陸軍予備後備将校補充条例
法令番号: 勅令第六十九號
公布年月日: 明治22年5月22日
法令の形式: 勅令
朕陸軍豫備後備將校補充條例ヲ裁可シ玆ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十二年五月二十一日
內閣總理大臣 伯爵 黑田淸隆
陸軍大臣 伯爵 大山巖
勅令第六十九號
陸軍豫備後備將校補充條例
第一條 陸軍豫備將校同相當官ノ補充ハ左ニ揭クル者ヲ以テス
第一 一年志願兵ニシテ一箇年服役ノ後終末試驗及第證書ヲ得テ豫備役ニ入ル者
第二 年齡滿限ニ至ラスシテ現役ヲ退キタル將校同相當官
第二條 第一條第一ニ當ル者ハ豫備士官ト爲ス可キ爲メ現役ヲ終リタル次年ニ於テ尠クモ三箇月間原隊ニ於テ勤務演習ヲ爲サシム但志願軍吏生志願軍醫生及志願藥劑生ノ勤務演習ハ原所屬ニ於テスルト其他ニ於テスルトハ近衞都督又ハ師團長ノ認可ヲ得テ近衞又ハ師團監督部長若クハ軍醫長之ヲ定ム
第三條 第二條ノ勤務演習ハ本人ノ冀望ニ由リ他隊ニ於テスルト勤務演習ノ期ヲ翌年ニ延ストハ近衞都督又ハ師團長ノ許可ヲ受ク可キモノトス但他ノ師團ノ某隊ニ於テ勤務演習ヲ爲サント欲スル者ハ近衞都督又ハ師團長ヨリ他ノ師團長ニ照會ス可シ
第四條 勤務演習ノ時期ハ步兵ニ在テハ近衞都督又ハ師團長他兵ニ在テハ各兵監志願軍吏生志願軍醫生及志願藥劑生ニ在テハ近衞又ハ師團監督部長若クハ軍醫長之ヲ定メ志願獸醫生ニ在テハ本人ノ便宜ヲ斟酌シ原隊ニ於テ之ヲ定ム
第五條 勤務演習ニ召集シタル者ハ其演習ノ初ニ於テ豫備見習士官ト爲シ現役見習士官ト同一ノ取扱及敎育ヲ受ケシム但志願軍吏生志願軍醫生志願藥劑生及志願獸醫生ハ各其專門ノ勤務ニ服セシム
第六條 勤務演習ノ終ニ於テ豫備將校試驗ヲ爲シ及第ノ者ヲ士官ニ選擧シ及補任ノコトヲ上申スルハ陸軍各兵科現役士官補充條例第二十九條乃至第三十一條ニ依ル但豫備將校試驗ノ方法ハ近衞都督又ハ師團長之ヲ定ム
志願軍醫生志願藥劑生ハ實地ノ試驗ヲ爲シ其及第者ヲ衞生部士官ニ選擧シ及補任ノコトヲ上申スルハ陸軍衞生部現役士官補充條例第十一條乃至第十四條ニ依ル但選擧會議ニ於テ多數ノ否認者アルトキハ其報吿書ヲ陸軍省醫務局長ニ上申シ醫務局長ハ其理由ヲ具ヘ陸軍大臣ニ進達シ大臣ニ於テ見習士官ノ分限ヲ除クコトヲ裁定ス此裁定ヲ受ケタル者ハ一等看護長又ハ一等調劑手ニ任シ豫備役ニ編入ス
志願軍吏生及志願獸醫生ハ實地ノ試驗ヲ爲シ其及第者ヲ軍吏部又ハ獸醫部士官ニ選擧シ及補任ノコトヲ上申スルハ別ニ定ムル所ニ依ル
第七條 第六條ノ試驗ニ落第シ仍ホ豫備士官タランコトヲ冀望スル者及事故アリテ召集ニ應シ得サリシ者ハ次年ノ勤務演習ニ召集ス
