237 引揭に關する覺書
次の二つの覺書を見よ。〔〕內は改正により削除された部分。
   引揚に關する訂正覺書送附に關する覺書
一九四六年五月七日
1 一九四六年三月一六日附、聯合國最高司令官發の修正覺書、「引揚」に關する件は取り消される。
2 別紙第一としてこの覺書に添附された一九四六年五月七日附、聯合國最高司令官發の覺書「引揚」に關する件を參照すること。
3 添附の覺書に含まれてゐる訓令は、戶畑を別府に代る引揚人收容所に指定した事以外は、引揚全般に關して從來聯合國最高司令官から發せられた指令を編纂したものである。
4 前記第一項に言及されてゐる覺書中に含まれ、添附された覺書中で變更された總ての訓令は下線を施されてゐる。
   引揚に關する覺書
一九四六年三月一六日
改正一九四六年五月七日
1 本覺書は、次に揭げる各項の引揚に關する基本的指令である。
(a) 次の各軍管理下にある地域よりの日本國人の引揚。
太平洋米陸軍最高司令官
太平洋地區司令長官
中華民國軍大元帥
東南亞細亞地區聯合國最高司令官
濠洲軍最高司令官
極東蘇聯軍最高司令官(但し、適切な協定が成立した場合)
(b) 元來中國、臺灣、朝鮮及琉球の住民であつて、日本國內に移動せしめられた者。
2 この覺書の『附屬書第八』に列擧されてゐる覺書及び無線電報に含まれた從來の訓令は、この指令によつて置き替えられる。
〔附屬書第八に列擧した覺書記載の旣往の諸指令を廢止し、本指令を以てこれに代へる。尙、「朝鮮人、中國人、琉球人及び臺灣人の登錄」に關する一九四六年二月一七日附の覺書は、その指令事項の措置完了まで有效であることに注意されたい。〕
3 今後は、前記第一項に列記した地域よりの引揚、及び同地域への引揚に關する總ての一般的指令は、成るべく本指令の追加又は修正の形式によつて、日本帝國政府宛に發せられるであらう。
4 日本帝國政府は、米第八軍司令官の監督を受け、本指令の附屬書に記載されてゐる諸訓令事項を遂行することを要する。
附屬書
第Ⅰ 舊日本軍占領地域內日本國民の引揚、及び日本在住外國人の日本よりの引揚に關する一般方針
第Ⅱ 引揚人處理の爲の日本國內引揚人收容所
第Ⅲ 日本よりの引揚及び日本への引揚
第Ⅳ 補給及び輸送
第Ⅴ 醫療及び衞生上の處置
第Ⅵ 通貨、證券、その他證書類及財產
第Ⅶ 雜件
第Ⅷ 廢止せられる諸覺書
附屬書Ⅰ
舊日本軍占領地域內日本國民及び在日本外國人の引揚に關する一般方針
次の方針は、舊日本軍占領地域內日本國民及び在日本外國人の引揚に適用せられる。
(註本附屬書及本覺書全般を通じて使用せられてゐる「外國人」なる語は、中國人、臺灣人、朝鮮人及び琉球人のみを含む)。
1 日本國民の引揚に割當てられた日本海軍の艦艇及び商船は最大限に活用すること。
2 日本海軍艦艇及び元來旅客輸送を目的としたもので、現に內海又は沿岸旅客輸送に必要でない日本商船は、日本國民の引揚に活用するものとする。
3 貨物船で輸送する場合は、必須貨物の輸送を妨げない範圍で、引揚人を輸送するものとする。引揚人は、認可されてゐる引揚港(附屬書第二、第二項(a)參照)に向ふ貨物船以外によつて輸送することは出來ない。
4 日本帝國政府は、日本人乘組の艦船に對して、可能な最大限度まで、運航、配員、糧食の給與及び補給を行はねばならない。緊急の際は、當該船長の署名ある覺書領收書によつて、米國陸軍又は海軍、或は、外國の港に於ては外國政府から、燃料、糧食、醫療品及び修理資材を入手することが出來る(附屬書第四參照)。
5 日本陸海軍々人の移動を第一とし、一般日本人の移動は第二とする。但し、關係地域司令官が、その所管地域の事情によつて必要と認めた場合は、例外も行はれる事がある。
6 引揚用艦船による輸送は、日本側の引揚計畫によつて日本に向ふ者及び日本より退去する者、又はその他聯合國最高司令官によつて、特例として認可された者に限られる。
7 本國に引揚げた外國人は、聯合國最高司令官によつて認可された場合以外は、通商上の便宣の得られる時期迄、日本に歸還することは許されない。
8 總ての日本人は、本土歸國前に、武裝を解除せられねばならない。
9 太平洋米國陸軍最高司令官及び太平洋地區司令長官の管理下にある地域よりの日本人引揚に際し、聯合國最高司令官は、引楊人輸送專用に割當てられた艦船の、各地域運航に使用せられる割合を規定する。指定地域引揚の優先順序は、必要に應じて定められる。
10 聯合國最高司令官は、中華民國軍大元帥、東南亞細亞地區聯合國最高司令官、濠洲軍最高司令官及び極東蘇聯軍最高司令官の管理下に在る地域より引揚げる日本國民の、日本への輸送及び日本に於ける收容に關する監督權を保留し、又所要の準備をなすであらう(蘇聯軍管區については適切な協定の成立した場合)。
附屬書Ⅱ
引揚人の處理のための、日本に於ける引揚人收容所
1 日本政府より、引揚關係事項の取扱を指令された厚生省は、次に揭げる各項を實施しなければならない。
a 中央機關を設置し、補給、關稅、輸送、身體檢查、檢疫及復員に關し、他の日本政府機關との協力を計り、米第八軍との連絡を取ること。
b 指定港(第二項(a)參照)に收容所を設置し、次の事項を實施すること。
(1) 海外より日本々土に歸還する總ての引揚日本人の收容、處理、看護及び歸鄕
(2) 附屬書第三に略述してある在日本外國人の集合、處理、看護及び乘船
c 各收容所に、その運營及び該收容所監督の責任を負ふ當該地區聯合國軍當局との連絡維持につき、責任を持つ常駐所長を任命すること。
2 a 收容所の位置、性格及び收容力
