1059 日本に於ける商標、商號及商品のマークに關する覺書
一九四九年九月九日
1. 日本政府に對し日本に於ける商標、商號及商品のマークに關し本覺書の規定を施行する爲必要な手續を規定し實施する樣指令する。
2. 日本に於ける商標權で日本と戰爭した國の國人に當該國と日本との戰爭開始の日に於て屬して居たものが、其の後取消され或は無效とせられ又は其存續期間の滿了により消滅したものは、前所有者又は其承繼人の申請により、何等代償を支拂はず、再び有效ならしめ又回復せられ且戰爭開始の日に於て尙當然保護を得くべかりし期間と同等の期間その回復の日より效力を持續すべきものとする。
3. 第二次世界大戰より發生した狀態の爲、日本と戰爭した國の國人の所有する商標權が、其國と日本との戰爭開始の日以前に行使出來なかつた場合は、其の權利は上記第2項の主旨により其の國人が權利を行使出來なかつた日に於て尙當然保護を受くべかりし期間と同等の期間回復せられるものとする。
4. 日本と戰爭した國の國人による日本に於ける商標登錄の出願に關し、又は其の國人が一方又は双方の當事者である商標登錄請求の却下に對する審判若しくは抗吿審判の請求で戰爭開始の日に於て確定審決が下されなかつたものに關し、採られた手段又は手續は其國人の申請により無效たるべきことを宣言さるべきものとする。而して其の出願、審判又は抗吿審判の請求の狀態は戰爭開始の日にあつたものと同樣と見做されるものとする。戰爭開始後其の國人のために又はその國人に代りてなされた出願、審判或は抗吿審判の請求に關し同樣な規定を設けらるべきである。
斯くの如き回復手續に對しては特別の料金の支拂は要せざるものとする。
5. 日本と戰爭した國の國人にして戰爭開始前或は第二次世界大戰より發生した狀態の爲め日本に出願する機會を失つた日前6箇月以內に商標登錄の最初の出願を何れかの國へ正式に出願したものは、申請により、以前に最初になした出願に基く優先權を以て之に對應する登錄の出願を日本にすることが出來るものとする。
6. 日本政府は商標(標章)又は商號で外國人により何れかの地で使用され日本に於て良く知られて居るものと混同する程度に類似した商標(標章)又は商號の日本に於ける登錄を防ぐ爲、適當なる法令を制定し嚴格に施行するものとする。
7. 國際連合加盟國に屬する國人は、日本に登錄された商標で夫以前に申請者が使用し且日本に於て良く知られた商標(標章)又は名稱と混同或は誤解を生ぜしめ又は購買者を惑わす如き程度に類似したものの登錄の取消を日本特許廳に申請する事を許されるものとする。日本特許廳は斯くの如き申請を迅速に處理し而して若し申請者により提出された事實が正しいことが判明した場合はその商標の登錄を取消し且申請者が希望すれば申請者の商標の登錄を許可するものとする。
8. 日本政府に對し更に下記に對し、積極的處置を構ずる樣指令する。
イ、 日本國內需要及び(或は)日本より輸出の爲に製造された商品が日本以外の何れかの國で製造され或はプロセスされたものとの暗示を與えるが如きマークを付け或は廣吿しない樣に保證すること。
ロ、 日本國內需要或は又日本より輸出の爲製造された品物にその品の數量、品質或は內容につき虛僞の印象を與へる如きマークを付け或は其他の記載をしない樣に保證すること。
9. 上記2、3、4、5又は7項による要求は本覺書の規定を施行すべき法律制定の日より1箇年以內に限りなし得る。之に加えて、其の權利を行使する機會を失つて以來行使しなかつた其の權利の回復、效力の再發生、使用及び(又は)保全に關し法的に必要とする全ての手續を行使する爲に其の所有者に其の後に適當な期間を許可することが要求される。
10. 上述の規定は適用し得る限りに於て商號及商業的或は團體的名稱又は標章(コンマーシヤル・アンド・コーポレート・ネームス・オア・マークス)に適用するものとする。
11. 日本政府は本覺書の日附より30日より後れずに本覺書の規定を實行せんとする法令、政令及び(又は)法律、手續、慣行を規定する省令等の草案を連合軍最高司令部に提出し其承認を得るものとする。