第八條 第六條ノ試驗ニ落第シタル者ハ聯隊長若クハ之ト同等ノ權アル長官ヨリ近衞都督又ハ師團長步兵ハ旅團長ヲ經テニ上申シ許可ヲ得テ豫備見習士官タルノ分限ヲ除キ曹長同相當官若クハ軍曹相當官ニ任ス
第九條 豫備將校同相當官ノ服役期限ハ第一條第一ニ當ル者ハ徵兵令第十一條ニ依リ二箇年トシ第二ニ當ル者ハ現役ニ於テ定メタル年齡定限迄トス
第十條 後備將校同相當官ノ補充ハ左ニ揭クル者ヲ以テス
第一 豫備將校同相當官ヨリ後備籍ニ轉入スル者
第二 年齡滿限ニ至リ現役ヲ退キタル將校同相當官
第十一條 後備將校同相當官ノ服役期限ハ總テ五箇年トス
第十二條 豫備後備將校同相當官ハ現役將校ノ進級停年ニ等シキ年數ヲ超ユルトキハ特ニ進級ノ爲メニスル勤務演習ニ於テ實地ノ技能ヲ査閱シテ進級セシムルコトヲ得其方法ハ別ニ定ムル所ニ依ル
第十三條 豫備後備將校同相當官ハ志願ニ由リ其服役期限ヲ延スコトヲ得
第十四條 豫備後備將校同相當官ノ服役期限既ニ滿ツルト雖モ戰時若クハ事變ニ際スルトキハ其期限ヲ延スコトアル可シ
附 則
第十五條 豫備後備將校同相當官ハ當分豫備後備下士中士官適任證書ヲ所持スル者ヨリ補充スルコトアル可シ
士官適任證書ヲ所持スル者ヲ豫備後備ノ士官ト爲スニハ第一條第一ニ當ル者ノ例ニ依ル其服役期限ハ豫備二箇年後備五箇年トス
第十六條 現今後備軍軀員タル將校同相當官中現役ニ於テ定メタル年齡定限ニ滿タサル者ハ其定限ニ滿ツル迄年齡定限ニ由リ後備軍軀員トナリタル者ハ軀員中ノ年數ヲ通算シ五箇年間又後備軍軀員滿期ノ際志願ニ由リ服役延期中ノ者ハ其期限滿ツル迄後備役ニ服セシム
朕陸軍予備後備将校補充条例ヲ裁可シ茲ニ之ヲ公布セシム
御名御璽
明治二十二年五月二十一日
内閣総理大臣 伯爵 黒田清隆
陸軍大臣 伯爵 大山巌
勅令第六十九号
陸軍予備後備将校補充条例
第一条 陸軍予備将校同相当官ノ補充ハ左ニ掲クル者ヲ以テス
第一 一年志願兵ニシテ一箇年服役ノ後終末試験及第証書ヲ得テ予備役ニ入ル者
第二 年齢満限ニ至ラスシテ現役ヲ退キタル将校同相当官
第二条 第一条第一ニ当ル者ハ予備士官ト為ス可キ為メ現役ヲ終リタル次年ニ於テ尠クモ三箇月間原隊ニ於テ勤務演習ヲ為サシム但志願軍吏生志願軍医生及志願薬剤生ノ勤務演習ハ原所属ニ於テスルト其他ニ於テスルトハ近衛都督又ハ師団長ノ認可ヲ得テ近衛又ハ師団監督部長若クハ軍医長之ヲ定ム
第三条 第二条ノ勤務演習ハ本人ノ冀望ニ由リ他隊ニ於テスルト勤務演習ノ期ヲ翌年ニ延ストハ近衛都督又ハ師団長ノ許可ヲ受ク可キモノトス但他ノ師団ノ某隊ニ於テ勤務演習ヲ為サント欲スル者ハ近衛都督又ハ師団長ヨリ他ノ師団長ニ照会ス可シ
第四条 勤務演習ノ時期ハ歩兵ニ在テハ近衛都督又ハ師団長他兵ニ在テハ各兵監志願軍吏生志願軍医生及志願薬剤生ニ在テハ近衛又ハ師団監督部長若クハ軍医長之ヲ定メ志願獣医生ニ在テハ本人ノ便宜ヲ斟酌シ原隊ニ於テ之ヲ定ム