收容所は次の地點に設置し、引揚人の處理についてはこれらの收容所のみを使用すること。
港名 一日當收容能力
入國者(第一項(b)參照) 出國者(第一項(b)參照)
〔別府 五、〇〇〇 一、五〇〇〕
博多 七、五〇〇 五、〇〇〇
函館 二、五〇〇 二、五〇〇
唐津 二、五〇〇 二、五〇〇
鹿兒島 三、〇〇〇 一、五〇〇
吳地區 八、〇〇〇 三、〇〇〇
舞鶴 二、五〇〇 二、五〇〇
名古屋 五、〇〇〇 〇
〔門司 二、五〇〇 二、五〇〇〕
佐世保 五、〇〇〇 五、〇〇〇
仙崎 五、〇〇〇 五、〇〇〇
下關 二、五〇〇 二、五〇〇
由邊 三、〇〇〇 一、〇〇〇
戶畑 二、五〇〇 二、五〇〇
浦賀 五、〇〇〇 一、五〇〇
*運營されてゐない收容所を示す。運營される場合は一〇日前に豫吿するものとする。
〔*鐵道輸送力を利用し得ない場合は、連絡船によつて引揚人を本州に輸送のこと。〕
*以之島、大竹宇品を含む
〔**吳、岩國、似島、大竹及宇品を含む。〕
***港內掃海終了迄、臨時地區(他の收容所より出入する引揚人の宿泊及び處理をする地區)として使用する。
b 施設
前記員數の引揚人を收容、處理及び歸鄕せしめるため、各指定港に適當な施設を設置すること。右の施設には、事務所、所要の健康診斷所、檢疫所及び隔離病舍と共に、食糧、被服、醫療品倉庫を含むものとする。厚生省は、これら施設に必要な場所の割當について、米第八軍司令官と打合はせを行ふこと。
c 醫療處置
右の指定港に設置せられた診斷所及び檢疫所を、附屬書第五に規定せられてゐる處置に從つて適切に運營すること。
3 各收容所の施設、編成及び運營は、その收容所所在地區を管理する聯合國軍當局の監督下に置かれる。
附屬書Ⅲ
日本國內への引揚及び日本國外への引揚
第一節 一般計畫
1 a 日本國內への引揚及び日本國外への引揚についての現行計畫は、聯合國最高司令官の別段の命令ある迄は繼續される。
b 引揚計畫は、收容所の使用と、利用し得る船舶及び鐵道輸送力を以て處理し得る員數だけのこれら收容所經由の引揚者の流れを中心として作製せられてゐる。
c この計畫に於ては、引揚希望の登錄をし、然も引揚人收容所への移動に對して、日本帝國政府の計畫に從ふことを拒否する外國々民は、その引揚に對する特權を失ふ。そのやうな人々の目錄は、日本帝國政府によつて保管せられねばなならない。
2 次に揭げる收容所は、日本から退去する在日本外國引揚人の處置に使用せられる。
〔別府 華南及び海南島に本籍ある申國人の處理を優先的に行ふ。〕
博多及び仙崎 朝鮮人の處理を第一とする。
〔博多及び舞鶴 朝鮮人及び華中に本籍ある中國人の處理を第一とする。〕
〔函館朝鮮人の處理を第一とする。〕
鹿兒島琉球人の處理を第一とする。
吳地區臺灣人及び華南に本籍ある中國人の處理を第一とする。
舞鶴華中に本籍ある中國人の處置を第一とする。
〔佐世保朝鮮人及び華北に本籍のある中國人。〕
佐世保華北に本籍ある中國人の處理を第一とする。
〔仙崎朝鮮人及び華北に本籍を持つ中國人の處理を第一とする。〕
3 日本厚生省は次の各項を實施するものとする。
a 第二項記載の各收容所を、出來得る限り、この覺書でこれから規定されるやうに〔附屬書第二、第二項aに示した收容限度まで〕、國外退去引揚人を以つて滿しておくやう關係各省と必要な手配をすること。
b 提供された輸送計畫を愼重に檢討し、次の諸點を確實に實施するやう適當な措置を講ずること。
(1) 收容所を混雜せしめないこと。
(2) 朝鮮及び臺灣諸港に向ふ引揚船は出來得る限り、同地區に向ふ引揚人を收容人員まで收容すること。
〔朝鮮、臺灣又は琉球の各港に向け出港する引揚用船舶には、その地域への引揚人を出來得る限り收容力限度まで乘船せしめること。〕
c 歸還引揚人を、その處理終了後二四時間以內に收容所より移動せしめるに要する輸送力を準備しておくこと。
d 本國歸還を希望する在日本外國人を、この計畫の規定に從つて移動するやう命令せられる時期迄、現住所に止め置くやう取締りを確立すること。
4 日本帝國政府は、次の艦艇運航について輸送計畫を提供されるであらう。
a 米海軍日本船舶運航管理機關によるもの、日本商船及び海軍艦艇、日本人乘組のリバテイー船及び上陸用舟艇。
b 聯合國最高司令官によるもの、準備出來次第、米國船員乘組の上陸用舟艇、その他聯合國の船舶。
5 日本帝國政府は、收容所施設を永久家屋として使用することを禁止せねばならない。
6 外國引揚人輸送の列車に乘込む警備兵
a 地方聯合國〔米軍〕當局は、外國引揚人を收容所に輸送する爲特に計畫された總ての列車に、聯合國〔米軍〕警備兵を乘車せしめるやう訓令を受けてゐる。警備兵は、外國引揚人の乘車する各車輛につき二名宛である。
b 日本帝國政府は、日本地方官憲に對して、次の指令を發することを要する。
(1) 地方聯合國〔米軍〕當局に對して、外國引揚人を收容所に輸送する爲特に計畫された列車に、聯合國〔米軍〕警備兵を乘車せしめるやう要請すること。この申請には各次の如き情報を記入するものとする。
(a) 輸送される外國引揚人の員數
(b) 外國人引揚人輸送の爲特に仕立てられた列車の車輛數
(c) 列車の豫定、經路及び着驛
(2) 右の申請は、十分餘裕を以て地方米軍當局に提出し、必要な命令の發令、列車への警備兵の乘車を確實ならしめること。
(3) 公用を以て旅行する他の聯合國人員に必要な車輛を使用せずに實行出來る限り、聯合國〔米軍〕警備兵乘車用として、全乘車區間を通じ、適當な寢臺車又は一等車を準備すること。但し、一等車の準備不能の場合は、その代りとして二等車を供與すること。車輛は淸潔であることを要する。
