婦ノ親属又ハ姻属ニテ之ヲ為スコトヲ得但婦ノ故障又ハ抛棄ナキコトヲ要ス
第二百二十三条 未成年者ノ法律上ノ抵当ハ夫カ婦ノ法律上ノ抵当ヲ記入スルト同一ノ場合ニ於テ同一ノ条件ニ従ヒ後見人之ヲ記入スルコトヲ要ス
後見人記入ヲ為サヽルトキハ後見監督人又ハ親属会議員其記入ヲ為スコトヲ要ス若シ之ヲ為サヽルトキハ未成年者ニ対シ連帯シテ損害賠償ヲ負担ス
未成年者モ亦後見ヲ脱シタル後ハ其記入ヲ求ムルコトヲ得
第二百二十四条 前条第一項及ヒ第二項ノ規定ハ禁治産者ノ法律上ノ抵当ニ之ヲ適用ス
処刑言渡ニ因レル禁治産ノ場合ニ於テハ禁治産者ノ特別ノ代理人ニテモ記入ヲ求ムルコトヲ得
第二百二十五条 抵当ノ記入ヲ求ムル者ハ下ニ記スル如ク己レノ利益ノ為メ又ハ己レノ代表スル債権者ノ利益ノ為メ抵当ノ成立ヲ登記官吏ニ疏明スルコトヲ要ス
婦、未成年者又ハ禁治産者ノ法律上ノ抵当ニ関スルトキハ抵当ノ原因タル婚姻又ハ後見ノ証拠ニ依リテ其疏明ヲ為スコトヲ要ス
合意上ノ抵当ニ関スルトキハ抵当ヲ設定シタル証書ノ正本ニ依リテ其疏明ヲ為スコトヲ要ス
遺言上ノ抵当ニ関スルトキハ遺言書ノ正本又ハ其公正ナル写書ニ依リテ其疏明ヲ為スコトヲ要ス
総テノ場合ニ於テ登記官吏カ抵当成立ノ証拠ヲ不十分ナリトスルトキ又ハ債務者ト帳簿ニ記載アル不動産所有者ト同人ナルコトノ十分ナル疏明ナキトキハ登記官吏ハ自己ノ責任ニテ記入ヲ拒絶スルコトヲ得但第三百七条ニ記載スル如ク裁判ヲ受クル為メ同条ノ規定ニ従フコトヲ要ス
第二百二十六条 記入ノ要求者ハ右ノ外左ノ諸件ヲ精確ニ指示スル明細書ノ正本二通ヲ差出タスモノトス
第一 債権者ノ氏名、職業及ヒ住所若クハ居所
第二 債務者ノ氏名及ヒ成ル可ク職業、住所若クハ居所
第三 抵当ノ原因及ヒ法律上ノ抵当外ノ抵当ニ関スルトキハ設定証書ノ性質及ヒ日附
第四 債権ノ性質、其証書ノ日附、之ニ記載シタル金額又ハ其価額ノ不確定ナルトキハ現ニ評価シタル金額及ヒ債務ノ要求期限
第五 抵当ト為シタル不動産ノ性質及ヒ其所在地
従来ノ記入ノ縁辺ニ附記ス可キ譲渡又ハ代位ノ場合ニ於テハ明細書ニ新債権者及ヒ其証書ノ指示ヲ記載スルヲ以テ足レリトス
第二百二十七条 婦、未成年者又ハ禁治産者ノ法律上ノ抵当ニ因リテ担保セラレタル債権カ不当ノ利得又ハ不正ノ損害等ノ事実ヨリ生セシトキハ要求者ノ申立テタル事実ノ要旨及ヒ其主張シタル債権ノ評価ヲ明細書ニ指示ス可シ
第二百二十八条 登記官吏ハ上ニ指定シタル書類ヲ受取リタルトキハ要求者ニ受取証ヲ付与ス但其受取証ニハ第二百五十三条ノ適用ヲ保スル為メ受取ノ日附ト共ニ其日ノ受取番号ヲ記載ス可シ
第二百二十九条 債権者ノ相続人又ハ譲受人ハ原債権者ノミノ名ヲ以テ或ハ自己ト原債権者トノ連名ヲ以テ記入ヲ求ムルコトヲ得
債権者ノ代理人又ハ事務管理人ヨリ記入ヲ求ムルトキハ其名及ヒ分限ヲ本人ノ名及ヒ分限ト共ニ記載ス可シ
第二百三十条 債務者カ死亡シタルトキハ記入ハ債権者ノ選択ニ因リテ其債務者ニ対シ又ハ其総テノ相続人ニ対シテ之ヲ為スコトヲ得
抵当ノ負担アル不動産カ相続ノ分割ニ因リテ一人ノ相続人ニ帰シタル場合ニ於テハ其一人ノミニ対シテ記入ヲ為スコトヲ得
第三者ノ設定シタル抵当ニ関シテハ設定者ニ対シテ記入ヲ為スモノトス
第二百三十一条 登記官吏カ記入簿ニ明細書ノ箇条ヲ記載シタルトキハ其二通ノ明細書ノ各葉ニ同一ノ割印ヲ押捺シ其一通ハ抵当ノ疏明書ト共ニ之ヲ要求者ニ還付シ他ノ一通ハ登記官吏之ヲ保存ス
此他ノ細則ハ別ニ之ヲ定ム
第二百三十二条 明細書ノ箇条ノ脱漏不足又ハ訛誤ニ因リテ不完全ナル記入ノ為メ第三者カ抵当ノ或ル要点ヲ知リ得サリシヨリ生シタル損害ヲ証スルトキハ其請求ニ因リテ記入ノ無効ヲ宣告スルコトヲ得
第二百三十三条 法律上、合意上又ハ遺言上ノ抵当ノ記入ハ三十个年間其効力ヲ有ス三十个年後ハ債権ノ時効カ中断又ハ停止ニ係リタルトキト雖モ其記入ノ効力ヲ失フ
