二六二 貿易廳に關する覺書
一九四六年四月三日
1. 承認された外國貿易の機能を遂行するため、日本帝國政府を代表する機關の日本政府による設置に關聯する次の諸文書を參照すること。
a. 一九四五年一〇月九日附、日本帝國政府宛の覺書第三項d、これは、輸入品の受領と分配に對する責任を負ふべき機關の創設を命じたものである。
b. 一九四五年一二月一八日附、終戰連絡中央事務局第一一七六(一・一二三)號
c. 一九四五年一二月一四日附、勅令第七〇三號
d. 一九四五年一二月一四日附、勅令第七〇四號
e. 貿易資金設置ニ關スル法律、一九四五年一二月二一日の帝國議會議事錄第二六(c)號
2. 一九四五年一二月一八日附、終戰連絡中央事務局第一一七六(一・一二三)號に指示せられてゐるボード・オヴ・トレイド(以下貿易廳と呼ぶ)は、この覺書によつて、次の諸條項に從つて行はれる日本の全對外貿易取引を取扱ふ日本帝國政府の專管代行機關として認められた。
a. 貿易廳の取引は總て聯合國最高司令官の指令に從ひ、且これに一致する方法によつてなされねばならない。
b. 一切の外國貿易は日本帝國政府に代り貿易廳によつて取扱はれる。但し聯合國最高司令官によつて特に然らざる旨の認可あるべき場合は除かれる。
c. その他如何なる日本帝國政府の代行機關も、準政府團體又は組合或はその他の團體又は組合も、更に、日本帝國政府管下の如何なる自然人又は法人も、貿易廳を經由するか、又は聯合國最高司令官の特別認可ある場合の外、如何なる外國貿易も行ふことが出來ない。
d. 貿島廳は、聯合國最高司令官の指示に從つて總ての輸出物資の引渡をなし、又は引渡をなさしめる。貿易廳は、聯合國最高司令官の指示に從つて、輸入物資の引渡を受け、又は引渡を受けしめる貿易廳は、聯合國最高司令官によつて特に別途の認許が與へられない限り、日本帝國政府に代つて完全なる所有權を有する物資のみを輸出向として引渡し、又は引渡をなさしめ又貿易廳は聯合國最高司令官の命ずるべき所に從つてその所有權を最高司令官に移轉する。貿易廳は聯合國最高司令官の命ずる所に從つて日本帝國政府に代つて輸入物資に對する所有權を取得する。
e. 外國貿易に關する商業上の負擔、危險、債權及びその他の責任及び義務は、すべて貿易廳によつて引受けられねばならない。
f. 輸入物資はすべて「現狀のまゝ」受けとられねばならない。そして聯合國最高司令官によつて承認された場合の外、貿易廳及び日本帝國政府は物資の品質、數量、狀態又はその他その物資の受取に直接又は間接に關係ある事項について、如何なる要求をも主張してはならない。
g. 貿易廳及び日本帝國政府は、すべての外國政府及をその代理機關並にその代表者が、輸出入物資の購入、賣却、處分その他の取扱によつて直接又は間接に生じ、又はすべての外國貿易取引に關聯して生ずる一切の損失、費用、損害又は出費のために損害を受けないやうすることを要する。
h. 貿易廳の局長以上の職員のすべての任命は顧問、參與をも含め、聯合國最高司令官の承認を受けなければならない。一九四五年一二月一八日附日本政府覺書、終戰連絡中央事務局第一一七六(一・一二三)號附屬書一覽表記載の職員についての、當司令部の見解は、間もなく提示されるであらう。
3. 貿易廳の創設を規定した一九四五年一二月一四日附勅令第七〇三號及これに關聯するその他の法律、命令及び規則は、次の諸條項を實施するやう修正せられることを要する。
a. 貿易廳は「輸出準備申請書」又は「輸出引渡申請書」の承認又は聯合國最高司令官からの輸出指令の發行によつて、聯合國最高司令官により認許を與へられた所に從つてのみ輸出物資の購入をなすものである。
b. 貿易廳は聯合國最高司令官によつて提供せられる一切の輸入物資を受取る。貿易廳は他の者をして輸入物資受取に關聯する行爲をなさしめることは差支ないが、所有權は聯合國最高司令官から別途指令される場合を除き、日本帝國政府に代る貿易廳に先づ與へられる。
c. 貿易廳は聯合國最高司令官の指示及び、日本帝國政府によつて正當に權限を賦與された機關の設定した認可及び政策に從つて一切の輸出入物資を處理、移轉及び受領するものである。
d. 貿易廳は、前記第二項d、e、及びfを完全にに實施するための總ての行爲を實行し、又必要な一切の措置を取る權限を賦與される。
e. 顧問は任期を一ヶ年として任命せられる。
f. 顧問は一般に團體(顧問會)として行動する。顧問はその多數決によつて行動し一切の會議々事錄は保管せられる要がある。貿易廳長官はすべて重要問題について顧問の意見を求める。顧問は隨時長官の要求に從つて個人的に、又は委員會の成員として長官の任務遂行を補佐する。
4. 輸入物資配分委員會設置に關する一九四五年一二月一四日附の勅令第七〇四號及びこれに關聯するその他法律、命令、規則は次の諸條項を實施するやう修正せられねばならない。
a. 輸入物資配分委員會は輸入物資の配分について、貿易廳及びその他日本帝國政府の正當に權限を賦與された機關に勸吿と援助とを與へる。
b. 委員會の成員は個別的に又は團體として、貿易廳長官に勸吿及び援助を與へる。
5. 一九四五年一二月二一日の帝國議會議事錄第二六(c)號によつて創設された貿易資金は、その額に於て貿易廳の債務を履行するに十分である。そしで法律命令及び規則は次の諸條項を實施するやう修正されねばならない。
a. 同資金に預入れられる一切の貸付金及び支出豫算は、聯合國最高司令官に報吿せられねばならない。
b. 同資金は貿易廳にのみ使用を許され、前記第三項a、b、c、及びdに記されてゐる諸行爲の實行に際し、合理的に引受けられた財政上の債務の履行のためにのみ、貿易廳の命によつて支出されるものである。但し聯合國最高司令官から特に別途認可あるべき場合はこの限りでない。
c. 輸入物資の賣却又はその他の處分によつて直接又は間接に生じ、貿易廳の受取つた金額はすべて貿易資金に繰入れ、前記諸目的のため貿易廳のみが使用し得る。
d. 輸入物資配分資金の貸付、又は輸出物資の處置集荷のための貸付を貿易資金からなすことは許されない。
e. 同資金は直接又は間接を問はず如何なる輸入物資に對する補助金としても使用することは許されない。
6. 本覺書の指令條項實施のため、貿易廳、日本帝國政府の指定代理機關と聯合國最高司令部關係部局間の直接交涉は、この覺書によつて認許せられた。
7. 本覺書の諸條項は聯合國最高司令官によつて指令せられる償還、返還又は賠償には適用されない。