(4) 列車の運轉を變更する場合は、完全正確な報吿を速やかに關係地方米軍當局に提出すること。
c 更に日本帝國政府は、地方官憲に對して次の訓令を發すること。
(1) 日本より退去する外國引揚人は、乘車前に幾つかの群に分け、選拔した指揮者を附けること。
(2) 混雜を確實に防止すること。
(3) 各群の秩序ある乘車及び降車を確實ならしめること。
7 統制
a 日本帝國政府は、收容所々在の政府代表者に次の訓令を發すること。
(1) 日本を退去する外國引揚人は、乘船に先立ち、幾つかの群に分け、各に選拔した指揮者を附けること
(2) 各群の守るべき船內日課及び衞生に關する處置について十分に敎育すること。
(3) 各群の秩序ある乘船を確實ならしめること。
(4) 聯合國船員乘組船舶の船長に、各群の個人及び指揮者の名簿を提出すること。
b 地方日本官憲は、引揚人の日本滯在中及び日本人船員乘組船舶乘船中、その統制の爲あらゆる法律上の手段を能ふ限り利用すること。
第二節 朝鮮人の引揚
8 次の計畫は朝鮮人の引揚に關するものである
9 船舶輸送
a 日本朝鮮間往復輸送
日本朝鮮間往復の日本船舶による近距離引揚人の輸送は、每日次の員數を虜置し得るやう割當てられる。
當初 五月五日迄に
博多 一、五〇〇 三、〇〇〇
仙崎 五〇〇 一、〇〇〇
〔(1) 日本朝鮮間往復の日本船舶による近距離引揚人の輸送は、大體次の割合に再配分する。
博多 二五% 仙崎 四五%
舞鶴 一五% 函館 一五%
(2) 隨時利用し得る乘客收容實數についての情報は、日本船舶運航統制機關より入手することが出來る。〕
b 日本、朝鮮、中國間の往復輸送
上海博多間を往復する指定日本船舶に、釜山にて下船する朝鮮人を、博多にて乘船せしめて差支ない。
〔(1) 華北諸港向けの船舶に空所あれば、朝鮮にて下船する朝鮮人を收溶すること。
(2) 上海博多間を往復する指定日本船舶に、釜山にて下船する朝鮮人を、博多にて乘船せしめて差支ない。〕
10 日本諸港より引揚げる朝鮮人の處置
a 現在日本に在る朝鮮人で、北緯三八度以南に本籍ある者の引揚は、一九四六年九月三〇日、又はそれ以前に完了せられねばならない。
〔朝鮮人の引揚計畫實施を容易にする爲、日本帝國政府は引揚朝鮮人を日本の收容所に送り、引揚人の朝鮮に於ける目的地に應じて乘船せしめること、朝鮮人は次に揭げる經路によること。
目的地 乘船港 下船港
慶尙北道 仙崎又は博多
慶尙南道 釜山
忠淸北道 函館又は舞鶴
全羅北道 群山
全羅南道
京畿道 佐世保 木浦
忠淸南道
江原道 蔚珍〕
b 朝鮮人は每日指定されてゐる割合で、次の諸港から釜山へ輸送せられねばならない。
當初 五月五日迄に
博多 一、五〇〇 三、〇〇〇
仙崎 五〇〇 一、〇〇〇
合計 二、〇〇〇 四、〇〇〇
當初に於ける上記の一日處理率は、徐々に增加され、一九四六年五月五日迄に間違なく規定の率に達するやうせねばならない。その後は歸國を希望する朝鮮人の總てが日本から殘りなく引揚げるか、又は引揚の特權を失ふかするまで、繼續されるものとする。上記の目的を確實に達成するため、引揚人收容所には十分の朝鮮人を待機させておくことが必要である。
〔全羅北道、全羅南道及び忠淸南道行の朝鮮人は、出來得る限り、群山又は木浦行の船舶に乘船せしむること。〕
11 北緯三八度以北の朝鮮への引揚
北朝鮮への引揚は、適當な協定の成立まで見合はせる。北朝鮮行の朝鮮人は、引揚可能となる時期まで、日本に滯在させることとする。
12 朝鮮人囚人の引揚
a 日本帝國政府は、一般朝鮮人囚人は、その服役期間勞役に服し、正當に釋放せられる迄は引揚げしめないこととする。但し、これによつて、日本政府の恩赦又は減刑の權利を犯すものと解釋してはならない。
b 前記の事項については、一九四六年二月一九日附、聯合國最高司令官發「朝鮮人及び他の若干の國民に課せられた判決の再審查」に關する覺書の規定によらねばならない。
第三節 臺灣人の引揚
13 次の計畫は臺灣人の引揚に關するものである
14 船舶輸送
a フイリツピン諸島、東南亞細亞聯合軍最高司令官又は、濠洲軍の管理する地域行の指定船舶に空所ある時は、臺灣にて下船する臺灣人を收容するものとする(第四項(b)參照)。
b 第五節參照
15 日本諸港を通じての臺灣人の處理
日本よりの引揚を希望する臺灣人は、日本人乘組の船舶にて退去するため、一九四六年五月五日乃至一一日の一週間に、吳地區引揚人收容所に集合せしめることを要する。
〔日本よりの引揚を希望する臺灣人は次の諸港經由にて歸還せしめられる。
(a) 吳港―日本人乘組の日本船舶による
(b) 聯合國最高司令官の指定する港(第一四項(a)參照)。〕
第四節琉球への引揚及び琉球よりの引揚
16 次の計畫は、日本より琉球諸島への琉球人の引揚、及び日本人の琉球諸島への引揚に關するものである。
17 a 琉球への引揚はすべて、追つて指示あるまで停止せられる。
b 日本帝國政府は、貧因な琉球人避難者に對して、十分な食糧、住居、醫療處置、寢具及び衣料を支給せねばならない。
〔琉球人の日本引揚
(a) 現在日本にある琉球人で、琉球諸島への歸國を希望する者は、沖繩島を除き、卽刻引揚げしめること。
(b) 鹿兒島と、宮古島、石垣島、奄美島間に、日本船舶を往復運航せしめる事について目下立案中である。
(1) 奄美島、喜界ヶ島、土噶喇列島、德之島、與論島、沖永良島出身の引揚人..は先づ奄美島へ引揚げしめる。
