341 日本の一九四六會計年度豫算に關する覺書
一九四六年五月一八日
1. 一九四六年會計年度に對する日本の豫算事項についての日本政府の備忘を送達した外務大臣よりの書翰は、聯合國最高司令官によつて受領された。
2. 一九四六年三月六日附、日本帝國政府宛の最高司令部覺書(SCAPIN―799)に述べられた所謂「最高司令部家族住宅案」が修正された旨、日本政府に通吿する。一九四六會計年度中に約一萬家族の需要を充すやうに、必要な建築資材の生產及び引渡を調整する修正案が現在準備されつつあり、完成と共に日本帝國政府に送附される筈である。この修正は前記覺書に述べられた家族住宅の窮局的要求を取消すものと解されてはならない。
3. 家族及び軍隊住居の建築費は法定價格を嚴密に適用し、日本軍より沒收し已に日本政府に返還されてゐる資材を適當に貸方に記入して再評價すれば、豫算見積は相當大巾に削減し得る筈であることを日本政府に通吿する。これに關聯して指摘せられることは、最近日本の各省代表者によつてなされた軍隊住居建築費の非公式の再評價は、返還された軍在庫資材を考慮外としても、尙ほ本計畫の豫算見積が五四億よりもむしろ三三億に近くなければならないことを示してゐる點である。
4. 所謂最高司令部案に含まれてゐる日本公共事業計畫は、年間百萬乃至百二五萬人を雇傭する企圖のもとに立案されたものである。本計畫は日本國民に對する食糧、衣料及び燃料の供給を增加し、又通貨膨脹對策を設定するために必須のものと考へられる。從つて何等の變更を加へることなく豫算に含められねばならない。
5. 本豫算案が日本の經濟的能力又は生產能力以上のものであるとする議論は根據のないもののやうに思はれる。從つて一九四六會計年度の日本豫算案は、修正された所謂最高司令部案の家族及び軍隊住居の完成に要する資材表に適用された法定價格を基準とする實際の費用を反映し、尙ほ日本政府に返還された在庫資材を貸方に記入する如く修正された上遲滯なく提出されねばならない。