右抵当ノ時効ハ無能力者ニ対シテ停止セス但其代人ニ対スル求償ヲ妨ケス
然レトモ三十个年ノ期間満了前ニ記入ヲ更新シ旧記入ノ日附ヲ精確ニ記載シタルトキハ抵当ノ順位ハ旧記入ト同一ノ日附ニテ存ス
記入ノ効力ヲ失ヒシ後ノ更新ハ新記入ニ同シク其更新ノ日附ニ於テノミ効力ヲ生ス
第二百三十四条 三十个年ノ期間内ニ於ケル記入ノ更新ハ旧記入後ニ起リタル債務者ノ破産、無資力又ハ死亡ニ拘ハラス之ヲ為スコトヲ得
第二百三十五条 登記官吏ハ更新ノ要求書ノ正本二通ヲ受取リタル上ニテ記入ノ更新ヲ為シ其一通ニハ割印ヲ捺シテ之ヲ要求者ニ還付ス
第二百三十六条 記入ノ費用ハ債権ヲ有償名義ニテ取得シタルトキハ債務者及ヒ債権者各其半額ヲ負担ス
更新ノ費用ハ債権者ノミ之ヲ負担ス
第二百三十七条 記入ニ関スル争ハ抵当財産所在地ノ裁判所ニ之ヲ訴フ可シ
第二款 記入ノ抹殺、減少及ヒ正誤
第二百三十八条 記入ノ抹殺ハ左ノ場合ニ於テ之ヲ為ス
第一 債権カ無効タリ若クハ銷除ス可キモノタルトキ又ハ其全部ノ消滅シタルトキ
第二 抵当カ有効ニ設定セラレス若クハ法律ニ従ヒテ成立セサルトキ
第三 記入カ第二百三十二条ニ依リテ銷除ス可キモノナルトキ
右ハ第二百四十四条ニ記載シタル如ク或ル不動産ニ付テノ記入ヲ抹殺スルコトヲ妨ケス
第二百三十九条 記入ノ抹殺ハ債務者又ハ其承継人ノ請求ニ因リテ之ヲ宣告スルコトヲ要ス但下ニ規定シタル方式ニ於テ債権者ヨリ之ヲ許シタルトキハ此限ニ在ラス
第二百四十条 婦ノ法律上ノ抵当カ其債権ノ担保ニ必要ナルヨリ多キ不動産ニ付キ記入アリ又ハ其債権ノ正当ナル評価ヨリ更ニ多キ金額ノ為メニ記入アリタルトキハ夫又ハ其承継人ハ不動産又ハ金額ニ関シ裁判上ニテ此記入ノ減少ヲ請求スルコトヲ得但抵当ヲ或ル不動産ニ制限セス又ハ婚姻契約若クハ配偶者間ノ特別合意ニ因リテ債権額ヲ評価セサルトキニ限ル
第二百四十一条 右ニ同シク後見人又ハ其承継人ハ未成年者又ハ禁治産者ノ担保ニ必要ナルモノヽ外ニ為シタル記入ノ減少ヲ請求スルコトヲ得但親属会議ノ決議ニ因リテ抵当ヲ或ル不動産ニ制限セス又ハ債権額ヲ評価セサルトキニ限ル
第二百四十二条 合意上ノ抵当ハ債務者ノ現在ノ総財産ニ関シ第二百十三条ニ記載シタル如ク過度ナルトキニ非サレハ債務者其減少ヲ請求スルコトヲ得ス
債務者ハ常ニ債権者ノ記入シタル債権ノ評価ノ減少ヲ請求スルコトヲ得但設定証書又ハ別証書ヲ以テ評価ヲ為サヽルトキニ限ル
第二百四十三条 遺言上ノ抵当ハ相続ノ不動産ニ付キ遺言者其制限ヲ為サス又ハ債権ヲ評価セスシテ之ヲ設定シタルトキハ相続人其減少ヲ請求スルコトヲ得
第二百四十四条 債務カ半額以上消滅シタルトキハ債権者ハ債務者ノ要求ニ因リ三種ノ抵当ニ付キ金額ノミノ記入ヲ減少ス可シ
債務者ハ一分ノ弁済ヲ為シタルトキハ常ニ自費ニテ記入ノ縁辺ニ之ヲ附記スルコトヲ得
第二百四十五条 債務者ノ請求ヲ正当トスル判決ニハ抵当ヲ免カレタル不動産又ハ評価ヲ改メタル金額ヲ指示ス
右第一ノ場合ニ於テハ抵当ノ記入ヲ抹殺シ第二ノ場合ニ於テハ之ヲ減少ス
第二百四十六条 前数条ニ従ヒ記入ヲ或ル不動産ニ減少シタル場合ニ於テ其不動産カ債権者ノ担保ニ不十分ト為リタルトキハ意外ノ事又ハ不可抗力ニ因ルト雖モ債権者ハ抵当ノ補充ヲ請求スルコトヲ得
第二百四十七条 記入ノ抹殺又ハ減少ハ確定判決ニ依ルニ非サレハ之ヲ為スコトヲ得ス又証書ヲ以テスルニ非サレハ債権者之ヲ承諾スルコトヲ得ス
第二百四十八条 任意ノ抹殺又ハ減少カ債務ノ消滅ニ基クトキハ其抹殺又ハ減少ヲ承諾スルニハ債権者其債務ノ弁済ヲ受ケ又ハ之ヲ追認スルノ能力ヲ有スルヲ以テ足レリトス
抹殺カ右ノ外第二百三十八条ニ記載シタル原因ノ一ニ基クトキハ債権者和解スルノ能力ヲ有スルコトヲ要ス
又抹殺又ハ減少カ抵当ヲ無償ニテ抛棄スルノ性質ヲ有スルトキハ債権者無償ニテ債権ヲ処分スルノ能力ヲ有スルコトヲ要ス
第二百四十九条 記入ノ抹殺又ハ減少ヲ承諾スル為メノ委任ハ証書ヲ以テ之ヲ与フルコトヲ要ス