(2) 宮古列島出身者は先づ宮古島に引揚げしめる。
(3) 八重山列島出身者は、先づ石垣島に引揚げしめる。
(c) (1) 沖繩島人を除く琉球人は鹿兒島から出港させる。
(2) 鹿兒島港務長は、鹿兒島一基隆間の往復航路就航船に、宮古、奄美、石垣及び德之島に向ふ琉球人を鹿兒島で乘船させ、宮古、奄美、石垣の各島を經由せしめる權限を許されてゐる。
(d) 沖繩島は軍事上の必要から、當分引揚に關する限り放されない。沖繩島人の引揚が可能であるかどうかについては、現在調查中である。
(e) 日本帝國政府は次の各項を實施せねばならない。
(1) 前記第一七項(b)の規定に基き、琉球人をその行先每に分けて鹿兒島に集結させること。但し、利用し得る船舶については十分の考慮は拂はねばならぬ。
(2) 貧因な琉球人避難者には、十分な食糧、宿舍、醫療處置、寢具及び被服を支給すること。〕
18 琉球諸島よりの日本人の引揚
日本人は、追つて指示あるまで、一ヶ月一五〇人の割合で琉球諸島から引揚させられる。
〔一九四六年七月一日まで、琉球諸島よりの日本人の引揚はこれ以上實施されない。〕
19 琉球諸島で誠意のある住民であつた日本人に限り、本州へ引揚げしめることが出來る。
第五節 中國への引揚及び中國よりの引揚
20 次の計畫は中國人の日本より中國への引揚、及び日本人の中國よりの引揚に關するものである。
21 中國よりの日本人の引揚(臺灣及び北部佛領印度支那を含む)。
a 現在日本中國聞の往復輸送に當てられてゐる日本人引揚船舶收容能力(約一八、〇〇〇)は當分そのまゝ變更せられない。
b 從來日本中國間の往復輸送に當てられてゐたアメリカ人乘組の上陸用舟艇は引揚作業を中止した。
〔(c) 日本人乘組の上陸用舟艇八五隻、リバテイー型船一〇〇隻を、一九四六年一月二九日より同年三月三〇日迄の期間、大體次の割合で、日本中國間の往復輸送に當てられる。
週の始まる日 上陸用舟艇隻數 リバテイー船隻數
三月一〇日以前 五五 五六
三月一〇日 一四 一三
三月一七日 一六 一三
三月二四日 〇 一八
合計 八五 一〇〇〕
22 中國人の日本引揚
a 一九四六年五月一三日以前に於ては、中國人は次に從つて出航せしめられる。
(1) 華北に本籍ある者は佐世保及び仙崎
(2) 華中に本籍ある者は博多及び仙崎
b 引揚を希望し、一九四六年五月一三日尙日本に止まつてゐる總ての中國人は次の通り退去するため同日集合せしめられる。
(1) 華北に向ふ者は、日本船又は日本人乘組船舶に乘船するため、佐世保港に集合。
(2) 華中に向ふ者は、日本船又は日本人乘組船舶に乘船するため、舞鶴港に集合。
(3) 華南に向ふ者は、東南亞細亞地域就航の日本人乘組船舶に乘船廣東に向ふため、吳港に集合。
〔(a) 臺灣人は吳港及びその他聯合國最高司令官の指定する諸港から出航する(前記第一四項(a)參照)。
(b) 中國人は次に從つて出航する。
(1) 華北に本籍ある者は佐世保及び仙崎
(2) 華中に本籍ある者は博多及び舞鶴
(3) 華南及び海南島を本籍とする者は別府
附屬書Ⅵ
補給及び輸送
1 次に揭げる諸規定は、引揚人に對する糧食、被服及びその他補給品の供給に關するものである。
a 引揚人に對しては、收容所への途中及び收容所に於て、十分な食糧、安全な飮料水、被服、及び醫療品を供給すること。引揚人收容所への途中で列車が遲延した場合は、再補給の準備をしておくこと。
b 日本々土の指定諸港(附屬書第二、第二項a參照)を出航する病院船を含む總ての日本人船員乘組の船舶は、往航復航の各航海に對して、各一日分の餘裕を含み、船員及び引揚人に要する適切な食糧、安全な飮料水、醫療品、被服及びその他の品目の十分な補給を收容所に於て受領することを要する。
〔日本々土の指定港(附屬書第二、第二項(a)參照)を出航する日本人船員乘組の船舶は往航復航各航海に對して一日分の餘裕を含み、船員及び引揚人に必要な適切な食糧、安全な飮料水、醫療品、被服及びその他品目の十分な補給を收容所に於て受領する。但し、次の場合は除かれる。
(1) 臺灣日本間の往復航路に就航する日本人船員乘組の船舶は、現在臺灣にある日本補給物資より供給を受ける。
(2) 臺灣よりの引揚日本人は、現在臺灣にある日本陸軍の在庫品から被服の供給を受ける。〕
c 日本厚生省は、米國船員乘組の上陸用舟艇に乘船してゐる總ての引揚外國人に對して、一日分の飯と、航海中に必要な米を、一日分の餘裕を以て供給しなければならない。食物は美味であることを要する。
d 日本々土の指定諸港から出航して引揚人を輸送し日本へ歸航する米國引揚輸送船舶は、歸航中の引揚人に必要な食糧、醫療品、毛布その他品目の十分な補給を、收容所に於て受ける。日本國內で寒冷な氣候の間は、日本帝國政府は、暖い地方から日本に歸還する引揚人に對して、十分な暖衣を日本から出航する船舶に搭載しなければならない。
e 引揚人に對する補給及び施設の費用は日本政府が負擔しなければならない。
f 日本國內に於て引揚日本人が米國軍裝を保有することについての問題。
(1) 關係米國官憲が引揚日本人に配分した米國軍服及び軍裝品を、出來る限り利用するやう、日本帝國政府は次の措置を取らねばならない。
(a) 引揚人の所有する總ての米國軍服及び軍裝品を、彼等が收容所の處理を受ける際に集めること。
(b) 必要のある場合は、引揚人に對し日本服及び裝具を支給すること。
(c) 日本帝國政府は右第一項(b)(1)(a)の規定に從つて集められた米國軍服及び軍裝品を、次に揭げる條件附で救濟の目的に使用して差支ない。
