九七　恩給年金及利益ニ關スル覺書
一九四五年一一月二四日
一　日本帝國政府ハ可及的速カニ、而シテ遲クトモ一九四六年二月一日マデニ左ノ各號ニ該當スル者ニ授與セラルル一切ノ公私年金ソノ他ノ給與金ソノ他アラユル種類ノ利益ニツキ、最高司令部ノ認可セルモノヲ除キ、ソノ支拂ヲ停止スル爲必要ナル措置ヲ講ズルヤウ指令ス。
（イ）　軍勤務者ニ對スルモノ。右ハ離職退職手當金又ハ同種ノ賞與若ハ手當ヲ含ム。但シ受給者ノ勤勞能力ヲ制限スル肉體的不具癈疾ニ對スル補償金ハ、軍部以外ノ勤務ニヨリ生ジタル同程度ノ肉體的不具癈疾ニ對スル最低補償ヲ越エザル率ニテ支給スルコトヲ得。
（ロ）　聯合國最高司令官ノ命令ニヨル結果トシテ解散若クハ運營ヲ停止セラレタル協會、組合ソノ他ノ團體ノ構成員タリシ者、若クハコレニ勤務セル者ニ對スルモノ。
（ハ）　聯合國最高司令官ノ命令ニヨル結果トシテソノ官職若クハ地位ヨリ罷免セラレタル者ニ對スルモノ。
（ニ）　聯合國最高司令官ノ命令ニヨル結果トシテ抑留若クハ逮捕セラレタル者ニ對シテハ、抑留逮捕期間中、ソノ後有罪ノ判決アリタル場合ハ終身。
二　右第一項（イ）ノ制限ハ、軍勤務ヨリノ復員以前ニ生ジタル常時給與、生計費、旅費ソノ他ノ正常給與ニハ適用セズ。
三　可及的速カニ、而シテ遲クトモ一九四六年二月一日マデニ、本覺書ニヨリ支拂ヲ禁止セラレタル一切ノ年金、ソノ他ノ給與金若クハ利益ニ對スル權利或ハ据置拂ノ證據トナルベキ證書ソノ他ノ書類ハ、政府ヨリ無效ヲ宣言シ、又右支拂ノ目的ヲ以テ保留若クハ積立テラレタル一切ノ金額ハ卽時囘收スベシ。
四　本覺書受領後一〇日以內ニ左記ニ關スル詳細ナル報吿ヲ最高司令部ニ提出スベシ。
（イ）　軍年金若クハソノ他ノ給與金。
（1）　恩給年金
（a）　一九四五年八月一五日乃至一九四五年一一月一五日ノ間ニ滿期トナリ支拂ヲナスベキ年金總額。
（b）　一九四五年八月一五日乃至一九四五年一一月一五日ノ間ニ現金ニテ支拂ヒタル總額。
（c）　年金支拂ニ對スル權利ノ證據タルベキ證書ソノ他書類ノ表示スル總額、並ニ右支拂ノ目的ヲ以テ保留、積立テラレタル金額總計。
（2）　上記（1）同樣區分ニヨル離職並ニ退職手當。
（3）　上記（1）同樣區分ニヨル給與賞與、或ハソノ他一切ノ利益。
（ロ）　右（イ）項（1）同樣區分ニヨリ本覺書ニヨリ禁止サレタル軍部以外ノ年金ソノ他ノ給與金並ニ利益。
（ハ）　本覺書ニ從ヒ取ラレタル處置。
五　右報吿書六通ヲ最高司令部ニ提出スベシ。
六　本覺書ニヨリ要求セラルル一切ノ認可申請ハ文書ニヨリ、大藏省ヲ經テ聯合國最高司令官ニ宛テ提出スベシ。
七　本覺書受領ノ上ハソノ旨通報スベシ。