然レトモ抹殺又ハ減少カ債務ノ消滅ニ基クトキハ債務者ノ免責ヲ承諾スルノ権限ヲ有シタル代理人ニ於テ其抹殺又ハ減少ヲ承諾スルコトヲ得
和解又ハ無償ノ抛棄ニ付テハ委任ハ明示タルコトヲ要ス
第二百五十条 抹殺又ハ減少ヲ為スニハ其合意又ハ判決ヲ記入ノ縁辺ニ附記スルコトヲ要ス
登記官吏ハ証書ノ正本又ハ判決書ノ公正ナル謄本ヲ受取リタル上ニ非サレハ右ノ附記ヲ為スコトヲ得ス但判決書ノ謄本ヲ差出ス場合ニ於テハ其判決ノ確定ト為リタル旨ヲ裁判所書記ノ証記シタルコトヲ要ス
第二百二十五条末項及ヒ第三百七条ハ登記官吏ノ拒絶及ヒ其責任ニ之ヲ適用ス
第二百五十一条 抹殺若クハ減少ヲ後日ノ判決又ハ債務者トノ合意ニテ銷除若クハ解除シタルトキハ其判決又ハ合意ヲ更ニ記入シ又ハ前記入ノ縁辺ニ附記ス此場合ニ於テハ前記入ハ前債権者ノ為メ其効力ヲ回復ス然レトモ抹殺若クハ減少ノ後ニ於テ不動産ニ付キ権利ヲ取得シ抵当ノ復旧ノ公示前ニ其権利ヲ記入シタル第三者ニハ此記入ヲ以テ対抗スルコトヲ得ス
第二百五十二条 記入、更新、抹殺又ハ減少ニ訛誤又ハ脱漏アルモ此カ為メ銷除ヲ為スニ足ラサルトキハ当事者ノ協議又ハ判決ヲ以テ正誤ヲ為ス
第四節 債権者間ノ抵当ノ効力及ヒ順位
第二百五十三条 凡ソ不動産ニ付キ記入シタル抵当債権者ハ無特権債権者ニ先タチ其不動産ノ代価ノ配当ニ有益ニ加入スルコトヲ得
法律上、合意上又ハ遺言上ノ抵当ヲ有スル数人ノ債権者間ニ於テハ其配当加入ノ順位ハ数箇ノ記入ヲ同日ニ為シタルトキト雖モ其記入ノ前後ニ因リテ之ヲ定ム但登記官吏ノ第二百二十八条ノ規定ヲ遵守セサル場合ニ於テハ之ニ対スル責任ノ訴権ヲ妨ケス
第二百五十四条 記入ハ掲載シタル利息及ヒ定期ノ附従物ニ其経過シタル最後ノ二个年分ニ限リ主タル債権ト同一ノ順位ヲ得セシム但二个年以外ノ利息及ヒ附従物ノ為メ債権者ノ日後記入ヲ為スノ権利ヲ妨ケス然レトモ此記入ハ其日附ニ於テノミ効力ヲ生スルモノトス
第二百五十五条 抵当ノ順位ハ債権カ条件附ナルトキ又ハ信用ヲ開キテ為ス貸付ノ如ク漸次ノ支払ヨリ生スルトキト雖モ亦記入ニ因リテ之ヲ定ム
第二百五十六条 債権者カ数箇ノ不動産ニ付キ抵当ヲ有シ其各箇ノ代価カ同時ニ清算アリシトキハ其債権ハ総不動産ノ価額ノ割合ニ応シテ之ヲ分配ス可シ
漸次ノ清算ノ場合ニ於テ右ノ債権者カ不動産中ノ一箇ノ代価ニ因リテ全ク弁済ヲ受ケ此一箇ノ不動産ニ付キ其債権者ノ次ニ抵当ヲ有スル一人又ハ数人ノ債権者ノ為メニ損失ノ生スルトキハ其一人又ハ数人ノ債権者ハ他ノ各不動産ニ付テハ其己レニ先タチタル債権ニ於ケル其各不動産ノ分担部分ニ限リ自己ノ債権ノ為メ其相互ノ順位ヲ以テ右弁済ヲ受ケタル債権者ノ抵当ニ当然代位ス
第二百五十七条 前条ノ代位ハ原債権者ニ次テ右各不動産ニ付キ記入ヲ為シタル債権者ニ対シテ其効ヲ生ス
右ノ代位者カ記入ノ縁辺ニ其代位ヲ附記シタルトキハ其代位者ヲ順序配当手続中ニ加ハラシムルコトヲ要シ且其承諾アルニ非サレハ何等ノ抹殺又ハ減少ヲモ為スコトヲ得ス
若シ右ノ不動産ニ付キ原債権者ノ抵当ノ記入ナキトキハ代位者其記入ヲ為シ且右ト同一ノ目的ニテ其縁辺附記ヲ為スコトヲ得
第二百五十八条 凡ソ債権ヲ処分スルノ能力アル抵当債権者ハ同一債務者ノ他ノ債権者ノ利益ニ於テ自己ノ抵当又ハ其順位ノミヲ抛棄スルコトヲ得但財産編第五百条及ヒ第五百三条ニ於テ更改ニ関シ規定シタルモノヲ妨ケス
若シ抵当債権ヲ数次ニ数人ニ対シ譲渡、抛棄又ハ代位ノ目的ト為セシトキハ優先権ハ承権人中記入ノ縁辺ニ自己ノ権利ノ設定証書ヲ附記シ又ハ記入ノ有ラサリシトキハ之ヲ為シテ其取得ヲ第一ニ公示シタル者ニ属ス
第二百五十九条 右ノ外第百九十条ノ規定ハ前二条ノ場合ニ之ヲ適用ス
第二百六十条 抵当債権者又ハ無特権債権者ハ記入ナキ抵当ヲ知リテ之ヲ自認シタリト雖モ記入ノ欠欠ヲ利唱スルノ権利ヲ失ハス
第二百六十一条 不動産ノ売却代価ヲ以テ全部ノ弁済ヲ受ケサル抵当債権者ハ其残額ニ付テハ無特権債権者タリ