1 被服纎維又は織物を材料とした軍裝品は、支給前に明瞭な色に染めること。
2 靴、水筒等、染色の出來ない軍裝品は總て、聯合國最高司令官の承認を受けた方法で、印を附けるか又は燒印を捺すこと。
3 右に述べた染色又は目印のない物品は、聯合國官憲によつて沒收せられる。
(2) 日本帝國政府は、每月々末現在で、その月中に染色又は目印を附けて貧因民に支給した米國軍服及び軍裝品について、その各品目の量を聯合國最高司令官に報吿しなければならない。
g 引揚人收容所で要する食糧及び被服の補給は、日本の全府縣から適當な比率によつて徵發することとする。
2 輸送
a 引揚人の海上輸送は無料とする。
b 鐵道輸送は、日本側の引揚計畫によつて、收容所に向ふ公認引揚人に對しては無料とする。この規定は一九四五年一〇月一五日に遡つて適用される。次の各項は拂戾しに關するものである。
(1) 拂戾しは個人に對して行ふものとする。但し、或團體が正式に委任を受けて、その個人の代理であるといふ法律上の證據のある場合はこの限りでない。
(2) 外國人雇傭者に支拂はれる賃銀として雇傭者に拂戾を行ふ場合は、その解決は日本帝國政府と關係雇傭者との問題となる。
c 輸送船及び列車は、淸潔にし、その中に適當な衞生設備を設けなければならない。
d 日本船員乘組の引揚船舶には、適切な消火施設及び救命筏を設へなければならない。
e 船內の米國護送警戒兵居住區域は淸潔にし、又利用し得る最上のものであること。適切な衞生施設を準備すること。
3 外國諸港で引揚船に供給される緊急補給物資。
a 日本國外の諸港に於て作業する日本人船員乘組船舶に供與された必要補給物資に對して領收書を受取るやう、これら諸港を管理する官憲との取極めがなされてゐる。
〔日本國外の諸港に於て、日本人船員乘組船舶に必要な補給物資を供給した場合は、右諸港を管理する官憲が領收書を受け取るやう關係官憲との取極めを協定中である。臺灣に於て、日本陸軍の在庫品から補給物資の供給を受けた場合は、領收書の必要がない(第一項(1)及(2)參照)。〕
b 引揚作業に從事してゐる日本船員乘組船舶の船長に對しては、日本國外で供給を受けた物資について、數量を明記した領收書を提出するやう訓令を與へなければならない。領收書には、補給を受けた物資の量及び種類、及び、その物資が日本軍隊用として使用されるか、一般人用として使用されるかを明記することが必要である。
c 日本帝國政府は、引揚作業に從事してゐる日本船員乘組船舶の總てに對し、最大限度日本の資源から燃料、淸水醫療品及び食糧の補給を行はねばならない。從つて日本人船員乘組の船舶が、その豫定航海に必要とする補給物資のうち、外國諸港で受ける量は最小限となる。
4 その他の醫療品
附屬書第五、第三項參照
附屬書Ⅴ
醫療及び衞生上の措置
1 厚生省は、日本へ又は日本から引揚げる總ての國民の引揚に附隨する最小限の必要事項として、次に揭げる醫療及び衞生上の措置を講じなければならない。
a 引揚人に關する措置は次の通りである。
(1) 虱附着の有無、檢疫を要する病氣(コレラ、ペスト、天然痘、發疹チブス、黃熱病、癩病及炭疸病)、又はその後接觸した者の健康を害するやうな傳染病の患者及び疑似患者の有無を調べる爲、身體檢查を行ふこと。
(2) 檢疫を必要とする疾病、又は强い傳染性を持つた疾病の患者又は疑似患者と思はれる者は、傳染の恐れがなくなるまで入院させるか、又はその他有效な隔離處置を講ずること。このやうな者は、引揚人を輸送する船舶及び列車に乘せないことが必要である(第三項參照)。
(3) 檢疫を要する疾病で、傳染性のあるものに接觸した事の判明してゐる者については、その診察を續ける爲必要な手段を講ずること。診察は、接觸した最後の日から計算して、その病氣の潜伏期間中繼續すること。次の潜伏期間中注意を拂ふことが必要である。天然痘―一四日間。發疹チブス―一二日間。ペスト―六日間。黃熱病―六日間。コレラ―五日間(第三項參照)。
(a) 危險の程度に應じて、これに對處する爲の適當な手段も種々あるであらう。例へば、其の者を留置して診察を續けるやうな簡單な手段から、上記第一項(a)(3)に記した病氣の發生した船舶に乘つてゐた者に關して、入港先の責任ある管理機關に通吿せねばならぬ場合もあるであらう。
(4) 樺太、琉球、ロシア、滿洲、朝鮮、中國及びその他發疹チブスの發生してゐる地域から歸國する總ての者に對し、聯合國最高司令官の認可を受けた方法(出來ればDDT)によつて驅虫を實施すること。又他の地域よりの日本到着に際して、虱の附着してゐることが發見された者、又は、前記の諸地域から歸國した者と歸途に接觸した者についても同樣驅虫を實施すること。驅虫は、衣類、手荷物その他虱の附き易い品物全部について行ふ。
(5) 免疫措置
(a) 次の通り種痘を實施すること。
1) 天然痘の種痘は、日本から引揚げる總ての者と、日本への歸國者で、種痘をしてから一年を經過する總ての者に實施すること。
2) チブスの豫防注射は、亞細亞大陸へ旅行する總ての引揚人、及び日本への歸國者で、注射してから六ヶ月を輕經過した總ての者に實施すること。
3) コレラの豫防注射は、日本から引揚げる總ての者に對し、春夏の期間實施すること。
(b) 引揚人收容所で、日本を退去する引揚人の引揚作業が妨げられる場合は、數囘の實施を必要とする注射の、最初の一囘だけでも必ず實施すること。
(6) 國際檢疫措置に從つて所要の記錄を保存すること。
