233 輸出手續に關する覺書
一九四六年三月一四日
1 日本帝國政府に對し、本覺書の附屬書に略述した手續に從つて、輸出向物資の準備及び引渡をなすことを命ずる。
2 聯合國最高司令部は、輸出準備申請及び輸出引渡申請の處理と確認については、これを委託をせず、又これに對する義務を負はない。
3 聯合國最高司令部は、日本の輸出物資が海外に於て適當に處分せられるやう最善の努力をなすであらう。併し乍ら、これら申請の內容となつてゐる物資が、輸出に不適となつた場合、或は他國に輸入せられないか又は商品として賣れない場合は、右物資の一部若くは全部を取消すか又は訂正せられることがあるであらう。この點については明確に理解せられねばならない。
4 申請書に提示されてゐる一切の報吿の正確なること、及び、そこに記載されてゐる物資の入手方については、日本帝國政府が、その責を負ふものである。責任の範圍は次の通り。
a 輸出向に振當てるものとして記載されてゐる物資の現在庫品の保管に對する責任、及び、聯合國最高司令部に於て右物資を輸出向としないことを決定するまで、又その決定のない限り、右物資の處分を防止することに對する責任。
b 輸出準備申請書記載の物資が、指定の期日に確實に入手し得られることに對する保證の責任。尙同時に、原料、石炭、勞力その他作業必需物資及び生產施設の入手供給についても適切な考慮を拂ふべきこと。
c 實際に積み込まれる物資が、申請書記載の明細又は見本の示すものと一致することに對する責任。相違又は代品については聯合國最高司令部の特別承認を得た場合に限られる。
5 日本帝國政府は、輸出せらるべき一切の物資に對し、疑なき權原を獲得することを要する。但し、現在又は從來日本國外の諸政府又は個人法人の財產であつて、聯合國最高司令官が、その返還を命ずるものを除外する。
6 米國向の各積荷は、積込港に於て積込海洋船荷證券が發行された時に引渡され、引渡と共にその權原は米國商事會社に移る。日本登錄船舶による中國又は朝鮮向の積荷に於ては、陸揚港本船渡しにて引渡され、日本國外の登錄船舶による場合は、積込海洋船荷證券の發行と共に引渡が行はれる。權原は引渡と同時に移讓される。その他の國に對する積荷の引渡、權原の移讓は、一般的訓令によるか、又は各積荷の認可ある每に今後に於て指定せられるであらう。
7 輸出せんとする物資の見本が要求された場合は、聯合國最高司令部の代表が、日本帝國政府の提供する見本中から選擇する。見本一箇は直接聯合國最高司令部に引渡すことを要する。一箇は、日本帝國政府に於て目錄とし、東京地區にある適當な百貨店の一室に保管し、最高司令部の要求ある場合は何時にても提示し得るやうしておかねばならぬ。更に一箇の見本は輸出向に包裝し、木版字にて明瞭に「見本」と記入し、輸出引渡申請書を提出する必要がある。同時に、見本を提出した物資の輸出準備申請書をも提出しなければならない。若しこの輸出準備申請書が旣に提出されてゐるなら、その見本の包裝が出來輸出準備が終り次第、その見本品に關する輸出引渡申請書の提出を必要とする。
8 同封の書式見本を、日本帝國政府に於て、英語又は英日兩語にて複製することを要する。複製する書式見本は、印刷に先立つて聯合國最高司令部に提出し、その承認を得なければならない。聯合國最高司令部に提出されるこの種申請書は總て英語にて記し、その書式に必要な總ての事項を出來得る限り含めねばならない。
9 この種申請書は總て、聯合國最高司令部によつて承認された日本政府正式代表、又はその代理者による署名を必要とする。