若シ不動産ノ売却ニ先タチテ動産有価物ノ配当ヲ為ストキハ抵当債権者ハ其債権全額ノ為メ無特権債権者トシテ仮ニ其配当ニ加入ス
其後ニ至リ抵当不動産ノ代価ノ配当アルトキハ抵当債権者ハ動産有価物ニ付キ何等ノ弁済ヲモ受ケサリシカ如ク其配当ニ加入ス然レトモ此配当ニ於テ全ク弁済ヲ受ク可キ者ハ動産ノ配当ニテ受取リタル金額ヲ扣除スルニ非サレハ其抵当ノ配当額ヲ受取ルコトヲ得ス其扣除シタル金額ハ動産財団中ニ之ヲ返還ス
不動産ノ代価ノ配当ニ於テ一分ノミノ弁済ヲ受クルコトヲ得ヘキ者ニ付テハ配当ニ加ハルコトヲ得サリシ残額ニ従ヒ其動産財団ニ対スル権利ヲ定ム但此割合外ニ受取リタルモノハ其抵当ノ配当額中ヨリ扣除シ之ヲ動産財団中ニ返還ス
右ノ返還金額ハ純粋ノ無特権債権者ト有益ニ配当ニ加入スルヲ得サルカ又ハ債権ノ一分ノミニ付キ之ニ加入シタル抵当債権者トノ間ニ於テ更ニ之ヲ配当ス
第五節 第三所持者ニ対スル抵当ノ効力
総則
第二百六十二条 抵当不動産カ譲渡サレ又ハ用益権其他ノ物権ヲ負担シタルトキハ其証書ノ登記前ニ記入ヲ為シタル抵当債権者ハ第三取得者ニ対シ債務ノ弁済ヲ請求スルノ権利ヲ保有シ又此不動産ノ売却代価ヲ以テ弁済ヲ受クル為メ其不動産ノ徴収ヲ訴追スルノ権利ヲ附従ニテ保有ス
然レトモ財産編第百十九条及ヒ第百二十条ニ規定シタル期間ヲ以テ為シ又ハ更新シタル賃貸借ハ抵当債権者之ヲ遵守スルコトヲ要ス
第二百六十三条 抵当カ所有権ノ支分ニ存シ債務者其権利ヲ抛棄シタルトキハ其抛棄ノ登記前ニ記入ヲ為シタル債権者ハ其抛棄ニ拘ハラス追及権ヲ保有ス
第二百六十四条 公正証書ヲ以テ設定シタル抵当ハ其不動産ヲ差押ヘ之ヲ売却セシメタル無特権債権者ニハ競落ノ登記前ニ其記入ヲ為シタルトキハ之ヲ以テ対抗スルコトヲ得但第二百二十条ニ掲ケタル二箇ノ場合ニ於テ為セル記入ノ無効タルコトヲ妨ケス
第二百六十五条 第三所持者ノ破産、無資力又ハ死亡ハ其取得証書ノ登記アルマテハ抵当記入ノ妨碍ト為ラス
第二百六十六条 第三所持者ハ場合ニ従ヒテ左ノ方法ニ依ルコトヲ得
第一 抵当債務ヲ弁済スルコト
第二 滌除スルコト
第三 財産検索ノ抗弁ヲ以テ対抗スルコト
第四 不動産ヲ委棄スルコト
第五 所有権徴収ヲ受クルコト
第一款 抵当債務ノ弁済
第二百六十七条 第三所持者ハ抵当債務ノ満期ト為ルニ従ヒ之ヲ弁済スルニ於テハ所有権徴収又ハ妨碍ヲ受クルコト無シ
第二百六十八条 第三所持者ハ債務ノ全部又ハ一分ヲ弁済シタルトキハ財産編第四百八十二条第一号第四百八十三条第四号及ヒ第五号ニ従ヒ其弁済ヲ得タル債権者ニ属スル他ノ抵当、担保及ヒ利益ニ代位ス
又第三所持者ハ其弁済ヲ得サリシ債権者ヨリ所有権徴収ノ訴追ヲ受クルコト有ル可キ場合ノ為メ自己ノ所持セル不動産ノ負担スル抵当ニ付キ弁済ヲ得タル債権者ニ未定ニテ代位ス
第二款 滌除
第二百六十九条 第三所持者ハ記入シタル総テノ抵当債務ヲ弁済セサルモ債権者ニ其記入ノ順序ニ従ヒ不動産ノ取得代価、其評価若クハ之ニ超ユル金額ヲ弁済シ又ハ債権者ノ為メニ之ヲ供託シテ不動産ノ負担ヲ免カレシムルコトヲ得但下ニ規定セル如キ提供及ヒ滌除ノ手続ヲ為シタル後債権者ノ明示又ハ黙示ノ承諾アリタルコトヲ要ス
第二百七十条 停止条件附ニテ不動産ヲ取得シタル者ハ条件ノ成就ニ因リテ其権利ノ定マラサル間ハ滌除スルコトヲ得ス
解除条件附ニテ取得シタル者ハ条件ノ到来セサルニ因リテ其権利ノ定マル前ト雖モ滌除スルコトヲ得
此場合ニ於テ第三所持者ノ提供カ承諾ヲ得タルモ其金額ハ抵当債務ヲ全ク弁済スルニ足ラスシテ其抵当ヲ抹殺シタル後第三所持者ノ取得カ条件ノ到来ニ因リテ解除スルニ於テハ弁済ヲ得スシテ抹殺ヲ受ケタル抵当債権者ノ記入ハ第二百五十一条ニ従ヒテ之ヲ回復ス
又右ノ場合ニ於テ提供カ承諾ヲ得スシテ下ニ規定セル如ク不動産ヲ競売ニ付シタルトキハ競落ハ第三所持者ノ為メ宣告アリタルト其他ノ者ノ為メ宣告アリタルトヲ問ハス以後解除条件ヲ免カルヽモノトス