b 日本船員乘組の船舶のみに關する措置を次の通り規定する。
(1) 現にペストが發生してゐるか、又はペストが風土病と考へられる地域、卽ち亞細亞大陸、臺灣及び蘭領東印度を含む地域から歸航する船舶については、鼠の發生狀況を檢視すること。
(2) シアン化物、二酸化硫黃又はその他聯合國最高司令官に豫め提出して承認を得た方法によつて、ペスト患者の發見された船舶、又は、鼠の糞から判斷して多數の鼠が居ると認められる船舶に對し燻蒸消毒を施すこと。
(3) 燻蒸消毒後捕獲した鼠、海邊にて捕獲した鼠、又は消毒未濟の船舶上で捕へた鼠等總ての鼠がペスト菌を持つてゐるかどうか檢查をすること。
(4) 以上の他、流れの中に錨地を設けるとか、波止場からの鼠を防ぐ物、或は防鼠網等、ペストの蔓延を防ぐ爲に適用し得る諸種の方策を講ずること。船客及びその所持品又は虱の發生してゐると思はれる船の部分に對して(出來ればDDTによつて)驅虫措置を講ずること。一航海に一ヶ月以內を要する往復輸送に從事する一切の船舶については、每月DDTによる驅虫がなされること。一航海に一ヶ月以上を要する航海に割り當てられてゐる船舶は、各航海に於て日本より出發するに先立ち、DDTによる驅虫がなされること。
(5)船舶上の病氣取締について、聯合國最高司令官の承認を得た上記以外の方策、例へば、安全な飮料水を適當に供給すること、廢棄物の適切な處分、下船港に於て船舶を完全に淸掃すること、等の手段を講ずること。總ての場合に於て、船は日本より出港するに先立ち、出來得る限り短時日に完全な淸掃がなされねばならない。
(6) 航海中高度の衞生狀態を維持するために必要な物資器材を船長に供給すること。日本帝國政府は、各船長に對し、所要高度の淸潔と衞生狀態の維持を勵行するやう要請することを要する。
c 引揚人收容所についての處置
(1) 總ての收容所に於て、鼠の取締と捕へた鼠の死體檢查に關する繼續的な計畫を樹て、ペスト菌を持つた鼠が發見された場合は、直ちに適當な聯合軍側及び日本側官憲に通報すること。
(2) 船舶、船客及びその手荷物の免疫措置及び驅虫措置は一切收容所に於て實施すること。總ての必要な措置を完了した場合は、總括的證明を船客證明書に附記すること。若し必要な措置のうち省略したものがあればその旨證明書に記入せねばならない。
(3) 身體檢查は日中行ふこと。但し、引揚作業の進捗がこれによつて妨げられるやうな例外的事情ある場合は別である。
(4) 厚生省は、必要に應じて、出來る限りその他の港灣保健取締措置を實施すること。特に、腸關係傳染病の有無を檢查すること。但し、それによつて引揚作業が妨げられない事を條件とする。
d 引揚船乘組の日本人船員は、前記第一項(a)(3)に列擧した病氣の豫防注射を受けなければならない。免疫措置は次の期間內ならば有效と考へてよい。
天然痘―一年 發疹チブス―六ヶ月
コレラ―四ヶ月 黃熱病―五年
ペスト―三ヶ月
各乘組員は免疫證を發行せられ、それには豫防注射の種類及び注射實施の日附が註記せられる。船員は常にこの證明書を携行しなければならない。證明書の紛失は再豫防注射を必要とするであらう。
e 天然痘患者を載せて入港する引揚船の乘組員は、種痘又は再度の種痘を受けねばならない。そして責任ある取締り機關は、その船が豫防注射實施後五日を經過した時、航海に派遣し得られる旨通吿せられねばならない。この規定は天然痘以外の傳染病を搭載する船舶には適用しない。
f 日本帝國政府は、日本人船員乘組の引揚船々長に訓令して、前記第一項(a)(3)に擧げた病氣の何れかを船中で發見した場合、又は、船客のうちで潜伏期間中に旅行した者を發見した場合は、これを入港先の責任ある取締機關に通報させなければならない。又强い傳染性を持つ病氣の患者で、直ぐに醫療施設に收容することの出來ない者、例へば結核患者等についても同樣通報しなければならない。
g 癩病患者は引揚を許されない。
2 引揚船に勤務する日本側醫療關係要員
(a) 中國にある日本人の引揚作業に從事中の日本人船員乘組のリバテイー型船、及び上陸用舟艇に乘組む醫療關係要員は、中國側が在支日本人醫療關係員の中から指定する。(但し、病院船のものを除く)。これらの要員は、引揚船に乘船の上、長期服務する。
(b) 日本帝國政府は、日本人船員乘組の總ての引揚船(但し、第二項(a)記載のものを除く)に乘船し、長期間服務する醫療要員を次の通り指定する必要がある。
(1) 四日以下の航海をする船舶には看護員二名。
(2) 四日又はそれ以上航海する船舶には、醫師一名と看護員二名。
(c) 日本帝國政府は、日本人醫療關係要員を必要とする船舶の船名及び航海日程を、日本商船管理委員會から受取ること。
3 引揚人の間のコレラに對する檢疫措置
a 日本帝國政府は、中國より引揚げる個人によつて、コレラの日本へ移入せられることを豫防するため、卽時次の措置をとらねばならない。
b 中國よりの引揚者を搭載する船舶で、コレラ患者なしに到着するものの場合。
(1) 航海に六日以上を要した場合は、過去一ヶ月期間(前記第一項d參照)に種痘を受けた乘組員を除く全員は一立方センチのコレラワクチンの注射を受けて上陸せしめられ、引揚人處理手續は普通通り行はれる。
(2) 中國よりの航海に六日以下を要した場合は、全員六日を經過し身體檢查を終るまで船に止めおかれ、若し患者の發見せられない時は、前記第三項b(1)に記されてゐる如く上陸を許される。コレラ患者の發見せられた時は、その措置は下記第三項Cに規定されある處に從つて取られる。
