二七一 引揚人中のコレラに對する檢疫措置に關する覺書
一九四六年四月六日
1. 日本帝國政府は中國からの引揚人によつて、コレラが日本に移入されることを防止するため、卽時次に述べる措置を取らねばならない。
2. 中國からの引揚人を收容してゐる船舶で、コレラ患者の乘船なくして到着する場合には次の通り處理すること。
a. 航海に六日以上を要した場合は、總員に對してコレラワクチン一・五ccを接種し陸揚及び處理手續は規定通り實施すること。
b. 中國からの航海日數六日以內の場合は、六日を經過するまで總員を船內に止めコレラに對する身體檢查を行ふこと。患者の發見せられない場合は、前記第二項aに述べられてゐる通り陸揚せしめること。若し患者が發見せられたならば、次に述べる第三項の指示によつて處置すること。
3. コレラ患者を乘せて日本に到着する船舶は、本司令部より別途の指示あるまで、浦賀又は佐世保港のみを使用すること。
a. 船舶は陸岸から十分離して繫留し、陸岸に泳ぎ着く者のないやう、又船舶からの汚物が海岸に打ち上げられることのないやうすること。
b. 最後の患者が發生した日から一四日間、總員を船內に止めておくこと。
c. コレラ患者は特にその目的のために準備された病院船に移されること。病院船が浦賀及び佐世保港に到着するまでは、コレラ患者は收容所にある隔離病舍に收容され、嚴格な隔離處置が維持されねばならない。患者の排泄物の消毒(二%クレゾール液使用)、蠅の侵入を防ぐための遮蔽、附添人の隔離については、特別の注意が拂はれねばならない。
d. 總員(コレラ患者を除く)コレラワクチン一・五ccの接種を受けること。
e.檢疫期間中總員の大小便は、海中に投棄せられる前に二%クレゾール溶液にて處理されねばならない。
f. 保菌者を發見するため總員に對して檢便を實施すること。保菌者な發見した場合は總てコレラ患者と同一の場所に隔離し、二日置きに三囘陰性大便が得られるまで隔離が繼續さるべきこと。
g. 總員の手荷物及び衣類が消毒せらるべきこと。
4. 病院船は浦賀及び佐世保港沖に碇泊して、引揚人中のコレラ患者を收容治療すること。