第二百七十一条 抵当ヲ滌除スルノ権利ハ第三所持者ニシテ主タル債務者ト為リ又ハ保証人ト為リテ自身ニテ抵当債務ノ責ニ任スル者ニ属セス
右ノ権利ハ債務者ノ相続人ニシテ其債務ノ自己ノ部分ノミヲ弁済シタル者ニ属セス
又右ノ権利ハ他人ノ債務ノ為メ自己ノ財産ヲ抵当ト為シタル者又ハ其相続人ニ属セス
第二百七十二条 抵当債権者ヲ参加セシメタル総テノ公売ニ付テハ滌除ヲ為スノ限ニ在ラス
公用徴収ニ付テモ亦同シ
右ハ抵当債権者ノ其順位ヲ以テ競落代価又ハ徴収償金ノ配当ニ加入スルノ権利ヲ妨ケス
第二百七十三条 使用権、住居権及ヒ地役権ハ滌除ヲ為スノ限ニ在ラス債務者抵当不動産ニ此等ノ権利ヲ負担セシメタルトキハ抵当債権者ハ其権利ヲ斟酌セスシテ債務者ニ対シ不動産ノ売却ヲ訴追スルコトヲ得
債務者ノ第二百六十二条第二項ニ記載シタル制限ヲ超エテ為シタル賃貸借ニ付テモ亦同シ
第二百七十四条 第三所持者ハ債権者ヨリ訴追ヲ受ケサル間ハ何時ニテモ滌除スルコトヲ得又弁済スルヤ不動産ヲ委棄スルヤノ催告ヲ受ケタル後一个月内ニ滌除スルコトヲ得但此ニ違フトキハ其権ヲ失フ
然レトモ右ノ失権ハ当然生セス裁判所ニ之ヲ請求スルコトヲ要ス但裁判所ハ第三所持者カ正当ノ障碍アリシコトヲ証シ且債権者ノ其遅延ノ為メニ現実ノ損害ヲ受ケサル可キニ於テハ失権ヲ宣告セサルコトヲ得
又債権者ヨリ第二百七十九条第二号ニ規定シタル一个月ノ期間ニ失権ヲ請求セサルニ於テハ失権ヲ宣告スルコトヲ得ス
第二百七十五条 第三所持者ハ滌除ノ準備トシテ自己ノ権利ヲ公示シ且第百八十四条及ヒ第百八十五条ニ従ヒ譲渡人ノ先取特権ヲ公示スル為メ自己ノ取得証書ヲ登記スルコトヲ要ス
右ノ後第三所持者ハ其不動産ノ負担セル先取特権又ハ抵当ノ目録ヲ登記官吏ニ要求ス
第二百七十六条 上ニ記載シタル一个月ノ期間ニ第三所持者ハ記入シタル各債権者ト第百二十三条、第百八十三条及ヒ第百八十四条ニ従ヒ登記カ記入ニ同シキ効力ヲ有スル債権者トニ左ノ諸件ヲ告知スルコトヲ要ス
第一 取得証書ノ旨趣、其日附及ヒ登記ノ日附、譲渡人及ヒ取得者ノ氏名、職業、住所、譲受ケタル不動産ノ性質、其所在地、譲渡ノ代価及ヒ其負担ヲ指示スル要領書但交換、贈与若クハ遺贈ニ因リテ権利ヲ取得シタルトキハ其評価ヲ指示ス可シ
第二 各記入ノ日附、其帳簿ノ葉数、其債権者ノ氏名、住所及ヒ主タル債権トシテ記入シタル金額ヲ明示スル記入表
第三 第三所持者ハ右ノ債権者カ法律ニ従ヒ且一个月ノ期間ニ増価競売ヲ求メサルニ於テハ満期、未満期又ハ条件附ノ債権ヲ区別セスシテ各債権者ノ記入ノ順序ニ従ヒ之ニ不動産ノ代価、其評価若クハ之ニ超ユル金額ノ弁済又ハ其債権者ノ為メニ金額ノ供託ヲ為サントスルノ提供
第二百七十七条 記入シタル債権者ノ中ニ先取特権ヲ有スル譲渡人又ハ分割者アルトキハ前条第三号ニ定メタル提供ニハ此債権者ヲシテ同一ノ期間ニ其解除訴権ヲ行ハント欲スル旨ヲ述ヘシムル為メノ催告ヲ添フルコトヲ要ス但第百八十六条及ヒ第百八十七条ノ明文ニ因リ法律上ノ抵当ニ変性シタル先取特権ヲ有スル者ニ付テモ亦同シ
第二百七十八条 譲渡証書中ニ抵当ト為シ又ハ為サヽル財産アルトキハ取得者ハ抵当財産ノ為メニノミ提供ヲ為スコトヲ得又増価競売ハ此提供ニ基キ之ヲ為スコトヲ要ス
第二百七十九条 凡ソ記入シタル債権者ニシテ上ニ定メタル提供ヲ受諾セサル者ハ左ノ方式、期間及ヒ条件ヲ以テ抵当財産ノ競売ヲ要求スルコトヲ要ス
第一 其要求ニハ提供金額ノ上少ナクトモ十分一ノ増価ニテ買受クルコトト其増額シタル代価ノ全部及ヒ費用ノ為メ十分ナル保証人又ハ担保ヲ供スル旨ノ陳述トヲ添フルコトヲ要ス若シ此ニ違フトキハ其要求ハ無効タリ但此場合ニ於テハ総テノ正本ニ要求者又ハ其特別代理人ノ署名アルコトヲ要ス
第二 右ノ要求ハ提供告知ヨリ一个月内ニ第三所持者ニ之ヲ送達スルコトヲ要ス若シ此ニ違フトキハ其要求ハ亦無効タリ