c コレラ患者を搭載して日本に到着する船舶は、聯合國最高司令官より別途指令あるまで、浦賀及び佐世保兩港のみを使用する。
(1) 船舶は、岸に泳ぎ附く者のあり得べきこと、及び岸に漂ふ船よりの傳染を豫防し得る十分な岸からの距離をおいて碇泊せしめられることを要する。
(2) 最後の患者發生後一四日間、總員船に留めおかれねばならない。
(3) コレラ患者は、岸より離れて碇泊せられてゐる病院船に船から移されるべく、病院船は引揚人中のコレラ患者を收容し手當を加へねばならない。病院船の浦賀及佐世保港到着前においては、コレラ患者は、上記二港にある引揚人收容所の隔離病舍に移され、嚴格な隔離措置が續けらることを要する。患者の排泄物一切の消毒(二パーセントのクレゾール液を使用して)、蠅を防ぐための幕、附添人の隔離には十分な注意が拂はれねばならない。
(4) 總員(コレラ患者及び過去一ヶ月期間に豫防注射を受けた乘組員を除き)一立方センチのコレラワクチンを注射せられねばならない。
(5) 檢疫期間中、全員の糞及び尿は、海に投棄せられるに先立ち、二パーセントのクレラール液で處理されることを要する。
(6) 保菌者を發見するため、全員に對する檢便が實施されねばならない。發見された保菌者は總て、患者と同じ場所に隔離され、二日置に三囘陰性便の得られるまで留めおかれる。
(7) 全員の手荷物及び衣類は、消毒せられることを要する。
4 日本政府は、中國及び日本國內の總ての引揚港で醫療措置に必要なワクチンを準備せねばならない。中國で必要なワクチンの量と種類については、聯合國最高司令官から必要な指示が發せられるであらう。日本政府が所要量のワクチンを準備し得ない場合は、不足量に理由添附の上、聯合國最高司令官に通知しなければならない。
附屬書Ⅵ
通貨、證券、その他證書類及び財產
1 厚生省は、現在內地に引揚中の日本人及び各本國に引揚中の中國人、臺灣人、朝鮮人及び琉球人の處理に關して、次に揭げる措置を實施しなければならない。
2 現在日本に引揚中の日本國人處理に際して、日本帝國政府は、
a 次に述べる通貨及び日本政府公債の持ち歸りを許可すること。
(1)次の金額の日本銀行通貨及び補助B票通貨
(a) 士官―最高五〇〇圓
(b) 下士官及び兵―最高二〇〇圓
(c) 民間人―最高一、〇〇〇圓
(陸海軍々屬を含む)
(2) 「前記第二項(a)(1)に規定せられてゐる限度までの圓通貨の代りとして、華北乘船港にある復員指揮官によつて發行された日本圓に對する爲替證書及び、南朝鮮に於て發行され正當に證明された、圓通貨領收書。」
〔前記第二項(a)(1)に規定されある限度までの圓通貨の代りとして、華北乘船港にある復員指揮官によつて發行された日本圓に對する爲替證書〕
(3) 圓表記の日本政府公債は、右第二項(a)(1)に規定された限界內で、圓通貨及び(或は)爲替證書の代りとして差支ない。
b 總ての引揚人に許されてゐる圓通貨、爲替證書或は日本政府公債の他に、日本人俘虜に對しては、抑留中に支拂を受けた給與、又はその積立てた額に等しい額を追加として持ち歸ることを許すこと。
c (1) 「爲替證書及び證明せられた領收書(前記第二項(a)(2)參照)は、一對一の割合で日本銀行通貨に兌換し、聯合國最高司令官から何分の指示あるまで、上記の通り交換された爲替證書を安全に保管することを要する。持ち歸りを許された日本銀行通圓貨及びB票通貨と、乘船地での交換によつて入手した手取金との合計は、前記第二項(a)(1)の制限額を越えてはならない。
(2) 日本に持ち歸られる外國通貨の交換はなしてはならない。この外國通貨は朝鮮銀行、臺灣銀行及び滿洲中央銀行通貨を含むが、これらに限定されない。引揚人によつて日本へ持ち歸られるかゝる通貨の總ては、各個の領收書と引換に取り上げられ、聯合國最高司令官から追つて指示あるまで、安全に保管せられねばならない。上記は、一九四五年一二月一三日附、聯合國最高司令官發の覺書、「引揚日本人に對する救護支拂の件」第三項を、修正又は廢棄するものと解釋されてはならない。
〔朝鮮銀行、臺灣銀行及び滿洲中央銀行の圓通貨と爲替證書は、一對一の割合で日本銀行通貨と引換へ、聯合國最高司令官から何分の指示ある迄、右交換した通貨及び爲替證書は安全に保管する必要がある。持ち歸りを許された日本銀行圓通貨及びB票通貨と乘船地での交換で入手した手取金との合計は、右に述べた第二項(a)(1)の制限額を越える事が出來ない。〕
d 次に揭げる證券類は、次の規定に從つて日本へ持ち歸ることを許可すること。
(1) 日本、朝鮮、臺灣、關東州及び華北で日本圓通貨にて發行された日本郵便貯金通帳。
(2) 簡易保險證書その他日本の保險會社の發行した保瞼證書。
(3) 日本の金融機關の發行した銀行通帳。
(4) 日本陸海軍野戰郵便貯金通帳。
(5) 圓通貨の貯金に對して在支橫濱正金銀行が中國からの引揚人に發行し、圓貨で支拂ふべき送金受取證書。但し、送金受取證書の金額が、圓通貨、爲替證書及び(又は)日本政府公債を加へた場合その全額が、前記第二項(a)(1)に規定した額を超過してはならない。
e 所有者に對してのみ價値のある衣類及び身の廻り品の携行を許可すること。但し、各人が一度に携行し得られる量を限度とする。
f (1) 次に揭げるものについては、各個に領收書引換にこれを取り上げること。
(a) 前記第二項(a)(1)に規定した限度を超過する總ての通貨、又は、通貨及び(又は)爲替證書、送金受取證書及び日本政府公債の合計及び、一切の外國通貨(前記第二項c(2)參照)。
(b) 金貨又は銀貨。
