一四四 或る種類の政黨、協會、結社その他の團體の廢止に關する覺書
一九四六年一月四日
一 日本國政府は、その目的又はその活動の結果が左の事項に該當する政黨、協會、結社、その他の團體の結成並にそれらの團體又は個人若は集團の活動を禁止しなければならない。
(a) 占領軍に對する反抗若は反對又は聯合國最高司令官の指令に基いて、日本國政府が發した命令に對する反抗又は反對。
(b) 日本國の侵略的對外軍事行動の支持又は正當化。
(c) 日本國が他のアジア人、インドネシア人、マレー人の指導者たることの僭稱。
(d) 日本國內に於ける外國人の貿易、商業又は職業從事からの除外。
(e) 日本國と諸外國との間で行はれる自由な文化又は學術の交流に對する反對。
(f) 日本國內に於ける軍事上の訓練若はこれに準ずるやうな訓練の實施、元陸海軍々人であつた者に對する同等の民間人に與へられる以上の利益の供與、若は特別な發言權の付與又は軍國主義若は軍人精神の存續。
(g) 暗殺その他の暴力主義的計畫による政策の變更又はそのやうな手段を促すやうな傾向の奬勵若は正當化。
二 第一項の條項の中で指定したやうな目的を、全部の場合は勿論一部でも持つてゐる團體は、この覺書に添へた附錄Aに表記されてゐる。その表は全部を網羅したものではない。右の附錄に記載してある團體と、右に述べたやうな目的を持つたり、活動をしたりする團體、又はこれに類似する目的活動を持つ團體は、直ちに解散しなければならない。又以上の團體が支配して居る團體若はそれらと密接な關係を持つてゐる團體も同樣解散しなければならない。
三 (a) 日本國政府はこの覺書によつて解散された團體、又は解散しなければならない團體、更に又この覺書の第一項に擧げた種類の團體が、直接間接に、全體又はその一部を所有したり支配したりしてゐる資產に關する取引を完全に抑へる爲めに必要な處置を直ちに取らねばならない。このやうな資產はその團體の帳簿、綴込書類、記錄と一緖に接收して、日本政府が保管しなければならない。尙日本政府は、右に述べた資產について完全な記錄を作り、公の記錄として何時でも檢閲を受けられるやうしておかねばならない。これらの記錄を受け取る官吏は、それを安全に保管することに對して、個人として責任を持たねばならぬ。食糧とか、家屋とか、その他日常生活必需品の生產に使用出來る資產は總て、出來るだけ早くその目的に副ふやう利用せねばならない。
(b) 日本政府は一九三七年七月七日以後、時期に拘らず、この覺書によつて解散された團體の役員であつた人々について、氏名と住所とその團體で占めてゐた地位を直ちに調查して、聯合國最高司令部に提出しなければならない。この報吿も公の記錄として保管する必要がある。同時に團體に屬してゐた人員全體の名簿をも備へておかなければならない。
四 この覺書の條項を實施する爲め又今後この規定に反する活動をさせない爲めに、適當な法律なり法令を發布しなければならない。
五 聯合國最高司令官から改めて指令の出る迄は、どのやうな團體でも、又その宣言した目的に關係なく、左に述べる項目に當てはまるときは、この覺書に反した目的活動を促進するものと見做される。
(a) その重要役員の中に左に述べるやうな者の居る場合。卽ち(1)この指令によつて廢止された團體の團員。(2)一九三〇年一月一日以後、元日本帝國の正規の陸海軍の將校又は特別志願豫備將校であつた者。(3)憲兵隊、海軍警察、特務機關、海軍特務部、又はその他特別の機關或は祕密情報機關、陸海軍警察機關に勤務した者、又はこれらの機關に關係ある勤務をした者。
(b) 團體員のうちに、この覺書によつて解散又は禁止された團體の元の團員を、四分の一以上含んでゐるもの。
六 次に述べるやうな目的と活動を持つて成立してゐる政黨、結社、團體、協會又は集團はその結成又は活動を禁止しなければならぬ。
(a) 公職の候補者を推薦し又は援助するもの。
(b) 政府の政策に影響を及ぼすもの。
(c) 日本と諸外國との關係を論議するもの、但し次に述べるやうな申吿を提出したものは例外とする。(1)その名稱、(2)その目的、(3)その主たる事務所の所在地、(4)その役員の氏名と住所、これには軍部又は警察關係での勤務、從來屬してゐたか又は現在屬してゐる聯盟、協會又は政黨の名稱に關する記錄を添えること、(5)實質的に財政上の援助をする者の氏名と住所、並にその援助の金額、(6)その會員の氏名及び住所の名簿、これ等をその主たる事務所が現在あるか、又は今後置かれようとする市町村役場に、提出すること。上に述べた申吿は、目的や會員の變化に應じて常にその現狀を明らかにして置くこと。會員や實質的な援助の金額に變化のあつた場合は聯合國最高司令官の要求通り申吿をすること。職員や目的に變化のあつた場合は直ちに報吿すること。日本國政府は、右に述べたやうな申吿又は報吿を受けた市町村長は、その申吿なり報吿を二通宛、東京の日本政府關係官廳に送るやう命令しなければならない。申吿書の原本と寫一通を勤務時間中常に備へておき、一般に閲覽を受けられるやうにしておかねばならない。以上の手續に對しては一切料金を徵收せず、又申吿書提出の爲めに定められる手續も、この覺書の指令を最も簡單容易に履行出來るやうなものとしなければならない。
この項目の規定は、團體に屬する人々の氏名と住所の名簿を提出するやう要求してゐるけれども、賃銀、勞働時間、勞働條件等の問題を論議したり、又はこれらの問題について、雇主と交涉する際に、勞働者又は雇傭人の代表者を選ぶ目的で集合した勞働者或は雇傭人の團體とか、その他の組織體にはこれらの規定は適用しない。
七 この覺書第六項の規定は、日本の政治團體の性格について一般公衆に間違ひのない知識を持たせ、祕密的な、軍國主義的な超國家主義的な、又は反民主主義的な結社や團體の結成を防止することを目的とするものである。この規定は、特にこの覺書の中で述べてゐる目的や活動に關係するものを除き、集會、言論、宗敎等の自由に干涉するもののやうに解釋してはならない。又それらの自由に干涉するやうに適用されてはならない。
八 日本國政府は、この覺書の指令を實施する爲めの計畫に、この指令に基いて發布しようとする法律、勅令或は命令を添え、聯合國最高司令部に提出して、その承認を受けねばならない。尙この覺書に基いて、日本國政府の發布する法律や命令が、聯合國最高司令官の承認を受けた場合は、すべてその發布の日の如何に拘らずこの覺書の發せられた日から有効となることを規定せねばならない。
附錄A
一九四六年一月四日附日本帝國政府宛覺書第二項に述べられてゐる廢止すべき團體の名簿。
(註)この表に載つてゐるものが右の覺書に基いて解消せられねばならない團體の總てではない。
一、大日本一新會 二、大日本興亞聯盟
三、大日本生產黨 四、大日本赤誠會
五、大東亞協會 六、大東亞協會
七、言論報國會 八、玄洋社
九、時局協議會 一〇、鶴鳴莊
一一、建國會 一二、金鷄學院
一三、黑龍會 一四、國際反共聯盟
一五、國際政經學會 一六、國粹大衆黨
一七、國體擁護聯盟 一八、明倫會
一九、瑞穗倶樂部 二〇、尊攘同志會
二一、大化會 二二、天行會
二三、東亞聯盟 二四、東方同志會
二五、東方會 二六、ヤマトムスビ本社
二七、全日本靑倶樂部