第三 右ノ期間ニ於テ債務者タルト否トヲ問ハス前所有者ニ右ニ同シキ送達ヲ為スコトヲ要ス
第四 主タル債務者ニ非サル者カ抵当ヲ設定シタルトキモ亦同一ノ期間ニ於テ其債務者ニ送達ヲ為スコトヲ要ス
第二百八十条 譲渡人又ハ分割者ニシテ其解除訴権ノ行使ヲ留保セスシテ前条ニ規定シタル如ク増価競売ヲ要求シタル者ハ其訴権ヲ抛棄シタルモノト看做ス
若シ譲渡人又ハ分割者カ右ノ訴権ヲ保存セント欲スルトキハ増価競売ノ為メ許与セラレタル期間ト同一ノ期間ニ第三所持者ニ其旨ヲ告知スルコトヲ要ス若シ此ニ違フトキハ無効タリ但主タル債務者ナル前所有者ニ対シテ此ニ同シキ告知ヲ為スコトヲ妨ケス
第二百八十一条 定マリタル方式及ヒ期間ヲ以テ増価競売ノ告知アリタルトキハ其競売ノ要求者ハ他ノ記入シタル債権者ノ承諾ナクシテ競売ヲ言消スコトヲ得ス其債権者ハ此増価競売ノ実行ヲ要求スルコトヲ得
若シ競売ノ実行アリタルトキハ第二百九十二条以下ヲ適用ス
第二百八十二条 債権者ノ何人ヨリモ有効ニ競売ヲ求メサリシトキハ不動産ノ滌除ハ債権者間ノ熟議上若クハ裁判上ノ順序ヲ以テスル弁済ニ因リ又ハ債権者ノ名ヲ以テスル供託ニ因リテ成ル但此供託ニ付テハ予メ実物提供ヲ為スコトヲ要セス
此場合ニ於テ総テノ抵当ハ之ヲ抹殺ス其元資ノ不足シタルモノト雖モ亦同シ
第二百八十三条 右ノ如ク滌除ヲ実行シタル後第三所持者ハ左ノ区別ニ従ヒ其譲渡人ニ対シテ担保ノ求償権ヲ有ス
第一 売買ノ場合ニ於テハ其売買代価外ニ提供シ及ヒ弁済シタルモノヽ為メ
第二 交換其他ノ有償契約ノ場合ニ於テハ譲渡人ニ対スル自己ノ義務外ニ弁済シタルモノヽ為メ但自己ノ供給シタル対価物ノ返還ヲ受ケサルトキニ限ル
第三 贈与又ハ遺贈ノ場合ニ於テハ贈与者又ハ遺言者ノ免責ニ付キ弁済シタルモノヽ為メ
第四 総テノ場合ニ於テ自己ノ負担シタル滌除手続ノ費用ノ為メ
第三款 財産検索ノ抗弁
第二百八十四条 自身ニテ且主トシテ抵当債務ノ責ニ任セサル第三所持者ハ訴追債権者ニ対シ同一債務ノ為メニ抵当ト為リタル他ノ不動産ヲ予メ検索シテ之ヲ売却セシメント求ムルコトヲ得但此カ為メニハ左ノ諸件ヲ具備スルコトヲ要ス
第一 其不動産カ弁済ノ有ル可キ場所ノ控訴院ノ管轄内ニ在ルコト
第二 其不動産カ猶ホ主タル債務者ニ属スルコト
第三 其不動産カ争ニ係ラサルコト
第四 其不動産カ債権者ノ記入ノ順位ト其価額トヲ斟酌シテ之ニ全部ノ弁済ヲ得セシムルニ不十分ナルノ明白ナラサルコト
右ノ抗弁ハ訴追ノ起初ニ之ヲ提出スルコトヲ要ス
第二百八十五条 第三所持者ハ第二十条乃至第二十三条ニ従ヒ保証人ノ分限ヲ以テ己レニ属スル検索ノ利益ヲ抛棄シタルトキト雖モ抵当財産検索ノ抗弁ノ利益ヲ失ハス
第二百八十六条 他人ノ債務ノ為メ自己ノ不動産ヲ抵当ト為シタル者及ヒ其相続人ハ検索ノ抗弁ヲ以テ対抗スルコトヲ得
主タル債務者ノ連合債務者又ハ相続人ノ中ニテ訴追前ニ債務ニ於ケル自己ノ部分ヲ弁済シタル者ニ付テモ亦同シ
第四款 委棄
第二百八十七条 第三所持者ハ所有権徴収ノ手続中何時ニテモ訴追ノ目的タル不動産ヲ委棄スルコトヲ得其委棄ニ因リ第三所持者ハ訴追債権者ニ所持ノミヲ委付シ不動産ノ所有権ト其法定ノ占有トヲ保存シテ其危険ヲ担任ス
第二百八十八条 主タル債務者又ハ保証人トシテ自身ニ債務ヲ負担シタルモノニ非サル第三所持者ノミ委棄ヲ為スコトヲ得
債務者ノ連合債務者又ハ相続人ノ中ニテ債務ニ於ケル自己ノ部分ヲ弁済シタル者及ヒ供物保証人ハ訴追中ト雖モ委棄ヲ為スコトヲ得
第二百八十九条 有効ニ委棄ヲ為スニハ自身ナルト代人ノ資格ナルトヲ問ハス所有権徴収ノ訴追ニ被告トシテ出頭スルノ能力ヲ有スルヲ以テ足レリトス
第二百九十条 委棄ハ委棄者又ハ其部理代人抵当財産所在地ノ裁判所ノ書記局ニ於テ之ヲ陳述シ其陳述書ニ署名シテ訴追債権者ニ告知スルコトヲ要ス