(c) 金塊、銀塊、白金塊、又は塊狀となつてゐるそれらの合金。
(d) 前記第二項(a)乃至(b)の規定による以外の、小切手、手形、爲替手形、有價證券、約束手形、支拂命令書、讓渡指圖書、又はその他の金融證書類。
(e) 日本內地及び外地に於ける金融又は財產處分遂行上の委任權、代理權、又は、その他の許可證又は指圖書。
(f) その他前各項に明記されてゐない負債證據物件又は財產所有證據物件。
(g) 美術品及び所有者以外の者にとつても價値のある個人的財產、及び、前記第二項(e)に規定された限度を越える私有物件。
(2) 各個の領收書引換に沒收した物件は、聯合國最高司令官から何分の指示あるまで安全に保管すること。
g (1) 次に揭げる諸文書は、日本へ引揚げる在外部隊に對し日本へ持ち歸ることを許可すること。
(a) 勤務經歷、進級、賜金、敍勳、給料、手當及び分配金についての資料等、軍人事關係行政文書その他軍人軍屬の最終記錄及び辭職書を作る上に必要な公文書類。人事關係行政規則及び手續もこの許可中に含まれる。
(b) 編成及び整備表、兵力報吿書、指揮官更迭書及び軍人名簿。
(c) 衞生法規、病院記錄及び臨床報吿書。
(d) 軍法會議記錄、逮捕及び禁錮に關する記錄、及び未決事件に關する書類。
(e) 純軍事會計關係の明細書、豫算書、受取書、支拂書及び決算書。
(f) 復員及び引揚關係規則。
(g) 各地域在住日本人の人口調查書。
(h) 元軍人軍屬であつた死亡者の會計決算に必要な公文書。
(i) 行方不明者及び脫走者名簿。
(j) 部隊官印。
(2) 前記第二項(g)(1)(a)乃至(j)に記載されてゐる公文書は、乘船港及び下船港の關係當局の取捨に委せられる。乘船港に於ける出港手續が完了したならば、右文書は出港する引揚船に搬入し、關係地域の聯合國司令官の指定した者に保管せしめる事を要する。指定された文書保管人は、委任狀及び乘船港からの出港證明書を下船港の關係當局に呈示して、最後の積卸許可を得た上、これを日本帝國政府の管理に移すことを要する。前記第二項(g)(1)の規定は、政策上の問題と解釋してはならない。又これが爲關係地域の聯合國最高司令官が必要と認める文書を、その所管地域內に保留する權利を失はしめるものではない。
3 日本から本國へ引揚げる朝鮮人、中國人、臺灣人及び琉球人の處理に際し、日本帝國政府は、
a 一人當り一、〇〇〇圓以下の圓通貨携行を許可すること。
(1) 中國人、臺灣人琉球人は日本銀行通貨を携行のこと。
(2) 日本帝國政府は、朝鮮人に對し、朝鮮銀行通貨を一對一の基準で、日本銀行通貨に兌換すること。
b 朝鮮人及び中國人に對しては、次の物件を通貨以外に持ち歸らせること。
(1) 日本及び引揚先國の金融機關が發行した郵便貯金通帳及び銀行預金通帳。
(2) 日本及び引揚先國で發行した生命保險證書。
(3) 日本國內の金融機關が發行して、日本國內で支拂ふべき小切手、手形、預金證書。
c 衣類及び所有者だけに價値のある動產の携行を許可すること。〔但し、各人が一囘に持ち得る量に限られる。〕これらの動產は一人當り重量にて二五〇ポンドに制限せられる。日本帝國政府は、引揚計畫豫定を遲延させることなく、この追加手荷物を處理するに必要な措置を講じなければならない。
d (1) 各個が領收書引換に次の物件を取り上げること。
(a) 前記第三項(a)記載の額を超過する總ての他の通貨と圓通貨。引揚朝鮮人によつて携行される總ての日本銀行通貨は取り纏められ、朝鮮銀行通貨と交換に受け取られる額を超過する總ての通貨に對しては、各個に領收書が發行せられる。(前記第三項a、(2)及、一九四六年三月三〇日附、聯合國最高司令官發の覺書、「引揚朝鮮人に對する通貨兌換の件」參照)
(b) 金塊、銀塊、白金塊及び塊狀になつてゐるこれら金屬の合金。
(c) 前記第三項(b)に明記した以外の小切手、手形、爲替手形、有價證券、約束手形、支拂命令書、讓渡指圖書、その他金融證書類。
(d) 日本內地又は外地での金融又財產處分の委任權、代理權、又はその他の許可證或は指圖書。
(e) 前記第三項(b)に特に記載した以外、特別の指定のない總ての負債證據物件又は財產所有證據物件。
(f) 美術品及び所有者以外の者にとつても價値のある動產及び、前記第三項(e)に述べた限度を超える私有物。
(2) 個別の領收書引換に沒收した物件は、聯合國最高司令官から追つて指示あるまで安全に保管することを要する。
附屬書Ⅶ
雜件
1 日本國民の朝鮮への旅行
a 日本國民の朝鮮への旅行許可申請については、聯合國最高司令官が、日本及び朝鮮の占領の爲必要不可缺な旅行と認めない限り、一切認可せられない。
b 日本國民個人業務の解決、及び、日本國民に對する厚生救護事業の援助は、前記(a)項に定義した必須要務とは見做されない。
2 引揚船舶を貨物輸送に使用すること。
a 定期的に割當られる引揚船上の貨物搭載場所は、次の條件の下で、日本船舶運航管理委員會によつて、必需貨物に對し配分される。
(1) 適當な貨物船が得られない場合。
(2) 貨物量が僅少であるため、貨物船を豫定することが正當と認められない場合。
b 日本帝國政府は、認許された貨物積込に必要な場所の割當に對しては、今後も引續き、船舶運營會を通じて、日本船舶運航管理委員會と取極をなすことを要する。
附屬書Ⅷ
廢止事項
1 聯合國最高司令官發日本帝國政府宛の左記覺書及び電報に含まれる命令及びそこで取消されてゐる指令は、總てこの指令によつて置き替へるものである。
(以下略)