第五条 勤務演習ニ召集シタル者ハ其演習ノ初ニ於テ予備見習士官ト為シ現役見習士官ト同一ノ取扱及教育ヲ受ケシム但志願軍吏生志願軍医生志願薬剤生及志願獣医生ハ各其専門ノ勤務ニ服セシム
第六条 勤務演習ノ終ニ於テ予備将校試験ヲ為シ及第ノ者ヲ士官ニ選挙シ及補任ノコトヲ上申スルハ陸軍各兵科現役士官補充条例第二十九条乃至第三十一条ニ依ル但予備将校試験ノ方法ハ近衛都督又ハ師団長之ヲ定ム
志願軍医生志願薬剤生ハ実地ノ試験ヲ為シ其及第者ヲ衛生部士官ニ選挙シ及補任ノコトヲ上申スルハ陸軍衛生部現役士官補充条例第十一条乃至第十四条ニ依ル但選挙会議ニ於テ多数ノ否認者アルトキハ其報告書ヲ陸軍省医務局長ニ上申シ医務局長ハ其理由ヲ具ヘ陸軍大臣ニ進達シ大臣ニ於テ見習士官ノ分限ヲ除クコトヲ裁定ス此裁定ヲ受ケタル者ハ一等看護長又ハ一等調剤手ニ任シ予備役ニ編入ス
志願軍吏生及志願獣医生ハ実地ノ試験ヲ為シ其及第者ヲ軍吏部又ハ獣医部士官ニ選挙シ及補任ノコトヲ上申スルハ別ニ定ムル所ニ依ル
第七条 第六条ノ試験ニ落第シ仍ホ予備士官タランコトヲ冀望スル者及事故アリテ召集ニ応シ得サリシ者ハ次年ノ勤務演習ニ召集ス
第八条 第六条ノ試験ニ落第シタル者ハ連隊長若クハ之ト同等ノ権アル長官ヨリ近衛都督又ハ師団長歩兵ハ旅団長ヲ経テニ上申シ許可ヲ得テ予備見習士官タルノ分限ヲ除キ曹長同相当官若クハ軍曹相当官ニ任ス
第九条 予備将校同相当官ノ服役期限ハ第一条第一ニ当ル者ハ徴兵令第十一条ニ依リ二箇年トシ第二ニ当ル者ハ現役ニ於テ定メタル年齢定限迄トス
第十条 後備将校同相当官ノ補充ハ左ニ掲クル者ヲ以テス
第一 予備将校同相当官ヨリ後備籍ニ転入スル者
第二 年齢満限ニ至リ現役ヲ退キタル将校同相当官
第十一条 後備将校同相当官ノ服役期限ハ総テ五箇年トス
第十二条 予備後備将校同相当官ハ現役将校ノ進級停年ニ等シキ年数ヲ超ユルトキハ特ニ進級ノ為メニスル勤務演習ニ於テ実地ノ技能ヲ査閲シテ進級セシムルコトヲ得其方法ハ別ニ定ムル所ニ依ル
第十三条 予備後備将校同相当官ハ志願ニ由リ其服役期限ヲ延スコトヲ得
第十四条 予備後備将校同相当官ノ服役期限既ニ満ツルト雖モ戦時若クハ事変ニ際スルトキハ其期限ヲ延スコトアル可シ
附 則
第十五条 予備後備将校同相当官ハ当分予備後備下士中士官適任証書ヲ所持スル者ヨリ補充スルコトアル可シ
士官適任証書ヲ所持スル者ヲ予備後備ノ士官ト為スニハ第一条第一ニ当ル者ノ例ニ依ル其服役期限ハ予備二箇年後備五箇年トス
第十六条 現今後備軍躯員タル将校同相当官中現役ニ於テ定メタル年齢定限ニ満タサル者ハ其定限ニ満ツル迄年齢定限ニ由リ後備軍躯員トナリタル者ハ躯員中ノ年数ヲ通算シ五箇年間又後備軍躯員満期ノ際志願ニ由リ服役延期中ノ者ハ其期限満ツル迄後備役ニ服セシム