裁判所ハ訴追債権者又ハ第三所持者其他ノ利害関係人ノ求ニ因リテ委棄ニ付テノ管財人ヲ選任ス但所有権徴収ノ訴追ハ此管財人ニ対シテ継続ス
第二百九十一条 第三所持者又ハ其代人ハ競落アルマテハ何時ニテモ委棄ヲ為シタルト同一ノ方式ヲ以テ其委棄ヲ言消スコトヲ得此場合ニ於テハ訴追債権者ニ対スル総債務ト其時マテノ費用トヲ一个月内ニ弁済シ又ハ供託スルコトヲ要ス但他ノ債権者ノ訴追ノ権利ヲ妨ケス又滌除ノ期間カ経過セサルニ於テハ其債権者ニ対スル滌除ノ権利ヲモ妨ケス
第五款 競売及ヒ所有権徴収
第二百九十二条 第三所持者カ弁済ヲ為サス委棄ヲ為サス又滌除ヲ提出セサルトキ又ハ滌除ノ目的ニテ為シタル提供ノ受諾ヲ得サルニ因リテ増価競売ノ求アリタルトキハ民事訴訟法ニ規定シタル方式ト公示トヲ以テ不動産ヲ競売ニ付ス
第二百九十三条 譲渡人又ハ分割者カ第二百八十条ノ明文ニ従ヒ其先取特権又ハ法律上ノ抵当権ヲ閣キテ其解除訴権ヲ行ハント欲スル旨ヲ陳述シタルトキハ競売前ニ其訴ヲ為スコトヲ要ス但第三所持者ノ要求ニ因リテ裁判所カ此事ニ付キ定メタル期間ヲ超ユルコトヲ得ス
第二百九十四条 総テノ場合ニ於テ解除ノ請求ナク又ハ其認許ナキトキハ第三所持者ハ競売ノ際競買人ト為ルコトヲ得
第三所持者ノ利益ニ於テ競落ヲ宣告シタルトキハ其判決ハ原証書確認ノ証書トシテ其原証書ノ登記ノ縁辺ニ之ヲ附記スルノミ
第二百九十五条 第三所持者ニ非サル者ノ利益ニ於テ競落ヲ宣告シタルトキハ其判決ハ所有権移転ノ証書トシテ特ニ之ヲ登記シ且前登記ノ縁辺ニ之ヲ附記ス
第二百九十六条 前条ノ場合ニ於テハ競落ノ不動産ト第三所持者ニ属スル他ノ不動産トノ間ニ成立セシ地役権ハ一旦混同シタルモ働方及ヒ受方ニテ再生シ其混同ハ解除セラル
第三所持者ニ其取得前ヨリ属セシ用益権、賃借権其他ノ所有権ノ支分ニ付テモ亦同シ
第二百九十七条 競落ノ孰レノ場合ニ於テモ第三所持者カ競落ノ不動産ニ付キ記入シタル抵当ヲ有セシトキハ其順位ニテ配当ニ加入ス
第二百九十八条 各債権者ニ其記入ノ順序ニ従ヒテ競落代価ヲ弁済シ尚ホ剰余アルトキハ其剰余ハ競落人タルト否トヲ問ハス第三所持者ニ属ス
若シ競落前ニ第三所持者ノ債権者カ右ノ不動産ニ付キ抵当ノ記入ヲ為シタルトキハ其債権者ハ前所有者ニ対シテ記入シタル債権者ニ次キ配当ニ加入ス
第二百九十九条 第三所持者カ抵当不動産ノ占有中其所為ニ因リテ之ヲ毀損シ又ハ之ニ必要若クハ有益ノ出費ヲ為シタルトキハ第三所持者ト抵当債権者トノ間ニ於テ其計算ヲ為ス
第三百条 第三所持者ハ委棄スルヤ弁済スルヤノ催告ヲ受ケタル後ニ非サレハ債権者ニ対シテ果実ノ計算ヲ為スコトヲ要セス
第三百一条 如何ナル場合ニ於テモ競落代価ノ弁済又ハ其供託ノ後ハ記入シタル総抵当ハ之ヲ抹殺シ不動産ハ滌除セラル其元資ノ不足シタル抵当モ亦同シ
第三百二条 競落ノ後第三所持者ハ左ノ如ク譲渡人ニ対シテ担保ノ求償権ヲ有ス
第三所持者カ競落人ト為リタルトキハ第二百八十三条ニ記載シタル如ク賠償ヲ受ク
外人ノ利益ニ於テ競落ノ宣告アリタルトキハ第三所持者ハ普通法ニ依リテ追奪担保ニ付テノ権利ヲ有ス但左ノ区別ニ従フ
第一 売買其他ノ有償名義ノ取得ノ場合ニ於テ競落代価カ取得ノ原代価又ハ対価ヲ超過シタルトキハ此差額ハ第三所持者カ権利ヲ有スル損害賠償中ニ増価トシテ之ヲ加フ
第二 贈与又ハ遺贈ノ場合ニ於テハ第三所持者ハ競落カ贈与者若クハ遺言者又ハ其相続人ヲシテ抵当債務ヲ免カレシメタル限度ニ非サレハ贈与者若クハ遺言者又ハ其相続人ヨリ賠償ヲ受ケス
手続ノ費用ハ競落人ヨリ之ヲ第三所持者ニ弁償ス
第六節 登記官吏ノ責任
第三百三条 第二百二十八条ニ定メタル受取証ニ付キ記載シタルモノヽ外登記並ニ記入ノ帳簿ノ数、性質、記載ノ方法及ヒ登記官吏ノ職務ニ違ヒタル場合ニ於テ言渡サル可キ罰金ハ特別ノ規則ヲ以テ之ヲ定ム
第三百四条 登記官吏ノ民事上ノ責任ニ関スル財産編第三百五十五条ハ抵当記入ノ脱漏又ハ訛誤ニ之ヲ適用ス
