一七四 在外財産の取引に關する覺書
一九四六年一月二一日
一 關係書類―一九四五年一二月二七日附、終戰連絡中央事務局覺書「海外にある財產の取引について」。
一九四五年九月二二日附、日本帝國政府宛覺書、「金融取引の統制について」。
二 日本帝國政府は、日本國內に住む者が外國に所有してゐる財產の所有權につき、日本の旣定相續法に依る相續を許可して差支ない。すべてこのやうな場合には、大藏省は、所有權の相續者に對して、その財產を、一九四五年一〇月六日附で日本帝國政府に當てた「外國爲替資產及關係事項の報吿に關する覺書」に指示されてゐる通り、在外財產として報吿する事を要求する筈である。但し、この財產の前所有者が、旣にその報吿を提出してある場合はこの限りではない。その場合には、提出濟みの報吿に對する訂正の提出が必要であつて、それにはその財產所有權の相續者の氏名住所と、原の報吿を提出した前所有者の氏名住所を明細に記入することを要する。
三 日本帝國政府は、日本國內にある個人が、日本政府國債の登錄場所を、日本國外の地から國內の地へ變更する事について申請した場合にも、許可を與へて差支ない。但し、登錄場所を變更する國債の價格が、一人について一千圓を越えない場合に限られる。日本民間事業會社社債の登錄地變更を許容せんとする申請は認可されない。
四 日本帝國政府は、日本商社の役員又は使用人で、以前外國で勤務し現在日本國內にある者に對し、給料と手當を支拂ふことを許可して差支ない。但し、當該支拂金が日本國外にある事務所又は支店の勘定に借記されない場合、及、日本國內にある商社の資產が日本國外にある支店事務所に對する負債總額より、大きい場合に限られる。日本國外にある日本人の事務所又は支店にある役員使用人の預金を、日本內地で拂戾すことを許容せんとする申請は承認されない。
五 日本の銀行の、外國にある支店が發行した預金通帳を日本內地に持ち込む事を許容せんとする申請は承認されない。但し、郵便貯金通帳と陸海軍軍事郵便貯金通帳に關しては、一九四五年一一月二六日附、日本帝國政府宛の「日本、朝鮮、臺灣、關東州及北支で發行された郵便貯金通帳に關する覺書」と、一九四六年一月三日附、日本帝國政府宛の「輸出入統制に關する補足覺書」の規定條項に從つて、これを日本內地へ持込む事は差支ない。日本國外で發行された預金通帳からの引出の許可申請については、一九四六年一月二日附の日本帝國政府宛の「日本國外で發行された貯金通帳からの引出に關する覺書」の中で、又、日本政府公國債を日本內地に輸入することについての許可申請に對しては、一九四六年一月四日附、日本帝國政府宛の「歸還日本人の日本政府國債の輸入に關する覺書」の中で、それぞれ旣に最高司令部の囘答が與へられてゐる。