第三百五条 登記官吏カ第三所持者ノ証書登記ノ後之ニ交付シタル認証書中一箇又ハ数箇ノ記入ヲ脱漏シ此脱漏ノ為メ記入債権者カ滌除ノ提供又ハ競落ノ手続ニ加ハラサリシトキト雖モ猶ホ不動産ノ抵当ハ滌除セラル
第三百六条 滌除ノ提供ニ対スル増価競売ノ為メ第二百八十条ニ定メタル時期ノ満了セサル間ハ脱漏セラレタル債権者ハ其脱漏ヲ第三所持者ニ告知シ之ニ提供ノ通示ヲ求メ増価競売ヲ要求シ又所有権徴収ノ手続カ終了セサルトキハ之ニ加ハルコトヲ得然レトモ此カ為メ其手続ヲ遅延スルコトヲ得ス
如何ナル場合ニ於テモ右ノ債権者ハ熟議上又ハ裁判上ニテ発開シタル順序配当手続ノ閉鎖セサル間ハ之ニ加ハルコトヲ得
右ハ前記ノ債権者カ脱漏ニ因リテ損害ヲ受ケタルコトヲ疏明スルニ於テハ登記官吏ニ対スル求償権ヲ妨ケス
登記官吏ハ主タル債務者又ハ其保証人ノ免責ノ為メ右ノ求償ニ因リテ弁済シタルモノニ付キ之ニ対シテ求償権ヲ有ス
第三百七条 登記官吏ハ登記、記入又ハ縁辺附記ノ要求ヲ拒ムコトヲ得ス但其要求カ合法ナラサルトキ又ハ法律ノ要スル疏明書類ニ録製費用其他登記官吏ノ収受ス可キ費用ヲ添ヘテ差出サヽルトキハ此限ニ在ラス
拒絶ノ場合ニ於テ登記官吏ハ要求ヲ受ケタルコトヲ認ムル書面ニ之ヲ拒絶シタル理由ヲ記載シテ交付ス可シ
右書類ノ交付アリタル上ハ利害関係人ハ其地ノ裁判所ニ抗告スルコトヲ得
第七節 抵当ノ消滅
第三百八条 抵当ハ左ノ諸件ニ因リテ消滅ス
第一 主タル義務全部ノ確定ノ消滅但更改ノ場合ニ付キ財産編第五百三条ニ記載シタルモノヲ妨ケス
第二 債権者ノ抵当ノ抛棄
第三 時効
第四 滌除但債権者提供ヲ受諾シ且第二百八十二条ニ従ヒテ提供金額ノ弁済又ハ供託アリタルトキ
第五 競落但第二百七十二条及ヒ第三百一条ニ従ヒテ競落代価ノ弁済又ハ供託アリタルトキ
第六 抵当不動産ノ全部ノ滅失但第二百七条ニ従ヒテ債権者ノ権利カ其滅失ヨリ生ス可キ賠償ニ移転スルコトヲ妨ケス
第七 公用徴収但抵当債権者ニ其償金ヲ弁済スルコトヲ妨ケス
第三百九条 義務ノ消滅カ裁判上ニテ認メラレタル原因ニ由リテ取消サレタルトキハ記入ヲ抹殺シタリト雖モ抵当ハ其原順位ニ復ス
然レトモ其抵当ハ抹殺ノ後新記入ヲ為ス前又ハ記入ヲ復シタル判決ヲ原記入ノ縁辺ニ附記スル前ニ記入ヲ為シタル債権者ヲ害スルコトヲ得ス
第三百十条 抵当ノ抛棄ハ場合ニ従ヒ有償又ハ無償ノ名義ニテ債権ヲ処分スルノ能力ヲ有スル債権者ニ非サレハ之ヲ為スコトヲ得ス
債権者其抵当順位ノミノ抛棄ヲ為ストキモ亦同シ
抵当又ハ順位ノ抛棄ハ黙示タルコトヲ得
債権者カ譲渡人ト共ニ抵当不動産ノ譲渡ニ参加シタルトキハ其参加カ法律上或ル特別ノ名義ニテ要セラレサル場合ニ限リ追及権ノミニ関シテ其抵当ヲ抛棄シタリト看做サル
第三百十一条 抵当ノ時効ハ不動産カ債務者ノ資産中ニ存スル場合ニ於テハ債権ノ時効ト同時ニ非サレハ成就セス
右ノ場合ニ於テ債権ニ関シ時効ノ進行ヲ中断スル行為及ヒ之ヲ停止スル原因ハ抵当ニ関シテ同一ノ効力ヲ生ス
第三百十二条 抵当不動産ノ所有者タル債務者カ其不動産ヲ譲渡シテ取得者又ハ其承継人カ之ヲ占有スルトキハ記入シタル抵当ハ抵当上ノ訴訟ヨリ生スル妨碍ナキニ於テハ取得者カ其証書ヲ登記シタル日ヨリ起算シ三十个年ノ時効ニ因リテノミ消滅ス但債権カ免責時効ニ因リテ其前ニ消滅ス可キ場合ヲ妨ケス
第三百十三条 真ノ所有者ニ非サル者カ不動産ヲ譲渡シタルトキハ占有者ハ其善意ナルト悪意ナルトニ従ヒ所有者ニ対シテ時効ヲ得ル為メニ必要ナル時間ノ経過ニ因リ記入シタル抵当債権者ニ対シテ時効ヲ取得ス
無名義ニテ不動産ヲ占有スル者ニ付テモ亦同シ
第三百十四条 第三所持者ノ為メノ抵当消滅ノ時効ハ記入ノ更新ニ因リテ中断セラレス然レトモ其時効ハ占有者ノ任意ノ追認及ヒ第二百七十四条ニ規定シタル如ク其占有者ニ為シタル催告其他総テ抵当権ニ効力ヲ与フル行為ニ因リテノミ中断セラル
右ノ時効ハ債権ニ附着スル期限又ハ条件ニ因リテ停止セラレス